THE BAWDIESはなぜ新境地に挑んだの
か? 聖地・日本武道館とルーツミュ
ージックへの熱い思いを語る

『Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019』と掲げ、全国47都道府県ツアーを開催中のTHE BAWDIESが12月12日、12枚目のシングル「HAPPY RAYS」をリリース。“J-POPシーンのど真ん中で鳴り響かせたい”という思いを込めた表題曲は、THE BAWDIES史上初めて全編にフィーチャーしたストリングスも話題のミッドテンポのポップナンバーだ。“日本武道館公演記念シングル”と謳っているとおり、来年2019年1月17日に日本武道館で行う現在のツアーのファイナル公演で披露することを念頭に完成させた。その「HAPPY RAYS」で挑んだ新境地に加え、ツアーの手応えや今回のシングルに込めた聖地・日本武道館、そして自分たちの血肉になっているルーツミュージックに対する熱い思いを、ROY(Vo / Ba)とMARCY(Dr / Cho)が語る。そして、来年の抱負も。

今年、結成15周年目、そしてメジャーデビュー10周年目を迎えたTHE BAWDIESのロックンロールは、まだまだ鳴り止まない。それどころか、さらに大きなものになっていきそうだ。

THE BAWDIESにとって日本武道館は、通過点ではなくゴールであって、そのゴールに立ち続けることが大事なんです。
――現在、ツアー後半戦の真っ最中ですが、今のところどんな手応えがありますか?
ROY:今回は結成15年目、そしてメジャーデビュー10年目ということを記念してリリースしたベストアルバム『THIS IS THE BEST』をひっさげてのツアーなので、これまで何度もやってきた代表曲を、とにかくぶっ続けにドーン!って。だから、ツアーが始まる前から、“初めてTHE BAWDIESのライブに参加する方がいらっしゃるなら、今回のツアーがオススメです!”と言ってたんですよ。それもあるのか、“初めてTHE BAWDIES(のライブ)に来ました!”という方もけっこういて。
――そうなんだ!
ROY:けっこう懐かしい曲もやるので、以前は来てたけど最近来られてなかったという方も来てくれて。そういう意味では、いろいろな人に楽しんでもらえてるのかな。さっき言ったように、ノンストップで、ずっと踊りっぱなしで行きましょう!というライブなので、お客さんもずっと笑顔で楽しんでくれてますね。何公演も来てくれているという方もいるそうです。だから、手応えはすごくありますね。
――セットリストは公演ごとに変えているんですか?
ROY:ベストアルバムからやっているんですけど、2枚組なので。だから全曲やろうとしても時間内に収まりきらないので、軸となる楽曲は変わらないけど、毎回4曲ぐらい入れ替えながらやってます。
――MARCYさんは、いかがですか?
MARCY:すごく楽しいです。アルバムのツアーって、最初の頃はまだそのアルバムの曲に不慣れだってこともあって、演奏にすごく集中するんですけど、今回はベスト盤のツアーなので、やり慣れた曲ばかりじゃないですか。だから、自分たちの勢いも出しやすい。そういう曲を、今までどおり見せることはもちろんなんですけど、“もっと違う見せ方もしたいね”という話はツアーが始まる前からしていたので、しっかり準備して、いつもと同じように見せるだけじゃなく、ライブの仕方もちょっと変えたりして。そういうことを、ターンごとに、みんなで意見を出し合ってやっているので、長いツアーですけど集中力も切れなくてすごく楽しいです。
ROY:やり慣れたと言っても、その中にはレアな曲もありますしね。時間が限られているフェスでは、どうしてもセットリストに入りきらなくてできない曲もあるので。そういう意味では、今回のツアーでしか聴けない曲もけっこうあると思いますよ。
THE BAWDIES/ROY(Ryo Watanabe):Vo,B 撮影=大橋祐希
――ツアー中に何かハプニングはありましたか?
ROY:けっこうありますね。悪いものはないんですけど、僕ら、旅行みたいに楽しんでいるので、移動日はけっこう観光するんですよ、みんなで。
――あ、その様子をSNSにもけっこうアップしていますよね。
ROY:その中でおもしろいハプニングがあると、MCのネタになる。だから積極的に行くようにしているんです。
――積極的に(笑)。
ROY:移動日はもちろんですけど、ライブの当日の午前中に行くこともありますしね。一番楽しかったのは、京都の東映太秦映画村。これまで何度も京都に行きながら、だいたい想像ができるからって行ってなかったんですけど、行ったらめちゃめちゃおもしろくて(笑)。時代劇の扮装ができるんですよ。値段によって仕上がりがピンキリなんですけど、やるからには一番高いやつをやろうと思って。15,000円だったかな。
MARCY:うん。
――15,000円!
ROY:でも、時代劇の本当のメイクの方が1時間ぐらいかけて仕上げてくれたやつの完成度がすごい。僕らコスプレってしたことがなかったけど、ハマる人の気持ちがわかりました(笑)。自分じゃない人になれる。あれは良かったね?
MARCY:うん。おもしろかったね。
ROY:オススメです(笑)。MARCYは柳生十兵衛、僕は水戸黄門だったんですけど、なりきるから海外の人とか、小学生とかに役者さんかなと思われて、握手を求められるんですよ。そうすると、ROYとしてではなく、水戸黄門として握手をしたくなるし、何かそれらしいことも言いたくなるし(笑)。
――水戸黄門とか柳生十兵衛とかっていうのは……。
MARCY:自分で選べるんですよ。だから女装してもいい(笑)。
――JIM(Gt / Cho)さんとTAXMAN(Gt / Vo)さんは何に?
ROY:JIMは体力を回復したいってその時は来なかったんですけど、TAXMANは丹下左膳。僕ら世代じゃないから知らなかったんですけど、片腕で、目に傷がある。MARCYも柳生十兵衛で目に傷があって、かっこいいものを求めると……。
MARCY:片目になる(笑)。でも、後々あいつ(TAXMAN)言ってたけどさ、“丹下作膳って片腕なんだね”って(笑)。
ROY:そうそう。どういうキャラか知らないから。
MARCY:刀を持って、両腕でポーズ取ってたけど。
ROY:いっちょまえに(笑)。映画村はおもしろかったですね。
THE BAWDIESのインスタグラムより
――そんなツアーが来年1月17日の日本武道館公演で大団円を迎えるわけですが、それに先駆け、12月12日にシングル「HAPPY RAYS」をリリースします。これはもう“日本武道館公演記念シングル”と謳っているわけですから、武道館で演奏することを念頭に書いた、と?
ROY:そうですね。ベスト盤をリリースして、そのツアーを現在、行っているわけですけど、武道館で終わりってなっちゃうと、ベスト盤でTHE BAWDIESのこれまでをひとくくりにして終わり、みたいになっちゃうので。そうではなくて、THE BAWDIESは転がり続けるバンドであることと同時に、次のTHE BAWDIESもしっかり見せていかなきゃいけないかなって。武道館は僕たちにとって一つのゴールなんですけど、何度立とうが、聖地であることに変わりはないし。1966年にビートルズがあそこにやって来て、初めて生でロックンロールを鳴り響かせたことによって、日本のロックンロールの歴史が始まったという意味で、僕らは聖地と言っているんですけど。そこが聖地だということを伝え続けないと、若い人の中には“なんでみんな武道館に立ちたがるんですか?”って言う人もいて。それなら、ロックンロールバンドにとってあそこは一つのゴールなんだってことは伝えないといけない。だからこそ(武道館に)立ち続けたいという思いもあるんですよ。そういう意味で、止まらない、転がり続けるっていうことを伝えるなら、武道館の前に新たなものを打ち出したいと思って。それでシングルを作りたいという話から、じゃあ武道館記念盤としてどういったものを出そうかっていうことになりました。
――その新たに打ち出すものが、今回の「HAPPY RAYS」という曲だ、と。
ROY:ええ。最近の僕らのシングルや代表曲は、ベストアルバムに入れた「FEELIN' FREE」、その前のシングルが「THE EDGE」「45s」と、割と激しめのロックンロールが続いていたので、次なる一歩を見せるなら、THE BAWDIESには「LEMONADE」をはじめミドルテンポの楽曲もあるんだから、その路線で新たなものを作りたいと思いました。今回の「HAPPY RAYS」という楽曲そのものは、実は『NEW』というアルバムの時に原石的なものはできていたんですよ。
――あ、そうなんですか。
ROY:ただ、すごくいい曲だったので、アルバムの中の1曲で終わらせたらもったいないと思って、ここぞという時のために取って置いたんです。それで、今回こそがそのタイミングだと思ったので、改めてブラッシュアップした上で完成させました。いろいろな人の耳に届くポップスとしても鳴り響く可能性を秘めていると、僕は感じていたので。今までプロデューサーを立てなかったり、立てたとしてもNAOKIさんや長岡亮介さんといった、自分たちと同じアーティスト目線で一緒にやれる方に頼んだりして、J-ポップのど真ん中に入るというよりは、外側から攻撃するようなやり方をしていたんですけど、今回は敢えてポップスのど真ん中で活躍している人と手を組んだらおもしろいんじゃないかって。でも、それは決して僕らがJ-ポップになるということではなくて、そういう人と手を組んでもTHE BAWDIESはブレないという自信があったんですよ。だから、むしろおもしろいものができるんじゃないかということで、今回、本間昭光さんにお願いしました。
――いきものがかり等を手掛けている本間さんって、かなり意外な人選でした。
ROY:いきなりコンタクトを取ったわけではなくて、以前から知り合うきっかけが何度かあったんですよ。僕らのマネージャーの結婚パーティーで、一緒にモンキーズ(の曲)をセッションしたこともあって、これも一つの運命かなとお願いしたところ、快諾していただけて。本間さんのルーツの中にはやっぱりビートルズがあるので、この楽曲はビートルズライクに届けられるんじゃないかというところもあったんです。
――THE BAWDIES史上初めて全編にフィーチャーしたストリングスは、曲を最初に作った時から考えていたんですか?
ROY:その時は考えてなかったんですけど、今回、本間さんに声をかける前に、新たな一歩として打ち出すなら、何か新しい感触があったほうがおもしろいんじゃないかというところから、“ストリングスが入っても映える曲だよね”って話がメンバー間であって。ただ、自分たちはストリングスを使った経験がないので、どうしたらいいんだろうって時に、本間さんならそれもできるって聞いたので、ストリングスを入れたいというアイディアを伝えて。バンドサウンドに関しては僕らが作ったアレンジそのままなんですけど、ストリングスのアレンジに関しては、本間さんに主導してもらいながら作っていきました。
THE BAWDIES/ TAXMAN(Taku Funayama): G,Vo 撮影=大橋祐希
――今回、本間さんと一緒に曲を作り上げた大きな成果というと?
ROY:コード進行ですね。そんなに大きく変わってはいないんですけど、元々のコード進行に少し違うコードを入れることによって響き方が変わる。そのコツというか、技を見て、“あ、なるほどね”って。それがJ-ポップとしてアレンジできるか、できないかの違いかなって。聴こえ方が急に明るくなったりするんですよ。そのマジックみたいなものは、すごく勉強になりました。コードの使い方も何通りもあって、その中にはよりJ-ポップっぽいものもあれば、基本のTHE BAWDIESに沿ったものもあって。結果、THE BAWDIESらしさを失わないアレンジに決まっていったんですけど、その加減があるんだなっていうのもおもしろかったです。
――逆に、元々のTHE BAWDIESらしさを意識して打ち出したところもあるんですか?
ROY:ストリングスを入れる時って、J-ポップの場合、かなりフィーチャーすると思うんですけど、僕らは、入れたけどそこまでフィーチャーしない。バンドサウンドが真ん中にあって、その味付けとしてストリングスがある。それは鍵盤もそうですけど、そういう作りにしている。最終的に、バンドのものっていうところを崩さなかったのがTHE BAWDIESらしさを貫いたところですね。
――因みにイントロのギターのアルペジオは、曲を作った時からあったんでしょうか?
ROY:ビートルズやバーズを意識して、後からつけました。いかにもって感じで、12弦のギターを使ってもよかったんですけど、自分たちの楽器で、そういう音色を出すところにおもしろみがあるっていうところで、ギターを2本重ねて、12弦っぽく聴かせているんです。
――それともう一つ。細かいところですけど、2番のAメロではティンパニっぽい音が聴こえますが。
MARCY:あ、それはティンパニではなくて、スチール製のシェルのフロアタムを、3通りのチューニングで1個1個録って、その音を重ねたんです。“ティンパニを入れたいね”ってなったんですけど、ドラムで代用したんです。
ROY:ロネッツみたいにティンパニを使ってもいいんだけど、イントロのアルペジオと同じで、その音色を自分たちの楽器で奏でるところにおもしろみがあるからって。
MARCY:けっこうスパイスになっていると思うんですよ。
――はい。ストリングスとあいまって、オーケストラっぽく聴こえるから、すごく耳に残りますよね。バンドとファンを祝福するようなとても美しい曲になりましたが、歌詞はストレートなラブソングですね。
ROY:基本はラブソングなんですけど、楽曲自体がメロも含め、原石の状態の時から光り輝いていたので、キラキラした感じというか、光を感じさせるものにしたくて、そのイメージのまま書いていったんですよ。だから、相手が恋人じゃなくても別にかまわない。大事なもの、大切なものの輝きや、それを思う気持ちを書いていきました。
THE BAWDIES/JIM(Yoshihiko Kimura): G,Cho 撮影=大橋祐希
――曲のイメージからの連想なんですね。ところで、「HAPPY RAYS」の日本武道館公演記念パッケージには「HAPPY“わっしょい”法被」が特典で付きますが、それは「HAPPY」=法被という連想なんですよね(笑)。
ROY:そうなんです(笑)。武道館記念盤なので、武道館とつなげたかったんですよ。武道館と言ったら、ビートルズ。ビートルズと武道館公演って言うと、日本に着いた時の法被姿のイメージがあって。HAPPYと法被が掛かっている上に、ビートルズにも掛かっている。これは付けるしかないんじゃないかって(笑)。
――なるほど。
ROY:さらに言えば、THE BAWDIESってライブの終わりに、みんなで“ワッショイ!”ってやるんですよ。昔から、その“ワッショイ!”の時、法被を着たほうがいいんじゃない?って話が冗談で出ていて(笑)。そういういろいろが、このタイミングできれいに一つにつながって。それならもう、みんなに法被を着てもらって、武道館で“ワッショイ!”ってやるべきじゃないかって話になりました。今回の僕らのアーティスト写真を見ても、“ビートルズね”って思わない人も多いんですよ。
――ああ、そうなのかぁ。
ROY:だからこそ伝えていかないといけない。この(特典の)法被もビートルズが着ていたものとデザインがほぼ一緒なんですけど、そういうところもこだわっていきたいんです。そういう意味でも、ルーツミュージックに対する自分たちの愛情を詰め込んだ一枚になっているんです。
――じゃあ、武道館公演にはみんなこの法被を着て来る、と。
ROY:ぜひ。
――「HAPPY RAYS」というタイトルは、まさか法被からの連想じゃ……。
ROY:じゃないです! そこは後々、つながってきましたけど(笑)。タイトルは歌詞を書いてからつけたんですけど、曲ができた時に“HAPPY”という言葉は使おうと思ってました。ただ、ファレル・ウィリアムスの「HAPPY」って世界的な大名曲がすでにあるし、わかりやすすぎるから、「HAPPYなんとか」とか「なんとかHAPPY」にしたいと思って。でも、「HAPPY DAYS」じゃありきたりだと思いながら、歌詞を書いていたら、あ、“RAYS”ってみんながみんな聴きなじみがある言葉じゃない、タイトルにしたらおもしろいんじゃないか、と思いました。
THE BAWDIES/MARCY (Masahiko Yamaguchi): Dr,Cho 撮影=大橋祐希
――カップリングの2曲もめちゃめちゃかっこよくて。「SHE CAN ROCK」はイントロのギターの音を聴いた瞬間にシビれました。
ROY:ああ、うれしいです。
――こんなに50’ sなロックンロール調の曲って……。
ROY:意外となかったですね。でも、シンプルなロックンロールという自分たちの得意なスタイルではあるので、楽曲制作も時間がかかってない。曲も1日で書いたんです。レコーディングも数時間でぱぱっと終わらせて、自分たちの根っこにあるものをストレートに出した。ただ、こういう曲をレコーディングする際、ヴィンテージのサウンドで昔っぽく録りたくなるんですけど、敢えてそうせずに現代の音でしっかりと、ね。
MARCY:そうそう。ドラムの音もドラムが一番鳴るスタジオで、ヴィンテージの機材ではなく、今、ライブで使っているものを使って、THE BAWDIESらしさを出せるようにして。
ROY:あとは、シンプルな曲だから、何かおもしろいスパイスをふりかけないと、ただただ“オールディーズっぽいものをやってみました”ってなっちゃうので。自分たちらしさというところで、さっきイントロって言っていただいたのはすごくうれしかったんですけど、レコーディングの当日に“イントロ、何かつけよう”って、それこそボ・ディドリーの「ロードランナー」のウニョニョニョーンってフレーズを付けた上にTAXMANが“こんなのどう?”って一発弾いたやつをそのまま使いました。ビートルズっぽいんだけど、ちょっと違う怪しさがガレージバンドっぽい。で、そのまま跳ねたロックンロールになるんですけど、サビで鳴っているハープっぽい……。
――あれはカズーですよね。
ROY:そうです。おもちゃのカズーを2本重ねるとハープっぽい音になるっていうことを、レコーディング中に発見したことに味を占めて、いっぱい入れました(笑)。コーラスでやっても良かったんですけど、それじゃあまりおもしろくないと思って。
THE BAWDIES 撮影=大橋祐希
――THE BAWDIESのみなさんは、ロカビリーにはあまりハマらなかったんですか?
ROY:ハマらなかったですね。(エルヴィス・)プレスリーは聴いているんですけど、一番ハマったのは、やっぱりブラックミュージックだったので。ビートルズをはじめ、ビートバンドやガレージバンドは聴きましたけど、白人ものはそこまで掘ってないですね。
――「SHE CAN ROCK」の跳ねている感じは、ロカビリーとまでは言えないまでも、ちょっとそれっぽいところもあるかなって。
ROY:最近、ディーン・カーターっていう60年代にロカビリーをやっていたミュージシャンの7インチシングルを手に入れて、それにハマってたんですよ。プレスリーの「監獄ロック」とか、基本、ロカビリーをやっているんですけど、60年代だからサウンドがガレージっぽい。それをたまたま聴いてたっていうのはあるかもしれないです。
――そして、3曲目の「THINK」は今年8月に亡くなったアレサ・フランクリンのカバーですが、追悼ということでの選曲なんですよね?
ROY:はい。僕らも大きな影響を受けてますしね。ただ、逝去のニュースが日本でも大きく取り上げられたほど伝説のシンガーなんですけど、“誰?”という若い人たちもいるんですよね。THE BAWDIESのリスナーの中にも若い人たちがいっぱいいるので、知らない人たちもいるんじゃないかなって。カバーの重要なところって、僕たちも昔、ソニックスがやっているカバーを聴いて、かっこいいと思うと同時に原曲のアーティストを調べて、そこで出会ったリトル・リチャード、レイ・チャールズにハマっていったので。僕らがカバーすることによって、アレサ・フランクリンにハマるかどうかはその人次第ですけど、まずは知ってもらうということが大事なので。それが僕らからのアレサへの恩返しになったらいいなと思って、カバーさせていただきました。やっぱり、映画『ブルース・ブラザーズ』で歌っているイメージが強いという人もいると思うので、最初はソウルマナーでやろうと思っていたんですけど、レコーディングの前日にTAXMANから“もっとガレージテイストでもいいんじゃないか”という提案があって、“こういうリフはどうかな?”ってストゥージズっぽいリフを弾いたんですよ。それが良かったので、歌とぶつからなきゃいいかなと思って、そのリフで歌ってみたらけっこうおもしろかったんですよね。原曲を壊していると受け止められるかもしれないけど、本来のマナーに沿っても本家を超えられることは絶対ないので、こういうほうがもしかしたら自分たちらしいのかなと、ガレージバンドっぽくやってみたんですよ。
MARCY:ドラムもリズムは『ブルース・ブラザーズ』のバージョンを参考にしたんですけど、音色に関しては60年代の録り方をしてみたいと思って、マイクも2、3本だけしか立てなかったんです。ハットとスネアのグシャっとした感じを出したかったんですよ。だから、チューニングもデッド気味にして。そういう遊びはカバーだからできると思って、振り切ってみました。
――天国のアレサはTHE BAWDIESバージョンを聴いて、何て言うでしょうね?(笑)
ROY:何て言うだろ?
MARCY:“うるせえ”って言われたらイヤだな(笑)。
ROY:ハハハ。以前、ソニックスのカバーをした時に、“こういうアレンジは初めてだからすごくうれしい”と言ってくれたんですよ。だから、今まで聴いたことがないアレンジは、本人も喜んでくれるんじゃないかな。
――アレサ・フランクリンはアメリカでスニッカーズの“お腹が空いたらこいつ、アレサ・フランクリンみたいになるんだ”っていうCMに出演していたみたいですよ。
ROY:じゃあ、怖い人なんですね(笑)。
THE BAWDIES 撮影=大橋祐希
――さて、現在、行っているツアーの集大成であると同時に、これからのTHE BAWDIESを提示するライブになる来年1月17日の武道館公演ですが、そろそろどんなライブにしようか具体的なことも考えているのでは?
ROY:考えてます。詳しくは言えないですけど(笑)。気持ちとしては、聖地であることと、そこに立ち続ける意思をみなさんにお見せしたいということに加え、たくさんの世代の人たちに、そこに立つ歓びを演奏から感じてもらうことですよね。それによって、若い人たちに、“ロックンロールバンドになって、自分たちもあそこに立ちたい”と思ってもらえるようなライブをしたいと思っています。いろいろな人が武道館で、いろいろな思いでやっていると思うんですけど、THE BAWDIESにとっては、大きくなるための通過点ではなくて、あそこがゴールであって、そしてそのゴールに立ち続けることが大事なので。大きなステージに、どんどんレベルを上げていくことが悪いことだとは思わないし、素晴らしいことだと思うんですけど、僕らはそれに興味があるというよりは、武道館に立ち続けるバンドになるっていうことのほうが意味合いが強いので。改めて、それを感じてもらいたいです。
MARCY:そうだね。今度で3回目になるんですけど、現在のツアーって、今までで一番成長できたツアーになっていると思うので、そのまま武道館に行って、しっかりロックンロールを鳴らせば、3回目ってことに納得してもらえると思ってます。
ROY:周年記念のベストアルバムをひっさげてのツアーなので、全ヵ所お祭りなんですけど、その集大成ですからね。そこで大祭りが繰り広げられるはずです。今、周年、周年って感じで(ツアーを)廻っているので、大きな声では言ってないんですけど、実は来年が周年なんですね。今年は結成15周年目、そしてデビュー10周年目。で、満は来年なんですよ。
――え!?
ROY:そうなんですよ。ちょっとズルい感じもあるんですけど(笑)。なので、実は武道館が周年イヤーのスタートになって、来年1年、本格的に周年のアニバーサリーが始まるっていう(笑)。
MARCY:でも、言ってなくないもんね。
ROY:そう。だから僕らインタビューでも必ず、“周年なんですね?”と訊かれると、“はい。結成15周年目、メジャーデビュー10周年目なんです”ってはっきり言ってるんです。
MARCY:ウソはついてない(笑)。
ROY:ついてないんですよ(笑)。僕ら結成が1月1日なので、ちょうど満15周年になって最初のライブが武道館なので、そういう意味も含め、お祭り全開、お祝い全開で行きたいと思ってます。そして、そこからスタートを切りたいと思ってます。
MARCY:アニーバーサリー・イヤーの。
ROY:ようやく始まります。これまでは助走だったんです、長めの(笑)。
――じゃあ、じゃあ、じゃあ。
ROY:来年も騒ぎ立てます。来年こそが新しい章の始まりだと思っているので、新しい作品もどんどん出していきたいと思ってます。
取材・文=山口智男 撮影=大橋祐希
THE BAWDIES 撮影=大橋祐希

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