SUPER BEAVER『歓声前夜』ツアー大阪
にて完遂 ――「バンドやっててよか
ったなって思う瞬間は、こういうこと
なのかなって思います」

SUPER BEAVER『歓声前夜』Release Tour 2018 ~初めての、ラクダ運転~2018.12.5(TUE)大阪・Zepp Osaka Bayside
『SUPER BEAVER「歓声前夜」Release Tour 2018 ~初めての、ラクダ運転~』大阪振替公演が12月5日、大阪・Zepp Osaka Baysideにて開催された。本来は9月30日に行われる予定であった同公演が台風24号の影響により延期となり、事実上のツアー最終公演となったこの日。暗転の後、オレンジ色の照明と手拍子に迎えられ、メンバーが1人1人ステージへ。最後に登場した渋谷龍太(Vo)が開口一番、「14年目にして、ツアーファイナルを経験した後に、ツアーを続行するのは初めてでございます(笑)」と早速場を沸かせ、「それだけのスペシャルが今日の大阪にはある気がしてます。めちゃめちゃ楽しみにしてきました! 『『歓声前夜』Release Tour 2018 ~初めての、ラクダ運転~』、本日が14本目の大阪です。行こうぜ~!!」(渋谷、以下同)と放った「ふがいない夜こそ」から、ビッシリ埋まったZepp Osaka Baysideに、彼らの音楽を求める無数の手が突き上がる。
SUPER BEAVER
「それじゃ愛すべきあなたのお手を拝借!」と、続く「美しい日」では突き上がった拳が手拍子に、サビでは再び天に伸びるように咲き乱れる。いや~人の手が作る光景が、ここまで美しいとは。そして、「さぁ大阪! まだまだ猫被ってるみたいだな」と、その手を緩めることなく「青い春」へ。今では彼らが大阪初ワンマンを行った福島2nd LINEの10倍以上のオーディエンスが、SUPER BEAVERをここ大阪で支えてくれている。そんなことを実感する鳥肌モノのシーンが続いていく。
SUPER BEAVER
「やっと来ました! ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールでやってきたツアーです。なのに、ツアーファイナルを経験して、約2ヵ月ぐらい空きました(笑)。ツアーファイナルをやってもなお、何だか終わった気がしなかったのは、きっと、ていうか絶対(笑)、今日があったからです。今日という日があったのは、“何か”があるとそう信じております。過去13本やってきました。間違いなく、本日がハイライトです! それでは、これ以上ないとびきりの愛をあなたに」
SUPER BEAVER
「ラヴソング」では、オーディエンスの1人1人にその視線と手を差しのべるように歌う渋谷。藤原“30才”広明(Dr)の四つ打ちのビートに上杉研太(Ba)のヘヴィなベースラインと柳沢亮太(Gt)のザラついたカッティングが絡み合う「シンプリー」は、会場の温度をさらに上昇させるような、まさにライブ鉄板。そしてそのまま、「昨今珍しい踊れないバンド、SUPER BEAVER参上!(笑) でも今日は、このリズムで身体がうずいちゃう。Zepp Osaka Baysaideを、俺たちでダンスホールにしませんか?」と、スタッカートなリズムも心地いい「irony」へ。それにしても、2800人収容の大箱がまるで広く感じないこの心の距離感は、やはりSUPER BEAVERのライブならでは。
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ここで、熱気高ぶるフロアの密度をほぐすかのように、「どこにいたって伝わるように、一生懸命歌ってるんで大丈夫。元気で俺たちの音楽をちゃんと聴いてください」とオーディエンスをねぎらう渋谷は、こうも続ける。「音楽が好きな人の前で歌が歌えるのは幸せです。バンドやっていてよかったなって思う瞬間は、こういうことなのかなって思います。何のために生きてるのとか、何のために仕事しているのとか、そういうことを思うかもしれないけど、「生きててよかったな」と思う瞬間なんていつ訪れるか分からないんだから、何度も何度も生きてやると思ってます。ライブが終わる頃には、今日がきっとそういう日になってると、俺は思う。あなたにもそうなっててほしい。真剣に、1対1の対峙。俺たちとあなたたちじゃなくて、俺とあなた。これがいくつもあるだけです。これからも、一直線に気持ちを交わし合うそのために、次の曲は我々の意思表示。「人として」という曲です」
何度も何度もライブハウスで夜を越えてきたであろうこの曲が、今日もまた胸に突き刺さる。歌を重ねていくことで消費されるのではなく、深みを増していくこの曲の強度には、SUPER BEAVERの信念と14年という時間をひしひしと感じる。
SUPER BEAVER
「楽屋でさ、俺たちの大阪の歴史を振り返ってみたのさ。俺たちは2nd LINEっていうライブハウスでずっとやってました。そこが全然売り切れなかったの。何年売り切れなかったと思う? 10年売り切れなかったのよ。そのときは、まさかこんなところでできるなんて思わなかったから……。諦めなければ叶うって言うつもりはないし、無駄な時間なんて1つもないっていうのも違うと思ってる。でも、それを「無駄じゃなかった」って言うためには、今日の自分が、明日の自分がそうするしかないんだよ。俺たちは一度はメジャーデビューもしたし、自分たちの音楽がいったい何なのか、一瞬見失う時間もあった。漠然とした未来の前に立って、誰のために歌ってるのか、ぼやーっとしか顔が浮かばない。でも、今は違う。目の前にはあなたがいてくれる。当時、そんな自分たちを助けてくれたのは、周りにいてくれた人の気持ち、そして、自分たちの歌でした。その歌を、もしかしたら今なら、あなたのための歌にできるんじゃないかと思いました。SUPER BEAVER史上、初めての再録。どうしても今の俺たちが、あなたのために歌いたかった、「シアワセ」という曲です」
SUPER BEAVER
今から9年前、彼らがメジャーシーンに翻弄されながらも、すがるような想いで意地と純度を刻み付けた大切な1曲は、SUPER BEAVERの「あの頃」が決して無駄ではなかったことを証明するかのように、まばゆい輝きを放ちながら胸に迫る。しっかりとオーディエンスの心の深淵にたどり着いた後は、「ここからは正真正銘、後半戦です。まだまだいけるよな!?」と、「嬉しい涙」、「証明」、「閃光」と『歓声前夜』の楽曲とライブには欠かせないアンセムを織り交ぜ一気に急浮上! 「気持ちがバチバチ伝わってきます」と渋谷が漏らすほどの凄まじいエネルギーが、Zepp Osaka Baysideを包み込む。
SUPER BEAVER
「いや~まさかこんな楽しい日が、ツアーファイナルが終わった後に待ってるとは思ってなかったわ。毎度毎度さ、自分が思ってた以上のものを見せてくれるわけ、大阪って場所は。でも、場所に愛着があるわけじゃないんだよ、あなたに愛着があるんだよ。今日Zepp Osaka Baysideにお集まりのあなたは、紛れもなく俺たちの仲間です。ただ知ってるか? 仲間っていうのは油断していいってことじゃないんだ。バチバチにしのぎ合ってこそ、本物の仲間だと思ってる。まずは俺たちの戦い方をお前に見せてやるよ!」
SUPER BEAVER
燃え盛る炎にさらに油を注ぐような言葉に扇動され、「正攻法」ではキレキレの照明と共に漆黒のZepp Osaka Baysideに絶景を描いていく。「1つだけ教えといてやる、あなたがカッコいいと思ったものが宇宙で一番カッコいいんだ! 合言葉は「東京流星群」」。泣きながら拳を突き上げるようなこの名曲の合間にも、「随分とデカい声で歌ってくれるな、嬉しいぜ!」と、渋谷がリアルタイムで次々とメッセージを投げかける。
「音楽で1つに? 笑わせるな。束になってかかってくんな、お前1人でかかってこい!」。こんな愛のある叱咤激励があるか? この会場には誰1人「その他」はいない。あくまで1人1人が集まってみんなになるというSUPER BEAVERのライブの不文律は、「秘密」でも徹底的に遵守。彼らが求めるのは100%のコール&レスポンスじゃない。自分の想像すら超える120%以上のそれだ。「このツアーで一番デカい」と満面の表情で語ったオーディエンスの声は、きっとこのツアーの全箇所で最高を更新してきたことだろう。気持ちを引っ張り出しぶつけ合うようなSUPER BEAVERのライブは、1人1人が自分を解放できる絶対領域のようだ。
SUPER BEAVER
「14年目を迎えて、自分たちの音楽が何となく分かってきた気がします。やっぱり俺たちの音楽は、投げる先にあなたがいないと意味がない。受け止めてくれたあなたが消化して、自分の気持ちになったそれを、また俺たちに投げ返してくれて初めて成立するもんだと思ってます。俺たちが100%の正解を歌ってるわけじゃない。俺たちが歌ってることの100%できてるわけじゃない。こうなりたいなとか、こうあってほしいなとか、そういう希望を全部込めて歌ってる。あなたが投げ返してくれなきゃ、寂しいんだよね。俺たちの歌は完結しないよ。結果、あなたが投げてくれたものが自分たちの新しい音楽となって、またあなたに投げることになる。そう、ずーっと『歓声前夜』です。この先も、ツアーファイナルを経て、今日の大阪を経てもなお、ずーっと途中。これからも一緒に、あなたとなら音楽を作っていきたいと思わせてもらいました。ホントにどうもありがとう、これからもよろしく頼むわ! 最後に一緒に歌ってくれるか大阪! ありがとうございました、SUPER BEAVERでした」
SUPER BEAVER
ラストは、『歓声前夜』同様アルバムの最後を飾る、「全部」を。時折2階席を指さし頷く渋谷。メンバー、そしてオーディエンスが声を上げ、一緒に音楽を作る。とてもシンプルで美しい光景の中でエンディングを迎えたそのとき、会場の各所からは「ありがとう!」の声が続々と湧き上がる。そしてそれが、再びオーディエンスの歌声と手拍子に変わっていく……。
「アンコールありがとうございます! せっかく2ヵ月近くも空いたんだ。その間にリリースした曲をやっていい? 世の中にはいくつもいくつも正解っぽいものが多過ぎて、何がホントに正しくて、何がホントに自分が好きなことなのか、分からなくなることもあるかもしれないけど、あなたが思った通りでいいんだよ。心が夢中になる方に行こうぜ、会いたい自分がいる方に行こうぜ。俺はそんなあなたが見たいんだよ。一緒に行きませんか? 「予感」のする方へ」
SUPER BEAVER
高橋一生が主演を務めるドラマ『僕らは奇跡でできている』(毎週火曜よる9時 カンテレ・フジテレビ系)の主題歌に抜擢された新曲「予感」では、促さずとも身体がシンガロングしたくなる楽曲の構造、各メンバーのミュージシャンシップを感じるプレイ、そしてポップなメロディの波状攻撃! これからも歌い継いでいくであろう新たな代表曲が、オーディエンスの心と体を揺らしていく。
「次の曲でおしまいです。本日の大阪公演と、俺たちのツアーがようやく終わります。寂しいような気もするけど、年内もまだまだライブがあります。いったい何が終わりだよ!(笑) でもね、そんなこと関係なく、何度も何度もここに立つのは、あなたと1対1で対峙できるからです。あなたと一緒に音楽やるのが楽しいの。だから最後に、俺たちが仲間だと思ってるあなたと一緒に歌いたい歌があるんだ。仲間って定義を、このツアーでは散々話してきたんだけど、今日はその必要はなさそうだ。声聞かせてください!」
最後の最後に披露した「なかま」まで、濃密な約2時間を共に過ごした2800人の仲間に、「いつでも待ってるぞ!」と語りかける渋谷。SUPER BEAVERフロムライブハウス、『歓声前夜』ツアー、これにてついに完遂!
SUPER BEAVER
取材・文=奥“ボウイ”昌史  撮影=青木カズロー

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