センラ 5年ぶりのワンマンライブ!
 ツアー『SENRA LIVE TOUR S STIL
O!!!:RE』が豊洲PITで大団円

SENRA LIVE TOUR S STILO!!!:RE

2018.11.25 チームスマイル・豊洲PIT
遊び心を下敷きに、センラならではの器用さで持てる力を十二分に具現化してみせていったその手腕からは、既に彼がひとりのアーティストとして完全に自立している、という事実を感じることになった。
近年は浦島坂田船の一員として、積極的なライブ活動をコンスタントに行ってきているセンラが、今ここに来て臨んだのは愛知・大阪・宮城・東京での全国4ヶ所にわたったワンマンツアー『SENRA LIVE TOUR S STILO!!!:RE』だ。なんでも、STILOとはイタリア語でスタイルを意味する単語になるそうで、なおかつそこに“RE”とプラスして冠されているのは、今ツアーがセンラにとって5年ぶり3度目のワンマン・ライブだから、ということになるらしい。
センラ
「どうも、センラでーす! 本日は、『SENRA LIVE TOUR S STILO!!!:RE』の豊洲PIT公演へようこそ!! いやー、もう緊張で口がパサパサなんじゃ(笑)」
シックなダークボルドーのスーツを粋に着こなしながら、1曲目でシリアスなトーンの「フリィダムロリィタ」と、シャッフルのリズムと呼応するセンラの歌がエロティシズムを醸し出した「キャットアイメイク」を歌い終えたところで、この夜の彼が発したのは前述の言葉。
つい先ほどまでは、浦島坂田船の時とはだいぶ異なるクール&アダルティなモードで終始キメてみせていたにも関わらず、いざMCで口を開くと……良い意味でセンラはやはり親しみやすいキャラでおなじみのセンラでしかない。そして、彼いわくの緊張をほぐすかのようにステージドリンクとして置かれてたペットボトルの水をぐびくびと飲んだあと、一息をついて彼はこう続けたのだった。
「ここまで名古屋、大阪、仙台とやっきてこの豊洲PIT公演がこのツアーの集大成になります。今日はここにいるバンド陣とワタクシで、皆さんのことを思い切り楽しませていきたいと思っておりますが、みなさんも楽しむ準備は出来てますか!」
センラ
センラのイメージカラーであるイエローのペンライトが、来場しているファンの人々によってこぞって振られる中、ここからは小気味の良い曲調と切ない歌詞が交錯する「恋愛裁判」や、バンドアレンジを経てより躍動感が増している「フィクサー」などがあれこれと歌われていく。
だが、そのままライブが進行していくのかと思いきや。そこはサービス精神の旺盛なセンラだけあり、早くも前半戦からひとネタが投下されることに。何が始まったのかといえば、ここではパワーポイントとフリー素材を駆使して作成したと思われるプレゼン資料を用いて、センラがステージ上のスクリーンを使いながらメンバー紹介していく、という企画コーナーが設けられていたのである。しかも、会場の近くにある豊洲市場の件や、カルロス・ゴーンの話題など、絶妙に時事ネタまで盛り込んであるあたりもなかなか乙で、それをセンラの巧みな話術をもってプレゼン芸として成立させていたのは、お見事の一言。
と同時に、そうやって場内の空気をラフにほぐした後にはジャジーな「スパイラル」や、繊細なアコースティックギターの音とセンラの歌声が響きあった「曖昧劣情Lover」などで、しっかりと“聴かせる”ことを実現していた点もライブとしての緩急が適宜に付けられていたと言えるのではなかろうか。
センラ
センラ
また、このあとにはセンラのお色直しタイムをかねて、『情熱胸毛大陸』(注・日頃から浦島坂田船メンバーに胸毛の件をよくイジられている)と題されたドキュメント的な幕間映像が流される一幕もあり、ここでは音楽活動と並行しながら普段は社会人として営業職をこなしている彼の姿が、ノンフィクション風に描写されていくことになったのだ。(もちろん、お察しの通り中味自体はほぼフィクションで、颯爽と営業車を乗り回しながらパチンコをしたり、カフェに行ったり、ひとカラをしたり、シメで居酒屋に行ったりと、働く場面は一切ナシ(笑))
この映像明けの中盤戦セクションではゲストとして、センラとはかねてから交流があるというギタリスト・ねじ式が登場。少しカジュアルな装いになったセンラとともに、情緒のある「硝子細工の少女」や機微の漂うラブソング「コイビトモダチ」、ドラマティックな「ゲッカビジン」、センラとねじ式の出会いのきっかけになったという楽曲「ダチュラと林檎」と、全4曲で息のあったコラボパフォーマンスを展開してくれたことも、今回のライブの中においてはひとつの目玉であったと言えよう。
ねじ式
一方、ライブ後半にかけては極めてアッパーな「スキスキ絶頂症」で場内から“センラのことがスキスキ絶頂症!”なるコールが湧き起こったり、ダンサブルな「Lamb.」でも大きな盛り上がりをみせた場内だったが、本編が終わっていこうとする終盤では女性目線のバラードでありセンラにとってのオリジナルソング「色恋」や、淡々としたところからスケール感をもって拡がっていく「ジャガーノート」で、彼のボーカリストとしての力量はいよいよ最大発揮されるに至った、と感じる人も多かったのではないかと思う。
「実はですね。僕、ワンマンというのを今回は約5年ぶりにさせていただいているんですよ。本当にありがとうございます。最初のワンマンは、2012年でした。きっとその頃はまだ、センラのセの字も知らなかったという方も多いんじゃないでしょうか……。当時は、キャパシティでいうと100人の会場でやったんですけどね。そこから、翌年の2013年には倍の200人でやらせていただきました。そこから5年経って、今日ここに何人いるか皆さんご存知ですか? そう、約3000人です。5年前と比べたら何倍になっとんねん!という話ですよね(笑)」
アンコールにて、「リップサービス・メンソール」を歌い終えたあとのセンラが、このように話し始めたあと。それに続いたのは、ある意味で彼にとっての核心とも言えることだったような気がしてならない。
センラ
「じゃあ、何故ここまで5年もワンマンをやらなかったのか?というとですね。正直なことを言うと、僕自身がちょっと避けていたところがありまして。結局さっきも映像で観ていただいたとおり(笑)、普段はネクタイを締めて仕事をしていたりしますし、浦島坂田船やXYZでの活動、それぞれのリハーサルもあったりするので、それと同時にワンマンまでやろうとすると「絶対、エグいことになるやん……」っていう予感があって、避けていたんです。もっと言うと、ワンマンとなってひとりで責任を負うのがコワイという気持ちもあったと思います」
グループの一員として歌うこと。たったひとりで、矢面に立ち歌うこと。同じ歌うことであっても、それは演者からすれば大きな違いがあるのは当然なのかもしれない。
「でも。今回は、5年ぶりに「ひとりでやるぞ!」って決めました。だけど、実際にやってみて感じたのは「やっぱり僕は、ひとりではなんも出来んな」ということなんですよ。要は、僕は勝手に自分で「ワンマンをやるなら全部を自分でしなあかん」と思い込んでいたところがあったんですけど、周りのスタッフさんや、バンド陣、そして何よりこうして会場に足を運んでくれている皆さん。その全ての人たちに支えられているんだ、ということに今回はあらためて気付くことが出来たんです。心から、皆さんには感謝しております。また来年以降も、もし機会があればワンマンをやってみたいな、と僕は今回のツアー通して思えるようになりました。本当にありがとうございました!」
センラ
こう挨拶したのち、最後の最後に「Make a pass」を晴れやかな表情で歌いきってみせたセンラの頼もしい姿。それは、ひとりのアーティストとして彼が真の意味で完全に自立を果たしたことを、そのまま意味していたに違いない。センラの描く理想的な“スタイル”は、どうやら今ここにめでたく完成したということのようだ。

文=杉江由紀 撮影=小松陽祐(ODD JOB)

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