「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
ストイックな姿勢を貫き続ける
B'zのヒットを探る

ノンタイアップ・シングル「ZERO」は
ターニング・ポイントだったのでは?

最後に総合では15位だが92年の11作目となるシングル「ZERO」にも触れておきたい。本作は彼らが大ブレイクを果たしてから、初のノンタイアップ・シングルとなった。ビーイング系と言えば、ドラマやアニメ、CMなどのレギュラー的なタイアップを獲得することで、より確度の高いヒットを飛ばすことで有名だが(例えば、TV版『名探偵コナン』のテーマ曲は長らく、ビーイングのアーティストが担当している)、そういった制約から解き放たれた作品にもかかわらず、100万枚を大きく超えているのだ。

しかも、かなりハードなボーカルやサウンド、歌詞も《このまま車ごと君の家につっこもうか》なんて、ワイルドでどこか狂気を帯びているような冒険的。だからこそ、本作の(タイアップではなく楽曲が主体となった)ヒットが翌年以降のより妥協を許さぬ激しいLIVEパフォーマンスを意識した楽曲制作につながっていったのではないだろうか。そう考えると、いっそう大きな意味のある作品にも思える。

B'z / ZERO

ちなみに総合20位にはシングル「ZERO」の2nd Beat(彼らのシングル収録2曲目の呼称)、「恋心」がランクイン。「ZERO」とは対照的にポップなナンバーで、98年と08年のベスト盤発売にあたって収録曲を決めるファン投票では常に上位となるほどで、それゆえ、配信やカラオケ、有線リクエストでも彼らの2nd Beatの中で最高レベルというのも肯ける(Wikipediaでは「ZERO」より有線で人気と書かれているが、92年度、93年度ともに「ZERO」のほうが上位だったことを申し添えておく)

ボーカルの高音域化と
サウンドの高音圧化の先駆者

日本のポップスにおいて80年代までと90年代以降の楽曲を比べると、ボーカルの高音域化とサウンドの高音圧化が決定的に異なるように感じる。それらを最初に大きく変えたのは、B’zだったのではないだろうか。また、ロック系のボーカリストとギタリストでありながら、ポップスのファンをも魅了する歌声や演奏もメガヒットの要因だろう。逆に言えば、近年はジャンルを細分化しすぎた結果、それぞれのパイがスケールダウンしているようにも感じられる。

だからこそ、B’zには今後も幅広いジャンルや幅広い年代の音楽ファンに向けて活動してもらいたい。そして、後続のアーティストにも多くのリスナーを惹きつける凄さを追いかけて欲しいと心から願っている。

プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析や配信サイトでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

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