11月9日にQUEENの映画「ボヘミアン・ラプソディ」が公開され、公開初日から全米1位を獲得するなど話題になっている。今回はこの映画のタイトルにもなっている彼らの代表曲「Bohemian Rhapsody」について掘り下げていこうと思う。

この曲は冒頭から「Mama, I just killed a man(ママ、ちょうど今人を殺してきたんだ)」という歌詞から始まることから、巷では人を殺めた男が母親に懺悔する曲だと言われているが、ギターソロに入る前の「I sometimes wish I’d never been born at all(時々僕なんか生まれてこなきゃ良かったと思う)」という歌詞に注目すると、全く違った歌詞に見えてこないだろうか。私はこの曲は自殺を試みた男の心境を歌った曲だと考える。

自殺というのはどの宗教でも大罪として扱われ、どんな国でも良いこととはされていない。しかしこの男は辛い現実に直面し、自らを「poor boy(哀れな子)」と蔑み、自身のこめかみに銃口を突きつけたのだろう。そのために母親に懺悔し、こんな大罪人の息子のことなど忘れてそのままでいてほしいと、申し訳なさそうに歌っているのだ。そう解釈すると、曲中で何度も繰り返される「Anyway the wind blows(なんにせよ風は吹く)」「doesn’t really matter to me(僕にとっては大したことじゃない)」という歌詞も、重厚さを感じてこないだろうか。きっとこの「風」というのは善し悪しに関わらず起こる出来事のことで、死を選ぼうとしている彼にとってはその辛く苦しめてきた風も、暖かく包んでくれた風も、全てがどうでもいいのだ。悪魔にそそのかされ、自ら死を選び、母親を悲しませてしまった哀れな男には、虚無と喪失しか残っていないのだ。
この曲を作ったフレディ・マーキュリーは、メンバーにさえこの歌詞の意味を明かさなかったと言う。もし上記の考察が正しければ、彼はこの曲を作ったときに大きな苦悩を抱えていたのだろう。だとしたら、スターとして闇の部分を見せたくないと、誰にも意味を明かさなかったのも頷ける。
Rami Malek as the rock icon Freddie Mercury in the upcoming 20th Century Fox/New Regency film “BOHEMIAN RHAPSODY.”


今回公開された映画ではフレディの生き様と苦悩が描かれているという。伝説的ロックスターである彼の苦悩の片鱗がこの映画から読み取れたとき、「Bohemian Rhapsody」の良さを改めて感じることができることだろう。QUEENのファンである人も、そうでない人も、ぜひ映画館へ足を運んでみてはいかがだろうか。

今日の入魂曲Today’s Soul Song

曲名:Bohemian Rhapsody(ボヘミアン・ラプソディ)
アーティスト名:Queen
概要:イギリス・ロンドン出身の男性4人組ロックバンド。

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