LM.Cはなぜアンコールをやらないのか
? mayaとAijiが12年間共有してきた
ライブ観と次期ツアーを語る

約2年ぶりのアルバム『FUTURE SENSATION』を引っさげて全国ツアー『IN FUTURE』を廻り、新しい景色を見せてくれたLM.C。が、アルバムのツアーはこれで終わりというわけではない。2019年3月からは2ndツアー『LM.C TOUR 2019 NEW SENSATION』がスタート。1stツアーで培った経験が未来に向けてブーストするライブになりそうだ。そしてLM.Cのライブといえば当日のmaya(Vo)の気分とひらめきで突然、予定になかった曲が演奏され、場の空気をアゲていくフリースタイルの楽しさ。そしてアンコールは基本なし。本編で全てを出しきるというブレない姿勢も持ち合わせている。なぜLM.Cはアンコールをやらないのか? 素朴な疑問をぶつけて明らかになったのは、mayaとAiji(Gt)が12年間、共有してきたライブ観。そこを踏まえて、次のツアーについて話を聞いた。
――まずは最新アルバム『FUTURE SENSATION』を携えて8月からスタートした全国ツアー 『IN FUTURE』を終えて感じたことを教えてください。
Aiji:アルバムのツアーなので、いつも通り手探りなところから始まって、少しずつ積み重ねていったんですけど、回数を重ねるごとにフロアのムードも含めてどんどん熱量が上がっていった右肩上がりのツアーだったと思いますね。『FUTURE SENSATION』はどんな性質なのかもわからないまま制作したアルバムだったんですけど、結果、ライブをやるとそういうことを考える必要がないぐらいに楽しくなれる曲たちでした。
――実際にステージで演奏して初めてわかることってありますよね?
Aiji:ビートに対してどう反応してくれるのかとか、やってみないとわからないところはありますね。特に今回のアルバムはライブの景色を想像しないで作っていたところもあったんですけど、ライブでやってみたらやっぱりLM.Cっぽくなるなって思いました。
maya:自分たちはロックバンドなので、ライブでこの曲はここの部分で一緒に歌えるとか、こう盛り上がれるとか、それぞれの曲の役割って多少は考えていたんですけど、今回はそういうことをあえて意識しなかったんですね。それだけに“どういうツアーになるのかな”と思っていたんですけど、さすがに12年やっているので、歴史に後押しされて“また曲が今までとは違う育ち方をしたな”と。曲に参加するスタイルというよりも、LM.Cから発信していったものが届いてライブが出来上がっていく感触がありました。演奏力が試される曲たちでもあるので、大変化ではないですけど、その変化がいいなと思えるツアーでした。
LM.C/maya
(ライブの選曲は)野球に例えたらスタメンを選ぶのと感覚は一緒ですね。4番バッターばかりいても試合にならないのでバランスを考える。
――『FUTURE SENSATION』は、ポップなのに聴けば聴くほどメッセージが深いし、多様性のあるアルバムだと思いました。1曲目の「In Future, New Sensation」からしてmayaさんのポエトリーリーディングが新境地ですが、予想外のリアクションはありましたか?
maya:リアクションも特に想定していなかったので素直に受け入れてましたね。「In Future, New Sensation」をSEに使いつつ、曲にスライドしていく手法で始まったんですけど、これまでは登場する曲とライブの1曲目は切り離して考えていたので、クロスフェードしていく感じが新しいなって。みんな盛り上がっていましたね。
Aiji:ライブを想定していなかった分、成り行きに任せて楽しむ感覚がありました。変に頭でっかちにならずに純粋に音に向かっていって、そこで生まれるものが今のLM.Cなんだろうなと思っていたので。4つ打ちの曲は無条件に盛り上がるんですけど、そこもやんわり向き合っていったというか。
――それとLM.Cってライブ中に“この曲やろう”とか、セットリストがよく変わりますよね。今回のツアーではmayaさんの思いつきに対応する新しいアイテムが導入されたそうですが。
maya:ファイナルの渋谷O-EASTで導入されました。香港でも使って。
Aiji:ボーカルのマイクとは違う回線を使ってメンバーやスタッフのイヤモニにmayaの声が届くようにしたんです。天の声みたいな感じで(笑)。
maya:よく言えばね。
Aiji:これまではmayaがマニュピレーターに指示を出していたので、俺らは次が何の曲なのかわからないこともあったんですよ。
maya:曲によってはメンバーにも伝えるんですけど、まぁ、伝えなくても大丈夫だろうっていうのもあって。
Aiji:マニュピレーターが出すシーケンスを聞けば、何の曲をやるかわかるだろうって思ってるんです。めちゃくちゃな野郎ですよ(笑)。
maya:イントロドンです(笑)。
Aiji:俺はまだいいけど、サポートメンバーからしたらね。
――心臓バクバクしちゃいますよね。メンバーの提案で改善されたんですか?
Aiji:いや、スタッフからですね。
maya:見かねて(笑)。ライブの爆音の中で伝えるから、マニュピレーターも聞き取れなくて間違えることがあるんですよ。今後もやっていくかはわからないですけどね。
Aiji:便利だけど、逆にやばいですよ。
――よりセットリストが変わる可能性があるからですか?
Aiji:それもあるけど、枠組みも大事じゃないですか? とっぱらわれちゃうと暴走する可能性がありますからね。
maya:(笑)。
Aiji:この前も、お客さんに向かって言えばいいのにメンバー用のマイクで「楽しい!」って言ってましたからね(笑)。まぁ、自分たちの曲なのである程度はどんな曲が来ても対応しますけどね。mayaが気持ちよくなっていけば、ライブもよりいい方向にいくと思っているので。
――そのアドリブ感もLM.Cのライブの楽しみの一つですからね。
maya:この前、サポートメンバーと話していて「ほかのバンドでもあるでしょ?」って聞いたら「ないです」って言われて。
Aiji:ないでしょうね(笑)。
maya:バンドだったらあるんですかね?
Aiji:会場の規模にもよるんじゃない? ホールでPAや照明の人たちのことを考えるとイレギュラーなことはないほうがいいでしょ。MCのタイミングを決めてるアーティストがほとんどだし、そういった意味ではLM.Cはだいぶフリーですね。
――年々フリーになっていっている気がします。
maya:確かに。ただ、ライブって人のテンションや天気、曜日とか、大きく言ったら世界情勢でも変わっていくと思うんですよ。決められたセットリストで演奏する良さもあると思うんですけど、“今日、この曲のほうがいいかも!”ってひらめいちゃうとね。あとアンコールがないっていうのも関係してるかも。本編が終わって“今日、アンコールでこの曲やろうか”って調整することがないですからね。
――なるほど。それはあるかもしれないですね。
maya:ご了承願いたいです(笑)。
――LM.Cはアンコールをやらないスタイルをずっと貫いていますが、それはなぜなんですか?
Aiji:予定調和な感じがイヤですよね。
maya:LM.Cには似合わないですね。
――そこは2人とも一致しているんですね。
Aiji:昔から、アンコールがあるのがわかってて、本編でやりきらないムードがあるのは好きじゃなくて。LM.Cを始めるときには、アンコールはやらないって二人で話してましたね。
maya:20才ぐらいからLM.Cを始めてたらやってたと思うので、そこはラッキーですね。2人ともどこかアンコールに違和感を感じてたので。
Aiji:LM.Cを始めた頃はお客さんも“やらないんだ?”と思ってたかもしれないですけど、つねに本気でお互いやりきるので、それが正しい姿だと思うんですよ。
――とは言え、2人ともめっちゃテンションが上がってもう少しやりたいなと思ったら、アンコールに出てくる可能性もゼロではないですか?
Aiji:基本やらないと思います。12年やってきて2回ぐらいしかやったことないから。やったら奇跡みたいなものなので(笑)。
maya:しかもアンコールに出たのって、探り探りやってた初期の頃ですからね。
――じゃあ、よっぽどじゃないとないですね。
maya:必要がないですから。例えば“今日はもっとステキなライブになるんじゃないかな”と思ったら、本編で良くしていくので。そのために本番で曲を変えたり、追加したりするんです。その場で調整して何とかねじ込んでいくというか。絶対、最後は楽しく終わりたいので。
――観にきた人たちにハッピーになって帰ってほしいから?
maya:そうです。少なくとも自分はそういう気持ちでライブを終える。だから、ある意味、必死なんです。
LM.C/Aiji
ライブの中で未来のLM.Cのキラーチューンを育てていけたらと。ファンの人に曲を大事にしてもらうのと同時に、自分たちも大事にしていきたいですね。
――2019年の3月からは引き続きアルバムを携えたツアー『LM.C TOUR 2019 NEW SENSATION』が始まりますが、これは続編なんですか?
Aiji:アルバムの2ndツアー的な意味合いですね。前回のアルバム『VEDA』でも2回に分けてツアーをやったんですけど、今は音源を立て続けに出す時代でもないと思っているので1枚のアルバムを大事に育てていきたいなと。飽きるまで何回も演奏して初めて完成するものもあるでしょうし、せっかく届けられたんだから楽曲を無駄にしたくないというか、ライブの中で未来のLM.Cにとってのキラーチューンを育てていけたらと思っているんです。アルバムの楽曲たちがファンのみんなの生活に寄り添っていく中、アルバムツアーで1回観て、それで終わってしまうのではなく、ライブの思い出や記憶に浸りながらまたアルバムを聴いてもらって、そこで更にもう一度観てもらえたら、絶対に印象も違うと思うんですよね。歌詞が日常の中でシンクロしたり、沁みることもあるでしょうし、ファンの人に曲を大事にしてもらうのと同時に、自分たちも大事にしていきたいですね。
――内容について現時点で予告できることはありますか?
maya:『IN FUTURE』のツアーではアルバムを全曲やったんですけど、次はもっと先に行くというか。いろんな曲を混ぜていくと思います。
――前のツアーの感触や手応えで曲を選んでいくんですか?
maya:そうですね。経験だったり記憶をもとに。野球に例えたらスタメンを選ぶのと感覚は一緒ですね。4番バッターばかりいても試合にならないのでバランスを考える。ただ、アルバムの曲は全曲できるように。毎日、全曲というわけにはいかないかもしれないけれど。
Aiji:やるかもしれないけどね(笑)。
――最後に、LM.Cが今感じているライブの醍醐味とは?
maya:自分に関してはもともとはギタリストで12年前に初めて歌ったところからスタートしているんですよ。それまでボーカリストに憧れを抱いたことがなかったので、最初はイメージできなかったんです。好きな人がいたら模倣からだんだんオリジナルなスタイルになっていくんでしょうけど、いなかったからいい面を挙げればクセがないんですよ。意識したのは自分で歌詞を書いているから言葉が聞きとりやすいほうがいいよなって。歌っていく内に滑舌がいいと日本語はリズムやピッチがとりづらいということに気づいたり、試行錯誤を経ているから、まだまだ技術的にも向上できるし、さらに理想に近づいていけるなって。経験を積んでいることにあぐらをかかないで歌ってきたので“もっとこう歌えばいいんじゃないか”とか“もっと輝けるんじゃないか”ってまだ思っていますね。
Aiji:そういった意味ではライブ運びも含めてだいぶ完成されてきましたね。mayaみたいなキャラやスタイルのシンガーは、自分の知る中では他にいないですよね。
――さっき話していたようにライブでも言葉がちゃんと伝わってきますからね。
maya:最近、イベントに呼ばれる機会が増えて、それぞれのスタイルがあるから面白いなと思っているんですけど、自分の声は好きですね。抜けがいいのかな。
Aiji:昔ボーカルを探してたとき、結局、声の抜けも声質もいいから“mayaが歌ったほうがいいんじゃない?”ってことになったんだしね(笑)。mayaはフツーに曲順変えちゃったりしますけど、その日、その瞬間にしかないものをキャッチしているからフロアとの相乗効果で熱が上がっていくというかね。そこが魅力なんじゃないですかね。
――まさに生感満載のライブ。次のツアーは見ておいたほうがいいですね。
Aiji:そうですね。いろんなライブに行っている人ほどLM.Cを見たら新鮮に感じると思うので、興味が湧いたらぜひ遊びに来てほしいですね。
取材・文=山本弘子

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