ドラマチックアラスカが悩みもがきあ
がき辿り着いた場所とは ーーヒジカ
タナオトが語る

今年の『RUSH BALL』で観たドラマチックアラスカは、今までの彼らとは全然違った。まぁ、そん時の様子はライブレポート(https://spice.eplus.jp/articles/204926)を読んでもらうとして、キャリア初のフルアルバム『最後のフロンティア』について、たっぷりと聞こうと思ったが、やはり、どうしても『RUSH BALL』からの話になってしまった。デビュー5年の若いバンドとしては順風満帆に見えたが、実は同世代の売れていくバンドと比較して悩みもがきあがいていたという話をひたすら聞いている。全ての膿を出し切り、その先に今の抜けた状況があるからこそ聞けた内容だが、今現在ここまで悩みもがきあがくバンドもいない。何だかんだ、カッコよさや面白さで上手にコーティングするバンドが多い中、ボーカルのヒジカタナオトは、ただただ悩みもがきあがいている。そのストイックな姿は最早美しく感じたし、人は皆悩みもがきあがくものだからこそ、聴く側も、その感情を共感共有しやすいと思った。本人からしたら大変な事ではあるが、この道を突き進めば、どの若手バンドも辿り着けてない場所に辿り着ける……、そう勝手に信じている。とにかく、インタビューで全てさらけ出して喋ってもらったので、是非とも読んで頂きたい。
ドラマチックアラスカ 撮影=森好弘
――今年の『RUSH BALL』に出演された時、MCでデビューして5年の苦悩を包み隠さず話しましたよね。去年、『RUSH BALL』に出れなかった悔しさや、同世代がどんどん大きいハコでやる悔しさとか、全てを話されましたよね。今日は、まず、その事から、お話したいなと。凄く印象に残ってるんです。
あのMCで言いたい事は全部言ったつもりなんですけど、デビューから5年も続けていると羽ばたいていった仲間もいるんです。SNSを観ているとZeppツアー、アリーナツアーとか書いてあって、凄く落ち込んだりして……。その上での決意表明を、あの時は話しましたね。でも、そこからも心境の変化があったんです。上とか横を見て、落ち込んでいましたけど、よく考えると、未だにチケットノルマを払ってる友達や、結果出ずにバンド内が仲悪くなった友達もいたりして……。めちゃくちゃ売れてるのって一部なんですよね。もちろん上を観ないといけないですけど、こうやってCDを出せて、こうやってインタビューをしてもらえるのは有り難い事だなって。
――完全に、あの悩みもがきあがきの時期を抜けた感じですね。
メンバーチェンジもあったりして、みんなの反応も悪くなったり、露骨にフェスに出れない状況に陥ったりして、何か周りから現況を突きつけられて、腐りかけていたんです。でも、『RUSH BALL』もあったりして、今年は、その感情を回収できましたね。
――そう考えると、この5年って駆け抜けた感じですよね。
18歳で組んだんですが、受験勉強で活動休止もありましたし、大学行きながらバンドをやってましたが、記憶ない時期もありますね。熱を持って話せるような時期は、ここ2年くらいだけかも知れないです。昼間大学で、夜バンド練習して、家に帰って、曲作りをして、週末はライブで夜走りして、週明け寝ずに大学行ってましたから。忙しくて今どこにいるのかわからない時もありましたが、今は余裕を持って健康的にいられてますね。大学も浪人して入ったりしたんですが、今思うと、普通の大学生では経験できない事を経験できましたし、大学とバンドという両方の世界を見れたなと。この春、やっと大学も卒業できました。ロシア語を専攻していたのですが、まぁ、バンドには活かされてませんけど(笑)。でも、あの生活で大学を卒業できたのは自信になりましたね。当時は楽しもうとは思ってましたが、やり甲斐を感じるまでは辿り着いてなかったですが、どっちの生活も俯瞰で観れていましたね。実際、ここまでバンドを出来るとも思ってませんでしたから。
――そんなにバンドへの欲は、最初は無かったのですね?
そうですね。高校の時は文化祭に出たくて、でも先輩の権力も強くて(笑)、1年に1回しか立てるか立てないかというのが、もどかしかったですね。で、ライブハウスへ出ようと思うのですが、コピーバンドじゃ無理らしいという事を知ったりして、じゃあ、曲を作るかと。でも、ライブをするにもお金いったりして、そんな中で19歳の時に今の事務所から声を掛けてもらって。それも大学受験まで待ってくれたんですよ。
ドラマチックアラスカ 撮影=森好弘
――大学卒業もひとつのタイミングですが、『RUSH BALL』しかり、今回のフルアルバムしかり、ずっとバンドは続いていくんだなというのは感じました。
正直メンバーチェンジを経験するまでは卒業したらわからないなと思っていたんです。でも、リードギターは東京から関西にわざわざ引っ越して来ましたし、2人のメンバーの人生を巻き込んだという自覚があって、バンドは辞めれないなと思いました。卒業時期の大学の友達との飲み会はしんどかったりもしましたけど、ノート貸してくれたり色々してくれて、本当に感謝してますね。
――満を持してのフルアルバムですよね。
ずっとミニアルバムを刻んできて、今かなと。昔の曲も今のメンバーで演奏し直して入れているのですが、この5年の歴史を味わってもらえるのかなと。
――昔の曲を入れてるのは、凄く良いなと思いました。昔の曲を今、聴き返す恥ずかしさもありますよね?
むちゃくちゃ聴くのは恥ずかしいですね(笑)。でも、荒削りの良さはあったし、恥ずかしさは抜けないですけど、何の知識も無いからこそ思いつくコードやフレーズもありました。
ドラマチックアラスカ 撮影=森好弘
――たった5年とも言えますけど、されど5年でもありますよね。
僕らはまだまだと思ってますけど、周りに気を遣われる事も出てきましたから。さっき、お話しましたが、上と横にいるバンドたちにへこんでましたけど、下にいるバンドもいて、僕らはちょうど良い立ち位置なんじゃないかなと。まだまだ人の事を言える立場じゃないですけど、よく考えたら色々な立ち位置のバンドの橋渡しを出来るんじゃないかなと。だから、関西で積極的に動けたらと思いました。
――悔しさをしっかりと原動力に出来ていますよね。
そうですね。元々も学生時代、運動部の「イエーイ!」というノリに馴染めなくて、ひとりi-podで音楽を聴きながら、ひとりでお弁当を食べていた悔しさが原動力なので。でも、ずっとずっと悔しいと言っていても、どっかで敵がいなくなる瞬間もあると思うし、その時は自分に対して悔しさを持って、それをエネルギーに変えたりして、ずっと何かと戦える様にしていたいなと思ってます。
――まさしく、それを『RUSH BALL』の時に感じましたね。まぁ、極論、言わなくてもいい事だし、見せなくてもいい姿でもあったわけじゃないですか。
人前に立つ人は言っちゃいけない事もあると思うし、かっこよくいないといけないと思うんですけど、今はSNSでも色々な事を言える状況に変わってきましたから。
――もちろんSNSでも言えるのですが、最終はライブ現場で全てを言ったというのが、僕は凄く良いなと思ったんです。
吐き出せなくて黙って、「もう無理!」となって解散したりするバンドもいますが、僕は続ける事に美学を感じていて。弱音を吐かない方が良いとは思うんですが、這いつくばってでも続けた方が良いんじゃないかなと。正直、『RUSH BALL』も最初は、ああいうMCをしない方が良いというスタッフの意見もあったのですが、結果的には良い方向に転がれましたね。
ドラマチックアラスカ 撮影=森好弘
――僕は『RUSH BALL』でライブレポを担当して、その時にも書いたのですが、順風満帆と思ってた人もいるわけじゃないですか。その中で、実は、しんどかったと打ち明ける勇気がいいなって。
周りからは「順調だね」と、その時々の状況を言われても、こっちからしたら、「ツアーに出たら、そんなにだぜ……」という気持ちがありましたから……。そのギャップがしんどくて……。でも『RUSH BALL』で全てを言えた事で、変なプライドが無くなりました。
――だから、全てを膿を出しきった感じですよね。
作品が完成する度に、ここからが新しいスタートとは言っているんですが、今回は、より新天地感を出せたなと思いましたね。
――アルバムのジャケットに、その新天地感と言いますか、新しい旅に出る感は凄く出ていますよね。
そこは、どんな荷物の中身を並べるかとか、デザイナーさんと話し合いましたし、それが伝わって良かったです。
ドラマチックアラスカ 撮影=森好弘
――『最後のフロンティア』というアルバムタイトルも、やっぱり最初に聴いた時は色々思うじゃないですか。
最初、ファンの人もドキッとしたみたいですね。「最後」というタイトルに不安がられました。もちろん、聴いてもらえたら、わかってもらえるのですが。それと『最後のフロンティア』ってアラスカ州の別名だったりするんです。最後の州としてアメリカに入っているのですが、いつか節目でタイトルに使いたいなと考えてましたね。で、今回は今までのベストアルバム的な仕上がりになったので、このカードを切ろうと! 後から知ったんですけど、アラスカって昔はロシア領だったりしたので、色んなロシアの名残もあるんです。バンドのロゴになってるセイウチもロシア語だったりして。全く響きだけ付けたバンド名だし、ロゴも、その頃、動物のロゴのバンドが流行っていたので何となく付けたんですけど、今となって紐づけられたというか、繋がりましたね(笑)。
――かっこつけないで、そのまま悩みもがきあがきを曝け出した事で、今があるわけですし、悩みもがきあがきは、このバンドの凄い武器になるなと思いましたね、改めて。
僕も本当はかっこつけていたいんですけど、根っこはそうじゃなかったんですよね(笑)。まぁ、でも、ずっと本音でやってきたなとは思いますね。せっかく言いたい事があってバンドを始めたわけですから、周りの売れてる人を観て、言わなくても良い事を言っちゃうというのも、別にいいのかなって。今、時代は変わり始めていて、かっこいいバンドだけがかっこいいんじゃなくて、本当の事を言ってるバンドもかっこいいと思われる様になってきたのかなって思いますね。
ドラマチックアラスカ 撮影=森好弘
取材・文=鈴木淳史 撮影=森好弘

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