【ライブレポート】シンセイナム、初
のツアーで真のバンドへと進化

ドラゴンフォースのフレデリク・ルクレール、そして元スリップノットのジョーイ・ジョーディソンらが集まった、スーパースター・デス・メタル・バンド、シンセイナム。そんな彼らが初のツアーを敢行。たった一夜ながら、ここ日本にもやってきた。場所は東京・渋谷のクラブクアトロ。モービッド・エンジェルにデスと、フレデリクの趣味前回のBGMが期待感を煽る。そして予定時間の20時ジャスト、場内が暗転。ドラムセットにジョーイ・ジョーディソンが現れると、ほぼ悲鳴のような歓声があがる。さらに煽るジョーイ。スーパー・ドラマー久々の日本降臨に、興奮を抑えきれないのも無理はない。

オープニングは、今年リリースになったセカンド・アルバム『リパルション・フォー・ヒューマニティ』のタイトル曲。ギターを弾きまくるフレデリク。デス・メタルを演奏するフレデリク。すべてが新鮮だ。ここまでコテコテのデス・メタルを演奏するジョーイを見るのも初めてだ。それにしても凄まじいブラスト!当然、場内も一気にヒートアップ。
続いても、ニュー・アルバムから「セイクレッド・マーター」。スティックで逆十字を作ってみせるジョーイ。それにしても強烈すぎるタム回し。これこそジョーイ・ジョーディソンにしかできないドラミングだ。フランスのヴェテラン・デス・メタル・バンド、ラウドブラストのギタリスト、ステファン・ビュリエとともに、フレデリクも見事なギター・ソロを披露。「次の曲は、殺人と死についてだ」というMCとともに披露されたのは「スプレンダー・アンド・アゴニー」。2016年のデビュー・アルバム『エコーズ・オブ・ザ・トーチャード』の収録、スローパートが実に不気味な曲だ。「連続殺人鬼について」と紹介されたのは、ニュー・アルバム収録の「アイ・スタンド・アローン」。それにしても、殺人、死、連続殺人鬼って。あまりに不穏すぎてフレデリクがドラゴンフォースのメンバーであることを忘れてしまいそうだ。
続いては、デビュー作から高速ナンバー「コンデムド・トゥ・サファー」。「緩急つけたステージ構成になっている」というフレデリクの言葉どおり、起伏のあるセットだ。フレデリクもコワモテを装うが、やはり人の好さを隠しきれない気も。続く「ゴッズ・オブ・ヘル」は「地獄、サタン、死についてのヘヴィ・シット!」(Hell、Satan、Hellって、エクストリーム・メタルの三種の神器だ)。疲れを知らないジョーイのドラミングが素晴らしい。続くデビュー作のタイトル曲「エコーズ・オブ・ザ・トーチャード」では、フレデリクがウォール・オブ・デスを支持。このイーヴルな1990年代デス・メタルのお手本のような曲で、テンションが上がらないデス・メタル・ファンなんているはずもない。ライトハンドも駆使したフレッドによる美しいギター・ソロが見事なコントラストを描き出す。ビデオにもなった「ファイナル・リゾルヴ」では、オーディエンスも大合唱。パーカッショニストも登場し、さらなる盛り上がりを見せる。ちなみにパーカッションを担当したのは、ジョーイのドラム・テックだ。

それにしても、ステージ上に設置された4機のスモークマシンの効果が素晴らしい(スモークを漂わせるのではなく、真上に勢いよく噴き出すタイプのものだ)。決して派手な舞台装置は使わないというのが、1990年代のオールドスクール・デス・メタルの精神を継承するシンセイナムのポリシーのひとつ。そんな中、唯一フレデリクがこだわりを見せたのが、スモークマシンの設置。確かにこれ、派手にはなりすぎず、一方で興奮を煽る効果は大きいという、シンセイナムの世界観にはぴったりの演出である。
続く「インヴァーテッド・クロス」では再びブラスト全開!クラウドサーフも頻繁になっていく。続いては、数か月前にミュージック・ヴィデオとして発表された「Hooch」。メルヴィンズのカヴァーだ。メルヴィンズも、ドヘヴィなバンドとして名を馳せているが、シンセイナムのヴァージョンも負けてはいない!そしてスラッシーなナンバー、「アッシュズ」。「愛するものをすべて焼き払い、灰の中から立ち上がれ!」というメッセージを持つこの曲は、昨年リリースされたEPのタイトル曲。そしてデビュー作から「アーミー・オブ・ケイオス」。サビで大合唱するために作られたようなこの楽曲に、オーディエンスの盛り上がりは最高潮に。

まさに大団円にふさわしい、と思わせておいて、これでは終わらない。一旦メンバーがバックステージへと下がり、アンコールとして演奏されたのは、何と「マイ・スワン・ソング」。『リパルション・フォー・ヒューマニティ』に収録されたこの曲は、おそらくシンセイナムの楽曲の中で、もっともブラック・メタル然としたものだろう。ダークスローンを意識したというシンプルなリフ、そして8分を超えるという長さ。これをライヴの締めに持って来るとは。フレデリクによれば「そりゃアーミー・オブ・ケイオスが一番盛り上がるかもしれないけど、それじゃありきたりだろ?それよりも、『マイ・スワン・ソング』みたいなダークな曲で締める方が、シンセイナムのライヴにはふさわしいと思うんだ」とのこと。なるほど。実際「マイ・スワン・ソング」プレイ後のオーディエンスの熱狂は凄まじく、歓声はいつまでも鳴りやまぬほどであった。
今回残念ながら、アッティラ・チハーは欠席となったが、シンセイナムは、アッティラの不在を一切感じさせない、素晴らしいステージを見せてくれた。終演後、彼らのツアー・マネージャーも「今日がツアーで最高の出来だった」と言っていたが、やはりステージを重ねたことで、シンセイナムはスーパースターが集まったプロジェクトから、真のバンドへと進化したということだろう。
文: 川嶋未来
写真:Takumi Nakajima

<SINSAENUM LIVE IN JAPAN 2018@201
8年11月6日(火)渋谷クラブクアトロ>

1.Repulsion For Humanity
2.Sacred Martyr
3.Splendor & Agony
4.I Stand Alone
5.Condemned To Suffer
6.Gods Of Hell
7.Echoes Of The Tortured
8.Final Resolve
9.Inverted Cross
10.Hooch
11.Ashes
12.Army Of Chaos
13.My Swan Song

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