BUZZ THE BEARS 自分たちらしく、あ
るがままの姿で突き抜けたリリースツ
アーファイナル公演

「THE GREAT ORDINARY TIMES」RELEASE TOUR “NOT ORDINARY TIMES”

2018.11.17 渋谷TSUTAYA O-WEST
BUZZ THE BEARSが今年5月にリリースした3rdフルアルバム『THE GREAT ORDINARY TIMES』は、傑作と言える出来だった。自分たちが通過したルーツ音楽=メロディック・パンクに回帰し、当時感じた衝撃、興奮、感動を再び思い出して制作に臨んだようだ。改めて彼らが影響を受けたバンドを上げると、Hi-STANDARDを筆頭に、同郷・大阪のGOOD4NOTHINGlocofrank、またMONGOL800などの日本語パンクも入っている。ゆえにBUZZ THE BEARSは英語と日本語の両刀を使いこなし、それがまた独自のサウンドを形成することにも繋がった。ただし、新作は疾走感溢れるパンクを意識したにもかかわらず、結果的にバラエティに富む曲調が揃っている。これまで様々な楽曲にトライした経験値の上に初期衝動がプラスされたことで、バンド内にいいケミストリーが生まれ、より強固なオリジナリティが芽生える形となったのだ。
BUZZ THE BEARS
その新作を引っ提げたレコ発ファイナルは渋谷TSUTAYA O-WEST 2デイズで開催され、最終日にあたるワンマン公演に足を運んだ。会場に入ると、既にフロアは満杯に膨れ上がった状態で、そこに越智健太(Vo/G)、池田大介(B/Cho)、桑原智(Dr/Vo)のメンバー3人が登場。怒濤の2ビートで攻める「CRAZY MISSION」で幕を開けると、「クライマー」、「ピエロ」でさらにエンジンを加速させ、ブンブンうねるベース・ラインが印象的なダンサブルな「ロメオとジュリエット」とスムーズに繋ぎ、フロアはモッシュにダイブにと序盤から凄まじい熱気が渦巻く。
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「スーパースター」を挟み、次は「鳴りやまぬ歌」を披露。しっとりした歌メロから一気に速度を上げ、エモーショナルなメロディを解き放つ曲調はライブでも抜群の威力を発揮。ファンの間でも人気の高い楽曲ということもあり、熱く歌い上げる観客の姿も目に入ってきた。それからチョーキングで狼の鳴き声を表現したファスト・チューン「WOLF MAN」、新作の中でも個人的に大好きな曲「ふぇすてぃばるまん」の2連打も文句なしの素晴らしさ。特に後者はサンバ的なノリを我流に消化したナンバーであり、奔放かつ遊び心に溢れた音色に観客も笑顔で暴れ回る。メンバー3人の人間味に溢れたお祭り感溢れるサウンドは、以前の彼らからは出てこなかったものと言っていい。変にかっこつけずに、音楽の楽しさをひたすら追い求めたパーティー・アンセムを聴きながら、一皮も二皮も剥けた音像に心の底から興奮した。
そんな陽性に振り切った演奏を奏でる一方で、聴く者の懐深くに沁み込む歌メロでも聴かせてくれる。「このツアー中にウチの爺ちゃんが旅立ちまして……4日前にサトシの婆ちゃんも旅立って、今日はこの曲を歌いたいなあと」と越智が前置きすると、「白銀」をプレイ。裏声を駆使した繊細なボーカル、大切な人への思いを綴った歌詞がストレートに響き渡り、思わず涙腺が緩むほどグッと来た。
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中盤にはスタッフに対して感謝の言葉を綴る場面もあり、後半は「FAR AWAY」、「羽根」などを織り込んだ後に、越智が熱く語りかける場面があった。「迷っている奴がおったら、そのままでええやろって教えてやろうと。それでこの歌を作りました!」と力強く言うと、「FOREVER ONE」を披露。歌始まりから2ビートにギアチェンジする曲展開は構造的に「鳴りやまぬ歌」と近いものがあるけれど、完全に振り切れたエモーションの濃度は過去最高と言えるものだった。
以前、取材した際にこの曲について、「ほかのバンドがよく見えたり、憧れることもあるけど、逆に言えば自分たちにしかないものがあるから、堂々としてええのかなって。そういう気持ちでやっていけたらいいし、そう思えるようになったらいい」と越智が解説してくれたことがある。まさに自分たち"らしさ"を全肯定し、あるがままの姿で突き抜けた歌と演奏に感動した。外に目をやるのではなく、バンドの内側にあるものを最大限に表現しきる。その覚悟にも似た気迫に圧倒されてしまった。
BUZZ THE BEARS
アンコール曲「ひまわり」、「あなたへ」を含む全28曲約2時間に及ぶライブを観て、BUZZ THE BEARSの今後がさらに楽しみになってきた。時に気持ちを高ぶらせてくれて、時にそばに寄り添ってくれて、時に一緒に泣いてくれるような、唯一無二のパンク・バンドへと成長を遂げている彼ら。今日の渋谷TSUTAYA O-WESTには、間違いなくBUZZ THE BEARSだけにしか作れない空間が確かにあった。

文=荒金良介 撮影=タマイシンゴ
BUZZ THE BEARS

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