クラウド・ルーの即完した1年半ぶり
来日ワンマン 公式レポート到着

クラウド・ルー「春季世界巡迴 TOKYO

Crowd Lu 2018 Spring World Tour 2018.11.16 マイナビBLITZ赤坂
台湾で国民的人気の個性派シンガーソングライター、クラウド・ルー(盧廣仲)が、11月16日に東京・マイナビBLITZ赤坂にて、自身のワールドツアー『春季世界巡迴』の日本公演となる単独ライブを行なった。今年は『一青窈謝音会』、『Taiwan Beats』、『Summer Sonic』、『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』、『京都音楽博覧会』と、日本のフェスにも積極的に参加したクラウド。日本でのワンマンライブとしては約1年半ぶりとなり、チケットは早々にソールドアウト。待ちに待った1000人のファンが国内外から駆けつけた。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
ステージにドラムス、ベース、キーボード、トランペットの4人編成のバンドメンバーがスタンバイすると、観客の大歓声に迎えられて、クラウド・ルーがエレキギターをかき鳴らしながら登場。バスドラが響き、速弾きも披露した彼のエネルギッシュなギタープレイから始まったその曲は、原曲の軽快なポップスが壮大なパワーポップ的に生まれ変わった「早安,晨之美(おはよう、美しい朝)」だった。アコースティックギターに持ち替えて「愛情習作(愛情宿題)」と、素朴さのある原曲がジャズに彩られた「無敵鐵金鋼(マジンガーZ)」を続けて歌い、意表をついたアレンジでさっそく観客の胸を熱くさせるとともに彼が生み出すメロディの美しさが浮き彫りになり、一気にクラウドの音楽世界へ引き込ませた。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
「こんばんは。クラウド・ルーです。お久しぶりです。僕のスプリングツアーに来てくれてありがとう。皆さんの心が春風のようにいつも穏やかでいられますように」と挨拶したクラウド。日本語のMCは用意してきた大きなカンペを手に一生懸命話し、中国語でも話された。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
キーボードやアコギのシンプルなサウンドをベースにした「聽見了嗎?(聞こえたか?)」「你是我的水(君は私の水)」で、クラウドの清らかな歌声と歌の表現力の豊かさが際立ち、歌うように奏でるギターもまた心地いい。また、彼が18歳のときに中古で買っていまも大切にしているフォークギターを抱えてイスに腰掛け、「只有夜來香 (夜来香だけ)」を歌い始めると、次第に足をクルクル回したりひざを伸ばしたりと、無意識に足を動かすのも彼の特徴のひとつ。続けて、台湾のエミー賞にあたる金鐘奨で新人男優賞と主演男優賞を見事獲得した主演ドラマ『お花畑から来た少年』(Netflixにて日本語字幕版配信中)の主題歌であり、台湾のグラミー賞・金曲奨でシングル曲賞、作曲賞をダブル受賞した名曲「魚仔(さかな)」をしっとりと歌い上げて、会場が感動に包まれる。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
雰囲気は一転し、エレキギターに替えてアップテンポなロック「口水流下來 (よだれ)」では、歌と同じくテンションの高いギター演奏や、ヒップポップ風な展開もあり、クラウド本人も観客もノリノリに。そうかと思うと、次の「一百種生活(100種の生活)」はほのぼのとした空気を醸しだす。今回の来日直前に15日間で9公演の、自身初となる北米ツアーを大成功させたクラウドだが、「まだ時差ボケで眠い」などとつぶやいて会場を和ませた。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
真っ暗なステージの上からクラウド一人だけに照らされるピンスポットの下で、アコースティックギター1本で静かに聴かせた、「大人になりきれない大人たちへ捧げる」とした「大人中(大人になるところ)」と、ドラマ『お花畑から来た少年』の挿入歌「明仔載(あした)」のギター弾き語りが素晴らしく、まるでクラウドと観客の一人一人が1対1になったかのように、会場にいる1000人の心をつかんで離さない。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
続く「慢靈魂(スロウ・ソウル)」は、メロディアスなベースラインと夕日が似合いそうなロマンチックなトランペットが効いた美しいジャズにアレンジ。カンペを手に「幸せな日があれば、幸せじゃない日もある。それに気付くのは2日くらいかかる。3日目には僕たちが(それと)向き合えるよう知恵が身に付いたらいいですね」と日本語を読む姿は微笑ましくも、彼らしい哲学的なメッセージを伝えて、「就像白癡一樣(なんか、バカみたいに)」を爽やかに歌った。そして、迫力のドラムソロタイムの熱気はそのままに、クラウドの弾むような軽快なギターで始まる「梅西好朋友(メルシー)」では、ラップでバンドメンバーを紹介。『我愛你(愛してる)』でのコール&レスポンスは、誰もついていけない彼の高い声域まで達して盛り上がった。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
アコギからエレキギターに替える間、この日、何度も言っていた、ささやくように言う「アリガト」をまた言うと、観客からクラウドへの「ありがとう!」の声も会場に飛び交った。すると「ありがとう」や「謝謝大家(皆さんありがとう)」の音調をギターで弾いて器用に返していくクラウド。そんななか、突然訪れたクライマックスの「OH YEAH!!!」は、よりドラマチックなロックにアレンジ。途中、クラウドの自由なラップに観客が「OH YEAH!!!」と応えたり、一瞬ギターと鍵盤ハーモニカのもったいないくらいかっこいい即興を見せたり、カズーを使ったりして、楽しさをふんだんに盛り込んで最高に盛り上げたクラウド。曲が終わると即座に「アンコゥ! アンコゥ!」と短く連呼される台湾式のアンコールと大拍手が会場に響きわたった。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
Tシャツ姿で再登場したクラウドは、主演ドラマの大ヒットにつき映画化された『花甲大人轉男孩(原題)』の主題歌でもある「幾分之幾(僕の一部だったあなた)」を熱唱。ハンドマイクを握りしめ片手を広げて歌うというギターを持たない姿がもはや新鮮で、せつなく優しいメロディと深みのある力強い伸びやかな歌声で感動を誘った。そして、「毎日が春の日のようでありますように」「今夜もいい夢を」と願いを込めて、最後を飾ったのは「藍寶(レインボー)」。アコギを片手にイスに腰掛けて穏やかに歌うクラウドが、まるで雨上がりの晴れわたった青空にかかる美しい虹を見せてくれたような清々しさをもたらすラストとなった。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
大歓声に包まれるなか、肩を組んでステージに並ぶメンバー全員に盛大な拍手が送られ、みんなで記念撮影をして、去り際には小さく“おやすみ”のポーズを見せたクラウド。こうしてライブの幕が降ろされたが、余韻に浸る台湾のファンたちがBGMとして場内に流れる「幾分之幾」「魚仔」を大合唱し、その姿に拍手を送る会場の人々。こんなささやかな温かい光景があるのも、彼のライブならではかもしれない。進化というより成熟していくクラウドの多彩で非凡な音楽を詰め込み、歌とギターに圧倒されたあっという間の約2時間。見る人すべてを幸せな気持ちにする最高のライブだった。
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
この翌々日にビルボードライブ東京の公演でツアーファイナルを迎えたクラウド。来年4月に台湾の台北アリーナで3日間開催される単独ライブのチケットは発売開始後、瞬時に完売した。ますます大きく羽ばたいていくクラウド・ルーの日本公演をまたぜひとも実現してほしい。

取材・文=小俣悦子 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)
クラウド・ルー 撮影=Viola Kam(V'z Twinkle)

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