SUSHIBOYS 原点回帰であり、“好き
なことをやった” 新作EP『350』を語

私立恵比寿中学lyrical schoolとのコラボ、ロックフェスへの出演など、ジャンルレスに活動するSUSHIBOYS。SPICE初登場ということで、結成の経緯から11月21日にリリースされた新作EP『350』やツアー、そして今後の活動までたっぷりと語ってくれた。
――私立恵比寿中学やlyrical schoolへのリリック提供、MAGiC BOYZへの楽曲提供、そしてファームハウスさんに関してはロックバンド・MOTHBALLへの客演。最近、SUSHIBOYSはあちこちから引っ張りだこですね。
ファームハウス:いやいやいや! そんな……全然。
――何をそんなに謙遜する必要が。
サンテナ:謙遜すんなよ!
ファームハウス:謙遜とかじゃなくて、本当にそう思ってなくて。
サンテナ:ウソつけ! お前、いつも謙遜なんてしないだろ! (インタビュアーに向かって)いつもは謙遜しないんで、大丈夫です(笑)。常々自信を持ってる奴なんで。
ファームハウス:自信は持ってるよ! まあ、でも……ありがとうございます(笑)。
――ヒップホップというジャンルの性格上、同じシーン内から声がかかることはよくあると思いますが、他のジャンルから、しかも新人にというのは珍しいことだと思います。
ファームハウス:そういう考え方も確かにありますね。
――ヒップホップの人にアイドルの歌詞を依頼するってなかなかないですよ。
ファームハウス:まあ、こんな身なりだし、怖くないし、自分たちは悪い奴らじゃないんで、キャラクター的に声かけやすかったっていうのはあると思います。
――いやいや、キャラの前に音楽あってのオファーですよ(笑)。今のこういう状況をどう捉えてますか?
ファームハウス:嬉しいです、本当に。これはライブにもつながってくる話なんですけど、自分たちはヒップホップだけじゃなくて、バンドが出るようなイベントにも出させていただいているので、そこで知ってくれた他のジャンルのお客さんが増えてきてるのは少しずつ感じてます。
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――サウンドを聴く限り、ロック方面への色気は全く見せてないのに。
ファームハウス:そうなんですよ! 本当にロックをやってる人たちって生で楽器を演奏してるのでライブに迫力があるじゃないですか。でも、僕らはボタンを押したりCDを再生してるだけなんで、ロックな人たちが持ってない部分で目立たないと駄目なんですよ。そう考えてるうちに自ずと今の音になっていきましたね。
――僕、皆さんが飛び入りした私立恵比寿中学の国際フォーラム公演を観に行ってたんですけど、あれだけ大きい会場にもかかわらず、しっかり空気を作ってましたよね。あれはなかなかできないことだと思いました。
ファームハウス:いやぁ、そうですか? 僕、緊張してて正直、何も覚えてないんです(笑)。印象づけたいっていう気持ちはあったけど。
サンテナ:僕らはエビ中のみんながいい感じでやってくれてたところにニョキっと出ていっただけなんで。
――いやいや。ああいう場って、よくわからない人が出てきたらちょっと引くと思うんですけど、SUSHIBOYSはそれまでの空気を壊すことなく、いい感じにスッと場に馴染んでたんですよね。だから自然とお客さんが盛り上がれたんだと思います。
ファームハウス:違和感がなかった的な。
――そうですね。
サンテナ:けっこう引かれてっかなって思ったんですけどね。
――いやいや、そんなことないですよ。さて、SUSHIBOYSを取り巻く環境は作品ごとに変わってきていますよね。例えば、YouTubeの動画へのコメントが増えたり、皆さんが参加したアーティストの動画にも「SUSHIBOYSを見に来ました」っていうコメントがあったり、そうやって徐々に名前が広まってる状況についてどういうふうに考えてますか?
ファームハウス:他の人たちのスタイルと比べると自分たちは特殊な感じなので、フィーチャリングで参加しても自分たちの匂いがわかりやすく出てると思うんです。そういうところで評価してもらえてるのかなと思いますね。それが自分たちの武器でもありますし。他の日本語のヒップホップの人たちって、どこかしら何かに似てると言うか、USの輸入と言うか。それと同じことをやっても目立たないので、自分たちはこういう分かりやすい色を付けるようにしてます。
――サンテナさんはいかがですか?
サンテナ:あー、もう同じですね。
――ところで、普段は2人でどんなことを話してるんですか?
ファームハウス:めちゃくちゃ音楽の話をしてますね。だから多分、こいつに何を聞いても僕と同じ答えが返ってくると思います。同じクラウドで考え方が共有されてるので(笑)。
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――なるほど(笑)。では、SPICE初登場ということで、結成の経緯を聞かせてもらえますか?
サンテナ:こいつ(ファームハウス)とは小学校のときから一緒で、自分には友達がいなかったこともあって、消去法でよく遊ぶようになったんですよ。高校からは学校が違ったんですけど、新しい友達も増えなかったんで自動的に一緒にいました。
――ああ、幼馴染に近い感じですね。
サンテナ:で、それまで音楽は全然やってなかったんですけど、その代わりに、YouTuberの前身みたいな感じで、暇つぶしがてら動画を投稿することになって。今回のジャケに映ってるヤオコー(スーパーマーケット)のイートインコーナーをカフェ代わりにいつも使ってたんですけど、最初のネタとしてそこで農家のラップをやったんですよ。農家とヒップホップって絶対に交わらなさそうだから、それを合わせたら面白いかもねって。そこから徐々にヒップホップの面白さに気付いていきました。でも、そのときはまだ遊びの一環でしたね。
ファームハウス:SUSHIBOYSを結成しようって言ったのが僕なんですけど、僕は1年ぐらいフィリピンに行って英語を勉強していて、ゆくゆくは英語を使った仕事に就こうと思ってた時期があって。まあ、でも、ぶっちゃけそれは親の教育方針で、僕自身は音楽がずっと好きだったので音楽をやりたかったんですよ。でも、音楽で食ってくのって現実的に無理だなと思ってたんですね。そうしたらある時、フィリピン人の知り合いに、「俺の父親もおじいちゃんもストリートで水を売って生きてきて、俺もこの仕事をやるしかないから海外旅行に行くこともできない。でもお前は違うだろ。日本人はフィリピンに来て英語の勉強ができるぐらい自由な環境があるのに、なんでやりたくない仕事をやろうとしてやるんだ。なんで仕事に対してそんなにマイナスに考えてるんだ」って言われて。
――説得力ありますね。
ファームハウス:そいつは食うために一生懸命働いてるけど、大部分の日本人はそうじゃないじゃないですか。飯を食えて、風呂にも入れて、屋根がある家に住めて、電気もガスもある。なのに幸せにはなれてない。そう気付いたときに、「あ、死ななきゃいいや」って思えたんです。それで日本に戻ってから、その当時の日本のヒップホップシーンには3人組がいなかったので、サンテナとエビデンスを誘ってSUSHIBOYSを始めました。
――結成にあたって参考にしたグループはありますか?
ファームハウス:ないですね。それに、結成当初と今とで気持ちが変わっていて、今は「誠実でありたい」と思ってるんですよ。ちょっと前まで、「アーティストはこうあるべきだ」っていう勝手なイメージがあって、カッコつけなきゃいけないと思ってたんですけど、最近は「別にいいや」って。だから、誰かになりたいというのはないし、もちろんいろんな音楽から刺激を受けることはあるけど、特定の人からの影響はないですね。逆に、誰っぽいと思いますか?
――強引に言うなら、スチャダラパーですかね。
ファームハウス:ああ、それは確かに言われますね。
――だけど、直接的な影響を受けてるとは思わないんですよね。
ファームハウス:そうですね。僕も2、3曲ぐらいしか聴いたことがないんで。
――ヒップホップって、人と違うことをやる、オリジナルであることが特に大事なジャンルだと思うから、そういう意味ではSUSHIBOYSの在り方はすごく正しいと思います。
ファームハウス・サンテナ:あざす!
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――さらに、地元とはいえ、越生というシーンなんて1ミリも存在しない土地で活動しているのがすごいですよね。
サンテナ:まあ、曲を作る上では越生でも何も問題ないというか。メンバーそれぞれが別々のところに住んでるなら拠点を変えなきゃいけないかもしれないけど、全員越生に住んでるし、バンドじゃないからスタジオを使ってレコーディングする必要もないし、ライブに関しても都内まで1時間ちょっとで行けるから別にいっかって感じですね。昔から知ってる町で便利だし、人もあまりいなくてごちゃごちゃしてないんですよね。
――東京のノイズに惑わされる必要がないと。
ファームハウス:正にそうなんですよ。何もない町だから、音楽作る以外に楽しみもない。だから、音楽を作るには向いてる土地だと思いますね。今はインターネットもありますしね。
――仲間を作りづらいっていうデメリットはありますけどね。
ファームハウス:まあ、そもそも僕らには友だちがいないんで、仲間も何もないんですよ。でも、BAD HOPみたいにみんなで勝ち上がるっていうのはうらやましいっすね。楽しいだろうなって。
サンテナ:でも、うちらはイケイケな人じゃないんで、全然越生でいいっすね(笑)。
――うらやましいけど、そもそも自分たちがそういう人間じゃなかったっていう。
ファームハウス:そうですそうです(笑)。
――古いたとえで恐縮ですけど、SUSHIBOYSって80年代後半のアメリカでハードコアラップが流行っていた時にカウンター的な存在として現れたDE LA SOULみたいに感じるんですよね。あと、ふざけているように見えて、ふざけてない。
ファームハウス:自分で言うのもなんですけど、音楽に対してはかなり真面目だと思います。
――リリックで誰のことも傷つけないし。
サンテナ:ディスもヒップホップ文化のひとつですけど、やり方は考えたほうがいいですよね。ただ人の悪口を言うのは簡単だから、そこにひとひねり加えて面白おかしくやるのがいいと思うし、自分はそういうのが好きですね。恨みつらみだけのディスは誰も得しないから。
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――さて、最新作『350』ですが、これまで以上にトラックがタイトになってる気がします。音数が減っているというか。
ファームハウス:確かに結構すっきりしたかもしれないですね。でも、今言われて気づいたくらいなんで、これは感覚的な部分が大きいと思います。普段聴いてる音楽からも知らず知らずのうちに影響受けてると思うし。
――では、今作を作る上で方向性は特に決めてなかったと。
ファームハウス:ただ、原点回帰的なところは意識しましたね。
サンテナ:自分たちが本来やりたかったようなスタイルの曲を作ろうって。そういう意味では、最初に出した『NIGIRI』っていうアルバムを作ったときのモチベーションに近いと言うか。本当に自分たちが好きなことをやったEPだと思います。ジャケットもふざけてるじゃないですか。
ファームハウス:このジャケに写ってるヤオコーはもう潰れちゃって。さっきも話しましたけど、自分たちが昔から通わせてもらってたところなので、せめて最後に全国のお店に並べさせてもらおうかなって。
――制作のとっかかりになった曲はどれですか?
ファームハウス:最初にできたのは「8月32日」のトラックですね。サンプリング系の曲を一曲入れたかったので。そこからはもう感覚で作りました。ポンと出てきたトピックに合った音を探したりして。基本的には、トピックができて、トラックができて、リリックっていう流れです。もっと細かく言うと、フックが先ですね。
――そこも気になったんですよ。例えば、ショッピングカートレーサーというトピックに合うトラックってなんなんだっていう。
ファームハウス:トラップの暗い音でも頑張ればショッピングカートレーサーっぽい曲にはできるんですけど、この言葉の響きの時点で僕の中で音の雰囲気がある程度決まってるんですよね。これ、頭おかしいと思われるかもしれないけど、「音の言葉を書く感覚」というか。例えば、ショッピングカートレーサーという音の言葉が、「あかさたな」の「た」までしかなかったとしたら、そこから頑張って言葉を厳選して残りの「な」をリリックで表現する、みたいな。
――興味深いですね。
ファームハウス:だから、意図的に含まれてない文章もあったりするんですよ。例えば、ショッピングカートレーサーはディスみたいな表現が合わない音になっちゃってるんで、それに合った言葉を持ってくる、みたいな。
――それにしても、なんでトピックとして味の素やUSBが出てくるんですか。
ファームハウス:USBに関してはメッセージ性が先行してて。この曲を作った頃、精神的に色々とぶっ壊れてたんで、脳みそにいい記憶だけ残して、悪い記憶はUSBみたいにデリートできたらいいのにっていうことを考えてたら閃きました。
サンテナ:音楽ってタイトルを見て、再生して、「あ、こういう曲なのか」って知るという一連の流れがあると思うんですけど、曲の内容に対して意外性のあるタイトルが必要だといつも思うんですよ。
ファームハウス:「意外だけど、なんかわかる」みたいなね。
サンテナ:そう。それも音楽の楽しさのひとつだと思うんですよね。それをなくしちゃうと楽しみが減っちゃう気がする。だから、曲のトピックとタイトルに意外性を与えることはけっこう意識してますね。
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――その考え方で行くと「8月32日」はタイトルから想像するようにメロウだし、ストレートな楽曲じゃないですか?
ファームハウス:確かにけっこうストレートですね。最初にできたこの曲がストレートだったからこそ、他の曲がひん曲がっていったというか……まあ、でも、「味の素」とか「USB」ぐらいかな。
――『350』というアルバムタイトルの意味は?
ファームハウス:僕らの地元の郵便番号です。
――なぜこの作品で地元の郵便番号を?
ファームハウス:今回は地元でレコーディングが完結してますし、全国に届けるっていう意味で“手紙”みたいな意識もあったんで、もう一度「自分たちはこういう者ですよ」という気持ちを込めました。
――そこにも原点回帰という気持ちが込められているんですね。さて、12月からは全国6ヶ所を回る初のワンマンツアーが始まります。
ファームハウス:お客さんの走馬灯の一部として出てくるようなライブにしたいですね。「あれ、なんでこの映像が出てきたんだ!? そう言えば行ったなぁ!」みたいな(笑)。ただ楽しいだけじゃなくて、お互いにいい時間を共有できたら。
サンテナ:みんな、生の刺激を求めてライブに来ると思うんで、ただ音源を流すのもいいんですけど、自分たちは特にライブが上手いというわけでもないから、それ以外のやり方で臨場感を出したり、PVを観てるような感覚で楽しんでもらえたらいいですね。
――このツアーを最後にエビデンスさんが脱退してしまいますが、今後は活動の形が変わっていったりするんでしょうか。
ファームハウス:まあ、ライブも音源も変わらないけど、今まで以上に頑張らないといけないので、エビデンスが抜けた穴を埋めるというよりも、この2人だからこそヤバいって言ってもらえるようなこと……例えばフィーチャリングを呼んだり、3人の時にできなかったことをどんどんやってきたいですね。ただ、今回の脱退はお互いの成長のためっていう部分もあるんで、将来的には多分また一緒にやってるんじゃないですかね。
――でも、フィーチャリングを迎えると言っても、友達がいないのにどうするんですか?
ファームハウス:まあ、お仕事っていう感じでも全然構わないんで!(笑) ビジネスから入って友達になる可能性もあるし。だから、いろいろ挑戦したいですね。
――すでに浮かんでるアイデアもあったり?
ファームハウス:ありますあります。楽しみにしててください!

文=阿刀“DA”大志 撮影=菊池貴裕

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