【インタビュー】中村雅俊、「できる
限り現役でい続けていきたい」

仙吉さん。目の前に座るその人に思わず呼びかけそうになるほど、今年のNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』での中村雅俊の存在感は大きかった。劇中歌として「真夏の果実」などを歌う姿も、大きな話題を呼んだ。ほかにも音楽劇の舞台、そして毎年恒例のコンサート・ツアーと、2018年は“歌手・中村雅俊”のパワーを多くの人に知らしめる年になったのではないか。来年にデビュー45周年を控え、1年振りのニューシングルとして強力なアップテンポのロック・チューン「だろう!!」をリリースする中村雅俊に、歌手として、さらには俳優としての現在位置について語ってもらった。

  ◆  ◆  ◆

■ いやぁ、朝ドラってすごいね(笑)

──雅俊さんは今、秋のコンサート・ツアー<ON AND ON>Vol.2の真っ最中です。

中村雅俊:春まで<ON AND ON>というツアーをやっていて、それの続きみたいなものと言いながらも、半分以上曲は違うんですけどね。NHKの『半分、青い。』の劇中で歌った歌だったり、9月までやっていた舞台(『ローリンス・ソング』のテーマ曲だったりもやっていて。勿論、自分の新曲も2曲歌ってるから、<ON AND ON>のVol.2と言いながら、結局全然違う感じになっちゃいましたね。

── 先に御本人に言われてしまいましたが、今年は本当にドラマでの活躍が印象的で。

中村:いやぁ、朝ドラってすごいね(笑)。リアクションがすごいんでびっくりしちゃいました。

──思わず「仙吉さん!」と言いそうになります(笑)。劇中で「学生街の喫茶店」「真夏の果実」「あの素晴しい愛をもう一度」を歌われましたね。感激しました。

中村:最初に歌ったのが「真夏の果実」なんですよ。あれは9週目のオンエアだから、まだ先だと思って全然油断してたら、収録が始まって2、3週目でもう撮ってました。だから歌も完璧に覚えてなくて。

──そんなふうにはまったく。

中村:いやいや、そうだったんですよ。あとはね、いろいろと不平不満もあって。

──何ですかいきなり(笑)。

中村:もしも歌番組に出るんだったら、まずギター用にマイクがあって、ボーカル用にマイクがあって、それが映ってもいいからちゃんとするじゃない? でも、マイクが出ちゃいけないから。

──朝ドラにギターマイクが映ったらおかしいです(笑)。

中村:だから、こんなに長いマイクで(ジェスチャーを交えて)遠くから録るんだけど、「え、それで録るの?」って。バランスが悪くなってボーカルばかり聴こえたら嫌だなとか、心配と不安があったんですけど、ピンマイクも付けてちゃんとやってくれたので実際はなにも問題はなかったですけどね(笑)。でもあそこまで反応があるとは思わなかったですね。ドラマの中で歌うというのは、やっぱりすごいなと思いましたね。俺が歌番組で歌ってもあんなに評判にならないのに(笑)。

──そんなことないです!

中村:あとね、「あの素晴しい愛をもう一度」は、鈴愛(主人公・楡野鈴愛)を送り出す時に2回歌ってるんだけど、テストで歌ってたら、スタジオの中で泣いてる奴がけっこういて。俺の歌で泣くの?って、びっくりした。やっぱりストーリーの中に歌があるのって、すごく力を持つってことなんだろうなと思いましたね。

──それは昔の青春ドラマも、そうだったと思いますよ。ドラマの中の歌の力は、二倍にも三倍にもなって記憶に焼き付きますから。

中村:ああ、確かにね。俺も急に(ドラマの中で)「ふれあい」を歌ったりしてたからね。

──今回も期待してしまいました(笑)。「ふれあい」歌ってくれないかなって。

中村:それをやると、役と自分を混同してると思われちゃう(笑)。でも不思議だったのは、鈴愛がまだ子役の子だった時に、テレビのベストテン番組をよく観てるという設定で、もんた&ブラザーズが「ダンシング・オールナイト」を歌ってる回があったの。あの頃は俺も「恋人も濡れる街角」でベストテン番組に出てたなあとか思って、不思議な気持ちになりましたね。

──劇中歌といえば、舞台『ローリング・ソング』のほうでも「あゝ青春」を歌われましたよね。

中村:そうなんですよ。作・演出の鴻上尚史さんが、どうしてもあの歌を俺に歌わせたかったらしくて。あの舞台は、「あゝ青春」以外は全部オリジナル曲だから、なんで?って最初は思ってた。舞台を観れば、理由はわかるんだけどね。実は以前、GOING UNDER GROUNDのボーカルの松本(素生)くんが「コスモス」という歌を俺に作ってくれたんですよ(※シングル/2007年)。その時にNHKの音楽番組に一緒に出て、「あゝ青春」を歌ったことがあったんです。偶然なんですが、今回の舞台の音楽監督がGOING UNDER GROUNDの元ドラムスの河野(丈洋)くんだった。彼もとてもいい曲を書くんだよね。そんなつながりもあって今回舞台で「あゝ青春」を歌うことになって感慨深かったですよ。

──面白いです。そんな繋がりがあるとは。

中村:それと、鴻上さんは俺より7つくらい下なんだけど、「あゝ青春」って、松田優作さんと二人で刑事ドラマをやった時の主題歌だったの。

──はい。『俺たちの勲章』。

中村:そうそう。たぶん鴻上少年は、四国の高校生だった頃にそれを観ていた、そういうのもあるんじゃないかな。舞台のストーリーとあの曲の詞の世界が本当にうまく合っていたなと思います。

──いろんなところで、今年は“歌手・中村雅俊”の存在感を、より知らしめた1年になっていると思います。

中村:ああ、そうだね。若い人なんか、「このおじさん、歌うんだ?」っていう。

──そういうことではないです!

中村:でもね、若い子たちは俺が歌ってる姿を見る機会はないと思うし。でも意外と若い子も、朝ドラ観てるよね。

──すごくいいきっかけでしたよ。

中村:本当だよね。おとといも、うちの犬を散歩させようと思って家の前にいたら、犬を連れた三十代くらいの女性が「あー、仙吉おじいちゃんだ!」って、大声で言われてびっくりしちゃった(笑)。だから、やっぱりすごいなと思いますね。

◆インタビュー(2)へ
■ 俺らの年齢の人には、「まだまだ」という意識がありますからね

──そして、11月21日にリリースされる1年振りのニューシングル「だろう!!」。今回は、アップテンポのエネルギッシュな曲で来ました。

中村:本当に、ザ・ストレートという感じだよね。ひねりもなくそのまんまだから、逆にインパクトがあるかもね。歌ってみるとわかるんだけど、すごく歌いやすい曲なんですよ。

──がなるとか、叫ぶという感じじゃなくて。

中村:そう。わりと素直に歌っていて、気持ちも表現できる。特にサビの“どうだ”とか、その次の“まだいける”“進むだけ”“前を向け”とか、応援歌としてはとてもストレートな言葉ばかり。俺もそうだけど中高年世代には特に届きそうな気がするんです。
──コンサートでも、もう歌ってますよね。

中村:歌ってます。いつもコンサートのセットリストを考える時に──俺のイメージって「ふれあい」も含めてギターを持って静かな曲を歌うというイメージがあるかもしれないけど、コンサートの構成的にはみんなで盛り上がるところもほしい。そういう意味で、アップテンポの新しい代表曲ができてよかったなと思いますね。お客さんとレスポンスができる曲で、“どうだ”というところとか、一緒にやってくれそうな曲だから。

──目に浮かびます。

中村:ただ11月21日発売なので、みんなまだ曲を知らない(笑)。発売されたらみなさんにも身近な曲になると思うので、これからですね。

──それにしても。「だろう!!」というタイトル、すごいインパクト。

中村:集約されてますよね。“まだ行ける”とか“前を向け”とか、そういうことを歌ったあとに“だろう?”って言う感じ。俺らの年齢の人には、「まだまだ」という意識がありますからね。60歳で定年退職した人も全然元気だし、まだまだできると思ってるし、実際できる人が多いんで。定年退職すると、夢を持っちゃいけないとか、新しい事業を起こしちゃいけないとか、新しいことをやっちゃいけないみたいなイメージがあるけど、本当は夢も持てるし、まだまだ何かをやれる。

──このところずっと、雅俊さんは、「夢を持とう」という歌を歌い続けていると思います。

中村:「まだまだ」というイメージの歌が多いですね。俺の使命はそうなのかなと思う時があるんですよ。これは自分の周りの範囲の話だけど、俺の大学のクラスメイトが「中村が頑張ってるから俺も頑張ろうという気になるんだよ」と言ってくれることがあって。そういうことって大事かなと思うんですよね。それが全国レベルで「中村さんはいい年だけど頑張ってるよね」ということになれば、少しは元気を与えることができると思うので。できる限り現役でい続けていきたいですね。

──「千年樹」についても、紹介してもらえますか。

中村:これは完璧に和ものの世界ですね。この曲ができた時に、ユーミンの「春よ、来い」を思い浮かべたんだけど、和ものの感じが共通してる気がします。そしてこれも、何気に応援ソングなんですよ。“風を怖れて枯れるより/折れて悔やまぬ枝でいい”という、そういう生き方を松井五郎さんが書いてくれて、歌っていてすごく気持ちいい歌ですね。のちのち広がっていくような、いろんなところで歌える曲のような気がします。

──松井さんの歌詞も、雅俊さんの使命をわかっているんだなと思います。

中村:俺のことをよく理解して、書いてくれてるなと思いますね。作曲の都志見隆さんもそうだけど、「中村雅俊が歌うべき曲とは?」というものを、本当によく考えてくれている二人だと思います。

◆インタビュー(3)へ
■ 年を取ると、しゃべり方は変わるけど
■ 声自体はそんなに老けない

──このあとの予定は、12月までコンサートが続きます。

中村:コンサート、すごいですよ。12月1日には中野サンプラザでやるんですけど、是非観に来てほしいです。

──そして来年、2019年はデビュー45年ですか。

中村:思えばけっこうやってるんだなという感じですね。振り返るとあっという間ですけど、でも一つ一つ作品を…デビューの『われら青春!』を半年間やって、2年目に松田さんと刑事ドラマをやって、終わるか終わらないかぐらいで『俺たちの旅』が始まって。『俺たちの旅』なんか、1年間ですからね。休みがまったくない。今のドラマはワンクールだから、3か月やるとちょっと休めるけど、最初の20年間ぐらいは休みなし。

──すごい…。

中村:まあ、若かったからね。ドラマの合間で年間4、50本コンサートもやってたし、今思うと元気な奴だよね(笑)。あの頃は、ツアーといいながら1年間やってたから。今の仕事の仕方と全然違いますね。

──2019年は、7月に明治座でのアニバーサリー公演がすでに発表されています。

中村:9月までやっていた『ローリング・ソング』と同じ、鴻上尚史さんの作・演出ですね。時代劇の舞台をやって、休憩を挟んでライブをやるという構成なんですが、鴻上さんが時代劇を手掛けられるのは初めてだということなので、どんな舞台になるのかいろんな意味で期待してます。

──そして毎年必ずシングルを出してコンサート・ツアーをやるという、それもぜひ守っていただければ。

中村:舞台は決め事が多いから、ちょっとずれると全体がおかしくなっちゃう。コンサートにもある程度の決め事はあるけど、ざっくりとしてるんで自分に負うところが多いんです。だからコンサートって、よくよく考えると大変な作業なんですけど、そのぶんだけうまくいった時の喜びがある。できるだけ多く、いろんなところへ行きたいなと思いますね。

──舞台は決め事が多いんですね。それでも劇中歌を歌う時には、歌手・中村雅俊になってしまうという。

中村:なっちゃうんですよ。みんなから言われたんだけど、仙吉おじいちゃんなのに、歌ったとたんに中村雅俊になってるって。

──それは思いました(笑)。自然になっちゃうんでしょうね。

中村:というか、逆に言うと、おじいちゃんでは歌えない。声色使うわけにもいかないし(笑)。おじいちゃん役をやるためにいろいろ研究したんだけど、ビジュアルはおじいちゃんでも、目を閉じて声だけ聴くと、声は若々しい人が多い。だから意外と、声そのものはそんなに老けないんじゃないかな。年を取ると、しゃべり方は変わるけど、声自体はそんなに老けないんだなと思った。だから、中村雅俊になっちゃんだろうね。

──それはまさに「だろう!!」を聴いて思いましたよ。67歳の雅俊さんが、こんなにエネルギッシュな歌が歌える。

──これからもいい歌、いい舞台、いいドラマを期待しています。

中村:ありがとうございます。頑張りますよ。

  ◆  ◆  ◆

取材・文◎宮本英夫

■New Single「だろう!!」

2018年11月21日(水)発売
COCA-17531 ¥1,080(税込)

M-1 だろう!!
東建コーポレーション イメージソング
作詞:松井五郎 作曲:都志見隆 編曲:大塚修司

M-2 千年樹
刀剣ワールド イメージソング
作詞:松井五郎 作曲:都志見隆 編曲:大塚修司

M-3 だろう!! カラオケ

M-4 千年樹 カラオケ

■<中村雅俊コンサートツアー2018「ON and ON」Vol.2>

11/17(土)クラギ文化ホール(三重)
開演 16:00 (問)クラギ文化ホール管理事務所 0598-23-2111(火・休館)

11/24(土)森町文化会館 〜Acoustic Unit〜 (静岡)
開演 15:30 (問)森町文化会館 0538-85-1111

11/25(日)美濃加茂市文化会館 〜Acoustic Unit〜 (岐阜)
開演 16:00 (問)美濃加茂市文化会館 0574-25-1108

12/1(土)中野サンプラザホール(東京)
開演 17:00 (問)キョードー東京 0570-550-799

12/9(日)二本松市民会館〜Acoustic Unit〜 (福島)
開演 17:00 (問)二本松市教育委員会文化課 0243-55-5154

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