「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
デビュー40周年を迎えた
竹内まりやのヒットを探る

総合3位と5位は、珠玉の歌姫への
提供曲のセルフカバー

そして、総合3位は1987年にアルバム『REQUEST』内に収録された「駅」。本作は、その前年末に中森明菜のアルバム『CRIMSON』用に提供された、かつての恋人を駅で見かけるという切ないバラードをセルフカバーしたものだ。竹内版の「駅」は1987年末にシングル・カットされ、有線放送で年間3位となる人気で、1991年には映画『グッバイ・ママ』の主題歌に起用されてCDシングルが再ヒットしたため、竹内まりや版をオリジナルだと思っている人も多いかもしれない。実際、「駅」が有線やカラオケでじわじわ売れていったことが、『REQUEST』の3年越しでのミリオンヒットの主要因だろうし、21世紀になって解禁された配信部門ではダントツの1位、そしてカラオケもここ数年、彼女の中で最大人気曲なのだから(もし、アルバムより先にシングルが発売されていたら、まりや版「駅」もシングルヒットしていて、総合1位だったかもしれない)。
アルバム『REQUEST -30th Anniversary Edition-』

アルバム『REQUEST -30th Anniversary Edition-』

ただし、中森明菜版と竹内まりや版は、それぞれの世界観が確立していて聴こえ方がまるで異なるのが興味深い。明菜版は“ありふれた夜がやってくる”ように、さりげなく過去の恋を想い出す程度で冷たい街に紛れていく都会の女性が登場するのに対し、竹内版は彼が“私だけ(を)愛してたこと”に気づいて後悔しまくるというメロドラマ風に仕上がっている。それぞれの一流の解釈の違いを楽しんでみてはどうだろうか。

こちらは、竹内と同レーベルの藤澤ノリマサのカバーによる「駅」

総合5位の「元気を出して」もセルフカバー作だ。提供作のセルフカバーが人気曲のうち2作を占めるというのも竹内まりやの大きな特徴だろう。特に配信とカラオケでは、ともに1位が「駅」、2位が「元気を出して」と、なんとセルフカバーが上位を独占しているのだから。それだけクオリティーの高い作品を、それぞれの歌手に提供したということだ。あるいは、中森明菜や薬師丸ひろ子といった類まれなスターが、竹内の中の作家能力を引き出したのだろう。そして、そこに竹内の歌声が乗ることで、より時代性を感じさせないエバーグリーンな作品となったのであろう。

「元気を出して」は1984年に薬師丸ひろ子のアルバム『古今集』用に提供したバラードを、1987年のアルバム『REQUEST』にて竹内も歌唱。竹内の発売後にSEIKOやTBCなどのCMに起用されたり、2003年の島谷ひとみがさらにカバーしてヒットしたりと、今では“エールソング”の定番となっている。《彼だけが 男じゃないことに気付いて》という1フレーズも、女性共感度の高さを象徴する竹内まりやらしい歌詞だ。ちなみに、薬師丸バージョンでは竹内がコーラスに参加し、竹内バージョンでは薬師丸がコーラスに参加している。

アルバム『REQUEST -30th Anniversary Edition』Trailer (猫の恋)

「駅」「元気を出して」「人生の扉」…
ファンの人気曲はいずれもアルバム発

総合6位の「人生の扉」についても触れておきたい。本作は2007年にアルバム『Denim』に収録され、その後のシングル「チャンスの前髪」にリカットで収録されている。20歳、30歳、40歳…、そして90歳以上と、それぞれの年齢で感じること、感じていたいことを歌にした穏やかなバラードで、桜や紅葉を《この先いったい何度 見ることになるだろう》というフレーズも実に印象的。年輩のタレントやミュージシャンが、この歌に励まされたといってメディアで紹介することも多い。決して派手ではないが確実に人々の心に浸透しているようだ。

ちなみに、2008年のベスト盤『Expressions』発売時のファン投票で1位になったのが「駅」、2位が「人生の扉」、そして3位は「元気を出して」で、いずれも最初はシングルではなくアルバム収録だった点も興味深い。彼女もまた、シングルだけでは評価できない偉大なアーティストということだろう。
アルバム『Expressions』

アルバム『Expressions』

自作曲以外での最大人気は
「不思議なピーチパイ」

総合1位から9位まで自作曲が並ぶ中、10位でようやく初期の出世作となった1980年の「不思議なピーチパイ」が登場。本作は作詞:安井かずみ、作曲:加藤和彦のお洒落でポップなミディアム・チューンで、資生堂『春のキャンペーンソング』に起用されシングル・レコードは約39万枚のヒット。確かに♪かーくしきれない気分は ピーチパ~イというサビは、当時TVを観ていた人ならばほぼ全員が口ずさめるほどの強烈なインパクトがあるが、果たしてどれだけの人が“ピーチパイ”をイメージできたのかと個人的にはとても気になる(笑)。
アルバム『LOVE SONGS』

アルバム『LOVE SONGS』

ちなみに、この「不思議なピーチパイ」の前年に発表した「ドリーム・オブ・ユー~レモンライムの青い風~」や「SEPTEMBER」は、ともにシングル・レコードは累計10万枚台のヒットながら、どちらも半年近くTOP100にチャートインしている。どちらも自作ではないが安定した人気を誇り、当時発売されたアルバム『UNIVERSITY STREET』も累計20万枚を超えるヒットとなっていた。つまり、デビュー当時から既にシングルよりもアルバムで聴きたいアーティストだったようだ。これも凄腕のミュージシャンによる一流サウンドをバックに爽やかな雰囲気を醸し出すヴォーカリストとして、当時から高い評価を得ていたからではないだろうか。

なお、総合TOP20入りしているものの、「告白」「マンハッタン・キス」「不思議なピーチパイ」などの人気曲は2018年現在、配信されているのはAmazonのストリーミング・サービスのみで、今後解禁されることを期待したい。

OKMusic編集部

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