恥ずかしい気持ちを代弁してくれた、吉澤嘉代子の歌詞を読み解く

恥ずかしい気持ちを代弁してくれた、吉澤嘉代子の歌詞を読み解く

恥ずかしい気持ちを代弁してくれた、
吉澤嘉代子の歌詞を読み解く

どんな人にも葬りたい過去のひとつやふたつはある。思わず頭を抱えるあの記憶。俗に黒歴史と呼ばれる人生の恥部は消えてくれないどころか下手をするとトラウマ化し、ことあるごとに再発する。
さまざまな対処法があると思うが、吉澤嘉代子の場合はこうだ。
「歌にして思いきり叫ぶ」
自作自演歌手ならではのシンプルイズザベストな解決策。なかばやけっぱちにも見えるが、知られる前に自分から言ってしまえというある種の潔さも感じる。
これまでも暴露ものの歌はあったが、恥ずかしい気持ちをそのまま歌詞にするというありそうでなかった発想が斬新だ。
しかし、そもそも何万人もの前でパフォーマンスをするアーティストが一般人のように恥ずかしさを感じるのだろうか?
ミュージシャン全員がドM気質ならともかく、(そうではないと思うので)大勢の前で惜しげもなく自身の恥部をさらすアーティストとは一体なんなのだろう?
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「恥ずかしい」の歌詞を読むと吉澤嘉代子も普通の人と同じように自分の黒歴史に悶絶していることがわかる。
むしろ表現をなりわいとする人間は感受性が強く人一倍シャイであり、その分恥ずかしさも倍ではないだろうか。
だからこそ多くの人に共感される作品をつくることができるとも言える。誰もが感じる喜びや悲しみをカタチにするにはその感情を経験していなければ無理だし、深く知らなければ多くの人に届く表現にはならない。
アーティストは共感力がないと務まらないのだ。
そして新しい表現が生まれるときは、アーティスト自身が迷いやプレッシャーを乗り越えてチャレンジしたときだ。当然さまざまな葛藤もあるだろうし、はじめて人目に触れるときには羞恥心もあるはず。
もし仮にまったく羞恥心がないアーティストがいるなら、なんのタブーもなく最強かもしれないけど、お客さんがそれで本当に感動するかといえばそれはわからない。
ステージで過激なことをすれば驚かれるかもしれないが、大半の人は引いてしまうのではないだろうか。
30年以上続くある大物バンドのボーカルは今でもライブのたびに緊張するそうだ。
紙一重のところでプレッシャーや恥ずかしさを感じるからこそ、記憶に残るパフォーマンスや感動を生み出すことができるのだと思う。
表現行為と恥ずかしさは優れたアーティストにとって切っても切り離せないものである。
恥ずかしさを歌にして脱ぎ捨てることで表現者としての稀有な資質をあらわにした吉澤嘉代子。心をハダカにして歌うその声はきっとあなたの黒歴史も洗い流してくれる。

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