【インタビュー】田澤孝介 (Waive)、
3度目の再演で「燃え尽きることがで
きたら」

Waiveが2019年4月30日、Zepp Tokyo単独公演<Waive GIG「サヨナラ?」愛しい平成よ>を開催する。BARKSでは“平成最後の日”に行われる同公演を前に、Waiveというバンドを再検証する連載特集を展開中だ。その第三弾はボーカリストの田澤孝介単独インタビューだ。聞き手は前回に続いて音楽ライターの大前多恵氏が務める。
MUCC、Psycho le Cémuとの3マンイベントライヴ<MUD FRIENDS 2000~2018>で、Waiveとして2年ぶりに集結したメンバー。連載第2弾のライヴ記事でも書いているように、とても充実したステージで、このバンドが“解散中”なのはもったいない、と率直に感じた。もっとライヴを観たいし、できれば新しい曲も聴きたい、と。

平成最後の日、2019年4月30日のZepp Tokyoワンマンライヴに加え、それに先駆けて全国ツアーを開催するという吉報も届いた。解散5年後に行った第1回目の再演(2010年)、10周年の再再演(2016年)に、田澤はその都度どんな想いで取り組んできたのか? そして2018年の今年、3度目の再演に向けてどんな意気込みを抱いているのか? Rayflowerを筆頭にした、他プロジェクトとの両立はどう考えているのか?など、率直に尋ねてみた。

   ◆   ◆   ◆

■自然な感じでもう1回集まれる
■時間が癒した部分もあります

──個人的には田澤さんに初めてインタビューさせていただくのですが、Waive初心者の方々にも親切な記事にしたい、という想いがありまして。もしかしたら失礼もあるかもしれませんが、素朴な疑問、気になっていることもお尋ねしていきたいと思っています。

田澤:大丈夫です、ぶつけてください。もう何でも聞いてください!

──よろしくお願いいたします。10月18日の<MUD FRIENDS 2000~2018>最終日は、バンドとしてすごく仕上がっている、まとまっていると感じ圧倒されました。終演直後は「寂しい」とおっしゃってましたが、日にちが経った今、お気持ちに変化はありますか?

田澤:特に変わらず、寂しいまんま、みたいな感じですかね(笑)。1つのイベントを終えて、“次はこれに向けて行きましょう!”という動きがすぐにでもあれば「寂しい」なんて言ってられないんでしょうけど。次があるとはいえ、現状ではあのイベント以降、メンバーが集まって何がしかをした、みたいなことはないので。だから、あの時の印象のままですね、僕は。

──寂しいということは、それだけ充実感のある活動だったということでしょうか?

田澤:そうですね。Waiveの活動、というところももちろんあるんですけど、やっぱりこの間に関しては、ああいうイベントがすごく久しぶりだったのに加えて、あの対バンメンツだったから。そこに対しての“祭りの後感”は感じてます。

──同時代を生きて、駆け抜けて来た盟友のバンドたちでしたもんね。やはり、当時を思い出すこともありましたか?

田澤:思い出に浸るというよりは、長い時間を経て一堂に会して、スタッフの人たちも知ってる人たちばかりで。自分も含めて“みんな、よう長く続けたなぁ”みたいな感慨がありましたね。あと、“相変わらずカッコいいな”とか。その辺がリスペクトできているままだったし。「夢みたい」という言い方もしましたけど、自分にとっては特別な空間だったんやな、というのが実感です。
──では、“Waiveとしての活動”に特化して考えてみていただくと、どうでした? あのイベントで、もう一回久しぶりに集まってWaiveとして活動する、ということに関して、どういう気持ちで向かって行かれたんですか?

田澤:あの……これは乱暴な言い方になりますけど、何も考えてなかったですね。

──ノープランですか?

田澤:うん、ノープラン。

──ノープランで行けるものなんですか?

田澤:敢えてそうしたと言うか、沁みついてるものがあるじゃないか、と。何も考えずにやっても、当時のまま体が動くんです。久しぶりだから鈍ってる部分というのはもちろんありましたけど、”あ、たしかこうだった!”みたいな感じですぐに勘が戻ってくる。“意識して再現しよう”みたいなことじゃないな、というのはまずあったんですよ。初回と二回目の再演の時は僕、わりとそこに重きを置いてたんです。“今の自分”が出ないようにグッとこらえる作業をしてた。“今のほうが上手に歌えるよ”とか、“今ならこうしたいし、あの頃できなかったことが出来るよ”とか、そこを見せたくなるのが心情だと思うんですけど、それをいかに我慢するかに懸けていて。でも今回は、そんなことさえも考えなかったですね。理由としては前回の再再演(2016年)で、すごくいい終わり方ができて、それから2年経った今もその感覚のままで居るから、ですかね。リハーサルの雰囲気もそうですし、現役の頃にちょっと近い感じがしたんですよ。

──現役というのは、解散前ということですか?

田澤:そうですね。仲良かった頃(笑)。

──ははは。いいムードでバンド活動ができていた頃の感じ。

田澤:僕が「辞める」と言う前の感じ、というか。もしかしたら努めて誰かがそういう雰囲気を作ってくれてるのかもしれないし、本当のことは分からないですけどね。印象としては、僕はそうでした。当時のスタッフとやってる、というのも関係あるのかもしれないけど。どっちにしても、気持ち的にはすごくいいコンディションなので、感謝ばかりですね。あとは個々に思い描いてるWaive像みたいなものが交わって出来た“ああ、これこれ!”って感じが心地よかったり。
──その“Waive像”について、メンバー同士で話し合ったりされる場はあるんですか? “あれをやろう”“これをやらないでおこう”という決めごとがあったり、とか。

田澤:別にないかな? 過去にさんざん話し合ったものがそのまま、という感じです。

──確かめ合う必要もなく、当時からずっとみなさんの中に残っている、ということでしょうか。

田澤:うん、たぶん。確かめ合わないところもWaiveっぽい感じがしてます。現役の頃から、そういう“俺らこうだから、こうしていこう”みたいな考えを熱く語ることは、特になかった気がするんですよね。

──やりながら自然に決まっていく、みたいな感じなんですか?

田澤:うん……どうだったっけ(笑)? でも、全員でガーッとああしようこうしようと話し合うことはなかったと思いますよ。

──当時のそういう感じも、2016年の再演以降は戻ってきている、という感覚?

田澤:自分の心持ちなんですかね? 今回は特にそう感じます。

──そういう心境の変化の理由に、心当たりはありますか? 例えば、ご自身が年齢を重ねてくることによって、物事に対する向き合い方が全般的に変わった、とか。

田澤:あぁ、でもそれはあります。“出来る時にやれることをしよう”みたいな気持ちが生まれたのはあるし、あとは……これ、僕が言うのもなんなんですけど。「やろうや」という話が出て、スケジュール的にもできなくない、と。「じゃあ、もうやろうよ」みたいな。そのぐらいの自然な感じでもう1回集まれるようになった。それが僕の中では大きい変化なのかな?と思ってまして。それが“なぜなんだ?”と聞かれると、ちょっと分かんないです。前回(2016年)の再再演の感触が良かったということと、うーん……時間が経ったからかな? 時間が癒した部分もありますよね。杉本(善徳/G&Vo)くんとは元々、17、18歳ぐらいのまだ幼い時からの付き合いなので。

──すごく長いですよね。

田澤:うん。結局そういう積み重ねて来ていたものが出る、ということなのかな。
■最初の再演はもう懺悔でした
■再再演ではごめんなさいは言わないと

──人生を長く歩んで来た分、分母が大きくなるというか、ちょっと仲違いした時期もあったけれど、全体の長い時間の中で捉えるとそのインパクトが薄まっていく、みたいなことですかね?

田澤:そういうことなんですかね? そこにこだわっていると前に進まない、というのもあったでしょうし。だから……最初の再演はもう、懺悔でしたよ、僕は。自分が“辞める”と言ったことでWaiveは解散したので。解散以来初めてのWaiveのステージに立って、曲が鳴って、現役の時には聞いたことないぐらいの歓声が聞こえてきて。ライヴが進むにつれて、ファンのみなさんが笑顔になっていくわけですよ。“あぁ、俺はこの笑顔を奪ったんだな”と。それに、再演当初は杉本くんとの関係も今ほど円滑じゃなかったから、やっぱりちょっと意識をする、というのもあったしね。

──生々しい怒りとかじゃなくても、すんなりはいけない、みたいな感じが……?

田澤:うん(笑)。でも“再演するってことは決まったんだし”というのがもちろんあったので、ちゃんとやったんですけど、お互い“理由”は必要だった気がします。

──もう一度集まることへのハードルが高かったわけですね。

田澤:そうそう。“こういう理由があるからやっているんだ”という大義名分が、自分的にも対外的にも必要だった。今はそういうの、別に要らないですもんね。

──その懺悔の第1回を経た、第2回目の再演に向かう際は、やはり全然意識が違ったってことですよね?

田澤:傷付けたという事実は消えないけれども、新しい想い出ができることで、少しでも和らげば、とは思えていましたね。これはあくまでも、僕の個人的な感覚ですよ? それで、5年後にチャンスがいただけたので、“じゃあ、懺悔に特化していて前回はできなかったことを、今度はやろう”と。もう“ごめんなさい”は言わない、と決めて。見せたいのはそんな姿じゃなくて、解散する前、要は“より良かった頃のWaive”を、今までのファンの方はもちろん、今現在の自分らの活動を通じてWaiveを知ってくれた新しいファンの方にも見てもらおう、というのが僕の中ではテーマでした。だから、(2016年の再再演は)いい感じで終われたんだと思います。
──田澤さんの心境の変化は、かなり大きかったんですね……。

田澤:そうですね。今もそう思えば、すぐ懺悔モードになるんですけどね。

──消えはしない?

田澤:消えない消えない。再演だって、別にそこを許したからOKになったわけじゃなくて、そこはそこで許さないけど、そうではない他の部分でやれてるんだよ?みたいな。分かんないですけど、僕はそう思っとかなあかん、と思ってる。僕は“全部許された”と思ってはいけない。許すかどうかは周りの人たちが決めることで。僕は一生抱えるんだと思ってます。

──十字架を背負って……。

田澤:いやまぁ、そう言ったら被害者っぽく聞こえてしまうから、イヤですけど。

──表現が難しいですね。そういった複雑な想いは根底にありながら、再再演では曲も新しく生まれていましたよね? そういう“次に繋がるもの”があったのも大きかったですか?

田澤:どうだろう? その時はまだ“次がある”とは思っていなかったのでね。だから、曲が生まれたのは、その時の“思いっきり悔いなくやった”という結果の1つですね。

──なるほど、活動の実りとして。“次どうしたいから”という希望としてではなく?

田澤:うん。もしかしたら次への願いはそこに籠ってたのかもしれないですけど。あの時は“次やるなら何年後かねぇ?”みたいな話だったので。だから、今回は“早いなぁ”と思ってますよ(笑)。

──ははは。まだ2年しか経ってないですもんね。

田澤:現状、やらない理由がないので。きっと、やらない理由ができたらやらないんでしょう。でも今回の話が出た時、誰もNOとは言わなかったですから。すんなりと、“いいんじゃないですか?”という感じだった記憶があります。そんなふうにまた活動できるのも、ファンの人らのおかげですけどね。それを受け入れてくれてる、というか。だって結構勝手な話じゃないですか?“解散中”って(笑)。弄ぶようなことをするつもりはさらさらないですけど、動いたり止まったりというところに、もしかしたらドギマギしてる方もいらっしゃるかもしれないですし。でも、いざ“やります”と言った時は喜んで来てくれる人たちがいて。 そういう人たちがいてくれるから、自分らも集まったり、「またやろう!」と言えたりするんでね。それは、忘れたつもりはないです。今後も忘れずにやっていかねばなぁと思っているところです。
──そういったファンの方たち、“Waiveを観たいんだ”と求める方たちに“じゃあ何を見せたらいいんだろう?”というふうに、気持ちが今はシフトして来ているのでしょうか?

田澤:それはもう、再再演の時と今と変わらず、ですかね。言い方が難しいんですけど、その質を上げるというか、より良いものになればいいと思ってます。あと、今回あえて何も考えずにWaiveのステージに臨んだのも実はもう一つ理由があって。現役当時って、そこまで何かを守ろうとしてなかったんですよ。

──それはどういう意味ですか?

田澤:期待に応えなきゃ、とか感動させたいとかって気持ちは当然必要なんですけど、あまりそれを背負い込み過ぎるとやっぱりちっちゃくなるんですよね。現役当時は若かったので、そういう方向でのプレッシャーを抱えて小さくまとまる、ということがなかったから。もちろんエンタメとして必要最小限のクオリティーを守るのは大前提としてあるんですけど、もうちょっと解放してね。“むちゃくちゃやったろう!”ぐらいの気持ちでちょうどいいんじゃないかな?と。それを“現役の頃を意識してる”と表現してしまえばそれまでなんですけど、“当時やっていたことをなぞる”のではなく、あの頃のステージに立ってた心持ちを今持ってステージに立ったら、どうなるんだろう?っていうね。そういう方向に気持ちが変わっている、と思います。

──いい意味で野性味を取り戻す、というニュアンスですかね?

田澤:ああ、そうです、野性ですね。

──頭で考えすぎず枠に捉われないでやろう、というマインドは取り戻しつつ、スキルは前よりもグッと高まっていて、という。最強ですね。

田澤:そう、それができたら最強でしょ? それを今回はお見せできたらいいな、と思って。その第1回目というところで、この間の<MUD FRIENDS>をやってみた、という。

──すごくいい滑り出しだったんじゃないですか?

田澤:はい、すごく良かったと思います、楽しかったし。
■実は僕が一番あるのかもしれないですね
■Waiveはこうじゃないと!みたいなのが

──ところで田澤さんは、いろいろと他の活動もお忙しいですよね? <MUD FRIENDS>はRayflowerのツアーと並行して行われていましたし、そういう中で、Waiveのフロントマンとしてのアイデンティティーの保ち方、モードの切り替えはどのようにされているのでしょうか? 各現場に行けばパッと切り替わるものなんですか?

田澤:あのね、Waiveは特にそれが強いです。だから、他のプロジェクトからWaiveに戻ってくるのは容易いんですよ。簡単にWaiveモードになる。逆に、Waiveモードに慣れていたのを、別のモードに戻すのは難しい。

──それはなぜだと思われますか?

田澤:……歴史ですかね。例えばRayflowerにも歴史はあるし、Waiveにもあるし、それぞれにあるんですよ。でも、バンドの歴史という以前に、やっぱりノリかな?言葉にすると軽く聞こえますけど(笑) 17歳、18歳ぐらいのノリに戻るんですよね。杉本くんとは、まぁMCを聴いていただいたら分かるんですけど、楽屋とかでもあんな感じなんですよ。

──呼吸ピッタリな漫才コンビ感がありました(笑)。

田澤:そうそう、ずっと2人であんなことばかりを言い合えるので(笑)。だからかな? 沁みついてるものがあるんでしょうね。あと、メンバーが同世代だというのもあるし。
──関係性は変わっても、10代までの時間を共有した人たちとのチーム感は基盤として消えないというか、やはり永遠なんでしょうかね?

田澤:うん、永遠かもしれんなぁ……。笑いのツボや、そういう小さいことを含めての感覚ですかね。もちろんみんなそれぞれ大人になってはいますけど、実家みたいな感じなんかな? 知らんけど(笑)。

──メンバーのみなさんは兄弟?

田澤:そうなんですかね?

──兄弟喧嘩もたまにはするけどっていう。

田澤:あぁ、そんな感じなんかな。あと、止まってるから、というのもあるかも。Waiveというものが、形を変えずにそのままあるから。

──解散状態にある、という状態を指して、ですか?

田澤:そうそう。(解散せずに)現在進行形で変わっていってたら、当然曲もいっぱい増えてるでしょうし、方向性も一つじゃなかったかもしれないし。でも、バンドとして今戻る部分は、要は活動していた5、6年間分のWaiveということでしょ? ヒュッと戻れるのはそういうことかもしれないですね。Rayflowerは現在進行形なので、確固たるバンド像を今つくってる最中やから、すごく難しいのかもしれない。Waiveの場合はWaive像っていうのがもうあるから。

──揺るぎないものがある。

田澤:そうです。例えば、“Waiveのヴォーカルの人はこんなんやったわ”みたいなのとかね。
──でも、そのWaive像が、今後膨らんでいったり、進化していったりする可能性もあるんじゃないですか? 4月30日のZepp Tokyo公演に加え、ツアー開催も発表されましたし。

田澤:どうなるんだろう? いやぁ~……でも変わらんと思うな。

──変わらないままでありたい、という願望もあるんですか?

田澤:うーん……まだ分かんない(笑)。例えば“新曲をやるぞ!”となったらまたちょっと変わるのかも。

──田澤さんとしては、新曲をガンガン増やしたい、という想いはないのでしょうか?

田澤:僕はないです。それだと勝てないと思ってるから。もちろん勝ち負けじゃないんですけどね。例えば、「いつか」みたいな曲があるわけですよ、もう既に。そこを目指して“「いつか」みたいな曲”を書いたって、勝てるわけないじゃないですか(笑)?

──いや、でも分からないです
よ?
田澤:でも大変だと思う。だから、これまでに書いてない方向性のものを書くか、一回もう出てる既存の曲と同じベクトルで、更にいいものを書くか、しかないと思うので。

──焼き直しになっちゃいけないですもんね。上回らなければいけない。

田澤:そうそう! 結果的に上回る可能性もあるとは思うんですよ。楽曲というのは聴いてくれた人、ファンのみんなと一緒に育てていくものだから。なので、自分らでその先々の評価はできないんですけど、だからこそ、出すまでの踏ん切りがつかないというかね。“これでホントにいいんだろうか?”って、たぶん最後の最後まで悩むだろうし。

──それはそうですよね、“自分たち内OKライン”が相当高くなっているでしょうし。

田澤:だから、再再演の時の新曲2曲「エンドロール」と「Days.」、あれは見事でしたね。すごくビシッとハマった。ちゃんと今までのWaiveを踏まえて、現在を歌ってるし。かつ、きっと何年後かに歌っても褪せないメッセージがあって。すごいなぁと思います。

──田澤さんは今、ご自身でも作詞作曲されているわけですよね? “Waiveでもつくりたい!”という欲求が湧いてきたりしないんでしょうか?

田澤:ワチャーッとする曲だったら書いてもいいかもしれないですね(笑)。だから、それぐらいプレッシャーなんです。Waiveのストーリーを背負う曲、というのは僕にとってはプレッシャー。自分が書いたら面白いかもしれないけど、それは今までのWaiveとはまた違うことになってくるから。

──やはり、“Waiveブランド”を大事にしなければいけない、という意識が強い?

田澤:うん、僕の中ではそれはあるかな。だから、例えば“自分の想いを書いてみよう”みたいなのがいいことだとは、今は思えないので。無駄というか、“いや、そんなことせんでも”っていうのはあるなぁ……実は僕が一番あるのかもしれないですね、“Waiveはこうじゃないとヤダ!”みたいなのが(笑)。今言ってて気付いたんですけど。

──何も考えてない、というお言葉とは裏腹に。

田澤:これだけいっぱいあるからこそ、何も考えなくて良かったのかもしれないですね。本能で従う、じゃないですけど。
■最近よく言われるんですよ
■善徳が田澤の声を活かす曲を書くって

──解散後、杉本さんのソングライティング力を改めて俯瞰して、“ここがすごいな”とか、評価が変わった部分はありますか?

田澤:あります。Waiveはもちろんですけど、その後、彼がソロで活動している楽曲などもいろいろと聴くんですけど、なんなんでしょうね?あの人。すごいですね(笑)。

──リスペクトがあるんですね。

田澤:ある。“いい曲やな、やっぱ”と思いますよね。“何をもっていい曲か?”というところの、ポイントをつくのが上手だなと思ってます。いいメロディーだからいい曲か?というとそうではなくて、やっぱりストーリーがそこにないとダメだと思うんです。楽曲の持つポテンシャルをフルに発揮させるための道筋をつくるのが上手い、というか。それが作詞だったり、その曲に込めた思いをどういう形であれ語るなり、だったりするんでしょうけど。

──そういう杉本さんが作られた曲を歌う時と、そうではない曲を歌う時、ヴォーカリストとして田澤さんの意識って違いますか? 例えば、杉本さんの曲だと“俺のこういう部分が引き出される感じがするなぁ”ですとか。

田澤:あ! これは最近気付いたことなんですけど、Waiveの曲は(キーが)高いんですよ。
──でも、田澤さんはハイトーンが得意ですよね?

田澤:にしても高いな、と(笑)。“高いなぁ、ずーっと”と僕も思いながら歌ってるんです。自分が自分のために書く曲や、他のプロジェクトの曲だと、ちょっと低めに設定するんです。で、ピークでトップが来るようにする。そのほうが歌いやすいんですね。でも、“それが果たしていいのか?は別問題かもしれない”と、最近、思うようになってきて。“ずっと高いからしんどい”とか“歌いやすいキーだから、いろいろニュアンスを付けることができる”とかいうのは、歌い手である僕の気持ちとか感覚に過ぎないんですよね。例えば、“田澤ってどんなイメージの人?”“いや、もうそりゃハイトーンの人でしょ”となってるんだとしたら、Waiveの方向が正解なんですよ。だったら、“キツッ!”と思いながらも、やっぱりあのトーンは守らなあかん。もっと歌いやすくて“僕のヴォーカル・スキルをいかんなく発揮できます”というキー設定と、シンガー田澤のパブリックイメージにいい影響を及ぼしてるのか?ということは、“別問題なのかもしれない”と思ってきてるんです。

──それは深いお話ですね。

田澤:そうなんですよ。なんで彼がこのキー設定で曲を書くんだろう?と考えると、もしかしたら“これが田澤の「いい声」やんか”という理由なのかもしれない。少々キツいとか、そんなことは知らん、と。“聴いててこの鳴りがいいんだから、ここに設定してるんだよ?”ということかもしれない。それについて話したことがないから、狙ってかどうかは分からないんですけど。

──次のインタビューでお聞きしてみます。

田澤:はい、聞いてみてください(笑)。最近よく言われるんですよ、「やっぱり善徳が田澤の声を活かす曲を書く」って。

──それはいろんな人からですか?

田澤:そう。自分もソロ活動をしていてシンガーソングライターとしてやっていたり、他のバンドもやっていたりするから、複雑なんですけど(笑)。まぁ、どのプロジェクトの曲も自信があるし、聴いた人がどう感じるかは人ぞれぞれだからいいと思ってるんですけど、その声が挙がるという事実はきっと無視してはいけないんでしょうね。だから、自分が自分のために書く曲も、最近、ちょっとキーを上げ出しているという(笑)。
──影響があるんですね(笑)。たしかに、Waiveのライヴを拝見して、真っ直ぐな青春感だったり全力を出し切ってる感を強く感じたのは、あの高いキー設定も影響しているのかもしれません。田澤さんが個人的に“こう歌ったらもっと表現が深まる”というヴォーカリストとしての試みは、もしかしたら他の場でのほうがしやすいのかもしれませんが。何をもっていい歌とするか、ですよね。

田澤:そうそう。だから、それはそれでいいのかな?と。できることをできる場所でやればいいじゃん、というのもあるし。前はね、“人が見たシンガー田澤像ってどんなんやろう?”というのをあまり考えたことがなくて。

──自分が気持ちよく歌えればいい、という感じだったんですか?

田澤:まずそれが先決だろう、と。気持ち良くと言っても、自分のためにじゃなくてね。自信を持って提供するにあたって、“いいテイクが出た!”と自分で思えないとダメだとは思ってたから。ま、それはWaiveだけじゃなくて、どのプロジェクトでもそうなんですけども。最近はだんだんパブリックイメージについても考えるようになって。あと、今は現役の時より声が出るんですね。これってすごいことなんですけど……って自分で言っとん(笑)。でも、それにも困ってるんですよね。ラクに出ちゃうってことに。

──贅沢な悩みにも聞こえますけども。

田澤:うん。だから、あえてそこを大事にしない、というか。だからこの間の<MUD FRIENDS>は、歌はすごく雑でしたよ。でも俺は“それがいいかな”と思ってて。

──ゴツゴツとした粗削りな感じでしたよね。だからこその熱さもあって。

田澤:そうそう、“上手に歌おう”とは1ミリも思わずに歌えたので、楽しかった。たぶんそういうことが大事なんだろうな、と思います。“上手にキッチリ歌おう”みたいなのが、Waiveには合わないんですよ。だけど、それだけでいいか?というと、たぶんダメなんですよね。それは僕らが大人になってしまったから。両方を兼ね備えないといけない。だから、かなり難しいことを実はやろうとしてるのかな?と自分で思ってますけど、やりがいありますわ(笑)。

──昔から追っていらっしゃるファンのみなさんも成熟し、Waiveというバンドの成熟と歩みを今後共にしていけるのも、幸せなことかな?と思います。

田澤:そうですね……でも、どうなんやろう? ファンの人らは止まってるんちゃうんかな? 当時のファンの人らはなおのこと、“あぁ、これこれ!感”みたいなのを求めているというか。

──なるべく当時のままを見たいし聴きたい、と望んでいる、と?

田澤:そうなんじゃないかな?……分からないですけど。僕ね、聖飢魔IIが好きなんですよ。エース清水長官が好きなんですけど、僕が観に行った復活ライヴの時、エース長官はいなくて、ジェイル大橋代官だったんです。そこで僕はやっぱり“「蝋人形の館」のギターソロは長官がいいな~”と、初めてファン心理を味わったんです。“あ、守らなあかんとこはちゃんと守ったほうがいいんや”みたいなね。もちろんジェイル代官のソロは素晴らしいんですけど、当時の“これこれ感”という意味では、そうではないですから。

──なるほど。

田澤:それを自分に置き換えると、最初の4音ぐらいまではオリジナルを守って、あとはアドリブしてもいいかもしれん、とか考えたりね。自分らもそうですけど、ライヴアレンジされてきたものってあるじゃないですか? そこはやっぱり守らなあかんのんかな?とか。“いつもライヴでこう崩して歌う”みたいなアレンジがあって、結構、決まってきてるんですよ。それがもうクセになってるので、自然とそう歌ってしまいますけどね。
■楽しむ!という気持ちしかない
■これが最後になってもいいように

──そこは守っていこう、と。現在進行形のバンドとしてやっていくなら、変化もしないといけないでしょうし、難しいですね。昔の想い出は壊してほしくない一方で、懐メロにはなってほしくない、というファン心理も一方にあるんじゃないでしょうか。

田澤:だから、これはどういうツアーなんだろう?と思いますよねぇ……。

──どうなりそうですか?

田澤:俺はねぇ……うーん、なんか、今が一番いい感じだと思ってるんです。バンドの雰囲気もそうだし、この間の演奏も良かったし。Waiveは、テクニック集団とかでは全然ないんですけど、生意気にもいいグルーヴ出してたな、みたいな(笑)。それがバンド感なんかな?と思ってて。それが今出るって何よ?とは思ってるんですけど(笑)。でも、それって個々の意識の表れだと思うんですよ。意識しないとできないことだから。“あ、なんや、みんなちゃんと考えたな”みたいな。今までにもWaiveのノリというのはあったけど、それにさらに何かちょっと、巧さ……と言うと矛盾するんですけど。でもちゃんとみんなそこに意識を置いてるなというプレイやったから。あくまでも僕の感じたことで、本当は違うかもしれないですけどね。

──お互いの音をちゃんと聴き合っているからこそのグルーヴが生まれている、とは私も随所で感じました。

田澤:うん、なんかいい感じだなぁと。この感じでもって、現役の頃にやっていたことをやる、ということかな。……どうなるんでしょうね(笑)。
──セットリストはこれから決めていくんですよね?

田澤:はい。でも、新曲が入るとなったとしても、きっとそんなには増えないじゃないですか? “新曲を10曲書きます”とか、たぶんないと思うので。だからやっぱり、既存の曲たちが中心に組み込まれるわけでしょ? “じゃあ何をどう見せるの?”となった時に、どうなるか。これまでの再演や再再演でやってない曲、映像として残ってない曲もあるので、“そういえば、あんな曲あったな”とかね。“そういうのを今やってみたらどうなるんだろう?”というのは、興味あります。

──楽しめそうですか?

田澤:もう僕は“楽しむ!”という気持ちしかないです。これが最後なのかもよく分からないんですけど、燃え尽きたい感はちょっとあるかも。これが最後になってもいいように。

──最後、と決めるわけでもなく、ですよね?

田澤:それはもう、全然。続くなら続いていいし。でも、出し切りたいな。そのぐらいの感じでちゃんと燃え尽きることができたら、またやれるんですよね、きっと。“もう1回やろうぜ!”となるんでしょう。本当に、もう一回こうやって集まれた、ということが貴重だと思うんです。今回はたまたま前回から2年のスパンでやることができたけど、次いつこのチャンスが訪れるのか、僕らにも分からないので。見届けてほしいな、というのはありますけどね。各地へ行きますから!

──全国のファンのみなさんが、きっと喜ばれますね。

田澤:うん、だといいけど。“最後だから来いよ”と言うつもりはないですけど、でも、今が観てほしい状態である、というのは胸を張って言えるので。自信はあります!

   ◆   ◆   ◆

“懺悔”の念に貫かれていた再演、“もう「ごめんなさい」は言わない”と意識を変えて取り組んだ再再演。自身の脱退表明がバンドを解散へと導いた田澤は、複雑な想いを当然、抱えていた。3度目の再演に向けた想いを尋ねる時、私は、新曲をつくってコンスタントに活動していく(本人の言葉を借りれば“現在進行形”の)バンドに戻ろうとする、もっと強く分かりやすい言葉を期待していたのかもしれない。しかし、田澤は分からないことは率直に分からないと答え、過剰なリップサービスはしなかったし、もちろん、その先がないとも断言しなかった。“これが最後になってもいい”という心意気で、出し切ること。その果てにしか次はない、ということが真実なのだろう。

インタビューの最後、「話したはいいものの“やはり書いてほしくない”内容はありませんか?」と確認すると、「いや、ないです。本音の中から、何かここ(ツアー日程表を指しながら)に繋がればいいかな?と思ってるから」と田澤は潔かった。次回は、杉本善徳(G&Vo)へのインタビューだ。Waiveの今、そしてこれからについて、また真正面から尋ねてみたい。

取材・文◎大前多恵
撮影◎Viola Kam (V'z Twinkle)
■<Waive TOUR「Wave to Waive」>
2月09日(土) 柏PALOOZA
Open16:30 / Start17:00
2月11日(月・祝) HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
Open16:30 / Start17:00
3月17日(日) 仙台HooK
Open16:30 / Start17:00
3月23日(土) 福岡DRUM SON
Open16:30 / Start17:00
3月24日(日) KYOTO MUSE
Open16:30 / Start17:00
4月06日(土) 大阪BIGCAT
Open16:15 / Start17:00
4月07日(日) 名古屋Electric Lady Land
Open16:15 / Start17:00
▼チケット
¥6,500 (税別・ドリンク代別)
一般発売:2018/12/22(土)~
(問)Zeppライブ 03-5575-5170
【最速オフィシャHPチケット先行受付】
受付期間:2018/11/13(火)19:00〜11/26(月)
http://www.waivewaive.com/gigs/


■<Waive GIG「サヨナラ?」愛しい平成よ>

2019年4月30日(火) Zepp Tokyo
Open17:15 / Start18:00
▼チケット
前売料金:1Fスタンディング ¥6,500(税込・Drink代別)
※入場者全員に新録「Dear」のCD音源をプレゼント
一般発売:10/27(土)10:00〜
イープラス http://eplus.jp/waive-gig/
チケットぴあ http://w.pia.jp/t/waive/
ローソンチケット https://l-tike.com/waive
楽天チケット http://r-t.jp/waive
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888

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