内田真礼、『ラヴ・レターズ』インタ
ビュー 「メリッサという一人の女性
をお客様に伝えたい」

1990年に幕を開けて以来28年間、年齢も個性も異なった様々な延べ470組のカップルが読み続けている朗読劇『ラヴ・レターズ』。2019年11月14日(水) ~11月18日(日) サンシャイン劇場にて行われる公演の18日の回に、声優としてだけではなく、俳優、歌手としても活躍する内田真礼が味方良介ともに出演する。本作は舞台上にテーブルと2脚の椅子が置かれ、二人の役者がある男と女の50年間の手紙のやり取りをつづった台本を読む朗読劇だ。公演が迫るなか、声のプロフェッショナルである内田に作品への思いを訊いた。
ーー『ラヴ・レターズ』は初演から2018年まで、28年行われている公演ですが、出演のオファーがきたときどう思われましたか。
すごくうれしかったです。朗読劇は今年『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』に出させていただいて初めて触れましたが、すごく興味のある世界だったんです。私は声優という役者業をしていますが、朗読劇は舞台でお客様の前に立ちながら台本を持って芝居をする。作品を表情や細かい身体の動きからも読み解くことができる。そんな朗読劇という舞台に興味があったので、1年で2度もおはなしを頂けて、すごく運命的な出会いだな、と感じました。​
ーー台本を読んだときはどんな感想を持ちましたか
初めて読んだときは、舞台がアメリカなので遠いところのお話なんだと思いました。ですが、読んでいくと、どんどん自分のように思えてきて……。物語の題材がお手紙で、それも心の底にある痛い部分を突いてくるようなお手紙。主人公たちは自分にはまだ経験していない年代まで経験していきますが、その時間の出来事までも自分のことのようにささるような……そんなお話だな、と感じました。物語なんですけど、実際にあるような気がして、何度も読みたいんですけど、読むのが怖いような、そんな風にも思いました。読み返していくとどんどんお話がリアルになっていくんです。
内田真礼
ーー相手役の味方良介さんにはお会いしましたか? どんな印象でした
一度きりの稽古でお会いしました。そのときだけでの印象ですが、とても真面目な方だなと思います。お芝居中、台本を持って朗読をするのでお互い顔を見合わせることはほとんどありません。声だけをずっと聴いている状態なんです。味方さんが演じるアンディーの役柄もあるかもしれませんが、声がとてもストレートに響く方だなとも。だからなのか、何となく、からかいたくなるようなイメージです。真っ直ぐすぎて少しつんつんってしたくなります(笑)​
ーー演出の藤田俊太郎さんはどういった方でしたか
藤田さんは面白くて、素敵な方でした。稽古のとき、『ラヴ・レターズ』のストーリーを私たちのために読み解いてくれて、初演から去年お亡くなりになるまで演出を手掛けられていた青井さんの想いを伝えてくれる使者のような方でもあります。『ラヴ・レターズ』の世界観を丁寧に説明してくださって、私の真っさらな台本に少しずつエッセンスのように入れていってくださった。藤田さんが醸し出す柔らかなオーラがあるからこそ、私の中にすっと入ってきて、メリッサと私を繋げてくれたのではないかと思います。​
ー―稽古ではどのような演技指導を受けましたか
細かい演技指導はあまりなかったですね。味方さんと合わせた後、最初の段階から「(藤田さんの真似をしつつ)いいですね。大丈夫だと思います」って(笑)。 「すごく優秀です」みたいな感じで。厳しい指導はなく、任せてもらったような感じでした。でも一冊の本をいただきました。アメリカについて書かれている本で、「これを読めばWASP(ワスプ)についてわかる」って言われて。稽古がないぶん台本を読み込んでくださいと言われていますので、台本とともにこれからしっかり読んでいきます。​
ー―『ラヴ・レターズ』のなかで演じるのが楽しみなシーンはありますか
アンディーとメリッサがケンカするシーンですね。二人は互いに手紙を送りました、受け取りましたというやり取りをしていますが、まるで会って会話をしているような空気を感じます。とくにケンカのシーンは二人のいる場所は離れているのに心の距離はすごく近い気がして……。そこが演じていて楽しいですね。思わず顔にも感情が出て、味方さんの朗読を聞いている最中、「嫌だなぁ」とか「なに言ってるんだろ」とか思う瞬間もあって、そのムカムカする気分も面白くなってきます。メリッサの感情が出ているシーンは好きですね。​
内田真礼
ー―メリッサ、アンディーのキャラクターについてはどう思いますか
メリッサは自由奔放で、同じ女性としてわかる部分は多いです。彼女は人生を駆け足で進んでいった。自由だからこそ、その生き急ぎ感がわかるなって思います。じっくり待ってなにかをなすのではなく、瞬間瞬間を切り取って生きているようで。彼女は画家としての人生の道はあってもそのほかのことについては細切れに思えたんです。それに、感情の揺れ幅が大きくて、そんなところが女性らしいですね。アンディーについては、「あーわかってないなぁ」って思うところがいっぱいあって(笑)。 手紙だから仕方がないのですが、二人のやり取りがもどかしくて……。「電話して、アンディー!」って何度も思ってしまいました(笑)。 なかでも、アンディーが書いた長い手紙にとくに腹が立ちました。手紙なのに女性の影を感じるというか……(笑)。メリッサの気持ちをなんだと思ってるんだー! って思いました。メリッサが手紙を読むのが苦痛になる気持ちがわかります。でも、これはおそらく男性側からみると女性ってこうだよな、なんでほかの男と……ってシーンもあるので、お互いさまなのかもしれません。アンディーとメリッサの関係は老若男女問わず、おそらく国も飛び越えて誰もがわかる、わかると思うでしょうね。
ー―『ラヴ・レターズ』の軸となる手紙ですが、内田さんは学生時代にラヴレターを出したことは?
ラヴレター……残念ながらないですね。もらったこともないです。ラヴレターに憧れたことはあるんです。だけど小学生の頃から携帯電話を持っていましたので、なかなか手紙自体を書くことはありませんでした。今でも書いてみたかったなと思うので、いつかは出してみたいです。​
ー―『非公認戦隊アキバレンジャー』(2012年)に出演されたり、俳優としても活動されることがありますが、今回のように所謂“顔出し”の仕事に意欲的な部分もあるんでしょうか?
声優のお仕事とは違うものだと認識していますが、とても面白いなとは思っています。アニメのアフレコも好きですが、顔を見合ってできるお芝居も大好きで、すごく近くに相手役の方を感じられるのがいいですね。共演者と空気感を合わせたりするのも好きです。不思議なことに『非公認戦隊アキバレンジャー』や『ラヴ・レターズ』もそうですが、よい機会をいただいていますので、そこにだけ向かうのではなく、出会いがあれば出演したいとは思っています。​
内田真礼
ー―声優というよりは、表現者として様々なことを行いたい
そうですね。『ラヴ・レターズ』はメリッサを物語の人物としてだけではなく、現実にちゃんと残したいと思っています。メリッサを演じている間、11月18日18時30分から(公演日)の約二時間、メリッサが輝く時間を作りたいです。私が演じることによってメリッサがこの時間、この場所に存在したんだとお客様に思われるような表現者になれたら幸せです。​
ー―先日8枚目のシングル「youthful beautiful」を発売され、2019年1月1日には日本武道館でのライブも控えてます。この舞台の事も含めかなり多忙だと思いますが、切り替えは大変ではないですか?
大変ですね。ただ、私は一つの仕事が終わればすぐに次のことを考えられるので、自分でもスイッチの切り替えはうまいと思っています。今日は顔合わせ、明日はアフレコ、明後日はイベントというように、その日、その日のことだけを考えて、切り替えられるのでなんとかやれているのかなとは思います。だけど、たまに夜明日から一週間のことを考えて「わーっ!! これどうしよう!」ってなることもありますけどね(笑)。 私は夜が一番ダメで太陽が昇ってくると大丈夫なので、わーっとなったときは寝てしまいます。翌日、太陽とともに「よし、がんばろう!」って思えますから。​
ー―内田さんのファンはアニメから入った方が多いかと思います。そんな方にアニメ発ではない、朗読劇『ラヴ・レターズ』を楽しんでもらうには、なにか心構えが必要でしょうか?
今回の会場が池袋のサンシャイン劇場じゃないですか。そこに行くってことはなんだかすごいことですよね。お出掛けって感じで、おしゃれしないとダメだという気持ちになります。おそらくファンの方もそうだと思うんです。何着ていけばいいのかな……って悩む方もいるはず。でも、何着てもいいと思うんです。ファンの方で「ライヴTシャツ着ていきます」ってメッセージをくれた方もいらっしゃいますし、それでいいと思うんですよ。ですから、普段通りの服で来てください。最初は緊張するかもしれませんが、舞台が始まれば物語に引き込まれて気にならなくなると思います。​
朗読劇って意外とハードル高くないよって皆さんに言いたいですね。構えて観ていただくよりも、観ていたら自然と入ってくるでしょうし、メリッサとアンディーがいつの間にか寄り添っていた……と感じるのではないでしょうか。だから、観たことがないからといって疎遠にはならないで欲しいです。私がメリッサという一人の女性をお客様に伝える瞬間を見届けてください。​
内田真礼
取材・文=加東岳史 撮影=福岡諒祠

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