【連載】フルカワユタカはこう語った
第25回『人生は上々だ』

“1年生になったら、友達100人できるかな”──いや、実際、100人も友達いたら大変だっつうの。困った時に沢山の友達がいれば確かに心強いけど、同時にそれだけ沢山の人から頼られるってことをみなさん忘れちゃいませんか? 都合良く。
アドラー心理学曰く「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」が、仮に真実だとすれば、一番の解決策は人とつきあわないことだ。高校生くらいから半ば本気でそう思って生きてきた。上々な人生を過ごす為には人間関係をなるべく簡略化すべきだと。友達なんてせいぜい3人もいれば十分。木下理樹 (※ART-SCHOOL) と須藤寿 (※髭 HiGE) と……。
▲<フルカワユタカ presents「5×20 additional, PlayWith シックス」〜with 6 & STOMPIN' BIRD〜>8月31日(金)@下北沢SHELTER w/ HAWAIIAN6, STOMPIN' BIRD

「古川さん (自分ではコミュ障みたいなこと言ってますけど)、コミュ力高いですよ。自分の話ばっかりあんなにして、嫌味にならないっていうか、聞いてもらえる人って中々いないです」

決して褒めているわけではなさそうだが、片言の英語で台湾人やフランス人とも秒速コミュニケーションをとれる“コミュニケーションお化け”こと、リズムメーカーズのドラマー“ダゼ” (※DAZE / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS)が僕を評してそう言った。他人に、しかも後輩に「コミュ力高い」なんて言われたのは初めてだ。が、確かに最近自分でも不思議に思っていた。なんだか随分みんなに受け入れてもらえてるな、ここんとこの僕の周りは随分賑やかだな、と。こんな僕にもしかして“友達100人できるかな”。
▲<フルカワユタカ presents「5×20 additional, PlayWith シックス」〜with 6 & STOMPIN' BIRD〜>8月31日(金)@下北沢SHELTER w/ HAWAIIAN6, STOMPIN' BIRD

10月13日、土曜日。恵比寿リッキドルームにて開催された<木下理樹生誕祭2018〜BAN NEN〜>に向かう準備をしながら、ユウタ(※YUTA / HAWAIIAN6 )に「明日のエコーズ(※HAWAIIAN6主催イベント<ECHOES 2018>) よろしく!」的なメッセージを送ろうとスマホをいじっていたら、見覚えの無い簡易メモに気がついた。

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9月25日(火)
<メモ>
「ユウタのお勧め/ ギャラリーフェイク りゅうりゅう ライトニングボルト」

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この日の2週間前、「クジャクとドラゴン」(ユウタと共作した12月発売コラボ両A面シングル収録曲)の完成を祝して、ユウタとダゼと僕の3人で打ち上がったのだが、その際にユウタとの会話の中から拾ったワードをどうやらメモっていたようだ。かなり深酒をしてしまって、夕方から翌朝へタイムトラベルをしたため、ワープのピーク時に書いたであろうこのメモはすっかり忘れていたのだが、最後の『ライトニングボルト』という“小説”のことだけは覚えていたようで、<ECHOES 2018>で感想を聞かせようと打ち上げの翌日から電子書籍で読み進めていた。

ちなみに、LINEをしないユウタとのやりとりはもっぱらショートメールのメッセージ。そのテンポ感の良い文面から“この人は本を読むんだろうな”と想像していたが、やはりそうだった。打ち上げでは、自分の好きな作品・作家の話でアレやコレやと盛り上がっていき、伊坂幸太郎で意気投合。普段出来ない音楽以外の趣味談義に酒の勢いも相まって、ダゼを置き去りにするほど大いに盛り上がった。ユウタが一番好きな伊坂作品『ライトニングボルト』。伊坂幸太郎と阿部和重の完全合作という実験的なエンタメミステリーだ。

“人生に大逆転はあるのか? 小学生のとき、同じ野球チームだった相羽時之と井ノ原悠。二十代後半で再会し、一攫千金のチャンスに巡り会った彼らは、それぞれの人生を賭けて、世界を揺るがす危険な謎に迫って行く”──というのはAmazonの書評なのだが、いわゆるバディ(相棒)ものという点、2人の作家による合作という点が、なんだか今回のユウタと僕の合作というところにかかってるし、内容も「クジャクとドラゴン」の詩の世界観&スピード感にぴったりとはまっていて、もしやユウタはあえてこれを勧めてきたのかな、とさえ思ったほどだ。相羽時之がユウタで井ノ原悠が僕か。
▲<フルカワユタカ presents「5×20 additional, PlayWith シックス」〜with 6 & STOMPIN' BIRD〜>8月31日(金)@下北沢SHELTER w/ HAWAIIAN6, STOMPIN' BIRD

実際のところはたまたまなんだろうけど、ユウタってそういうとこあるよなあ、年下だけど粋だよなあ、なんかいいなあ、なんて思いながら一気に読了。ですがね。拝啓、安野勇太様。先ほど来、一つ問題が発生しております。大問題と言っても過言ではないでしょう。

僕が読んだ本のタイトルはそもそも『キャプテンサンダーボルト』なんですけど、メモ書きにあるこの『ライトニングボルト』ってなんでしょうか? どちらも稲妻ではありますね、はい。『キャプテンサンダーボルト』、本当に面白かったし、このタイミングでこの内容、偶然とはいえ粋だなあ、なんてこっそり感極まっておりましたが。
『ライトニングボルト』………
『サンダーボルト』………
どちらも稲妻ではありますね、はい。え?酔った俺が『サンダーボルト』って言われたのに『ライトニングボルト』って勝手に稲妻変換したってこと? それとも『ライトニングボルト』って本を勧められたのに間違って『サンダーボルト』を読んでたってこと?

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10月13日(土) 21:29
<メッセージ to ゆうた>
「明日よろしく!!!!!!!!!!」
「は、いいとして。。。。今『サンダーボルト』読んでんだけど、あの日の俺のメモには『ライトニングボルト』って書いてあるのよね。。。」
「『サンダーボルト』であってる? それともラ『ライトニングボルト』って作品があるのかしら?」

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10月13日(土) 21:51
<メッセージ to 古川裕>
「『ライトニングボルト』はバンドだなwwwwwwww なんか色々話がごっちゃになってるねw 確かに『ライトニングボルト』の話もした気がするしwwww」
「相羽いいよなー 『キャプテンサンダーボルト』であってますw」
「明日よろしくね!!」

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まさかユウタから二種類の稲妻を勧められていたとは、何たる“たまたま”。焦った焦った。わろたわろた。ちなむと、『ライトニングボルト』もめちゃめちゃかっこよかったので、よろしければ、みなさん是非。からの恵比寿。
▲<木下理樹生誕祭2018〜BAN NEN〜>10月13日(土)@恵比寿LIQUIDROOM

“日本のカートコバーン”だとかなんだとかの触れ込みでギザギザとやってたあいつが、カートの享年をとうに追い越して早13年。しっかりと40歳のおっさんになった。10月13日にリキッドルームで行われた<木下理樹生誕祭>、ロックミュージシャンが朽ち果てて行く己の様をファンに祝ってもらうとはいかにも滑稽、とか思っていたけど、よくよく考えたら僕も去年今年としっかり誕生会を開いてるじゃない。でもな、あれは実質須藤君の誕生会を一生懸命ホストしてるだけだから、全く自分の誕生会な感じじゃないんだよな。たった365日早く生まれただけのくせに、フェアじゃないよな。

いや、須藤君って本当にフェアじゃないんだよ。この<木下理樹生誕祭> (須藤君もゲスト出演)だって、2週間前くらいに「2曲ほど僕のステージでギターを弾いて欲しい」って言ってきて、それは別にいいわけ。もちろん須藤君の狙いは自分であんまりギターを弾きたくないってことなんだけど、そこは構わないわけ。曲も「青空」「テキーラ」と知らない曲を覚えなきゃいけないわけでもなかったし、全然フラットな気持ちで「了解ですー」と。それはいいんだけど、あいt、あのやr、あの人、2日前になって「ギターを貸して欲しい」って言ってきてさ。言い分としては「段取りが悪くなって、ダラダラしちゃったらフルカワ君に申し訳ないからさ」って。「いや、大丈夫ですよ、ダラダラしても、全然」って思ったんだけど、まあ、もう貸したほうが色々スムーズなのは分かってるんで「いいですよ」って。でもね、知ってるんですよ、僕は。持ってくるのが面倒だっただけですよね? そもそも僕以外の人には「貸してくれ」なんて言わないでしょ。

てなことを「ギターは貸しますけど~、うんぬんかんぬん、プンスカプンスカ……」って楽屋で嫌味言ったのよ、須藤君に。そりゃあ、それくらい言わせてくださいってことで。「本来、楽器の貸し借りなんてプロはしませんから」って。そしたらね、あの人ステージでそれを言いやがって。「フルカワ君に、ちょっとギター借りたらさ、ぐちぐちぐちぐち言ってくるんだよ。“プロは貸し借りしない”とかなんとか。“須藤君だからですよ!!”って。ははは。みんなにも貸せっての~」──それ聞いてお客さんがゲラゲラ笑って。そこから一息入れて、新曲の「君の世界に花束を」でしっとり決めて「木下君、おめでとう!!」って。ムキーっ!!!!

木下の<生誕祭>の話だったっけ(笑)。木下、誕生日おめでとう。MCでも言ったけど、現時点で俺たちのキャリアはもはや短いとは言えないわけで、もうこうなったらやたら長くやってこうぜ。極細でもなんでもいいから長生きしながら。そりゃあ良いほうがいいけど、たまには悪くてもいいやもう。とにかくいっぱい音楽つくろうぜ。
▲<フルカワユタカ presents「5×20 additional, PlayWith シックス」〜with 6 & STOMPIN' BIRD〜>8月31日(金)@下北沢SHELTER w/ HAWAIIAN6, STOMPIN' BIRD

翌10月14日、日曜日、新木場スタジオコースト、HAWAIIAN6主催<ECHOES 2018>。メロコア、ハードコアが入り乱れて、前日の<生誕祭>との空気感のギャップがドクターフィッシュのいた足湯から滝行に来てしまったくらい凄い。

しかしみんなかっこいい。やってることに筋が通っているからだろうな。雑念なしでパンクというジャンルに全力で筋を通しにいってる感じが本当に潔くて。ごっついメンツの中で居場所がなく、あっちゃこっちゃと歩き回っていたおかげで殆どのバンドを見れたのだが、全部かっこよかった。それにみんな持ち時間を全然押さない。そこら辺のロックイベントのほうが全然お行儀悪いよ、本当に。

はっちゃん (※HATANO / HAWAIIAN6)が昔、「俺たちの<AIR JAM>を」なんて言ってたけど、これは全然<AIR JAM>じゃないけど、これ目指してたんだな、はっちゃん。このメンツでコースト即完して。この空気、この内容。でかした。素晴らしい。来年も再来年もその次もずっと頑張れよう。心から応援するぜ。
▲<フルカワユタカ presents「5×20 additional, PlayWith シックス」〜with 6 & STOMPIN' BIRD〜>8月31日(金)@下北沢SHELTER w/ HAWAIIAN6, STOMPIN' BIRD

僕のコミュニケーション能力が本当に高いのかは良く分からない。群れるのは苦手だし、一人でいるのが相変わらず好きだし、無理して人付き合いしてないし、盛り上がる人と盛り上がらない人との振り幅も以前より大きくなった気がする。これって前より人見知りしてね?

ただ、昔と違うのは人を知ることも人に知られることも随分と好きに、いや、好きにじゃないな、“楽に”なったことかしら。「自分の話ばっかり、あんなにして、嫌味にならない」って、もしかしてダゼはそのことを言ってんのかな。

まあいいや。ご覧のようにここんとこの僕の周りは随分賑やかで、とりあえずこの人生は上々だ。

撮影◎山本倫子 (フルカワユタカ presents「5×20 additional, PlayWith シックス」)/中野敬久 (木下理樹生誕祭2018)

■コラボ両A面シングル「クジャクとドラゴン / インサイドアウトとアップサイドダウン」

2018年12月5日(水)発売
NIW143 1,852円+税
1. クジャクとドラゴン feat. 安野勇太(HAWAIIAN6)
2. インサイドアウトとアップサイドダウン feat. ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
▼Bonus track
9/26@下北沢440 アコースティックライブ音源10曲収録予定
※ボーナストラックはデジタルリリースなし。CDのみ収録
■<フルカワユタカ ワンマンツアー「ロックスターとエレキギター」>

▼2019年
1月26日(土) 千葉LOOK
2月03日(日) 神奈川・横浜BAYSIS
2月09日(土) 静岡UMBER
2月10日(日) 京都MOJO
2月11日(月・祝) 岡山・ペパーランド
2月23日(土) 埼玉・西川口ハーツ
3月01日(金) 福岡・Queblick
3月03日(日) 北海道・札幌COLONY
3月09日(土) 宮城・SPACE ZERO
3月10日(日) 福島・郡山PEAK ACTION
3月22日(金) 石川・金沢vanvanV4
4月13日(土) 大阪・梅田シャングリラ
4月14日(日) 愛知・APOLLO BASE
4月21日(日) 東京・WWW
▼チケット先行受付
受付期間:11月1日(木)18:00〜11月11日(日)23:59
受付URL http://www.sma-ticket.jp/artist/furukawayutaka

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