Ms.OOJA 貫地谷しほり、真矢ミキ、
浅尾美和ら5人の女性との対話から生
まれたコラボEP『Stories』を語る

シルキーボイスで今を生きる女性の心を代弁するMs.OOJAの新作は、貫地谷しほり(女優)、近藤くみこ(ニッチェ/お笑い芸人)、真矢ミキ(女優)、浅尾美和(元プロビーチバレー選手)、井上麻矢(劇団こまつ座代表・作家)という5人の女性との対談から生まれたコラボレーションEP。“あなたの物語は、わたしの物語。”とキャッチコピーにあるように、そこには5人の女性の5人のストーリー、そして5つの愛のカタチがあった。
オリジナルを作ってるのにカバーしてるみたいな感覚だった。ひとの人生を歌ってるのに、自分の人生を歌うより深いモノがありましたね。
――これまで、カバー企画を多く手掛けられてきましたが、今回、共作詞楽曲を作るというアイディが出たきっかけを教えてください。
2月にアルバム『PROUD』を出して、「次は、ちょっと普通じゃないことをしたいね」って話しをしていた中で、スタッフが提案してくれました。「いいね、それ! 大変そうだけど、面白そう」ってなって(笑)。
――5人の女性の人選の基準は?
この人の言葉を集めて人生を歌ってみたいなと思った人。基本的には私と繋がりがあって、興味を持って話を聞いてみたいと思った人なのですが、私の中で“色気のある人”っていうカテゴリーの方たちです。
――勝手に“恋愛の歌”を集めたEPになるのかと思っていたのですが、出来上がった曲を聴くと、まさにキャッチコピーに“あなたの物語は、わたしの物語。”とあるように、いろんな女性の人生のストーリーがあって。
私自身も最初は、恋愛の歌になるのかなって思っていたんです。でも、さまざまな愛のカタチが出てきて、おもしろかったですね。同世代のしーちゃん(貫地谷しほり)、くみこ(ニッチェ近藤)、(浅尾)美和ちゃんにはそれぞれに違う愛のカタチがあったし、先輩である真矢さんや井上さんには達観しているものがあって。でも、一貫して愛の歌になりました。
Ms.OOJA、貫地谷しほり
――リード曲が女優の貫地谷しほりさんとコラボした「星をこえて」なので、この曲を中心に制作についてのお話を伺いたいと思います。まずふたりで対談をして、そこで出た話をもとに曲を作っていくというやり方がおもしろいと思いました。対談の様子は『Stories』のスペシャルサイトに動画とテキストで公開されていますが、あえてこの過程を公開した理由は?
その風景を残しておきたくて、カメラを入れました。本当にこの対談から作詞が始まっているから、その時の空気感を見てもらうのもいいかなと思って。しーちゃんはプライベートでも友だちだから、途中からカメラを忘れて、お互いけっこう素で喋っています(笑)。こういうインタビューもそうだけど、普通はテーマがあって対談するものでしょう? そうじゃなくて、ただ人生について語るっていうのが、自分の中ではおもしろい経験でした。
――テーマが決まっていく過程は、『Stories』のスペシャルサイトを見ていただくとして、話をしながら、テーマやワードを探していった感じですよね。
でも、何が出てくるかわからない(笑)。人生観とか恋愛観って、人それぞれ考え方が違うし、持ってる言葉もぜんぜん違うから“この人はどんな言葉、どんな考え方を持っているんだろう?”って思いながら。友だちだから知ってる部分もあったけど、知らなかった部分もたくさんありましたね。
――光栄なことに、私が「星をこえて」の対談をまとめさせていただいたのですが、実は「カメラが回ってると、言えないことがあるよね」という、OOJAさんの提案で、ちょっとだけカメラを止めた時間がありましたよね。短い時間でしたが、男子スタッフに退場してもらって、完全に女子のみで(笑)。
そうそう。しーちゃんが「普段は台本で演じるから自分のことを話したことがないし、何を表現していいかわからない」って言っていたし、恋愛の本音トークはしにくいかと思って。でもカメラを止めたことでさらに素になって、弾みがついたかもしれません(笑)。
――貫地谷さんとの対談では、最後に“違う星から来たふたりだから、出会えただけで感謝”というパワーワードが出ました(笑)。
それは恋人だけじゃなくて、自分のまわりにいてくれる人、全員に言えることだって言ってましたね。
――対談の翌週にはスタジオ入って、完成。すごく早いなと思ったのですが。
本当は対談が終わった瞬間に、そのままスタジオに入りたかったんですよ。対談中にメモしていた言葉から歌詞を作っていって、だいたい5~6時間で最初の形ができあがりました。しーちゃんが手づくりの低糖質のおからチーズケーキを持ってスタジオに来てくれて、歌詞を作っている途中に「ここは、こう思う」っていろいろ意見をくれて。

――貫地谷さんは、ミュージックビデオ(MV)にも出演されていますね。
スタジオに来てくれたときに「MV出たい!」って言ってくれて、実現したんです。インスタでも「すごく楽しい経験でした」って書いてくれて、うれしかったです。
――作品が完成して、改めて気付いたことはありますか。
貫地谷しほりは、人を愛することに躊躇がないというか、傷つくことをいとわない。人を愛する力がある人だなって、作ってみて改めて感じました。そして、彼女の行動力、決定力はホントにカッコいいなって(笑)。人間として尊敬しますね。最初は、「歌詞を作るなんて無理」って言われたんだけど、一緒にランチに行って「しーちゃんが書くというより、しーちゃんの言葉を私がもらってそれを曲にするって感じだから」って説得したら、「じゃあ、やる」って軽く言ってくれて(笑)。出会ってからゴハンに行くまでもそうだったけど、本当に決断が早い(笑)。
――そういえば対談のとき、「カラオケ行こう」って盛り上がってましたが。
あ~、行きました。くみこも一緒に(笑)。すごく楽しかったですよ。しーちゃん、歌もいいんですよ。女優さんは、違いますね。
Ms.OOJA、真矢ミキ
――2曲目は、女優・真矢ミキさんとの共作詞曲、「蒼波」です。真矢さんとのご縁は?
毎年、遊助さん(上地雄輔)のライブでお会いして。そういう中でLINEのやりとりをさせていただくようになって、お願いしたんです。真矢さんもしーちゃんと一緒で、決定力があるんですよね……。
――でもOOJAさんと真矢さんって、イメージが似ていると思います。女性が憧れる女性というか……。
うれしいな。真矢さんは、私にとっては憧れの人。テレビで見てる真矢さんのイメージは、凛として強い女性だけど、ご本人もそのままで。会ってみるとさらにかっこいいし、さらにステキ。愛が深い人だと感じました。話すだけで元気にしてくれる方。憧れの人だから、どうやって生きれば真矢さんみたいになれるのかを知りたかったんです。
――<あとどれくらい会えるかな>って歌詞にドキッとしました。
お父様が亡くなられたし、50代になられて、身近な方を見送ることも多くなってきたって話してくださって。しーちゃんとちょっと似てるんだけど、誰かと一緒にいられるのって、当たり前のことじゃないんです。いつかは必ず、いなくなってしまう。でもその人がいなくなっても、生きていかなきゃいけないんですよね。真矢さんは、「自分に残されている時間も少なくなっているから、愛する人が増えることに抵抗がある。自分があとどれくらい大切に出来るか分からないから」っておっしゃられたんですけど、そういう考え方に、私もなっていくのかな……。本当に人を愛することができる人だからこその言葉だと思いました。
――先輩、スゴイっすね。
スゴイっす(笑)。曲もそうだし、歌詞もすごくシンプルになりました。真矢さんの話は削ぎ落とされていて、すごくシンプルで。それは表現しないといけないと思ったんです。自分に真矢さんの言葉を憑依させて、真矢ミキになりきって書きました(笑)。こういう曲調って、自分のキャリアの中にはなかったんですよね。井上麻矢さんの「あの日のメロディー」もそうだけど、年上の方の話を聞いて、その人のイメージで作るから、自分にないものが作れた。2曲共、削ぎ落とされた曲になったのは、その人の人生と同じなのかなと思いました。
Ms.OOJA、浅尾美和
――3曲目は、元ビーチバレー選手の浅尾美和さんとの共作詞曲、「愛しい人よ」ですが、アスリートという人選も意外でした。
同じ三重県の、隣町の出身なんです。アスリートって独特の純粋さがあるんですよね。自分のすべての時間を懸ける、明確な目標があるからなのかな?
――でも、厳しい世界ですよね。
真剣にオリンピックを目指していたからこそ、辛かったと思います。外国の選手とは体格も違うし、どんなにトレーニングをしてもかなわないから引退を選んだそうです。オリンピックじゃなくてもビーチバレーはできるけど、それじゃ意味がないって。それくらいまっすぐに、オリンピックを目標にしていたんです。それもスゴイけど、だから恋愛もぜんぜんしなかったっていうのもビックリで。恋愛のしかたもわからずに、引退してから1年半くらい、今のダンナさんに片思いをしてたそうです(笑)。
――国民的アイドルだったビーチの妖精が、片思い?
そう、あんなかわいい子が! ぜんぜんモテなかったって言うから、「うそでしょ?」って(笑)。ピュアすぎて、誰も手だしできなかったんでしょうね。でも片思いしてた人と結婚できて、その人の子どもがいて、今は幸せすぎるくらい幸せなんですって。久しぶりに会ったんですけど、透明感はそのままで、そこにお母さんっていう強さが加わって、すごくステキな女性になっていました。
――そんな浅尾さんの幸せな現在が、「愛しい人よ」の歌詞の中にたっぷりと描かれていますよね。愛する人に囲まれて生きているリア充感! 日常が歌から想像できてしまう(笑)。
そうなんです。彼女の日々をそのまま歌詞にしたけれど、心からその幸せを祝福できるんですよね。美和ちゃんの話を聞いていると、自分も幸せな気持ちになれるんです。結婚とか子育てに全然興味がなかったけど、ちょっと興味がわいてきたくらい(笑)。そんなに幸せなモデルを見ていると、“いいものなのかな?”って思えてくる。すごいですね、あのパワー(笑)。
――5曲中唯一のオールハッピーというか、迷いのない幸せというか。
そうですね。対談をして、その後すぐに制作に入ったから、もう、“幸せ”しか思い浮かばなかったですね。
近藤くみこ、Ms.OOJA
――4曲目は、ニッチェの近藤くみこさんとの共作詞曲、「イヤフォン」です。おふたりは、中学の同級生だとか。
そうなんです、中学は違うんだけど四日市でソフトテニスをやっていて、しょっちゅう試合で会っていました。知り合ったのは20年前だけど、卒業後は何をしてるのか知らなくて、東京で再会して。哀愁のある1曲になりました。
――同じ世代を生きてきたからこそ、感じたことも多いと思いますが。
もう、共感することばかり! 彼女も独身だし、お酒好きだし、四日市出身っていうのもあると思うんですが、彼女の話は“私の話かな?”って思うくらい共通点が多かった。
――対談で話されていた「自分がどういう人間か知っておきたい」っていうのが響きました。
ちょうど、私も同じようなことを考えていたんです。好きなもの、大切にしたいものがどんどん増えてしまうけど、くみこの話をきいて、整理しなきゃと思いました。彼女は“死ぬ準備”って言ってましたけど。
――20代って外に目が向いているけど、30代になると、どんどん自分に関心が向いてくる。
40代になるための準備なのかな……。ちょっとずつ整理していけば、40代でそぎ落とされて、整理整頓されていくんだろうなって。
――完成作を聴いた近藤さんの反応はいかがでしたか?
泣いてましたね。曲ができて仮歌を入れた後に、ゴハンを食べに行ったんですよ。そこでイヤフォンで聴いてもらったんだけど、聴きながらポロポロ泣き始めて(笑)。すごく嬉しかったですね。しーちゃんも出来上がってすぐに、スタジオの音が一番いい場所で聴いてもらったら、バーって泣き始めて(笑)。真矢さんも「感動した、涙が出ました」っておっしゃってくださった。みんな自分の想いだったり、自分から出た言葉を改めて曲で聴くと、客観視できてガチっとハマるものがあるんでしょうね。みなさん、泣いてくれてよかった(笑)。彼女たちの言葉がなかったら、できなかった曲たちです。
Ms.OOJA、井上麻矢
――そして最後が井上麻矢さんとの「あの日のメロディー」です。
井上さんだけ面識がなかったんですが、著書の『夜中の電話 父・井上ひさし最後の言葉』に感動して、お会いしたくて。すごく柔らかい雰囲気の可愛らしい方で、そのイメージで「あの日のメロディー」が生まれました。童謡を作る感覚でしたね。
――対談の内容がそのまま歌詞になっていますね。
そうですね(笑)。今回は、自分の中にはない物にチャレンジできた。歌詞もそうだし、曲調もそうだし。作ろうと思ったら作れるけど、必然的にそうなった。不思議なんですけど、オリジナルを作ってるのに、なんかカバーしてるみたいな感覚だったんです。ひとの人生を歌ってるのに、自分の人生を歌うより深いモノがありましたね。
――貫地谷さんとの対談で、「曲は実体験ベースで作る」っておっしゃってましたけど、ひとの実体験を咀嚼して出す。それが自分の体験になるっていう感じですね。
そうですね。同世代の方々もそうだけど、年上の女性の感情を疑似体験できた気がします。
――新しい体験になりましたね。
すごくなりました。新しいチャレンジだったし、改めて自分の声で歌うのに、こういうものが合ってるって発見もあったし。歌詞を作るのが本当に楽しかった。興味のある人に話を聞いて作れるって、素晴らしいですね。シリーズ化できるといいな。今回は女性だったけど、男性に話を聞いてみたらどんな歌詞になるんだろう。
――女性観とか!
聞いてみたい! 男性だったら、またぜんぜん違うものがでると思うんですよね。やってみたいな。
――11月10日には、出身地・三重の四日市市文化会館で『TADAIMA LIVE vol.6 2018 in YOKKAICHI』がありますね。
毎年やらせていただいているんですが、普通のライブとはぜんぜん違うんです。去年は告白コーナーがあって、お客さんがステージ上で告白するんだけど、プロポーズする人がいたり、お小遣いを上げてっていう子がいたり(笑)。おととしは地元の高校の合唱部の子に来てもらって一緒に歌って。今年は何をやろうかな? 自分の中で一回リセットできる時間なんですよね、『TADAIMA LIVE』って。すごく楽しみにしています。地元の人がたくさん遊びに来るし、親戚の前でライブやってる感覚です(笑)。

取材・文=坂本ゆかり

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