【連載】建物語り by うらら(Salle
y)第五回<百段苑〜時短・淡路夢舞
台〜>

■夢舞台は兵庫県淡路市にある複合文化リゾート施設
■言わずと知れた超有名建築家、安藤忠雄の作品である

私がボーカルを務めるポップスユニット「Salley」は、10月に大阪へ出向きライブをおこなった。生まれ育った大阪から弾かれたように上京してはや7年。今では「大阪っぽさ全くないですね」と言われるほど、東京に自ら染まった私だが、やはり関西へ帰る時間が取れるのはとても嬉しい。ライブを終え、母と合流するために大阪市内にある地下街「クリスタ長堀」を歩いていると、そこらへんを歩いている普通の人のおもしろい会話が耳に入ってくる。主婦が芸人のように間を取って話していたり、小さな子どもが鋭いツッコミを入れていたりする。思わずクスっと笑ってしまう日常が流れている地元は、やはり愛おしくてならない。

ライブ後、スタッフ、メンバーとともに東京に戻ることもできたのだが、2日ほどお休みをいただき、そのまま大阪に残ることにした。理由は、母が「友人と淡路島へ旅行にいく」と言ったからだ。すぐさま便乗し、翌日、母を含め3人のマダムと共に淡路島へ向かった。

マダム達にはそれぞれに行きたいところ、見たいものがあるというが、私が行程を組む係に任命されたので、即、ここを行程の中に組み込んだ。

淡路夢舞台である。
夢舞台は兵庫県淡路市にある複合文化リゾート施設。言わずと知れた超有名建築家、安藤忠雄の作品である。実は去年の春にも一度訪れたのだが、この連載に載せる写真を撮りたいという理由と、なによりもう一度あのスケールを体感したいという想いで再訪したかったのだ。

さて、夢舞台は安藤忠雄という超有名建築家の巨大建築ということで、詳しい情報はいくらでもネット上に転がっているだろう。私がここで説明するよりも、そういうものを見てもらった方がはやいかつ正確なので今回も「好きっ!」な場所を写真でお見せしていきたい。
地下にある駐車場からエレベーターであがってくると、まずこの景色に出会う。浅く水が張ってある広場を囲むように、長いスロープが上へと向かっている。かなり巨大である。よく見ると私、います。
やはり、います。
こちらは去年の写真だが、あの青いのなかったよね?って思って引っ張ってきた。やはりなかった。
この写真の右手に写っているのが、先ほどの場所を外から見たところ。左手奥にはウェスティンホテルがのぞいている。あのホテルも、淡路夢舞台の施設の一つである。あのホテルからは夢舞台全体が一望できるのだと思う。多分。
そこからカメラを少し右にふるとここ。私のツボ「ダンジョン感」。こういうところ、入りたくなってしまう。あなたもそう? ちなみにこの裏はレストランになっており、淡路島玉ねぎや神戸牛など地元の名産品が楽しめる。淡路島と言えば玉ねぎだよね。
一つ階を上がり、あの階段状の花壇、百段苑へと向かう。巨大な回廊で迷路のようなこの建物を、私は回りきることができるのだろうか。マダム達は早くも「もう階段昇りたくな〜い」とぼやき始めている。

水の底にはホタテ貝が均一にびっしりと並べてある。集合体恐怖症の人は見ない方がいいかもしれないレベルのびっしり感である。

余談だが、水があるところとないところの境目がわかりにくいせいか、よそ見しながら歩いてきて普通に着水した人をみかけた。皆様も行く際は気を付けてほしい。
まるで宮殿のような長い廊下が続いている。この先へ行きたいのだが、同行のマダム達が百段苑のほうへ行きたがっているのでとりあえず我慢である。
少しずつ百段苑へと近づいてゆく。とにかく迷路のようになっているので、あちこち寄り道したくなるが迷いそうで怖い。
ホタテ貝がみっちりと敷き詰められている先に、(角度が悪くて写っていないが)鐘のある塔が見える。あそこ行きたいんですけどどうやって行くんですか。あれもしかして海の教会じゃないんですか。めちゃくちゃ見たいんですけど。ウェスティンホテルから行くのかな?

■ドラクエビルダーズ2が発売されたら
■フリービルドモードで夢舞台を作ってみようか
ついに百段苑が迫ってきた。この水の流れる階段の脇を登れば到着する。
しかし階段の中腹で、私たちは右へと逸れた。まっすぐに百段苑には向かわず、この塔をのぼって一気にショートカットするのである。ちなみに去年行った際はここで
を撮ってみた。

塔の中にいるのは妹、動画を撮影しながら「アホや」と言っているのは母である。誰がアホや。私か。否定はしない。

塔の中のエレベーターをあがると……
百段苑ドーン!!!

美しき直線、美しき斜め、そしてこのスケールである。一つの四角が四つの階段に囲まれ、対角線上へと下っていく。ここで鬼ごっことかしたら永遠に捕まえられなさそうである。もちろん花壇の中つっきるのはルール違反。階段で登っていくのもいいが、やはり百段苑は上から全体を見下ろしたい。
塔からはこのような通路が伸びており、百段苑の中腹へとつながっている。ちなみに海の向こうには和歌山県が見える。天気がいいと結構はっきりと対岸が見える。
気持ちいい階段だ……
こちらは去年の様子。春だったので百段苑に咲いている花も違う。季節によって違う風景が楽しめる。
塔の前の通路から海側を。先ほどの鐘の部分や、登ってきた円形のスロープなどが見える。鐘の周りもそうだが、水のあるところは全てホタテ貝がびっしり。

百段苑の部分は直線が規則的に並んでいるので比較的わかりやすいが、こうしてみると建築家の頭の中は一体どうなっているのだろうと思う。様々な形の立体が、規則的ではないのに美しくまとまっている。いや、まとまっていなくても美しいのである。つまりそれはまとまっているということなのかもしれないが。建築家の、というより、安藤忠雄の、だろうか。ドラクエビルダーズ2が発売されたら、フリービルドモードで夢舞台を作ってみようか。わからない方はスルーしてもらって問題ない。
先ほど登ってきた塔を、百段苑側から。我ながら気持ちの良い写真である。

と、ここでマダム達から「大塚美術館(徳島県鳴門市)見る時間なくなるから、もういくよ」とのお達しが。え、待って、まだ見えてたけど行けてない場所いっぱいあるし、ていうか「奇跡の星の植物館」、まだ見てないやん? 行くやんな? え、行かへんの? 嘘やろ?と抵抗するも、マダム達に敵うはずもなく、後ろ髪を引かれながらここで今回の夢舞台散策は終わってしまったのである。
しかし3人のマダム達の楽しそうな写真がたくさん撮れたので、今回はこれで良しとしよう。

と言っても、淡路夢舞台は大阪から車で割とすぐに来られるので、また帰省した際には足を運びたいと思う。今度は海の教会や植物館を必ず見たい。

しかし百段苑は「斜面に白(っぽ)い四角の集合体」という私のツボを完全に抑えているので、次回訪れたときもきっと百段苑を見るのに時間を割いてしまうと思う。好きな音楽を何度も聴くように、好きな建築は、何度でも見たくなるものなのだ。

私達Salleyの音楽も、そういう風に愛されたいものである。
帰り際に見かけて、神殿みたいだな、と思って撮ったものの、急いでいたのでここがどこだったか忘れてしまった。しかしなんとも無駄の多い階段である。そういうところが好き。

こんな感じで、BARKSさんで建築に関する連載を月に一度させてもらっているのだが、私はマニアとかオタクと呼べるレベルではなく、ただ建築を見ると胸キュンするのである。しかしありがたいことに、この連載を始めてから「あそこは見に行きましたか?」「ここは知っていますか?」と様々な建築を紹介してもらう機会が増えた。まだまだ行ったことのある場所や見たことのある建築も少ないため、そういう情報はどんどんいただきたい。目指せ建築オタク。ああ、連載の名前、目指せ建築オタクにすればよかったかな。

ちなみに、ちょっとしたマンションとかにも胸キュンすることがある。

こちらの動画にそんなシーンがあるので見てみてほしい。
とにもかくにも、この連載はまだまだ続けていきたいと思っているので、これからもお付き合いいただきたい。

さて、次回はどこへ行こうか。

Salley うらら

アーティスト

BARKS

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