【amazarashi インタビュー】
リスナー参加型の音楽体験
『新言語秩序』
11月16日、amazarashiが初めて日本武道館のステージに立つ。ずっと憧れの場所だったとか、成功のステイタスだからとか、そういう理由ではたぶんない。単純に彼らのライヴを観たいファンの容量がライヴハウスやホールでは収まりきらなくなったことと、最新テクノロジーによる映像を駆使した彼らのパフォーマンスが大会場によく映えること。さらに秋田ひろむ(Vo&Gu)は今回の日本武道館公演に寄せて、前回のツアーでバンドはひとつの大団円を迎えたこと。そして、日本武道館は“今できる表現を全て注ぎ込んだ記念碑であり、これからのamazarashiを占う試金石”であるとコメントを寄せる。“早くも”でも“ついに”でもなく、必然としてその時が来たというのが正しいだろう。
日本武道館はバンド史上最大キャパシティーであり、周囲の注目度は非常に高い。バンドが新しいメッセージを伝えるには格好の場所だ。そこでバンドの頭脳・秋田ひろむが打ち出したのが、書き下ろし小説『新言語秩序』と、ニューシングル「リビングデッド」とが絡み合いながら進行していく、リスナー参加型のプロジェクト。10月9日に特設サイトが立ち上がり、10月22日には『新言語秩序』が第3章まで公開され、10月30日には「リビングデッド」のミュージックビデオが解禁。11月6日に『新言語秩序』の第4章が公開され、7日にシングルのリリース日を迎える。全ては決められた流れに乗り、粛々と進んでいく。
ここでポイントになるのが“検閲解除”というキーワード。小説『新言語秩序』はスマホ専用オリジナルアプリ『新言語秩序』(ダウンロード無料/オフィシャルHP参照)を手に入れると読めるのだが、当初はあちこちが黒く塗られて伏字になっている。それをアプリの機能を駆使してリスナー自らが“検閲解除”していく、それがこのプロジェクトのルールだ。先走って書いてしまうが、検閲解除という行為は日本武道館でライヴを体験している時にも適用される。さらに言えば、リスナーによる検閲解除の参加実績に応じて、ライヴ終演後にさまざまな特典が手に入ることも発表されている。最初に“リスナー参加型プロジェクト”と書いたのは、つまりそういうことだ。
言葉にするとやけに説明的で難しい行為のように思えるが、スマホで多様なアプリを楽しむ世代ならばすらすらと解き進めることができるだろう。まずは、アプリ『新言語秩序』を手に入れる。そして小説『新言語秩序』をチェックする。日本武道館当日まで、バンド側から出されるメッセージに応じて“検閲解除”に参加する。言うまでもなくこれは、有形無形の検閲に縛られている現代のメディアや人間同士のコミュニケーションへの痛烈な批判であり、このプロジェクトに参加したリスナーは検閲への抵抗運動に加わる同志ということになる。小説『新言語秩序』に書かれているテーマはまさにそれで、近未来の架空の管理下社会を舞台に、言葉を検閲するグループとそれに抵抗するグループとの激しい戦いがスリリングに描かれる。それは秋田ひろむがamazarashiを始めた時からずっと変わらない、人間の存在を抑圧する全てにノーを突き付けるレジスタンス精神を戯画化したものに他ならない。
そろそろニューシングルの話に移ろう。「リビングデッド」に収められた3曲は、いずれも日本武道館公演のために書き下ろされたもので、セットリストの中で重要な位置を占めるものだとすでにアナウンスされている。表題曲「リビングデッド」はストイックに切り詰めたビートにまとわりつく不穏な弦楽器、冷徹に刻まれるレクトリックギター、スピードに乗って言葉を吐き出す秋田ひろむの歌声が生み出すスリリングな前半から、前向きに開放感あるサビへと展開する、淡々とした中に凄みを秘めた曲。《死に切れぬ人らよ歌え》。歌詞にすると壮絶だが、秋田ひろむの歌にはそんな人々を愛おしむような響きがある。
2曲目に登場する「月が綺麗」は一転してフォークロック調の深くやさしいサウンドで、秋田ひろむの歌もどこまでもやさしく響く。間奏ではラウドなギターソロが聴けるが、攻撃的というよりは包容力あるもの。《プライドを守る為に 人を否定なんかするなよ》。ドキッとする歌詞をあくまでさらりと歌う、秋田らしい深みある表現がいい。かと思えば、3曲目「独白」はとんでもない問題作で、端正なピアノと鋭いギターが生む強烈なコントラストの中で、秋田ひろむの歌声は割れてつぶれてほとんど聴こえない。そう、実はこの曲、歌詞を見てもほとんど黒く塗りつぶされており、曲の正式タイトルも“独白 検閲済み”だ。小説『新言語秩序』の中で検閲されてしまった表現の象徴であり、検閲解除を求めて悲痛な叫びをあげる曲。楽曲そのものはamazarashiらしい激しさと抒情を併せ持つスローナンバーであるがゆえに、その異様ないびつさが胸を打つ。この曲を解放してあげねば。聴けば誰もがそう思うはずだ。
11月16日、日本武道館公演につけられたタイトルは“朗読演奏実験空間「新言語秩序」”。チケットはすでにソールドアウト。ライヴ中のさまざまな演出にも、アプリ『新言語秩序』を駆使して対応できる、いや、しなければならない。果して“検閲解除”は成功するのか。成功したとして、そこに浮かび上がる真実とは何か。これはもはやライヴでもショーとも言えない。amazarashiが仕掛けるリスナー参加型の音楽体験『新言語秩序』は、日本のライヴの楽しみ方を大きく変える可能性がある。そのシーンを見届けるために、すでにチケットを持つ同志へ、日本武道館で会おう。
日本武道館はバンド史上最大キャパシティーであり、周囲の注目度は非常に高い。バンドが新しいメッセージを伝えるには格好の場所だ。そこでバンドの頭脳・秋田ひろむが打ち出したのが、書き下ろし小説『新言語秩序』と、ニューシングル「リビングデッド」とが絡み合いながら進行していく、リスナー参加型のプロジェクト。10月9日に特設サイトが立ち上がり、10月22日には『新言語秩序』が第3章まで公開され、10月30日には「リビングデッド」のミュージックビデオが解禁。11月6日に『新言語秩序』の第4章が公開され、7日にシングルのリリース日を迎える。全ては決められた流れに乗り、粛々と進んでいく。
ここでポイントになるのが“検閲解除”というキーワード。小説『新言語秩序』はスマホ専用オリジナルアプリ『新言語秩序』(ダウンロード無料/オフィシャルHP参照)を手に入れると読めるのだが、当初はあちこちが黒く塗られて伏字になっている。それをアプリの機能を駆使してリスナー自らが“検閲解除”していく、それがこのプロジェクトのルールだ。先走って書いてしまうが、検閲解除という行為は日本武道館でライヴを体験している時にも適用される。さらに言えば、リスナーによる検閲解除の参加実績に応じて、ライヴ終演後にさまざまな特典が手に入ることも発表されている。最初に“リスナー参加型プロジェクト”と書いたのは、つまりそういうことだ。
言葉にするとやけに説明的で難しい行為のように思えるが、スマホで多様なアプリを楽しむ世代ならばすらすらと解き進めることができるだろう。まずは、アプリ『新言語秩序』を手に入れる。そして小説『新言語秩序』をチェックする。日本武道館当日まで、バンド側から出されるメッセージに応じて“検閲解除”に参加する。言うまでもなくこれは、有形無形の検閲に縛られている現代のメディアや人間同士のコミュニケーションへの痛烈な批判であり、このプロジェクトに参加したリスナーは検閲への抵抗運動に加わる同志ということになる。小説『新言語秩序』に書かれているテーマはまさにそれで、近未来の架空の管理下社会を舞台に、言葉を検閲するグループとそれに抵抗するグループとの激しい戦いがスリリングに描かれる。それは秋田ひろむがamazarashiを始めた時からずっと変わらない、人間の存在を抑圧する全てにノーを突き付けるレジスタンス精神を戯画化したものに他ならない。
そろそろニューシングルの話に移ろう。「リビングデッド」に収められた3曲は、いずれも日本武道館公演のために書き下ろされたもので、セットリストの中で重要な位置を占めるものだとすでにアナウンスされている。表題曲「リビングデッド」はストイックに切り詰めたビートにまとわりつく不穏な弦楽器、冷徹に刻まれるレクトリックギター、スピードに乗って言葉を吐き出す秋田ひろむの歌声が生み出すスリリングな前半から、前向きに開放感あるサビへと展開する、淡々とした中に凄みを秘めた曲。《死に切れぬ人らよ歌え》。歌詞にすると壮絶だが、秋田ひろむの歌にはそんな人々を愛おしむような響きがある。
2曲目に登場する「月が綺麗」は一転してフォークロック調の深くやさしいサウンドで、秋田ひろむの歌もどこまでもやさしく響く。間奏ではラウドなギターソロが聴けるが、攻撃的というよりは包容力あるもの。《プライドを守る為に 人を否定なんかするなよ》。ドキッとする歌詞をあくまでさらりと歌う、秋田らしい深みある表現がいい。かと思えば、3曲目「独白」はとんでもない問題作で、端正なピアノと鋭いギターが生む強烈なコントラストの中で、秋田ひろむの歌声は割れてつぶれてほとんど聴こえない。そう、実はこの曲、歌詞を見てもほとんど黒く塗りつぶされており、曲の正式タイトルも“独白 検閲済み”だ。小説『新言語秩序』の中で検閲されてしまった表現の象徴であり、検閲解除を求めて悲痛な叫びをあげる曲。楽曲そのものはamazarashiらしい激しさと抒情を併せ持つスローナンバーであるがゆえに、その異様ないびつさが胸を打つ。この曲を解放してあげねば。聴けば誰もがそう思うはずだ。
11月16日、日本武道館公演につけられたタイトルは“朗読演奏実験空間「新言語秩序」”。チケットはすでにソールドアウト。ライヴ中のさまざまな演出にも、アプリ『新言語秩序』を駆使して対応できる、いや、しなければならない。果して“検閲解除”は成功するのか。成功したとして、そこに浮かび上がる真実とは何か。これはもはやライヴでもショーとも言えない。amazarashiが仕掛けるリスナー参加型の音楽体験『新言語秩序』は、日本のライヴの楽しみ方を大きく変える可能性がある。そのシーンを見届けるために、すでにチケットを持つ同志へ、日本武道館で会おう。
文:宮本英夫
「リビングデッド(検閲済み)」MV
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