ミュージカル『TOP HAT』開幕! 坂
本昌行の美声と鮮やかなタップダンス
に魅了 

2018年11月5日(月)、東京・東急シアターオーブにて、ミュージカル『TOP HAT』が開幕した。初日直前には主演を務めるV6の坂本昌行と、多部未華子、屋良朝幸、朝海ひかる、浅野和之、益岡徹が舞台衣裳に身を包み、囲み会見に登場した。
本作はフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが主演した1935年の映画『トップ・ハット』を原作とする舞台。ブロードウェイで活躍する大人気のミュージカル・スターのジェリー・トラヴァース(坂本)と、美しいモデル、デイル・トレモント(多部)が出会ったことで始まるロマンティック・ラブコメディー。2011年に英国で上演されると、英国の演劇の権威「ローレンス・オリヴィエ賞」で7部門にノミネートし3部門を受賞。日本では、宝塚歌劇団宙組公演で初上陸。今回は演出にマシュー・ホワイト、振付にビル・ディーマーら英国オリジナルクリエイター陣を迎えている。
囲み会見冒頭ではゲネプロ(通し稽古)のダイジェスト映像を流し、日本版『TOP HAT』の雰囲気を披露。その後、坂本たちが姿を現した。
初日を目前にした心境を聞かれた坂本は、「ドキドキもありますけど、喜びという方が上回っているかもしれませんね」と上気した表情でコメント。本作の魅力について「稽古の時に益岡さんがオープニングを観て『この作品、元気をもらえるわ!』とおっしゃっていたんです。その感想をお客様にも感じていただければ。作品のエネルギーは僕ら一人ひとりにも染み込んでいるのでそれを伝えていければと思います。タップ、ペアダンスもそうですけど、衣裳もすばらしいんですよ」と見どころを語った。
本作がミュージカル初挑戦となる多部は、製作発表時に自信のなさを何度も口にしていたが、この日は「タップダンスは特訓しました。歌は、お客様にお披露目できるくらいなのかまだちょっと自分でも未知の世界です。自分自身でも楽しめたらいいなと。私もこの衣裳を着ているので、素敵なものをお見せできたら」と謙虚に話していた。
多部のダンスの仕上がりについて、その道の先輩として、坂本が「本当に(タップダンスを踊るのが)初めてなの? というくらい。何より身体の線が綺麗で。一緒にやっていてもどうやったら美しくなれるかなって考えるくらい」、さらに今回は踊る場面がない屋良も「タップダンスは1、2ヶ月でできるものじゃないですよ。靴の音が鳴るまでにすごく時間がかかるので、稽古場で多部ちゃんのダンスをみた時にすごくびっくりした」と上達の速さを褒めていた。
同じ事務所の坂本と屋良は、少年隊PLAYZONE以来、実に20年ぶりの共演となる。当時を振り返り坂本が屋良の事を「あまり覚えてない(笑)」というと、屋良が「結構面倒を見てもらったんですが」と返して笑いが起きる。「当時の屋良はジャニーズJr.だったからね」と苦笑いする坂本に屋良は「僕と他の二人のJr.はトニセンさんのアンダースタディ(代役)をしていたんです。僕は井ノ原(快彦)くんの役で」と坂本の記憶を掘り起こすように続ける。すると坂本は「正直僕もそのころ必死だったんですよ!」と開き直りつつ「今、Jr.から抜けて一人の役者として頑張っていて、今回の舞台でも地に足ついてますね」と後輩の成長に目を細めた。
だが、先輩ならではのイジリも忘れていないようで、屋良が「役柄上、僕は一切踊っていないのですが、坂本くんから『お前、今日も汗かいてないじゃないか!』と言われて(笑)。僕の出しきれるものを見せることができてなくて」と口にすると、坂本は「この中でいちばん(舞台で)爆笑を取っていくと思いますよ。悔しいぐらい」とハードルを上げる。すると話を聞いていた多部が「屋良さんの才能というか……キャラクターが際立っていてね」、さらに浅野も「才能のかけらが散らばったような感じのものを見せてくれるのでお客さんが納得せざるをえない感じです」と煽る。「悪意がある!」と慌てる屋良に坂本は「今回の見どころは屋良ですね」とトドメを打つと屋良は「ヤバイ。凄い変な汗が出てきた」と手で額をぬぐっていた。

そしてもう一人、坂本と久しぶりの共演となるのは浅野。ミュージカル『阿国』以来ということで「僕が20歳の頃……27年ですかね!?」と月日の流れにビックリした声を上げる坂本。その言葉にマスコミから笑いが起きると「何かおかしいんですかね?」とわざと真顔で切り返す。「変わらず若い」とリポーターに言われて「ガワだけですね」とまんざらでもない笑顔を見せていた。

最後にこれから観にくる観客に向けて坂本が代表して「お仕事だったり学校の勉強だったりで疲れている方に観ていただきたい。何よりハッピーになれますので、皆さん、劇場までお越しください!」と呼びかけ、会見を締めた。
会見の後、初日の模様を取材した。フレッド・アステアの神がかり的なタップダンスのイメージなどから、やや身構えて客席に座っていたが、ラブコメディということもあって、あっという間にリラックス。クラシカルな内容の中で何度となく笑わせられた。
バンドの生演奏の中披露されるダンスは、1幕ではタップダンス、2幕はペアダンスを中心にその美しさを堪能させる構成。主役の坂本はアステアよろしく、まるでその長い脚に羽根が生えているように軽やかかつ華やかな足さばきを見せつける。以前からタップダンスを披露する機会は何度かあったが、今回のステージで見せたそれは比べものにならないくらいクオリティとなっており、この舞台にかける坂本の気迫をも感じさせていた。また歌声はジェリーの人としての魅力と大人の優しさに溢れ、多部演じるデイルを何度となくあたたかくつつみこんでいた。
一方多部はとても初心者とは思えない美しいダンスを随所に見せる。これまであまり披露する機会がなかったように思われる美脚を大胆に披露しながら、キュート&セクシーに舞い踊っていた。また、会見でも自ら語っていたように、歌はややまだ固さが残るものの、その伸びしろは十分あり、この後公演を重ねていくことで大化けしそうな予感がした。
ダンスで魅了する二人とは異なり、個性的なキャラクターで魅了したのは屋良と浅野。喋り方もクセも強すぎる、だが憎めないイタリア人デザイナーアルベルト役の屋良は、得意のダンスを封印してはいるが、まるで踊っているような身のこなしと台詞回し。デイルへの愛情から見せる様々な言動が何度も笑いを誘っていた。
そして執事役の浅野は屋良に輪をかけて、登場するだけで笑いが起きるほど、卑怯な魅力(笑)を発揮していた。次はどこで登場するのだろう、と期待させるくらいに。予想しないところで出てくるので思わず笑ってしまうのだが。
益岡と朝海の微妙な夫婦は本作の「コメディ」パートを牽引する重要な役どころ。この二人がそれぞれにジェリーとデイルに関わることで話がややこしくなり、また物語の面白さを倍増させていた。
アンサンブルキャストたちの奮闘にも注目したい。様々な姿で舞台を彩る彼らが一番光り輝くのはやはり群舞。ジェリーをセンターに置くタップダンスの場面では圧巻の足捌きを見せる。彼らの存在なしではこの作品は成立しないのだ。
終演後のカーテンコールで坂本がステージ上から客席のある場所に向けて拍手を送る。そこには本作の演出マシュー・ホワイトと振付師のビル・ディーマーがいた。すると観客も彼らに大きな拍手を送る。
この瞬間、初日公演の成功を誰もが感じたのではないだろうか。
取材・文・撮影=こむらさき
舞台写真=オフィシャル提供

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