yonige 初の東名阪Zeppを含む全国ワ
ンマンツアー、満員のZepp Nambaから
スタート!

10月3日にニューアルバム「HOUSE」がリリースされたばかりのyonige。収録曲「リボルバー」の歌詞がモチーフにされたツアータイトル『君のおへその形を忘れたツアー』。大阪、札幌、広島、福岡、名古屋、仙台、東京の全国7ヶ所を巡る。11月2日、大阪はZepp Nambaでツアー初日が開催された。
撮影=太田好治
ステージに現れた2人は特に何も発することなく、音が鳴らされていく。去年4月にリリースされた『Neyagawa City Pop』収録の「our time city」は、初っ端の〈ラッキーストライクの煙を 夜風に溶かして街を行く〉という歌詞からして、しっかりと情景が浮かぶ。〈怖くはないよ ぼくら1994だから〉という歌詞からは、1994年生まれの牛丸ありさの世代感も伝わってくる。
牛丸のMCからは楽曲のイメージのままの照れ屋で気怠い感じが感じ取れるが、いざ、ベースのごっきんが喋り出すと、良い意味でガラっと雰囲気が変わる。ツアー初日で緊張して「いつもの感じでいかれへんな」と言う牛丸に対して、ごっきんは「Welcome to Zepp Namba~!!」とお調子者っぽく畳み掛け、自分たちの地元である大阪は寝屋川の学校名、部活名を出して、観客に手を挙げさせたりもする。等身大と言うと陳腐な言い方になるが、この力の入れ過ぎてない感じが若者たちの気持ちを掴んでいるのだろう。
撮影=太田好治
ごっきんが「全員ファンやと思ったら、気持ちエエな!」と言えば、牛丸は「心が和らいできた」と答え、ごっきんが「良かった~! じゃ、いこか!」なんてヌルっとMCからライブへ戻る。その楽曲がニューアルバム1曲目「顔で虫が死ぬ」という強烈なタイトル。自転車を漕いでいて、顔に虫が当たって死んだなんていう何でもない情景だけど、わざわざ描かなくてもよい情景をわざわざ描く。そんな嘘臭くない歌を歌うからこそ、信用できるし、信頼できる。彼女らは常に観客を変に煽ったり、鼓舞したりはしない。だから、観客もじっくり聴きたい時は、ただただ舞台を凝視して聴き入っている。日常から淡々と続く自分の心象風景の延長線上を歌ってもらっている気になるし、どんなに言葉が強い応援歌よりも、一番応援されている気になってしまう。
撮影=太田好治
静寂の中、ミラーボールが回り、ミドルテンポのナンバーが心地よく歌われる。そんなムードある場面の後でも、ふたりがMCで喋り出すと、大阪は寝屋川の立ち話な場面に戻る。妙に湿り気を帯びる感じも無いが、妙にはしゃぎ騒ぐ感じでも無い。この絶妙さ加減が抜群である。そこから「センチメンタルシスター」で〈ねぇシスターきいてよ〉と語りかけられた流れは、話を聴く状態から、歌を聴く状態に何の違和感も無く誘われた気持ち良さがあった。
この日、ふたりは何よりもワンマンライブを楽しんでいた。「ツアー初日って喋る事が無い」なんて言いながら、ごっきんのお喋りは止まる事無く、本人いわく、こたつに入って喋る感じで延々と続いたし、それが決して嫌な訳でも無い。時間も長すぎる事は無かったし、変にダレる事も全く無い。特にごっきんの「ワンマンは全員が味方! 何をしても自分らが正義!」という言葉が印象的だった。その状況を、この寝屋川の女子ふたりが日々の積み重ねで実現した事が凄いし、誠に理想的である。柄にも無く、ふざけてコール&レスポンスをした時だけ、変な間が生まれてしまったのも御愛嬌だった。彼女たちは、そんなどこにでもあるパフォーマンスをしなくても、いつも通りやったら絵になるって事が証明された様でもあった。
撮影=太田好治
終盤の「さよならプリズナー」で歌われた〈なんにもないなんでもない日々〉や〈なんでもあるなんでもある日々〉……。そんな誰でもが普通に経験する退屈な恋の日々を、それ以上でも無く、それ以下でも無く、しっかりとありのままに描くから、今日みたいに多くの若者たちが集ってきたのだろう。例え、どんなに今後ハコが大きくなっていくとしても、このままの姿を見続けたいと想った。そして、そんな事は何の心配も無いと想わせてくれたツアー初日であった。
撮影=太田好治
取材・文=鈴木淳史

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