XAIインタビュー 「自分をぶち壊して
また再生した1年」の先に見える音楽
とは 『GODZILLA』主題歌への思いも
語る

第8回「東宝シンデレラ」オーディションでアーティスト賞を受賞し、劇場版アニメ『GODZILLA 怪獣惑星』の主題歌「WHITE OUT」でデビューしたシンガー・XAI(サイ)。シリーズ第2章『GODZILLA 決戦機動増殖都市』の主題歌「THE SKY FALLS」に続いて、11月9日(金)に全国公開となるゴジラ映画史上初のアニメ―ション映画『GODZILLA』三部作の第三章『GODZILLA 星を喰う者』の主題歌「live and die」も担当する。今作では作詞にも挑戦したというXAI、今回半年ぶり二回目となるインタビューでは、自身初めてとなる外ロケでの撮り下ろしを行うなど、前回より時間を掛けてしっかりと彼女の思いについて耳を傾けてみた。
――アニゴジも今度は第三章、SPICEでは半年ぶりのインタビューになります、夏から秋にかけての半年はいかがでしたか。
一章二章とご一緒させてもらいましたが、三章で中野さんと制作をさせていただくのはとりあえず一区切りなんです。今回で中野ミュージックは卒業になるわけだし、今後アーティストとしてやっていくうえでのメンタリティなんかも身につけなきゃいけない。今回も過去二作と同じように作品を受けた上での主題歌、だけど物語は完結するというのもあってとても濃く、自分をぶち壊してまた再生していくという、そういう自分にとって大事な変革の時期でもあったなと、とても思います。
――プライベートや生活も変わっていたところもあるんでしょうか。
どうだろう。あんまりないかも。リリイベなどで地方を回らせていただいたのですが、私の歌が確かに届いているんだ、という実感みたいなものは肌で感じる機会がありました。ひとつ変わったことといえば、今回英詞で書かせていただいたんですけど、歌詞を書いてレコーディングをする間にニューヨークに行って、ネイティブな黒人女性のボイストレーナーさんにボイトレをして頂きました。取り組み方で言えば、それが前と違うことかな。
――改めて『GODZILLA 星を喰う者』の主題歌となりますが、こちらご覧にはなりました。
もちろん観させていただきました!
――個人的な感想としてはいかがですか。
三章を通して見た上で、それぞれの章が持っている大事な役割みたいなものがもっと浮き彫りになってきたなって。虚淵さんの逃げ場のない絶望感みたいなものは、やっぱりすごいです。あとは、ギドラ怖すぎる、けど何より怖いのは人間かもって思いました。誰もかれも必死に生きていて、その純な気持ちは誰にも否定できない。だからこそ苦しくて、目を背けられないなって。
撮影:岩間辰徳
――今回「live and die」は自ら作詞をされた楽曲ということですが、作詞された経緯なんかも聞かせてください。
実は「WHITE OUT」や「THE SKY FALLS」のときも、中野さんに頂いたデモに仮詞を当てさせて頂く機会はあったんです。ただ、今回「live and die」のデモを聴かせていただいた時に、あまりにも自分の中ではっきりとイメージできる情景があって。仮詞に当てていたサビの《KING》という言葉が、時間が経つにつれて自分の中で浮き彫りになるというか、今までとは違う感覚だったので、この曲は私に歌詞を書かせて頂きたいと強く思いました。そこで、中野さんにも気持ちをお伝えした上で「歌詞を書いてみました」と送ったことが、今回作詞をさせて頂いたきっかけです。
――もともと作詞をやってみたいという気持ちはあったんでしょうか。
ありました。
――全編英詞というところに対するこだわりもありましたか。
そうですね。三章を観終わったあとに英語の曲が流れるイメージが浮かびました。英語って音に近いというか、音楽として聴いた時に、日本語よりも解釈に広がりを持った状態で聴いてもらえるというのが魅力のひとつだと思うので、英語で書きたいなと思いました。
――大変だったりはしましたか?悩まずスッと書けた感じでしたか?
うーん、そんなに英語が堪能というわけではないので、難しかったです。でも英語を扱う難しさが、表現をする上でのちょうど良い距離感になったりしました。英語で表現することが、歌詞を書くだけでなく何かを表現する上でのちょうどよい距離感を保てるツールになったというか、そんな気がしています。
――XAIさんの過去二作を振り返ると、『GODZILLA』の主題歌であり中野サウンドでもありということで、まだXAIさん自身の心の襞まで見せる表現はしていないような、バランスを取っているのかなという印象がありましたが。
どうだろう。でもそういう意味では、今回の「live and die」という歌詞は、わりと素直に肩の力を抜いて書けたかなと自分なりに思っています。こうだったのかな、あなたはどう思う?みたく。
撮影:岩間辰徳
――では改めて新曲「live and die」のお話も聞かせてください。聴いた印象としてはダークな雰囲気ですが、何か鼓動と祈りをすごく感じる作品だなと感じました。ただダークで虚淵作品的な絶望感だけじゃなくてその先にあるものを感じさせるような曲だったのですが、中野さんとどういうお話をされて作っていかれたんでしょう。
全章を通してご一緒する中で、一人の人間として生きる上で大切なことをたくさん教えて頂きました。それは例えば人生観や恋愛のことだったり、音楽に対する熱量だったり、パフォーマンスをする上でのメンタリティとは、みたいな話でもあったりするんですけど。私という人間が受け止める中で、じゃあ自分自身から逃げずに生きるってどういう事なんだろうと考えることが必然的に多くなって。それはずっと製作の核を担っていたと思います。
――生きる、ですか。
これまでも毎日考えていたことではあるんです。人生って果てしなく長い。どんなに気を付けていても間違いを起こしてしまう事はあるし、自分からも逃げられない。それにアニゴジという作品から感じることでもあるのですが、今生きていることに対する問いかけとか、祈り・決意とかはなくてはならないと私は思う。そういうのをひとりの人間としてストレートに表現できたのが「live and die」という曲なんじゃないかなって思います。
――中野さんとXAIさんのお二人の立ち位置って、お話聞いてると師匠と弟子のような印象がありますね。
そうですね。そんなふうに言われることがわりとあるかも。人生の師みたいな感じです(笑)。
――レコーディングの方はいかがでしたか。
今回で中野ミュージックからは卒業なんだから、甘えを許さずにやろうみたいな感じがあって。例えば、サビの「I WAS A KING」という言葉がすごく大切で、作品を観た後の人をはっとさせるような言葉だと思うから、意識しながら歌おうとアドバイスを頂いたりしました。
撮影:岩間辰徳
――カップリング曲「エバーグリーン」ですが、こちらも中野ミュージックさん卒業ということで、何かしら決別や旅立ちのようなものを歌われている印象がありました。この楽曲についての思いなどはありますか。
「エバーグリーン」は「WHITE OUT」「THE SKY FALLS」に続いてねごとの蒼山幸子さんが書いてくださっているのですが、まずそこに対する安心感がありました。それに中野さんのホーリーな曲調、蒼山さんの描く、シンプルなんだけどロマンチックで、ときにハッとするようなスパイスのある世界観が合わさって、マジックが起こっている曲だと思うんです。個人的にも大好きな楽曲です。
――三部作の曲を聴かせていただく中で、とても作品の流れに寄り添った楽曲だと感じたんです。その流れにXAIさんも乗っかっているというか、始まって生まれて混沌としている中から、今回は祈りだったり希望だったり旅立ちになっていくというのは、この1年のXAIさんの道程と作品がマッチしている気がしました。そんな中でTVアニメ『アニマエール!』の作中曲として「LOVE & JOY」もカバーで歌われてます。
今まで担当させていただいた『GODZILLA』はうわー!怖い!みたいな、そういうストイックな作品だったので、一気にポップというか、眩しいみたいな(笑)。
――こちらも全編英語詞ですが、歌われてみてどうでしたか。
編曲してくださった吉田穣さんという、大原ゆい子さんやYURiKAさんなどレーベルの先輩方と縁が深い方でもあったので、TOHOanimationRECORDSのアーティストとしては嬉しいなというふうに思いつつ、自分の中の陽の部分というか、ポジティブさみたいなものを総動員して、新しい一面を見てもらおうみたいな感じで歌いました。
――ポップな楽曲がロックテイストなパワフルな曲になっている印象で、ご自身の歌い方を持っている人なんだなと思いました。ああいう陽の部分!を出すのはご自身的にはどうなんですか?
不慣れな感じがあります(笑)。 何か、突然!みたいに、聴いてくださる人たちも戸惑わないかな、という。この曲が流れているところも可愛い女の子たちがチアダンスをするシーンなので、眩しいぞ!っていう。
――放送を見てどうでしたか。
新鮮でしたね、本当に。いい意味でとっても新鮮でした。2話でキャラクターが音楽プレイヤーでこの曲を流すシーンがあったのんですが、そこでアーティスト名でXAIと出てきたりして、おっ!と思ったりとか。また新しいアニメとの関わり方みたいなものが嬉しくて。あとは主人公の持つ魅力なんかも全然違うので、いくぞーみたいな竜巻系キャラ、眩しすぎる、みたいな感じでした(笑)。
――今後活動されていく中で、アニメーションとの関わりはご自身としては増やしていきたい気持ちはあるんですか?
もちろんです!作品に関わらせて頂いて、アニメが好きな気持ちが強くなりました。アニメって、作品とキャラクターたちが自分と一緒に生きてくれるというか、共にあってくれるものだと思います。そういう意味ではアニゴジも、自分の今後の核を大きく担っていく作品だと思っていて、そんなアニメ作品に出会えた事が本当に嬉しい。製作陣や声優さん方、スタッフさん含め、プロの方々が作り出すアニメーションっていうものは日本が世界に誇れるものだと心から思います。なので、これからも作品の一部分を担う事ができたら、すごく嬉しいなと思います。
撮影:岩間辰徳
――そしてここ最近、池袋ハロウィンコスプレフェスとか北九州ポップカルチャーフェスティバル、アニゴジの完成披露でも歌われるということで、人前で歌う機会が増えてきていますが、人前で歌うということに関してはどうですか。
※編集部注 インタビューは10月中頃に行われました。
うーん。中野さんのところに通わせてもらって制作をして、という期間が凄く長かったので、それを今度は聴いてもらうフェーズに移行するわけで……緊張はしますが、自分にとって歌う事は大切な事で、誰かに届けたい、少しでも力になれたらというのが一番なので。それに今、凄く歌いたくて。二章の時よりも音楽を純粋に楽しめるんじゃないかって思っているので、楽しみにしてます。
――ご自身ライブに遊びに行かれることは多いんでしょうか。
ありますあります。
――ユーザーとして見るのとステージで歌うのは印象が違いますか?
全然違いますね。
――まだ慣れない?
慣れないです(笑)
――ライブをやってみたいという思いはあると。池袋ハロウィンコスプレフェスで歌うというのはちょっとどうなるかわからない感じですね、基本周りはコスプレでしょうし。
LIVEをやっていきたいという思いはもちろんあります。好きなキャラを身に纏うって素敵だと思いつつ、池ハロは異文化交流みたいな感じもしてます。
撮影:岩間辰徳
――中野ミュージックを卒業とも言われたりする中で、2019年は不安というものはご自身の中であるんでしょうか。
この一年は本当に自分をぶち壊してまた再生して、という一年でした。中野さんにも、これからも見てるからがんばりなさいね、みたいなお言葉をいただいてしまったので、もうやるしかないなと(笑)。 不安というよりは、もっと進化していかなきゃいけないし、今までの一年の自分に嘘がないように、誠実にもっと頑張って行きたいな。
――夢といいますか、どういうふうにしたいということもあるんでしょうか?例えば海外で歌いたいとか、
今は目の前のことが大切ですが。どういうことがしたいかな……やっぱり、つまらない答えかもしれないけど、一年かけて作ってきた楽曲というのは全部思い入れがあって、最高の曲だと思うから、まずは聴いてもらいたいなという気持ちがすごく強いですね。色んな挑戦ができると思うので、どういうふうに聴いてもらうのかということも含めて、突き詰めていきたいです。
――作るフェイズから伝えるフェイズに2019年は移ると。
そういう風にも言えると思います。
――前のインタビューでもおっしゃってましたけど、夢はシェリル・ノームということでしたね。
※編集部注 シェリル・ノームはアニメ『マクロスF』に登場する銀河の歌姫
シェリルは永遠のミューズですから。
――『マクロスF』の中でもシェリルはランカよりもプロとしての挟持みたいなものを持っていた印象があります。プライベートのXAIさんとアーティストXAIって自分の中でスイッチを切り替える差があったりするんでしょうか。
そういう部分もあるとは思います。正直にいえば、もっと器用にできるようになっていきたいなと、思うんですけど。
――ランカ派かシェリル派かみたいなことでいえば、後者?
そういうふうに思ってきたんですけど、でも1年やってきて、自意識みたいなものとどう向き合うのかというテーマがずっとあって。それってアーティストにとってすごく大切なことだと思うんですよね。どう見せたいかということにとらわれすぎてしまうと、伝わりづらいものになったりとかエグみが多くなったりするから、一周回ってランカ派みたいな、ありのままで、聴いてくれる人の前に立てるというか向き合えるということに対する憧れもありつつ、みたいな感じです。音楽の前では、私もあなたも無いんだから、ただ純に、一緒に楽しめたら良いなって。
――人前で歌っていくことでこれまでとは違うXAIが見れることもあったり。
うん、そうかもしれない。フィーリングの移り変わりを凄く感じているので。
――最後に読者に今回の新曲のことと、来年のこれからのXAIについて、メッセージをいただければと思います。
今回「live and die」という歌詞を書かせていただいて、そこに込めた問いかけだったりとか、自分の決意だったりとか、そういうものが私の今後のアーティスト活動やアイデンティティの核になると自分の中では確信があります。この楽曲を聴いた上で、私のアーティスト活動がどうなっていくか見ていてもらいたいです。楽しみに見守って頂けたらと思っています。
撮影:岩間辰徳
インタビュー・文:加東岳史 撮影:岩間辰徳

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