【インタビュー】イメージを一転させた笹川美和の素顔、こだわりを貫く美の歌詞の秘訣

【インタビュー】イメージを一転させた笹川美和の素顔、こだわりを貫く美の歌詞の秘訣

【インタビュー】イメージを一転させ
た笹川美和の素顔、こだわりを貫く美
の歌詞の秘訣

シンガーソングライターの笹川美和さんが10月31日に、デビュー15周年アルバム『豊穣 -BEST ’03~’18-』をリリース!美しい言葉の欠片を沢山散りばめた新譜『豊穣 -BEST ’03~’18-』に纏わるお話しをたっぷり伺っちゃいました~!笹川さんの夏の恋のエピソードも聞けちゃう!!

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歌詞を書くのは新潟の家のピアノの前だけ
――笹川さんはデビュー15周年になると思うのですが、デビュー前と比べて、私生活や音楽生活で何か変化はありましたか?
笹川:曲の作り方とかは、基本的には最初の頃から変わっていないです。デビュー当時は東京が好きじゃなかったんですが、今では東京も好きになったとか。20歳から35歳なので、心境の変化はありますね。

――ご出身は新潟ですが、新潟のほうが住みやすいとか、過ごしやすいというのはありますか?
笹川:新潟はもちろん地元で、生まれ育った場所なので住みやすいです。冬の寒さが体にこたえて本当にきつくなっています(笑)私はすごく末端冷え性なので、ちぎれるんじゃないかというくらい寒くなります。体力的な問題は、たしかに雪国は大変ですね。雪景色は綺麗なんですけど、いざ住むとなると雪をのけないと車を運転できないし。

――歌詞は、新潟で書くときと、東京で書くときもあるんでしょうか。
笹川:基本的には、私は新潟の家のピアノの前だけなんですよね。東京で歌詞を考えたことはないです。

――書こうと思ったりはしないんですか?
笹川:してみても良いかもしれないですね。私の曲の作り方が、メロディーと歌詞が同時なので、いつも一緒なんです。もし今後、何か曲だけを頂いて歌詞を書くというやり方があった場合は、東京のどこかで書いたらまた違う目線になるのかなと思ったりはしますね。

――ご自身が新潟にいらっしゃるときは、ピアノの前とおっしゃっていましたが、具体的にどんな瞬間に閃くのかが気になりました。
笹川:ピアノの前に座ると音楽モードになります。窓があるんですけど、窓の景色を見ていて、ポンとワードが出てきて作るとか。ピアノを適当に弾きながら、何かを探しているという感じがあるかもしれないですね。鍵盤上に見えない言葉だったり、今の伝えたい言葉にすごくぴったりなワードは何だろうと、弾きながら出すという感じかもしれないです。なので、どういうときかというと、本当にピアノの前の音楽モードになったとき。それ以外は、基本オフっています。全くもってひどいものですけど。

――脱線しちゃうんですけど、私生活だといつもどんなことをされているんですか?
笹川:よく聞かれるんですけど、家から出ない!(笑)本当に出なくて。もちろん、新潟にいる友人たちに会うとか、食事に行くとか、お買い物に行くとか、本屋さんに行くとか、外に出ることはあるんですけど。家の中が好きなので、家事をしているか、本を読んでいるか、ピアノを弾くか、映画を見るか、刺繍をしているか。今回のジャケットもそうなんですけど。

――今回のジャケットも笹川さんが、刺繍で作業されているんですね!凄く細かくて素敵です!

『豊穣 -BEST ’03~’18-』ジャケット
笹川:アートワークチームが凄いように見せてくれたんです~(笑)でも、その刺繍も去年の頭くらいから始めていまして。実はプライベートでいろいろあって、時間が出来ちゃって!(笑)どうしようかと思ったら、母に会って、“刺繍をしてみれば?”と言われて始めました。母と祖母が、お裁縫が上手なんですよね。私はお裁縫苦手なんですけど、見事にはまって好きになりました。

――ちなみに、これはお花ですよね?
笹川:一応、今回のアルバム『豊穣』をイメージしています。だから、お花というか、稲穂だったり、そういうものをイメージして作ったんです。全部で何パターンかいると言われたので、いろいろやっていました。本当に、ケツがなくなったんじゃないかと思うくらい座って作業をしていて…。お風呂に入って、ケツを鏡でチェックしたくらい(笑)35にもなると、本当にケツも潰れるんじゃないかと思って焦りました(笑)意識してプリッとしないとね!これを見る10代、20代の方には必要がないと思いますが…。

――なるほど(笑)笹川さんは、すごくイメージと真逆で面白い方ですね!
笹川:すごい、言われるんですよね。これなんです。怖いというか、喋らなくて、お野菜しか食べなくて、太陽が嫌いというイメージを持たれる方がほぼなんですけど。全然です!一般の人です。おばちゃんみたいな(笑)

――とても親しみやすいです。
笹川:良かったです。何でも聞いてくださいね!!
タイトルは十五夜様がきっかけ
――アルバムの話にいきたいと思います。今回、タイトルは『豊穣』ということですが、新潟ご出身だからこそ、付けれるゆかりのあるタイトルですね。元々、このタイトルをつけるきっかけはあったんですか?
笹川: “高鳴りでいこうかね”という話をしていたときに、やはり、ベストということで、曲タイトルじゃないほうが良いんじゃないかという話が出たんです。それから、15周年というところから考えてみることになって、私の頭の中で最初に浮かんだのが、十五夜様だったんですね。田舎なので、月とか星とかもよく見えるんですけど、うちの祖母が、十五夜様に対して、ちゃんとススキをたてたり、お団子を供えたり、お野菜を供えたりするんです。
要は、十五夜様って、五穀豊穣を祝う祭事というか。祭事までいかないのかな。豊穣って良いじゃん!!と、そこで繋がったんですよね。それこそ、稲穂というのは、新潟にはバーッとあるんですよ。実り豊かな大地というのは、もちろん自分の中には入っていますし。自分にとってもこの15年の曲たちも実りだなというところで、豊穣はすごくぴったりかもと思って。“豊穣はどうでしょう?”と言ったら、皆さん全員一致で豊穣になりました。だから、15周年から、連想ゲームじゃないんですけど広げていって、豊穣が自分の中でピタッときた感じなんです。

――今作はその中でも最初にメジャーデビュー曲を入れているんですよね。元々、順番はどのように決められたんですか?
笹川:順番は全部リリースの時系列で入れました。最初は、別な感じでも考えたんです。たぶん、聞かれて分かると思うんですけど、やっぱり最初は声が若いんですよね。それがちぐはぐになっちゃうのもあれだし。やっぱりベストなので、時系列に入れていって、移り変わりを聞いてもらいたいというのもあり、そこに落ち着きました。

――15曲の中で、新曲を3曲入られていると思います。まず、『蝉時雨』からお聞きしたいのですが、歌詞の前にどういった思いで書かれたのか教えてください。
笹川:これは、この夏に大阪と東京のほうであった『野球』という舞台があったんですが、その作・演出の西田大輔さんと以前から知り合いだったのと、お仕事もしたことがあったんですよね。その西田さんから今回、舞台のために書き下ろしをしてほしいと言われたのが始まりです。私は歌詞を書くときに、映像か言葉から連想をして曲を書くことが多いんですけど、西田さんの言葉の中から蝉という言葉が出てきたときに、自分の中にちょっと引っ掛かっていたので、そこから思いを膨らませていきました。
時代背景が、戦争で野球がしたくてもどうしてもできない少年たちの事を舞台にしているんですが、彼らは彼らで一生懸命生きていたんだと。“野球がしたいという思いをただ伝えたい”と言われたんです。“戦争が悲惨だというのを伝えたいんじゃない”というふうに言われていたので、そこから、私は蝉と連想づけていきました。あの短命の中でも必死に生きている蝉と、当時の彼らを重ね合わせて曲を作ったという感じなんですよね。

――夏の情景が浮かぶ、本当に美しいメロディーだなと思いました。
笹川:嬉しいです!

――夏を生きている1人の少年の、存在証明の歌という感じがしました。
笹川:まさしくそうなんです。私たちは、戦争に行って死んでしまった人たち、男の子たちという概念・括りで見ちゃうんですけど。きっと、各々恋もして、家族もいて、やりたいことがあって。本当に一人一人の人間だったのでそれをすごく表したかった。あとは、夏の作品だったので、日本人って夏休みのせいなのか、夏の終わりって切ないものでもあるじゃないですか。季節が本当にバカッとわかれる。“変わりめ”の寂しさを知っているというか。それもすごく出したくて。その歌詞を作ったんですよね。

――夏の始まりと夏の終わりの両方が感じ取れる作品ですね。
笹川:嬉しいです。夏の盛りも出したかったですし、夏の終わりの切なさも出したくて。それが伝わったのならとても嬉しいです。

時計草はお花
――まず、「時計草は太陽見上げ 時を刻む自分だけの時を」というフレーズを書かれていると思うんですが、時計草って雑草でしょうか…?
笹川:時計草ってすごくきれいなお花なんですよ。時計みたいなの。うちの祖母はお花が好きなので、庭中のいたるところに四季折々の花が咲くんですけど。今年は咲いていなかったかな…。そこに時計草というお花があって、それは夏の花なんです。なぜか分からないんですけど、この曲を作ろうと思ったときに、時計草ってすごく出てきて。時計草って、自分で枯れるときも咲くときも決めているんです。
そこで、少年じゃなくても良いんですけど、当時の人たちも自分の時を刻めるんだよというところを、やっぱり打ち出したいということもあって。太陽を見て、自分でどうしたいか決める、自分に意志がきちんとあるということを出したくて。最初にそれにしたんです。あとは、時計草というお花が元々好きなんです。きれいなお花なんですよ。

――時計草ってカタカナですか?
笹川:時計草なんです。本当にあるんですよ!検索したら出ると思うんですけど。うちの田舎だけじゃないと思います(笑)

――検索したんですけど、カタカナが多くて(笑)
笹川:本当は時計じゃないのかな?(笑)私が勝手に時計みたいだから時計なのかなと思っていたけど。間違っていたらあれだけど、そこはそういうものだと思ってください(笑)

――ロマンチックですよね、時計草というお花が。
笹川:綺麗ですよね。私は名詞のきれいな言葉がすごく好きで。そこから歌詞を書くことが多いんです。今回は、すごく好きな夏の風物詩を全部ピックアップしたりして。その中から物語を紡いだりしましたね。

――ちなみにピックアップした言葉を教えてもらえますか?
笹川:結構ありますよ。まず、「時計草」もそうですし。「雲の峰」も夏なんですよね。要は、入道雲なんですけど。あとは、「日傘」も夏ですし。「合歓の花」も元々すごく好きなお花で、いつか歌詞に入れたいと思っていて。あとは、何気に好きなのが「草笛」なんですけど。草笛って季節的なものが夏なんですよね。だから、日本人なら誰しも想像ができるような、イメージが膨らみそうな景色を描いたつもりではいますね。

――「渾身を震わせて」という歌詞がありますが、それをあえて全身じゃなくて、渾身と書かれていたのが印象的でした。
笹川:実際に全身で羽を震わせているのが蝉だと思うんですけど。全身なんてものじゃなくて、魂全て、全部さらけ出して、命を削っているのかなと思ったし。そこに少年たちも重ねたいというか。これは、本当に誰でも良いんですけど、全身なんてものじゃなくて。
たぶん、何かをすり減らさないといけないときって、必ずあるのかなと思っていて。だから、全身だと弱いと思って、それで渾身だなと思ったんです。ただ、渾身だと、私の中ではどうしてもメロディーとの兼ね合いが、好きじゃなかったので全身という歌い方にはしているんですけどね。全身を越えた全身という意味で渾身にしていますね。

――この字だけで、また読み方が変わりますね。
笹川:変わると思うんですよね。全身は体だけという感じがして。渾身にすると中身も全てという感じがするので。そこはそうなんですよね。
夏の恋の思い出
――「合歓の花に重ね淡い想いも 線香花火の火花と燃える」とあると思うんですけど、ここはどういう意味がありますか?
笹川:合歓の花が元々本当にすごく好きで。合歓の花もピンクでほわほわしている花がバーッとつくんです。私たちと同じ人間だから、戦争の少年たちもきっと恋もしただろうなと思うし、ちょうど年頃の男の子たちだから、恋をしないこともないだろうと思って。
私、恋をしていてほしかったなと思ったんですよね。恋心をどうしても出したくて。でも、彼らは叶えるまではいっていないかもしれなくて。だから、合歓の花を見て、そこに女性の影というか、好きな人の影を表現したかったんです。

――とても切なくも美しい思いですね。
笹川:はい。本当に淡いお花なんですよね。だから、触りたいとか、そこまでもいかないような。純粋にあの女の子が好きだなというくらいの恋心を、合歓の花と重ねたというのがあって。「線香花火の火花と燃える」というのはもう諦めじゃないんですけど、叶わない恋だと分かっているというところを表したくて。ただ、線香花火の火花と散ると、どうしても「散る」と言いたくなかったんです。終わっちゃう感じがしたので。「燃える」だったら、まだ命がすごく燃え盛っているという感じがあるかなと思って、散るではなく燃えるにしたんですよね。

――そうだったんですね!私も散るだと思っていました。
笹川:ね!私も火花と散るが当然なんだろうけど…。でも、散るは彼らや、生きているものに対して、あまり良いイメージの言葉じゃないなと思ったから。燃えたらいつか燃え尽きるんですけど。そこまで言わなくても。今は燃えている時を表したいなと思って、この言葉にしましたね。

――脱線しちゃうんですけど、笹川さんは、幼いころの夏の恋の思い出はありますか?
笹川:高校時代の夏の恋の思い出があります。好きな人と花火大会に行く約束をしたんですよね。約束をして浴衣を着て待っているのに来なくて。それで、相手がすごく遅れてきたんですけど、花火を見に行ったのに、相手の機嫌がすごく悪くて。見ている途中で、一人でトコトコ歩いて帰って、追いかけたらゲタの歯が1枚折れるという…。それは、夏の良い思い出じゃないけどありますね(笑)

――絵に書いたような…。
笹川:でしょ!本当に。あれは18歳くらいだと思うんですけど。でも、中学校とかって夏休みに入ると好きな男の子に会えなくなるじゃないですか。学校明けに行くときに、久しぶりに会えるというあのワクワクと、ちょっと気恥ずかしさという、あれは良い思い出ですね。でもゲタの奴は、もう名前も覚えていない(笑)そんなもんです(笑)名前の最後が、アキだったか、ユキだったか、思い出せない。結局、小学校のときのほうが、ずっときれいな思い出で残りますよね~?(笑)だから、彼らは綺麗なときのままで終われているのかなというのはありますよね。

――そんなお話しがあったんですね(笑)原因は分からなかったんですか?
笹川:ちっとも分からない!そのあと家に帰って泣きました。終わりましたけどね…。案の定ですよ。

――「涙は砂埃のせいさ」というフレーズがありますが、涙と砂埃が結びついた所が気になりました。
笹川:ちょっと野球もかけたくて。野球はやっぱり埃まみれですよね。マウンドというか、夏の乾いた大地に一人で立っている、それでも負けずに一人で立っているというのを表したくて。夏は、やっぱりカサカサしているので。泣いているけど違うんだよ、みたいな。砂埃のせいなんだよ、と言っている、ちょっと無理している感じの男の子を出したくて。

――それから、続けて「夏風涙さらって 草笛の音きこえたような」というふうになるんですね。
笹川:はい。草笛という言葉が、すごく素敵だなと思って。草笛の音って、ブゥーって小さい子が鳴らしているのって、すごく平和な音色だなと思ったんです。平和な時代の思い出というのを重ね合わせたくて。でも、夏風に吹かれると一人、現実的には、やっぱり死ににいかなければならないというものがあったので。そこを表したくてこの4行を作ったんですよね。個人的には、ここのメロディーがすごく好きなんですけど。

――作曲に関してですが、ピアノの1音1音が綺麗に鳴り響くのが聴いていて心地良いです。メロディー自体も同時進行だったんですか?
笹川:そうなんですよね。曲の作り方として、最初からなぜかメロディーと歌詞が同時という作り方をしてしまったので。その作り方がほぼほぼなんですよね。作・演出の西田さんが蝉というワードを言ったときに、蝉って良いなと思って。なので、『蝉時雨』は決まっていたことなんですけど、あとは、この言葉たちを書き出していて、それをどう歌詞に入れて物語と歌詞・主題歌にするかというのを考えながら作った感じなんですよね。

笹川美和が選ぶピックアップフレーズ!
――ありがとうございます。歌詞サイトなので、『蝉時雨』の中から、一番お気に入りのフレーズを教えていただきたいです!
笹川:迷うなあ…。「夏陰涼し 日傘の君」にしようかな。

――ここが一番良かった理由は?
笹川:ここも淡い思いを抱いている女性の感じなんですけれど。日傘をさしている女性って、おしとやかに見えてすごくいいなって。この現代でもそうなんですけど。当時の女性の人たちが日傘をさしているって、ちょっとハイソな方々なのかなというイメージがあるんです。暑いのにハイソな女性の人たち、ちょっと裕福なところの女性は、涼しそうに見える。この時代にもありません?綺麗な人って汗かかないのかなとか。
それをちょっと風流に言いたくて。この言い回しにしました。「日傘の君」って、なりたいよねというのもありますね。日本女性の美しさみたいなものも出したいなと思って入れていました。

――全体的に歌詞を見て思ったのですが、笹川さんは、歌詞の言葉の言い回しがすごく綺麗な言葉を並べられていますよね。
笹川:本当ですか?嬉しい。

――頭の中に入っている単語って、ストックがなくなることはないんですか。
笹川:私、すごく前に、お正月の季節と春夏秋冬のものすごく綺麗な日本語の単語集みたいなものを頂いたんですよね。1冊1万円くらいするんですけれど。私の祖父のお友達が、こういうお仕事をしているならぜひということで、オールカラーで季語とか写真とかも載っているものをくださったんです。私はそれを見ているのが好きなのと、本を読むことが本当にすごく好きなので。
割と、頭の中に好きな単語を入れていて。そのときに分からなくても、歌詞を作るときに出てきたりするんです。常日頃、本を読んでいるというのは、もしかしたら大きいかもしれないですね。あとリズムじゃないですけど。読んでいて気持ちの良いリズムを心掛けたりはするんですけど。歌詞だけを読んだときも、詞として読めるような歌詞にしたいというのが元々あるので。そこはあるかもしれないですね。
『真実の雫』は幸せな孤独
――『真実の雫』も新曲ですよね。歌詞を全部読ませていただいたときに、孤独と向き合う1人の登場人物が見えるなと、勝手に思ったのですけれど。実際のところはどうですか?
笹川:そうですね(笑)どうだろう。私、今、35歳なんですけれど。孤独だなと思うことはよくあって。でも、その孤独の時間が、本当に辛い孤独のときもあるんですけど。この孤独は良いなと思うときもあるんですよね。その孤独ってたぶん人の愛情や幸福を知るがゆえに知ってしまった孤独だと思うので。ある意味、反転してしまえば、きっと幸福を知っているからこそ孤独だと思える孤独の類なので。
また、孤独の独って、独創的な独なんですよね。しかも孤独なときって、割と頭がさえているときだったりするんですよ。なので、その時間は、私は悪くないなと思って。それは、私のことを大事に思ってくれる家族やスタッフさんとかがいると分かっているがゆえの幸せな孤独だとは思うんですけど。孤独の意味を知っているからこそ、幸せの意味も知れているかなという感じですね。
――『真実の雫』って、今の10代・20代の人にぜひ聴かせたいと、私は思ったんですよ。
笹川:響いてくださいますかね?
――響きます!
笹川:けっこう今の10代・20代の方は、常にアンテナを張り巡らせて、周りに新しいものが溢れていると思うんです。自然にアンテナを張り巡らせているから、もしかしたら私たちよりも色んなモノを敏感に察知するかもしれないですよね。でも、孤独なんてまだ10代とかは知らなくても良いと思うんですよ。そのうちどうせ知るし(笑)いろんなことを経ることは、決して無駄じゃないということもすごく歌いたかったので。
その先に見えるものは必ずあるし、それが、実はすごく単純だけど大事なものだったりすることはあると思うんです。10代・20代の頃は、私もまだ手探りなところはありましたけど。自然と見えてくると思いますね!
――タイトル『真実の雫』は、孤独とどう結びつけられているんですか?
笹川:これは比喩なんですけど。自分にとって大切なものの原石みたいなものという意味で、雫にしたんですよね。雫なので、決して大河ではないですし、一滴でしかないんですけど。ダイヤモンドも磨き上げればダイヤモンドだけど、原石のうちは、まだ。そういう意味で、まだ小さい。そこから広がるという。ここから広がるんだという。私の大事なものはこれかもしれないというものを表した比喩が雫になったという感じですね。
新曲の『高鳴り』は思春期の思い出を軸に
――新曲の『高鳴り』ですが、私は「笑い合うこの時も、 一秒後には過去になる 輝きは一瞬で、永遠ではない無情」が凄く好きで。この二つのフレーズだけで物語っていますよね。
笹川:本当ですか。実際、あのときはあったんですよね。自分たちも、その思春期と言われる時期って、悩みも本当にあったし不安もあったし。でも、なんか大丈夫だと思えたあの時代があって。楽しかったこともあって。でも、私の周りは歳的にもうお母さんになっている方が多くて。私、地元に海があるんですけど、夏休みの部活の帰りに、皆で一回家に帰ってごはんを食べてから、食べたいお菓子と飲み物を持って海に集合して。海の防波堤・テトラポットとかに1人ずつ座って、“誰々のことが好きなんだよね”とかって話していたこともあったんです。あのときの光景は、すっごく尊くて、愛しいものだなと。でもあのときって自分の人生の中では一瞬なんですよね。

――輝かしい時代は、一瞬って言いますしね。
笹川:このままが良いと思っても変わっていくし。でも、変わっていって、辛いことがある中でも、結局最後にたどり着くのは希望であってほしいと思うし。辛いことの先には必ずそれが報われるときがある。でも、この歳になっても、新しい曲の作り方をしたら新しい音に出会えるんだと思えたりとか、楽しかったり眩しいほうをまだ求めようとしてしまうというのがあります。でも、決して悪いことではないと思うんです。
子どもができた子どもたちは、きっとまたそこに希望を見出したり、眩しいものを見出すだろうし。明日に早くならないかなと思うものもあると思うし。そういうのを、この曲ですごく出したくて。留まらないからこそ、たぶん美しいものなんですよね、きっとね。

――昔の青春時代の、あのきれいな輝きが今ここで見える感じなんですね!
笹川:そうなんですよね。あの時代がずっと続いていたら、それは特別ではなくなってしまうので。やっぱり、特別というのは消え去っていくというか。一瞬だからこそきっと美しくて掴めなくて、というのが良くて。それを知っていて見たいがために、生きていっちゃうのかなというのもあるので。

――その考え素敵です。掛け軸にしたいほどいいフレーズだなって改めて思えます。
笹川:私、言葉数をあまり多くしないのが自分の中にあって。好みなんです。例えば動詞でも名詞に当てはめるとどんな名詞になるだろうとか。それをすごく言葉遊びとして楽しむところがあるので。これもそうなんですよね。

――この『高鳴り』の歌詞では、けっこう読点をつけられますよね。「雨の中、」とか。それも何か意図があるのでしょうか。
笹川:自分の中で、ここは一拍あけたいとか、ここは点がないほうがこの言葉が生きるかなとか。逆に点を入れたほうが言葉を見たときのリズムが良いかなとか、そういうことを考えて書くんですよね。だから一回書くときに、点を消したものも見ますし、点を入れたのも見たりします。曲を作っているときは、普通に板の上に紙を置いて、鉛筆でバーッと書くんですけど。できたときに送ったりもするので、パソコンに入れるときにどっちだろうと考えるんです。漢字じゃないほうが良いとか、その言葉遊びがすごく好きなんですよね。漢字にするか、平仮名にするか、一拍あけるかあけないか。

――すごく珍しい書き方をされているなと思っていました。あまり点をつける方はなかなかいらっしゃらないので!
笹川:そうなんですね。もしかしたら、詞として読めるときもあるのかも。あと、割りと、対になっているのが好きで、ワンコーラスめに読点を入れているんですよね。ツーコーラスめの同じ箇所に読点を入れないのも嫌なんです。見たときに、シンメトリーじゃないと嫌で。それで入れるのもありますかね。点を入れると、そこで一瞬、一回、間を置くじゃないですか。流して読んでほしい場合と、ちょっと一回そのままさらっといかないでほしいということもあるんですよね。

――最後に、笹川さんにとって、今回の『豊穣 -BEST ’03~’18-』をファンの方にどんなふうに聞いてほしいですか?
笹川:たぶん、10代・20代の方は初めて聞かれる方のほうが多いと思うんですけれども。ベストとは言っているのですが、今回作る上でのコンセプトとして一つの作品として作ろうというのもあったんです。ぜひ、普通に一つの作品として初めて手にとっていただいて、聞いていただけたら嬉しいかなと思います。気に入っていただけたら、また他の作品も聞いていただけたら良いんですけど。まずは、ベストというところをあまりこだわらずに聞いてもらえたら良いかなと思います。
TEXT:橋本美波
PHOTO:愛香
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