MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』
第九回ゲストはマヒトゥ・ザ・ピーポ
ー(GEZAN)アフロ君、どうせ死ぬの
に何でそんなに頑張るの?

MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第九回目のゲストはGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポー。GEZANはMOROHAと同世代でありながら、意識せざるえなかった相手。——今回の対談で、小さい頃から“死”に取り憑かれているというマヒトは、アフロに対して「どうせ死ぬのに、何故そんなに頑張るのか?」と尋ね、アフロは「自問自答し続けることが俺の人生」と話す。このように両者の思想は平行線のまま進んでいき、学生時代の話になってもアフロとマヒトの環境は対照的でリンクすることはない。……しかし、最後はその点と点が繋がることに。「それは一体どこで、どんなところが?」この対談は、最後まで読んで初めて形となる。11月10日に大阪BIG CATで開催する、MOROHA、GEZAN、bachoとの3マン『MOROHA BEST 〜十年再録〜 FINAL SERIES』を前に読むことをお勧めしたい。
●MOROHAは幸せになっちゃいけないカルマの中にいるように見える●
編集:(マヒトに向かって)以前、私がタワーレコードで働いてた時にインストアイベントに出ていただいて。2012年の頃だったと思います。
マヒトゥ・ザ・ピーポー(以下、マヒト):あぁ、やりましたね。
アフロ:GEZANがインストアをやることなんてあるんだね。なんか明るいところが似合わないような。
マヒト:苦手だねぇ、確かに。
編集:実は開催前に警察から「そちらで、GEZANというバンドのイベントをされますか?」と電話がかかってきたんです。「あのですね、匿名でクレームが入っておりまして」と。
マヒト:あの頃はベースが全裸でライブしてて、その通報だったんですよね?
編集:「脱ぐんちゃうか?」「いや、絶対に脱がせないです」ってやり取りをしてましたね。
マヒト:その時期は風営法が厳しくて、俺らがライブをする会場は全て警察へ通報されてた。「この日、GEZANというバンドがライブをするので逮捕してくれ」って。タワーレコードはその中の1つですね。
アフロ:なんでそんなに嫌われてたの?
マヒト:あの頃を思い返せば結構ケンカしてたからなぁ。嫌ってる人も多かったと思う。
アフロ:それはバンドマンと?
マヒト:そうそう。わかってくれるかもしれないけど、その時期は自分から他のバンドマンに歩み寄って行くのは媚びてる気がしちゃって。挨拶することさえ媚びていると思ってた。そしたら先輩とかが「あいつらは挨拶もしないで、一体なんなんだ!」みたいな感じになって。当時、Namba BEARSのブッキングをしてた人が走ってきて「挨拶に行った方がいい!」って。それで挨拶は大事なんだなぁ、と気づいた。
アフロ:挨拶をしてなかった時期に(bacho・北畑)欽也さんと出会ってるでしょ? 一昨日、(『逢いたい、相対。』の)連載で対談した時に「次回はマヒトなんですよ」って伝えたら「出会った時は、こっちが挨拶をしても返しもしなかった」と言ってた。
マヒト:ねぇ……全く覚えてないけど。
アフロ:思い当たる節はあるでしょ?
マヒト:みんなにそういう感じだったからな。今はやっぱり挨拶はした方が良いと思う。
アフロ:どういう心の移り変わりなの?
マヒト:そんなところで戦う必要は全くないっていう……まぁ自分に自信がなかったんでしょ。
アフロ:スッゲーわかるわ。たださ、「年を重ねて丸くなった」というフレーズを絶対に言いたくないな、と思うのよ。ものすごくテンプレ感があるじゃん。
マヒト:それも思うし、「なんか、丸くなったよね」という言葉をフランクに使ってくる人がいるけど、俺が一番嫌いな言葉だね。最も言われたくないし、何も見えてないなとすら思っちゃう。
アフロ:怒るのに疲れただけじゃないか、と思うの。俺も仲良くなったらつまらないという考えは未だにあるんだけど、作る音楽は面白くなくても、人としては素敵な人だと思うと仲良くなって態度も軟化してきて。そんな時に「単に俺は怒ることに疲れてるだけじゃないの?」と疑ったりして。
マヒト:怒ることに疲れて何がダメなの?
アフロ:怒ってる奴にしか見えないものはあると思うのよ。疑い続ければ怒りが生まれるじゃん。だから、それはセットなんだよね。
マヒト:それさ……確かにMOROHAは満たされないことへの怒りや葛藤みたいなものと音楽がセットになっているというか、バイタリティの根本になっていると思ってて。簡単に言えば、幸せになっちゃいけないカルマの中にいるように見える。それって矛盾しているというか、本当は幸せになるために音楽はあるはずなんだけど、純度が高まって広まっていくほどそこから遠のいていく不思議なカルマにMOROHAはいるように思えるの。俺からすると鈍くなることは全然良いんだよね。さっき話した怒りがなくなって自分を疑う、そういう人にしか見えない世界があるのかもしれないけど。それが自然な流れでそうなったら全然良いと思ってて。究極を言えば、もっと鈍くなって曖昧になったら良いと思ってる。
アフロ:(マヒト君は)スタートがものすごい鋭かったと思うのよ。俺は逆からスタートしてる。怒りから遠いところにいて、「いや、怒りがないとダメなんだ」と思ったのが遅いのかもしれない。俺がいたところにマヒト君は向かってて、マヒト君がいたところに俺が向かってる感じはあるかも。
●俺たちは自然と勝ち負けのゲームに参加させられてる●
マヒト:本質的にアフロ君は何と戦ってるの?
アフロ:自分の嘘かな……気づけば嘘をつこうとしちゃうからね。例えばライブで、「今日はありがとうございました」という一言に対しても、すごく紋切りの言い方をして、紋切りの気持ちになっている時があるんだ。そういう瞬間、自分にヘドが出るのよ。
マヒト:なるほどねぇ。
アフロ:マヒト君は何と戦ってる?
マヒト:俺? 俺はそんなに戦ってないよ。強いて言うなら、誰と戦わなくても負けないところに行けたらいいな。本当はそれが一番正しいと思うんだよね。自然とこういう勝ち負けのゲームに参加させられてる気持ちがあって、それにもう飽き飽きしてる。雑な言い方をすると<もともと特別なOnly one>みたいな、本当はそういうはずなんだけど。自分がこんなゲームに参加させられてると、常にそうじゃない錯覚になる……。
アフロ:「常にそうじゃない錯覚」ってなに?
マヒト:本当は1つ1つがオリジナルで、1日1日だって今日と違うはずなのに、ゲームに参加させられて集客や売り上げの数字とかで「あいつらに勝つ」「あいつらに負けてる」みたいな流れに参加させられてる気がしてる。そこで俺のオリジナルみたいなことを歌っても、それこそ嘘になるんじゃないかなと思って。理想でいうと自分が一番先頭を走る感覚なのかな。嘘をつきたくないという意味ではアフロ君と似てるのかもしれない。
アフロ:それはゲームに対しての反抗もある?
マヒト:それもあるね。
アフロ:ゲームに乗ってたまるか、っていう。
マヒト:絶対に乗らざるおえないんだけどね。マリオで言えばクッパを倒すまで道があるけど、裏ワザを使って相手の真後ろからやっちゃう。そういうのがGEZANっぽいかな。
アフロ:どんなやり方にしろ、クッパはいるんでしょ?
マヒト:いると思う。
アフロ:それはゲームに参加してる奴?
マヒト:クッパの正体は“死”だと思う。そのゲームとどういう風に遊ぶかだな、って。
アフロ:死かぁ……。
マヒト:アフロ君のやる気を削ぐような質問になっちゃうけど、「アフロ君は何でそんなに頑張るのか?」「何にそこまで頑張っているのか?」それが不思議なんだよね。だって、どうせ命は終わるじゃん。どうせ終わるし、価値もないんだから幸せになっちゃおうぜ、みたいな方が俺の考えはクリアなんだよね。
アフロ:そもそも幸せはなんぞや?みたいな話になってくるけど。俺が嘘をつきたくないっていうのは、「良い飯食いたい」「認められたい」「金欲しい」っていう自分の中にある欲望に対して。もちろんそれらが一番ではないけど、音楽をやる人は聖人じゃなきゃいけないみたいな刷り込みがある。その刷り込みのせいでギャラ交渉をする事にすらも少しの抵抗が潜在的にあったのよ。それも嘘くせえなと思って。俺自身は欲望がある人間だから、そこに対して「それでいいのか?」という問いかけは続けないといけないし、それがあることに対して嘘をつきたくないんだよね。だから具体的に自分たちや相方の家族がちゃんと食っていけるような状況を、自分たちのすべてをかけてやってる。
マヒト:俺にはね、アフロ君が上だと思っているものが上に見えてないんだよ。だからこそ、アフロ君が何と戦っているか聞きたかったんだよね。
アフロ:俺は自分自身を嘘くさいと思う瞬間が一番嫌で。「数じゃなくて質だ」と散々言ってきたけど、その一抹に対して1%でも「逃げてるだけじゃないの?」という考えが入ると素直になれないんだよね。自分自身が体験したこととか、自分のことを歌詞にするから同じところに立ち続けているのは作り手としても恐怖だったりするの。何なら一度、魂を売ったと思っちゃうことだって俺は書き手として悪いと思わない。そこに対して「何で俺はこういうことをしちまったんだ」という気持ちを100%音楽に注ぎ込めたらピュアなことだと思う。あと、戦う理由としては、俺がダサいと思ってるものが大手を振って道の真ん中を歩いてるのがシンプルに嫌だ。
マヒト:俺にはわかんないんだよね。自分と関係ない人はめちゃくちゃいるわけじゃん。例えば、アフリカには末期ガンの子供がいたり、ブラジルにストリートチルドレンがいるとか、世の中には自分の知らない出来事が起きてる。そういうものを知っていくほど、今まで全部だと思っていたことが実は一部で。それが無限にあると、もはや相手にしていられない。だってさ、自分の大して良いと思わないものが道の真ん中を歩いていても、違う道には違う嫌な奴がいるわけじゃん。音楽の中でてっぺんを獲れたとしても、1年後には違う奴が現れて……それで俺は戦いの螺旋がバカらしく思えてる。だからこそ、アフロ君の考えに興味あるんだよ。
アフロ:俺らは戦い螺旋が好きなんだろうね。
マヒト:確かに、アフロ君は戦いが好きなんだと思う。何も思わない平凡な退屈を幸せと思えるような生活の中で、何も感じないのも正直な感覚だとは思うけどね。別にトゲが立って、エクストリームじゃないものも俺はエクストリームに思える。なんか、そういう気がする。
アフロ:この前、アルバム(『Silence Will Speak』)の音源を送ってくれたじゃん。あの作品に凄い怒りを感じたんだけど、それは俺のアンテナがそっちに向いているから?
マヒト:そう感じたなら、そうなんだと思う。自分としては全部の感覚を閉じ込めてて、テーマみたいなことでいうと「持ってちゃいけない感覚なんてない」という。飴屋法水という演劇の人がいて、その娘のくるみちゃんという女の子がいるんだけど。一緒に散歩をしてた時、公園でイチョウの葉が落ちてて「キレイだから、お父さんに持って行ってあげよう」と選んでたの。だけど、くん(くるみ)ちゃんの持っているのが結構シミのある葉だったから「こっちの方がキレイだよ」って俺が真っ黄色のキレイな葉を渡したら、「シミも全部色なの。色は全部キレイだから大丈夫」と言ってて。それがめちゃくちゃリリカルだな、と衝撃を受けた。「この感情は必要だ」とか「これは要らない感情だ」とか色々あるけど、全部の感覚を尊重するというか——学園ドラマでは優等生とか不良が描かれてるけど、その間に28人くらいクラスメイトはいて。俺の仕事はピックアップされてない28人を映すことの気がする。なくても困らないとされてるもの、まだ名前のついていない色を認めてあげるのが自分の中のテーマ。目標という言葉で言えば、そういうことなのかな。
●俺につきまとっているのは“死”なんだよね●
アフロ:自分に対して歌ってる感覚はある? あの時の自分が許せなくて、この曲を作ったとか。
マヒト:ほとんどないかな。そもそも一人称が自分じゃないんだよ。アフロ君のライブはお客さんを睨むような感じだけど、俺はお客さんのことを見たことないもん。いつもライブハウスの一番奥を見るようにしてる。
アフロ:その28人の感情って、それぞれ違うと思うんだけど。1フレーズくらいは俺と同じ部分があると思うんだよね。
マヒト:アフロ君の部分?
アフロ:自分の持っている感情は、みんなも持ってる感情だと思うのよ。だから俺が俺に歌えば、みんなが共感じゃなくて共有できると思ってる。
マヒト:どうかなぁ……。
アフロ:どういう学生時代だったの? 少なくとも28人ではないでしょ。ドラマになるような感じだったでしょ?
マヒト:みんなに嫌われてた。
アフロ:ということは28人じゃないじゃん。嫌われてもなく、好かれてもないのが28人だと思うんだよ。
マヒト:俺の過去は、さっきの話と関係ないんだよね。
アフロ:じゃあ幼少期とか生い立ちも?
マヒト:関係ないと思う。自分の話をすると、小さい頃に10回くらい引越しをしてて。引っ越す度にクラスのみんなから色紙をもらうじゃん。そこに「みんなから嫌われてました」とか「次の学校へ行ったら女の子を泣かせないでください」みたいな。引っ越す人に向けた色紙にそんなこと書く(笑)? 今でも思うのが「自分勝手」と書かれてて俺は自分勝手なのか、と。次の学校へ行ったら直そうと思うんだけど、どこが自分勝手なのか分からないから直らなくて。毎回同じようなループだったかな。
アフロ:俺も1回転校したのよ。俺がもらった色紙には紋切り型の良いことばっかり書いてあって。それって、何とも思われてないというかさ、良い悪いは別としてみんなの印象に残ったのはマヒト君の方だよ。改めて色紙を読み返した時に「なんて空っぽなんだろう」と思ったもん。だからマヒト君は、28人に憎しみという感情を植え付けた。それって相当だよ、だってカロリーを使わせてるんだから。
マヒト:まあね(笑)。半年で引っ越すこともよくあったから、クラスに入って「こいつらが一番面白いグループだな」とか「ここと遊ぶためには、こいつらと仲良くなったら良い」とかを最初の時点で見抜く。それは生き抜くための術だったと思うけど、そういう変に大人な部分があって。それが後で弾けちゃうんだけど……。
アフロ:弾けたっていうのは?
マヒト:中学くらいで「もういいや」と思って、ヤンキーみたいになっちゃった。つまり、行き過ぎてどうでもよくなった。だから欽也さんに挨拶をされてもシカトしちゃうわけよ。なんか突き抜けて脱力した感じというか、不良になったんだよね。人とコミュニケーションをとって何かするのが面倒くさくなった。どうせ「自分勝手だ」とか言われるし、もういいやって。学生生活に自分のルーツって感じる?
アフロ:俺はDragon Ash世代だったのよ。キングギドラの「公開処刑」でKJがディスられたじゃない? あれでクラス内がDragon Ash派とキングギドラ派で別れたのよ。俺は両方が好きだったんだけど、クラス内の世論はキングギドラだったわけ。俺はkjのつくる音楽が大好きなのに、皆とのノリを合わせる為に「kjはリアルじゃねえ」とか知ったかかましたの。そんな自分にすごく後悔して。その後のある日、クラス内で先生への不満がたまって「先生おかしいだろうよ!」ってみんなを代表して文句を言ったことがあったの。その時、先生が「同じことを思っている奴はいるのか?」と聞いた時に手を挙げた奴は1人もいなかった。これはkjのことを裏切った俺への業だなと。
マヒト:面白いねぇ(笑)。学生時代からつきまとっているのが、アフロ君は“後悔”なら、俺は“死”なんだよ。おじいちゃんが死んだ時に、人が物になる瞬間を見たような気がして。死んだ時に口がくわっと開いてたのね、それがブラックホールみたいで怖くなった。それから死に取り憑かれた。エモーショナルでもなければ、悲しい意味でもなくて、乾いた虚無感みたいなのがある。
アフロ:ずっと?
マヒト:変わらないね。幸せを考えた時も最後は死ぬことに行き着くから、「まあ、終わるっしょ」みたいな。それが小学生の頃からある。
アフロ:好きな女と美味しいご飯を食べてても、一抹に死ぬことがよぎるんだ。
マヒト:よぎるというか消えないね。
アフロ:幸せだなと思う瞬間はいつ?
マヒト:今も幸せだよ、今日のご飯も美味しいし。アフロ君は幸せになりたい?
アフロ:なりたい。俺も幸せだよ、怒りと共に幸せってあるよ。次の悔しさを見つけた時に幸せってある。
マヒト:そこの行く末はみんな気にかけているんだろうな。Dragon Ashにハマっている人がいる一方でGOING STEADYも流行っててさ。解散した時はクラスの女子が泣いてて、俺はその時にGOING STEADYを知ったの。その後、銀杏BOYZも聴くようになるんだけど……峯田さんって満たされない気持ちとかモテなさをガソリンに曲を書いてきたと思ってて。UK.PROJECTの人に(銀杏BOYZの)最新作をもらって聴いたら、「峯田さんは、もう満たされたんだな」と思った。満たされなさをガソリンにすることは危険なことなんだな、って。
アフロ:俺もそうなるかもな。
マヒト:「なるかもな」っていうか、アフロ君は何をガソリンにしてるの?
アフロ:今のところは“満たされなさ”だよね。ある一定の地域で満たされたから、次は別の地域へ行こうと旅してるのが現状。でも、行くところがなくなった時は音楽を辞めるんじゃない? 今度は絵描きになろうとか、ドーナツ屋をやろうとか別の道に変わるのかもしれないし。
●勘違い野郎のまま死ぬ方が綺麗だと思ってる●
マヒト:音楽って突き詰めると「政治の方へ行くか、宗教的になっていくか」って聞くけど、その話は的を得てるなと思ってて。政治を暴こうと思えば、どれだけでも怒りに触れられるし多分退屈はしない。スピリチュアルも同じような素質があって。アフロ君はそういうものには興味ない?
アフロ:ない。スピリチュアルについては無知だし、感じたこともないな。
マヒト:政治に関してはどう? いろんなミュージシャンがどこかのタイミングで政治に入っていくケースはよくあるじゃん。
アフロ:その状況にまだ至ってないかもね。今は俺は音楽では政治に触れない生活の中で生きているのかもしれない。
マヒト:だけど生活を突き詰めていったら、政治とぶつかるでしょ。いつかはぶつかるものなのかね?
アフロ:どうなんだろう。それを歌わなければいけないにしろ、歌いたいにしろ、自分が燃える材料になってるなら良いけど。とりあえず歌っとくか、ってなるとそれこそ自分の感情に嘘をつくことになる。できれば歌わざる得ない状況に立った時に歌うのが良いよなって。
マヒト:自然ってことだよね。
アフロ:そうだね。あのさ……「わかる人にだけ、わかれば良い」この言葉を聞いた時にどんな感情を抱く?
マヒト:汚い言葉だなと思う。ヌルいというか、音楽はもっと大きなことをやった方が良いと思う。そんな奴はそもそも相手にするべきじゃないし、もっと遠くに向けて歌わないと。それはお客さんの数じゃなくて、感覚としてもっと強い信念に向けて歌わないと表現の舞台になってない気がする。「わかる人にだけ、わかれば良い」は言葉として認めてない。そもそも、俺の音楽はわかるに決まってると思ってる。だけど、それが本当にわかってるかどうかのチェックはしないよ。その確認作業は必要ないんだよね。
アフロ:うんうん。
マヒト:今、周りを見渡したら「自分には才能がない」とかシラフになっちゃえるような要因はいくらでも転がってるじゃん。そこにピントを合わせない勝ち方はあると思う。それは、ある意味で逃避なのかもしれないけど、そういう勝ち方があっても良いんだよ。GEZANが後世まで残るかなんて自分はチェックできないから、「絶対にそうに決まってるっしょ!」と思って勘違い野郎のまま死ぬ方が綺麗だと思ってる。だから、自分の人生の中に「わかる人にだけ、わかれば良い」なんて問いかけが存在したことがない。そういう意味ではアフロ君が言った「俺の考えは他人にもあるはずだ」という感覚に近いのかもしれない。
アフロ:今後はどうなりたい?
マヒト:別に大通りの真ん中を旗ふって歩きたいとは思わないけど……俺以外の3人とか、レーベルの人達とか、単純にカッコイイ動きをしている奴がカッコイイなりの生活するのは基本だと思う。それは金銭的な意味も含めてだけど、贅沢をしなくても良いけど普通に生活できなきゃおかしいなって。
アフロ:それは俺が考えてることと一緒だよ。それが旗をふって歩きたい、ということだと思うし、俺もマヒト君と同じことを言ってると思う。
マヒト:……そっか!
文=真貝聡 撮影=横井明彦
取材撮影協力=炭火焼 尋 (東京都目黒区上目黒3-14-5ティグリス中目黒II 3F)

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