作品ごとに女優としての輝きを増して
いる秋元才加が、三谷幸喜作のミュー
ジカル『日本の歴史』で複数の役に初
挑戦

ファン待望の三谷幸喜の新作ミュージカルがいよいよ始動! とはいえ、その全貌については初日開幕までのお楽しみ……! ということで、キャストのひとり、秋元才加に少しだけヒントを明かしてもらった。どうやら『日本の歴史』というシンプルかつ壮大なタイトルにふさわしく、卑弥呼の時代から太平洋戦争まで、1700年間に渡る日本の変遷を描くミュージカルになるという。それも2時間半で! たった出演者7人で!! 中井貴一香取慎吾、新納慎也、川平慈英、シルビア・グラブ、宮澤エマ、秋元才加という芸達者な面々の華やかさが魅力なのはもちろん、いまだかつてない画期的なステージが繰り広げられそうだ。
ーー三谷幸喜作品ということでネタバレ事項など、まだ話せないことも多そうですが。今日は、現時点でわかっていることを少し教えていただけますか。
はい、わかりました(笑)。出演者は7名なのですが、この人数で本当に数多くの役をやらせていただきます。実は私、ひとり何役というのはこれが初めてで。きっと大変なんだろうなと思いつつ、この役はこういうアプローチかな、この役はこういう風にやってみたいな、と思っているところです。いろいろと個性の違う役を演じることで「秋元才加っていろんな役ができるんだね」って思っていただきたいですし、ひとつの作品でさまざまな表情や表現がお見せできるということにすごく今、ワクワクしています。
ーータイトルから想像するに、時代ごとに現れるいろいろな歴史上の人物を7人が次々に演じていくということなんでしょうか。
『日本の歴史』、ですからね(笑)。私、正直なところ日本史とか歴史ってすごく苦手なジャンルなんです。なので、この作品に出ることになり、予習することで勉強にもなるしありがたいなと思っていたんですが、実際にまず台本を読んでみたら、どの教科書よりも台本が一番わかりやすくて。
ーーそうなんですか!(笑)
ふふふ、三谷さんの人となりも、垣間見えたりもしますしね。教科書だと、年号と、こういう出来事があってという説明くらいですから、その人がどんな顔をしてどんなドラマが展開してということまでは想像できないので、感情移入できないし興味も関心も全然湧かなかったんです。でも三谷さんの今回の台本を読んだら「この人はこういう性格の人なんだ」というのがわかるので、スッと入ってきた。いずれ、学校の教本とかにしたらいいんじゃないかと思うくらいです(笑)。しかも今回はミュージカルで、ここに歌も入ってくるわけですからね。きっとメロディが加わることで、年号とかも覚えやすくなるんじゃないかな。まあ、もし、そういう歌詞だったらの話ですけど(笑)。
秋元才加
ーー確かに、それなら覚えやすいかもしれません(笑)。
ですから大人の方はもちろんですが、今回は子供たちにも観てほしいんですよ。歴史ってこんなに面白いんだ! と思ってもらえたら嬉しいですし。私自身も、こういう風に学校で歴史を教えてくれていたらもっと興味を持てただろうし、断片的ではなく歴史の流れとして理解できたかもしれなかったのになあって思いました。つまり点としてしか認識していなかった出来事が、点と点が繋がって線になって、それが今のこの私たちが過ごしている現代にまで繋がっているんだと、今回初めて感じることができたんです。
ーーそういう過去の流れがあるからこそ、今、現代の日本がこうなっているんだというのがしみじみとわかる台本になっている?
ええ、そう思います。すごくわかりやすかったですね。その上で、「えっ、この人がこの役をやるの?」という面白い配役も楽しめると思います。
ーーこの7人の方々がそれぞれ、いろいろな役を入れ替わり立ち替わり演じていくわけですね。
だから、やる側は相当バタバタになりそうで、なんだかドキドキします(笑)。きっと、時代はものすごいスピードで流れていくんだと思いますしね。
ーーおそらく4時間、5時間かけてやるわけでもなさそうですし。
チラシに書いてある通りなら、2時間半で1700年を描くことになりますね。よく「人間の一生を舞台で演じることができて……」って言いますけど、1700年の歴史を2時間半で演じられるというのも、本当に役者冥利に尽きるなと思います。
ーー秋元さんが三谷作品に出られるのは、舞台作品ではこれが2本目にあたります。三谷さんの舞台ならではの難しさとは。
『国民の映画』(2014年)の時はAKB48を卒業してから1本目の舞台でしたし、まだ何もわからないままでポンと入ったので、あまり難しさは考えたことがなかったかもしれないです。逆に今は、いろいろなタイプの作品を少しずつ経験させていただいてからなので、改めて「難しい!」って思うかもしれませんね。しかも今回はプラス、ミュージカルなので。お芝居部分はきっちりと見せていきながら、どうやって歌パートに入るんだろうというのがとても気になります。他のミュージカル作品とはアプローチがまた違いそうですし「ミュージカルです!」っていかにもな感じでもなさそうですし。きっと繊細なお芝居をしている中に歌が入るんだろうから、その塩梅や、表現の仕方はどうなるんでしょうね。
ーーこの題材でミュージカルなんですものね。どういう風になるのか、楽しみです。
ミュージカルという言葉自体が洋モノですしね。日本の歴史上の人物たちが、どうやって歌い出すんだろうとか、どういう楽曲、曲調になるんだろうとか。どんな楽器を使うのかも気になるし。でもチラシを見ると、演奏者はピアノ、ギター、チューバ、ベース、ドラム、パーカッション……とありますから。どうやら現代の楽器を使うらしい、ということまでしか今はわかりませんね(笑)。
秋元才加
ーーそして秋元さんご自身は、ここのところ『ゴースト』(2018年)、『にんじん』(2017年)とミュージカルへの出演が続いていますが。ミュージカルならではの、歌を使うことで表現できる面白さに関してはいかがですか。
表現を歌声に乗せて届ける時、音楽があることによって表現が増幅されるように思うので、そこがミュージカルの魅力のひとつなんだろうなと思います。今までは音にのせて気持ちを届ければいいんだよ、とお稽古場で言われていたんです。音楽そのものが悲しみや心情を表現してくれているから、と。それで音楽は音楽、そこに歌をのせればいいんだと考えていたんですが、そうではなくて音楽を活かしつつ感情を増幅させるんだということがわかってきて。確かに音楽に合わせることで感情がすごくのってきたりもするし、音楽があることによってすごく伝わりやすくなったり、よりダイレクトに伝わったり、感動的になったりもする。そこが、ストレート・プレイとは違った魅力なのかなと思うようになりました。そういう意味でも『ゴースト』に出演させていただいたことは、すごく勉強になりましたね。
ーーまたさらにステップアップできた、と?
そうですね。自分としては少し背伸びをして挑んだ作品でしたし、楽曲も難しかったので。やはり大変な部分もたくさんありましたが、千穐楽を迎えるころにはそれでも一つひとつできることも増えてきて。何事も積み重ねだな、と感じました。そうやってある程度積み重ねられたものがある状態で、続けてまたミュージカルの舞台としての三谷作品に出られるとなればまたさらに成長できるのかなと、そういった喜びも今回はあります。
ーープレッシャーというよりは、喜びや楽しみのほうが多いですか。
もう、『ゴースト』のプレッシャーがすごすぎたので(笑)。今まで経験したことのないことばかりで、冒頭の一言目のセリフが私からでしたし、一曲目の頭から私で、二幕の頭も私からだったんですよ。全編を通して10曲ほど歌わせていただくというのも、なかなかないことでしたし。もちろんすごくありがたいことなんですけれど、もう怖くて怖くて。
ーーそれは、かなりの重圧ですね(笑)。
でもすごくいい経験になりました。ここで必死に積み重ねておけば、次は『日本の歴史』だ、きっと歌うことがもっともっと楽しくなるはずだ! と思いながら、がんばったので。
ーーもう、楽しむ気マンマンですね。
そして今回はシルビア(・グラブ)さんとか川平(慈英)さん、(宮澤)エマちゃんに新納(慎也)さんと、ミュージカルで活躍なさっている俳優さんたちがたくさんいらっしゃるので。みなさん、テクニックがあるだけでなく、いつも感情に歌がしっかりのっていて、そこからドラマが伝わってくるんですよね。ただ歌うだけではなく、歌で起承転結を伝えることができるという。
ーーそれこそ、既に積み重ねている方々ばかり。
だから私も、ひたすら重ねていくことでしかきっとそこに近づくことはできないですから。ここのところミュージカル作品が続いていたということも、きっと神様が「今はそうやって重ねる時期だよ」と言っているのかもしれないと思い、まんまとその気になっているところです(笑)。
秋元才加
ーー共演者の方々の印象は、それぞれいかがでしょうか。
シルビアさんは『国民の映画』でご一緒させていただいていますし、香取(慎吾)さんとは映画『ギャラクシー街道』(2015年)でご一緒させていただいて。川平さんとは共演したことはないんですが『ショーガール』(Vol.2、2018年)を拝見した時、シルビアさんと二人ですごく楽しみながら舞台に立っていらっしゃるのがすごく伝わってきました。あと、(中井)貴一さんは一体、どういう風に歌われるんだろうって思って。私は中井さんの歌声は聞いたことがないので、今回すごく楽しみなんです。もちろん新納さんもエマちゃんも、ミュージカルで活躍なさってる方なので歌声は素晴らしいでしょうし、なんといっても香取さんの歌声が聞けるというのは、皆さんきっとものすごく嬉しいんじゃないかなって思います。
ーーそれにしても7人だけで、というのはやはり大変そうですね。
本当ですね。裏ではひたすら走り回っているのかも。『日本の歴史』、ということは時代によっては甲冑をつけたりもするんですかね、まあ、普通に生きていたらそんな衣裳、着られなさそうですから面白そうですけど(笑)。そうだ、以前の三谷さんの作品で長澤まさみさんと斉藤由貴さんが紫式部と清少納言をやられていましたよね、今回は紫式部や清少納言は出てくるんでしょうか。私とエマちゃんでやらせてくれないですかねえ?(笑)
ーーやりたいんですね(笑)。
ふふふ。誰か、綺麗どころの偉人をやりたいんです。それと、卑弥呼は誰がやるんでしょうね。卑弥呼、かなり大事じゃないですか。
ーー卑弥呼もやりたいですか。
やりたいですけど、やれるかどうかはわからないですね。とりあえず、誰もが知っているメジャーな偉人をやりたいです!
ーー三谷さんから、今回の作品に関して何か言われていますか?
三谷さんからは「僕は秋元さんが実は器用なのを知っているんですよ。なので、いろいろな役を君にやらせたいと思います」と言われました。そのあとで台本を読ませていただいたら、まさにバリエーション豊かな役をいただいているなあと思ったので、その期待にぜひ応えたいなと思いましたね。しかも、三谷さんと雑談した時の内容が意識して書かれている感じもあるんです。あてがき、じゃないですけど。私の場合、パッと見、強い女性を演じることが多かったりするんですが、そういうところだけではなかったので、すごく私のことを見てくださっているなと。「いやー、私、そういうところも見てほしかったんですよ、みなさんに!」っていうような役とか。「実は強そうに見えるけど弱いんです私、ここも見せたかったんです!」みたいな(笑)。三谷さんの作品でなければ、出すことはなかっただろうなという一面を見せられる役をいただけたので。その点も、本当にありがたいなと思います。
ーーでは最後にお客様へ、お誘いのメッセージをいただけますか。
三谷さんが、どういう風にミュージカルの演出をするのかも楽しみですけれど、きっと三谷さんならではのハートウォーミングな人間の温かさを感じられるものになるんじゃないかと思います。戦国武将とか偉人たちを描くにしてもきっと今、現代を生きる私たちにも共感できる部分が多くありそうですし、音楽と歌声にのせて、歴史についてもきっと勉強になるという、楽しい時間になりそうですし。1700年という長い時間を楽しい2時間半にして、みなさんと一緒に駆け抜けたいなと思っています。……でもホント、どうなるんだろう?(笑)
ーー他では決して味わえない舞台になりそうですし、楽しみですね。
秋元才加
取材・文=田中里津子 撮影=岩間辰徳

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着