ROTTENGRAFFTY 初の日本武道館単独
ライブに見た、リアリティをリアルが
超えた瞬間

ROTTENGRAFFTY PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018 in 日本武道館

2018年10月3日(水)日本武道館
10年前、どん底だった俺らには武道館なんて想像出来なかった。N∀OKI(Vo)とNOBUYA(Vo)はMCで、シンドかった過去を振り返りながらしみじみ語り、KAZUOMI(Gt, Programming)は「こんな一日があるなら、あんな苦しみなんて屁でもない」と笑う。結成19年、初の日本武道館ワンマンを果たしたROTTENGRAFFTY。「結成した頃、武道館なんて想像もしなかった」とNOBUYAが語るように、行き先なんて分からないけど、ただガムシャラに一歩一歩、歩みを進めてきた先にあった日本武道館という晴れ舞台。古都のドブネズミが必死に下水道を走り続けてきたら、ロックの聖地にたどり着いたという、夢みたいな未来。「ここに立ってることが全て」という言葉に、僕はリアリティをリアルが超えた瞬間を見た気がした。
ROTTENGRAFFTY 撮影=HayachiN
開演前、アリーナのスタンディング席を埋め尽くす、様々な土地の市外局番が背中にプリントされたオフィシャルTシャツを着た観客たち。武道館ワンマンに向けて全49本を行ったバンド史上最長のツアーで、「これを着て武道館に集まってくれ」と販売したTシャツを着たファンが、武道館での勇姿を見届けようと全国から集結したのだ。期待に満ち溢れた観客が発する熱気が会場を包む中、オープニング映像が流れてついにメンバーが登場。KAZUOMIのギターとN∀OKIの咆哮に、NOBUYAが「やろうぜ、武道館!」と一声発し、最新アルバム『PLAY』の1曲目でもある「寂寞 -sekibaku-」でライブが始まる。武道館に響くHIROSHI(Dr)と侑威地(Ba)の重厚なビート、KAZUOMIの鋭いギター。N∀OKIとNOBUYAのツインボーカルや痛切なシャウトが感情を高ぶらせ、会場の熱は一気に沸点へと達する。
ROTTENGRAFFTY 撮影=HayachiN
ROTTENGRAFFTY 撮影=HayachiN
「余計なものは必要ない、とにかく楽しめ! 歌え! 踊れ! 騒げ! 飛べ飛べ!」と煽り、観客のジャンプに会場が揺れた「PLAYBACK」など、最新アルバム『PLAY』を掲げてのツアーということで、新曲を中心としたセットで構成された前半戦。全国ツアーで鍛え上げられた楽曲たちは新曲ながら、バンドにもファンにもしっかり体に馴染んでる。武道館ならではのスクリーンを使った映像や特効も存分に使用して視覚的にも訴えかける演出は、楽曲により深い理解や深みを与え、武道館に響く轟音やシャウトと広いステージを活かしたパフォーマンス、大観衆の異常なほどの盛り上がりも含めて、CDや普段のライブとは異なる、ひとつの完成形を見せてくれた。「懐かしいの一発」といって披露した原点的な曲「毒学PO.P革新犯」、<今を超えろ 明日を変えろ>と熱く伝えた「THIS WORLD」と過去楽曲も効果的に混じえながら、オーディエンスに最新かつ最強のROTTENGRAFFTYを食らわせる。
ROTTENGRAFFTY 撮影=HayachiN
ROTTENGRAFFTY 撮影=HayachiN
ROTTENGRAFFTY 撮影=Yukihide “JON…” Takimoto
「ROTTENGRAFFTY史上最大のツアー、ようやくここまでたどり着きました。ステージ上がったら床が抜けるみたいな、壮大なドッキリじゃなくて良かった~!」と笑うNOBUYA。願うように祈るように歌った「Just One More...」で始まった中盤戦は、活動初期の楽曲「暴イズDEAD」、観客との掛け合いで一体感を生んだ「響く都」、「力いっぱいデカイ声出してくれ!」の呼びかけに会場中が両手を上げて大声で応えた「STAY REAL」と続き、物々しいサイレンとスモークから「全員、音で殺す!」とKAZUOMIが煽り始まった「零戦SOUNDSYSTEM」の攻撃的な歌とサウンドが限界突破の熱狂を生む。
「あの頃は“全員敵や、ぶっ殺してやる”と思ってた」と、NOBUYAが結成当初の物々しい昔話を語ったMCでは、ファンやスタッフ、バンドマンへの感謝を告げ、「不器用だと言われて、遠回りし続けて、長い年月かかったけどここまで来れた」と武道館に立つ喜びを語る。そう、ROTTENGRAFFTYは不器用なバンドだと思う。でも、だからこそシンパシーを感じるし、人間臭いし、そんな彼らが紡ぐ物語にグッとくるのだ。“諦めって言葉を忘れた5人組”と語っていたが、“もしかしたら、叶うかもしれない”と思わせるリアリティ溢れる夢や希望を諦めることなく歌い続け、自身も想像しなかった日本武道館へとたどり着いた彼ら。自身の歌う夢を自身が越える瞬間、つまりリアルがリアリティを越える瞬間を彼らは武道館という場所で体現して見せたのだ。
ROTTENGRAFFTY 撮影=HayachiN
自身も病と戦いながら、武道館という夢を越えるために大きな手助けをしてくれた事務所社長の松原氏に捧げる「アイオイ」をたっぷり気持ちを込めた歌と演奏で披露して始まった終盤戦は、巨大ミラーボールが武道館をダンスフロアに変え、会場中が歌い踊り叫んだ「D.A.N.C.E.」、夕焼けのようなオレンジの照明が照らす中に観客の大合唱が響いた「金色グラフティー」がクライマックスを生むと、「Rainy」で会場をひとつにする。本編ラスト、「俺たちに会いに、いつでもライブハウスに来いよ」と優しく語りかけ、始まった曲は「Error...」。全身全霊の歌と演奏に観客も本気で応え、武道館にライブハウスさながらのカオティックな雰囲気を生むと、「俺たちが京都からやって来た、ROTTENGRAFFTYだ!」と力強く告げ、5人はステージを去った。
ROTTENGRAFFTY 撮影=Yukihide “JON…” Takimoto
アンコールでは「この曲があるから、俺たちは何度でも立ち上がれた」と語った「マンダーラ」、<古都のドブネズミ 俺が切り札>と“修羅的存在感”を見せつけた「切り札」で、“歴史的記念日”を刻み、ROTTENGRAFFTY初の日本武道館ワンマンは終演。どんなシンドイ時代も諦めずに瞬間瞬間を燃やし続け、リアルがリアリティを越える最高の瞬間にたどり着いた彼らの勇姿は、見る者に強い勇気と確かな希望を与えてくれた。ROTTENGRAFFTYがここから紡ぐ、想像も出来ない物語や未来を見るのも楽しみだ。
取材・文=フジジュン
撮影=Yukihide “JON…” Takimoto、かわどう、 HayachiN
ROTTENGRAFFTY 撮影=かわどう
>>【対談】ROTTENGRAFFTY武道館前緊急対談KAZUOMI(Gt)✕松原裕氏によるアーティストと事務所社長だから話せるロットンの今までとこれから

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