■メイク:赤松絵利 Eri Akamatsu / ESPER ■スタイリスト:岡本純子Junko Okamoto ■衣裳協力:08サーカス

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【インタビュー】『止められるか、俺
たちを』門脇麦「これこそ“キラキラ
映画”」白石和彌監督「当時の若松さ
んたちの情熱を焼きつけたかった」

 1960年代後半から70年代にかけてエッジの利いた作品を次々と送り出し、若者たちの絶大な支持を集めた若松プロダクション。鬼才・若松孝二を中心に、そこに集った若い映画人たちの型破りで熱い生きざまを描いた鮮烈な青春群像劇『止められるか、俺たちを』が10月13日から全国順次公開される。若松プロ作品初参加で主人公・吉積めぐみを熱演した門脇麦と、若松を師と仰ぐ白石和彌監督に、作品に込めた思いを聞いた。
-まず、若松孝二監督を演じた井浦新さんが見事でした。井浦さんの印象は?
白石 こんなむちゃ振り、ないですよね(笑)。でも、それを踏まえて、腹をくくって必死にやってくれました。僕にとって若松孝二は師匠なので、新さんが演じているとはいえ、そんな人に現場でNGを出せるのか、事前に何度もシミュレーションしたんです。その結果、「やっぱり無理」と。それで新さんに「任せます」と伝えたら、「そんなのやめてください」と慌てていましたけど(笑)。とはいえ、いざ始まったら、最後まで見事に演じ切ってくれました。頼もしかったです。
門脇 クランクイン前日に新さんとお話をしたとき、「吐きそう」とおっしゃっていて。心から尊敬している方を演じるということはよほどの覚悟がない限りできないと思います。私だったらやりたくない。でも、それをやると言った新さんの姿を見て、作品の真ん中に立つということがどんなことなのか、改めて教えられました。本当に頼りがいがあったし、新さんを通して、会ったことのない若松さんにお会いできたような気にもなって…。そんなふうに感じたのは、初めての経験でした。
-そんな若松孝二を中心とした若松プロの熱い時代を描きながらも、若松監督ではなく、その下で助監督を務めた吉積めぐみを主人公にした理由は?
白石 これは、吉積めぐみという存在があったからこそ撮れた物語です。若松さんを主人公にするより、何者でもない吉積めぐみが何者かになろうとする話の方が、より間口を広げることができる。さらに言えば、“めぐみ=僕たち”だったので、若松さんよりめぐみに対する思い入れの方が強かった。新宿のゴールデン街で「おまえは何がやりたいんだ」と言われる場面などは、僕ら自身の経験でもありますから。だから、僕の中で若松さんを主人公にするという選択肢はありませんでした。
-それに対して、門脇さんはどのように役作りを?
門脇 まず、物語の中のめぐみを成立させるということを一番に考えました。もちろん、めぐみさんについて皆さんが語った資料などは読み、そこに込められた想いをしっかりと受け止めながら演じたつもりです。ただ、映画の中で自分が演じなければいけないとなったとき、そこは一度、断ち切る必要がありました。何故なら、実際のめぐみさんは、あの時代の真っただ中にいた人で、皆さんが抱いている思いや感傷的な気持ちは知らないはずなので。だから、そういう白石監督たちの思いを感じつつも、「私がやるべきことはそこじゃない」と。その間の道をするするっと見つけながら、やっていた感じです(笑)。
白石 そのあたり、冷静でいてくれたということですよね。確かに当時は、ただただ振り回されているだけだったり、怒られたくないから一生懸命やっていたり、多分その程度のことなんですよ。後から振り返ったとき、その積み重ねが「でもやっぱり俺たち青春していたよね」みたいな見え方になるだけで。
-役作りに関して、白石監督から指示は?
白石 フワッとした話をした程度です。ジャズを聴いていたただのフーテンが、なんとなく若松プロに加わったという話で、特別こういうキャラを作りたいということではなかったので。麦ちゃんがやってくれることになった段階で、僕の中ではある程度見えていたので、信頼して任せました。
-門脇さんは、演じる上で井浦さんとのバランスは意識されましたか。
門脇 新さんとの、というよりは、作品全体の中で自分がどのあたりにいるのかいいのかというバランスを探っていました。白石監督や新さんなど、若松さんと縁のある方たちの中に、お会いしたことのない私が飛び込むことは、右も左も分からないまま若松プロに飛び込んだめぐみさんに重なると思ったので。
-そういう意味では、門脇さんが若松プロや若松監督を知らないからこそ、リアルに吉積めぐみを演じられた部分もあったのでしょうか。
門脇 そうかもしれません。引っ張られ過ぎない人がいることで、当時を知らない人にも見やすい映画になったのかなと。
白石 本当にその通り。さらに言えば、麦ちゃん1人だけだったら、「おや?」と思う部分もあったかもしれないけど、ガイラ(小水一男)役の毎熊克哉くんとか、荒井晴彦役の藤原季節くんとか、同じような若者たちが何人か集団でいたので、それもよかったんだろうなと。
門脇 メークや衣装、ロケ場所などに導かれたところもあると思っています。ゴールデン街など、あの時代の名残があるところで撮影していたので…。あと、めぐみさんの写真があったので、それを毎日眺めながら、ひたすら「どうか助けてください」と祈っていました(笑)。
-当時を知らない門脇さんにとって、この作品から刺激を受ける部分はありましたか。
門脇 完成した映画を見たとき、まず思ったのが「これが青春映画だよな」ということ。今、世の中に「青春映画」と呼ばれる作品はいっぱいありますけど、そういうものとは全く違う。これこそ“キラキラ映画”(笑)。だから、私と同世代の人や、より若い10代の人たちが見て、「こういう青春の方がかっこいい」と思ってくれたらうれしいです。
-その辺りは、白石監督やスタッフの思いも反映されているのでしょうか。
白石 それは間違いありません。まずは、当時の若松さんたちの情熱を焼きつけたかった。その上で、僕らには同じ年代の頃、あんなに熱量を持って生きられなかったという思いがある。「時代のせい」と片づけるのは簡単だけど、結局それは自分の至らなさ。そういう意味で、そこに対する憧れはやっぱりありますから。だから、今の若い人が見て、少しでも「ああいうことをやりたい」と思ってもらえたらいいですね。
(取材・文・写真/井上健一)

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