【インタビュー】Ken Yokoyama、15年
を物語るセルフコンピ盤完成「横山は
一本気だなって」

Ken Yokoyamaが10月10日、単独名義のアルバムとしては約3年ぶりとなるセルフコンピレーションアルバム『Songs Of The Living Dead』をリリースする。横山健がKen Yokoyamaとして、1stアルバム『The Cost Of My Freedom』を発表してから約15年が経過した。『Songs Of The Living Dead』は活動初期からの「コンピ用の曲や未発表の曲とかを集めて、いつか1枚の作品にしたいんだよね」という思いを実現したものであり、約15年にわたる活動が今作のリリースを可能にしたと言い換えることもできる。
“ゾンビのような楽曲たち”というアルバムタイトルは、旧メンバー在籍時の楽曲が多数収録されているという意味でもふさわしい。これまでコンピ盤やトリビュート盤に収録された楽曲ほか、カバーを含む新録5曲が加えられた全20曲には、サウンド変遷も変わらぬ本質も、個々の楽曲に対する深い想いもすべてが『Songs Of The Living Dead』という名のもとに集束され、Ken Yokomayaのこれまでとこれからを示すように躍動的だ。

また、先ごろミュージックビデオが公開された「Brand New Cadillac」はチバユウスケをゲストボーカルとして迎え入れたもの。Ken Yokoyamaの前アルバム『SENTIMENTAL TRASH』収録曲「Pressure Drop」も同様にThe Clashがカバーしていたナンバーであり、チバとライブ会場で共演することも多々あったという。Ken Yokoyamaとチバの共通項はThe Clashだと横山健自身が思うところもあり、楽屋でチバに「The Clashで他にやりたい曲ある?」と聞いたところ、「カバーだけど「Brand New Cadillac」とかカッコいいんじゃない?」という会話から、今回のコラボレーションが実現。横浜ゲリラライブの模様が収録された同曲ミュージックビデオの破壊力はあまりにも大きい。これは遊び心溢れる事件でもある。

BARKSではKen Bandのメンバー全員を迎えてインタビューを行なった。収録楽曲が映し出したKen Yokoyamaならではの挑戦、サウンド&プレイの本質はもとより、ギターとスケボーのオリジナルブランド“Woodstics”、全国ツアー<Songs Of The Living Dead Tour>をもって脱退することがアナウンスされているMatchanとKen Bandのこれからに迫った1万字のロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■熱量も遊び心も変に高まりますよね
■そりゃ、おもしろいはずだわなって

──ずっと前から、コンピ用の曲とかを集めて1枚の作品にしたい、と思っていたそうですね。どういう気持ちからだったんですか?

Ken:思っていたのは、相当前からなんですよ。今回の『Songs Of The Living Dead』に入っている曲で、一番古い音源が「Hungly Like The Wolf」だと思うんですね。それを録ったころから、そういう発想はあったんじゃないですかね。でもどういう気持ちから……なんだろう。ただ、バンドのレアトラック集とか、たまにすごくいいのがあるじゃないですか? そんなようなものにしたいなってイメージじゃないですかね。

──コンピレーションに提供した曲や、オリジナルアルバムに入らなかったカバーとかに、名曲が隠れていたり、そのミュージシャンの趣味趣向も現れていたりしますよね。

Ken:うん、そうですよね。昔からこういうのを作りたいと思ったけど、結局、15年掛けて作ったのは、そこに旨味をギュッと詰め込むっていう、何となく作ったわけじゃないよと。その説得力を持たせる時間だったかもしれない。
▲Ken Yokoyama

──なるほど。それで聞きたいんですけど、コンピ用の曲やカバー曲などは、オリジナルアルバムのレコーディングとは全然違うタイミングや期間に録ることが多かったんですか?

Ken:今回、洗い出してみたら、だいたいがそうでしたね。フルアルバムのタイミングで一緒に録ったのが1〜2曲あった気がするんですけど。多分、「My Shoes」は『Four』(2010年発表)のレコーディングで録ったんですよ。

Minami:うん、そうっすね。「Nothin'But Sausage」はいつ録ったんです?

Ken:それは何かのシングルのときだった気がするな。シングル「Not Fooling Anyone」かな。

──「Nothin'But Sausage」は、当時のライブでいきなり初披露した曲でしたよね。2ndアルバム『Nothin'But Sausage』(2005年発表)のツアーで「アルバムのタイトル曲がないから、作ってきた。今からやるわ」って突然言って。確かライブ会場は渋谷AXでした。

Ken:そうですそうです。そのライブの後にスタジオで録ったんですよ、きっと。だから3rdアルバムに向かう段階でのシングルが「Not Fooling Anyone」なんだろうな。でも、「My Shoes」と「Nothin'But Sausage」以外は、ほとんどがアルバムやシングルのタイミングではない、そのためのレコーディングですね。
▲Hidenori Minami

──オリジナルアルバムでは、アルバムごとの作品像であったり、こういうものを作るんだって言う意志のもとで作っていると思うんです。そのタイミングではないレコーディングのときは、遊び心に近い感覚も入ってくるものなんですか?

Ken:やっぱりそうですね。オリジナルアルバムは、作品の全体像を想像しつつ曲を作っていくんで。そうではない突発的なレコーディングのときは、遊び心が出ますね。あとオリジナルアルバムのときは、一気にまとめて録っていくんで、例えば10数曲あるとしたら、良くも悪くも10数曲のうちのひとつになるんですよ。それが統一感を生むときもあれば散漫になってしまうこともありますけど。でもコンピのために1曲だけ録るとなったら、それだけに向けるんで、変に熱量も遊び心も高まりますよね。普段はやらないけど、時間あるからやっちゃえみたいなアイデアを、その曲のアレンジに放り込んじゃったりとか。やっぱオリジナルアルバム用のレコーディングとは違いますよね。そういったものが今回、ひとつのアルバムになっているんで、そりゃ、おもしろいはずだわなって気もします。

──遊び心というのは、その時々の次の作品に向かうための実験みたいなニュアンスもあったんですか?

Ken:どうなんだろうね。実験はたくさんありますけど、それが必ずしも次のアルバムに向かうためのものだったかは分からないですね。

──例えば「Going South」は、Minamiさんがバンドに加入して、さあ、どういう曲が生まれるのかってときに作ったものでしたね。それで裏打ちカッティングとかスカ要素とか入ってきて。当時は実験と遊び心を感じましたよ。

Minami:なるほどね。今はスカもやりますけど、当時のモードでは絶対にKen Bandではやらないだろうってことで、「Going South」をやること自体が遊びで。実験でもなかったですね。あとユーモアじゃないですけど、自分が前はKEMURIにいたってことをパロディにしちゃうみたいな。僕は遊び心しかなかったですね。

──でもその遊びが、音楽的に活性化されて、起爆剤みたいになった印象ですよ。今はメロディックパンクだけに縛られたバンドでもないわけですから。

Minami:でも「Going South」に関しては、そこまで真面目な思い入れもないです(笑)。

Ken:だから今になって考えてみると、「Going South」がKen Bandにとっての初めてのスカ……いや、スカでもないか(笑)。

Jun Gray:スカセクションがちょっとあるっていうだけ(笑)。スカナンバーと呼べるほどのスカではないからね。
■バンドとして新しいリズムを
■獲得していく様が図らずも見えました

──そのころだったと思うんですけど、Ken Bandのリハーサルを観に行ったことあるんですよ。オリジナル曲をリハするかと思ったら、みなさん、カバーというかコピー曲ばっか始めちゃって(笑)。

Ken:そうでしたっけ(笑)!?

──モトリー・クルー、ジューダス・プリースト、メタリカ、あとアンスラックスもやったかな。

Ken:メタルばっかっすね(笑)。
▲Jun Gray

──しかも「いつ、リハを始めるの?」って聞いたら、「今やってるじゃん!」と言われ(笑)。

Ken:あっ、でもその感じは今でも変わってない。ツアー直前のときはそんなことやってないけど、基本、週2回は何がなくてもリハに入るバンドなんで、高校生バンドみたいなノリが未だにあるんですよ。それでコピーとかもやっていて。最近はローリング・ストーンズの曲とか、よくやってるよね。

Minami:ああ、「Jumpin' Jack Flash」とかを。やる曲はちょっと大人っぽくなっちゃったけど(笑)。

Ken:あと、なにかと「Anarchy in the U.K.」(セックス・ピストルズ)をやったりね(笑)。

Matchan:完コピぶりを競うように(笑)。

Ken:ダムドの曲もけっこうやりがちだし。

──「次はあの曲やろうぜ」って会話もなく、いきなり、リフ弾き出して、みんなも合わせてきて突入でしょ?

Ken:そうそう、そんな感じで(笑)。それでみんなが曲をあまり覚えてなかったりすると、俺はちょっと不満そうな顔したりとか(笑)。

──今回のセルフコンピに収録されたカバー曲も、レコーディング当時はそんな調子で選曲したんですか?

Ken:そうでしたね。狙ったり、縛りがあった上で考えたことないもんね? むしろオリジナルアルバム用に録るカバー曲は、もうちょっとルーツを捉え、Ken Bandとしてのアレンジがしっかり施されたりする。でも今回のは、意外とそのままコピーみたいな曲も入っていたりするんで。肩の力の抜け具合というか、ちょっと高校生バンドのノリが入っているというか。そういう曲はオリジナルアルバムには入れづらいんですよ。リハーサルの持ち曲みたいなのを形にしちゃう勢いが、今回のセルフコンピにはあるかもしれない。

──ハスカー・ドゥの「Don't Want To Know If You Are Lonely」をやっていたことに、マニアックなところを突いてくるな!?って驚きもありました。

Ken:その曲には事情があって、多分、「Hungly Like The Wolf」と同じくらい一番古い録音だと思うんですよ。そのころにやった<Cost Of My Freedom TOUR>は、アルバム1枚分のオリジナル曲しかなかったんで、曲数が少ないじゃないですか? それでスティッフ・リトル・フィンガーズとハスカー・ドゥを1曲ずつカバーしたんです。で、初めてのレコーディングのときに、「Hungry Like The Wolf」のついでに録ってしまおうと。録ったはいいけど、もう2ndアルバム用の曲がどんどんできていって、できた曲はレコーディング前からライブでやってたんですよ。オリジナル曲を増やして、セットリストも長くしていったんです。そうなるとスティッフ・リトル・フィンガーズやハスカー・ドゥの曲は、セットリストから落ちていくんですね。ライブでもやらなくなったんですけど、当時、録音した音源はずっと残っていて。ここで蘇らせようと。当時は単純にいい曲だなと思ってやったんですよ。
▲Matchan

──音楽的なアンテナの張り方が、Kenさんは幅広くて深いですよ。この15年間あまりで、自分の感性やアンテナへの引っ掛かり方に、変化が起こった自覚もありますか?

Ken:それ、今回セルフコンピにまとめてみて、ちょっと思いましたね。最初のころは勢いというか、やっぱ2ビートか8ビートなんですよ。それが15年やっていくうちに、バンドとして新しいリズムを獲得していった様が、図らずも見えましたね。自分でも興味深かったです。

──新録のカバーも3曲入っていますが、10数年前だったらピックアップしてないタイプの曲ですか?

Ken:そうですね。ノー・ユース・フォー・ア・ネイムとかガンズン・ワンカーズのカバー曲は、余裕があるなって感じもするんです、自分でも。よく言えば、熟したバンドじゃないとできないなっていうカバー。若いときだったら、もっと他にやるべきことがあるじゃないですか? だけど、良くも悪くも僕らは歳を取って、ノー・ユース・フォー・ア・ネイムとは20代のときに一緒にツアーも廻ったし、その後にトニー(・スライ)が亡くなって解散して。じゃあ、僕らが歌い継ごうって。歌い継ぐといったら、ちょっとおこがましいですけど。でも、人間として歴史がないと、まず起こり得ない考えですよね。20代の子では起こり得ないドラマチックさがあるな、と自分でも思います。だから歳を取るのは楽しい。いや、楽しいってことばかりでもないか。寂しいこともありますけど、特に夜方面(笑)。

──あと老眼もヤバくなりますよ(笑)。

Ken:老眼、ヤバイっすね(笑)。

──そこはともかく、そういった選曲にロマンチストぶり、出てます。

Ken:あと自分で言うと、元も子もないですけど、横山は一本気だなって(笑)。

──メンバー3人は笑ってますが(笑)。

Ken:笑ってますけど、ガンズン・ワンカーズの曲「Nervous」をカバーするなんてね。自分が20代のときに好きだったものだし、今でも大好き。好きなものに対してロイヤルである感じとか、ああ、一本気でいいと思います。ねぇ?

Matchan:ハイッ(笑)。

──調子いいな(笑)。
■ライブでやっていく曲を念頭にまとめたんで
■全曲、聴いておいてくれよ

──新録オリジナル曲「I Feel For You,Fuck You」でセルフコンピは幕を開けます。それともう1曲の新録オリジナル曲「Swap The Files Over Your Head」も入っています。いつぐらいのタイミングで曲作りを?

Ken:それはJunちゃんに聞いてください。このアルバム自体、やろうと言ったのはJunちゃんだから。
『Songs Of The Living Dead』

Jun Gray:いや、前からこういうふうにまとめたアルバムを作りたいってことは、Kenから聞いてて、なんなら俺が加入したころから。俺が入った時点ですでに録音されていた曲も、今回のセルフコンピには入っているし。それに……思い出した! 加入したばかりのころ、Kenからレアトラック集のCD-Rをもらったんだよね。「ここに入ってる曲はライブであんまりやらないと思うけど」というニュアンスで。「こういうのを後々、CDにしたいかなって思いはある」と。だからアイデアはすでに持ってたんだけど、タイミング的にずっと、今じゃない、今でもないってのが続いて、俺が加入してもう10年ぐらい経って。

──なるほど。

Jun Gray:それで今年の春、難ちゃん(難波章浩 / NAMBA69)とのスプリット『Ken Yokoyama VS NAMBA69』のレコーディングがあって、次にどうしようと話したとき、ぶっちゃけ、スプリットで使い果たして、新曲もなかったりして。本来だったら今年、Ken Bandのフルアルバムを出したら美しい流れなんだけど、去年はHi-STANDARDでKenがこっちの曲作りに集中できなかったりしたし。それなら、ずっと前からのアイデアを形にするのは、このタイミングじゃないのかって。だけどKenには、やっぱり新録曲も入れたいという思いもあって。オリジナルの新曲を作るなら、年末か年明けになってしまう話も出たんだけど、俺がそんなのはダメでしょうと。夏か秋ぐらいにはリリースしようって、難ちゃんとのスプリットを出すくらいから俺は言い張ってたかな。それでKenに新曲を作ってもらって。

──最もドタバタしてた時期ですね。

Ken:そう、だからいつ曲を作ったのか、自分でも覚えてないぐらいなんです。でも新録の5曲を録ったのは、今年5月かな。難ちゃんとツアーしながらでしたね(笑)。新録曲を入れたいってのは、こだわりとしてあったんです。音源はもはやコアな人が買うものじゃないですか? 本当のコアな人は、全部のオムニバスもコンプリートしてると思うんですよ。そういう人に一番喜んでもらいたいじゃないですか、こういうセルフコンピは。こうやってひとつのアルバムにまとめられたところで、「どうなの?」って若い子は思うかもしれないけど、僕からしたら、ものすごいステイトメントなんです、ひとつにまとめるってことは。今後、ライブでやっていく曲を念頭にまとめたんで、全曲、聴いておいてくれよって。

──それに過去を振り返ってまとめたものではなく、今の一番新しい感覚も入っているのがポイントですね。しかもオリジナルの新録2曲が、タイプも曲調も違う。今のKen Bandはこれだけ広がっているんだぜ、という宣言に近いものも感じますよ。

Ken:うん、そうですね。

──そして、覚えてないぐらいの一瞬の時間でも、曲を作ってしまうというポテンシャルの高さですよ。

Ken:うん、やるしかなかったですね。Junちゃんがうるさいんで(笑)。

──今も腕組みしながらうなずいているし(笑)。

Ken:だから大変だったのは僕とMinamiちゃんで、ブーブー言いながらやりましたよ。「Junちゃんはやれと言うくせに、スタジオに来て、帰るだけじゃん」みたいな(笑)。

Jun Gray:いや、でもいいベースを弾く男なんですよ、俺という男はね(笑)。そういう作業はちゃんとやりますから。

──ベースフレーズでちゃんと歌いますからね。

Jun Gray:そう、分かってるじゃん(笑)。

Ken:いや、でも半分、ベースラインを考えてるのはKenですから(笑)。

Jun Gray:うるせーよ(笑)。そんなワケないだろ。実際にKenがベース弾いてる昔の曲も、今回のセルフコンピには入っているんだけど、「ルート弾きしかやってねぇのか!?」って曲もあったり(笑)。

Ken:それ、マスタリングのときに初めて自分でも気づいた。「俺、こんな単純なベースフレーズ弾いてたんだ、おもしれーな」って(笑)。昔、サージが仕事でいなかったりしたときに、GUNNちゃんにドラムを叩いてもらって、それ以外のことは全て一人でやったりしてて。『Nothing But Sausage』の時期はそうでした。

Jun Gray:いや、そこではけっこういいベースを弾いてるんだけど。でも、「なんで、こんなベース弾いちゃってんの。コイツは手を抜いてるな」みたいな曲もある(笑)。

Ken:厳しいんですよ、Junちゃん(笑)。いや、自分で聴いても笑っちゃいましたけどね、“なんで、これはこういうベースなった?”みたいなのが(笑)。
Ken Band

──そういう笑いポイントもありますよという。コアなファンには懐かしいと感じる音源も入っているけど、これからのツアーやライブでは今のメンバーが、いろいろとアレンジも加えて、各曲を増強させるんでしょうね?

Jun Gray:そりゃ、そうですよ。

──また、腕組みしながら語ってるし。

Minami:あのままルート弾きしてくださいよ、Junさん(笑)。

Jun Gray:いやいや、俺流にちゃんと完成させるわけですよ。俺はベースを弾くってことに関しては、全て俺流にやらせてもらいます、という感じだから。あんまり原曲どおりに弾いてない。それだとつまんないから。

──そのままでは楽しくない、さすが、違法改造バイクを乗り回す男です(笑)。自分流にやるのが楽しいよってことですね。

Jun Gray:バイクは違法じゃないから(笑)。ちゃんと車検通るから。

──ただ、今回のセルフコンピで解せないのが、Ken Yokoyamaではないナンバーが入っていることなんですよ。Kenco Yokoyamaさんの曲が入ってますね、ネエさん?

Ken:そうだわ、2曲ね。この際だから、もう、Kencoさんのが入ってもいいんじゃないかって(笑)。

Jun Gray:シャム69もジューダス・プリーストもカッコよくカバーできてたし。「Living After Midnight」(ジューダス・プリースト)がまたカッコいいんだよね、聴いてみると(笑)。

Matchan:すげーカッコいいんですよ、ほんとに。

Ken:めちゃテンション高くてカッコいいの。今回、メタルのカバーはジューダス・プリーストぐらいか。

──公にメタルカバーしたことで言うと、血まみれペイントのギターやベースでスレイヤーをやりませんでしたっけ?

Ken:あっ、血まみれギターで「Hundsome Johnny」を弾いてた。

Minami:そうそう。カバーはしてないけど、血まみれギターは弾いてました。

Ken:あとサージが在籍していたころ、イントロだけスレイヤーを弾いてたかな。なんだっけ、あれは。「South Of Heaven」かな。

──それでなぜか、ライブパフォーマンスの動きはスコーピオンズだったんです(笑)。人間トーテムポールやってました。

Ken:あっ、そうです。Junちゃんを僕らの両膝の上に乗っけて。Junちゃんはクラウス・マイネ(Vo)役で。

Jun Gray:そのころは、やっぱ他にもメタルやってたよ。なんだっけ、アンヴィルか。

Minami:人前ではやってない(笑)。リハではよくやってましたよ(笑)。

Jun Gray:人前でやってなかったっけ? でもウケるわけないもんな(笑)。

Ken:なにしろ「Metal On Metal」ですからね(笑)!

──選曲がツウ好み(笑)。
■クソしながら改めて思ったんですよ
■歳を取るのは楽しいなって

──ともかく今回のセルフコンピは、意外性もあれば、歴史をたどってきた重みもあるし、Ken Bandの変化やバンドサウンドそのものの成長も感じられますよ。マニアだからこそ楽しめると思うんです。

Ken:この言い方は僕はあまり好きではないんですけど、ちょっと裏ベストっぽいんですよね。でもレアトラック集の面目躍如というか、15年掛けただけあっておもしろいものができたなと。
▲Ken Yokoyama

──影のプロフェッサーはどう感じますか?

Minami:Junちゃん、前も自分で言ってたんですよ。俺はエクスクルーシブ・プロデューサーだって(笑)。

Jun Gray:そう、エクス…エクスキュ……プロデューサーなんだよ(笑)。

Ken:言えてないけどね(笑)。エクスキュートになってる。“処刑”ですよ、処刑(笑)。

Minami:ほんとにヤバいヤツっていう(笑)。

Jun Gray:質問は今回の作品のことだっけ(笑)。お客さんにとっては新曲が入ってるお得感もあるし、いろんなところに散った音源がまとまったから便利でしょ。「これがライブでやってたあの曲だ」とかね。オリジナルアルバムしか持ってない人だと、ライブでしか聴いたことない曲もあると思う。そういうのが集まっているからいいんじゃないかな。

──ライブのセットリストは本番30分前ぐらいに決めるから、いつも、どの曲が出てくるのか分からないのがKen Yokoyamaだったりしますよね。フェスの速レポでは、当日、曲順表をもらえるんですけど、Ken Yokoyamaのところだけ真っ白なんですよ(笑)。そのノリが最高です。

Ken:Ken Bandだけ提出されないってこともありますよね(笑)? あと本番のステージ上でも、やる曲が変わっちゃうんですよ。しょうがないですよ、ロックンロールですもの(笑)。

──そうした生き様も刻まれたセルフコンピですか。

Ken:はい……というか進行を戻そうと一生懸命ですね(笑)。
▲Hidenori Minami

──一応、これ、インタビューなので(笑)。それなら話題を変えて、ギターとスケボーのオリジナルブランド“Woodstics”をスタートさせましたね。Kenさんのコラムでも詳しく書いてますけど、スケボーと言えば、Jun Grayさんはモロに世代でしょ?

Jun Gray:俺はちょっとやったぐらいで、1980年代でスケボーからは引退しちゃってるんです。でも世代ですね。下北沢にちょうどバイオレントグラインドという店もできたりして、俺、店員として2〜3回だけ立ったこともある(笑)。

──1980年代にアメリカで雑誌『THRASHER MAGAZINE』も発刊されて、スケボーがパンクとかメタルと深く結びついたころでもありましたね。

Ken:だから俺とかMinamiちゃんのほうが直撃だったんじゃないかな。

Minami:高校生のころでね。

──アンスラックスの来日公演では、中野サンプラザに当時あった花壇を利用してスケボーの技をみんなが決めていたりして。

Ken:そうそう。その光景、観ましたよ。アンスラックスの初来日に行ったから。感動的でしたね。関東のスケーターがみんなここに集まったみたいな、そんな感動でしたね。そのぐらいから自分でもスケボーに乗ってて。

──そして昔からの幼馴染が、今はスケートショップも開いていて、オリジナルのデッキを組んでもらったわけですよね。そこからストーリーが始まったという。

Ken:うん、そうです。昔、スケボーに乗ってた人間が久しぶりにやっても、オーリーとかもうできないじゃないですか。トリックを決めようなんてのはMinamiちゃんぐらいのもんすよ(笑)。だからクルーザーでいいじゃないかと。それでWoodsticsでクルーザーのラインを立ち上げたんです。

Minami:幅はあるけど、長さは意外とストリート用に短いデッキなんですよ。持ち運びも計算されてるんです。

──ひょっとして<AIR JAM 2018>のスケートランプでトリックを決めてた一人にMinamiちゃんが!?

Minami:いいえ、僕はVIP席に座って観てました(笑)。

Ken:カルチャーをくっつけて、これがこうで、かくあるべしってことを提示するつもりはないんですよ。ただ、ひとつのブランド名でギターもスケートデッキも作るというのは、世界に例がなかったと思うんです。そういうことやるのが楽しいなって。

──遊びが本気という、一番カッコいいパターンですよ。

Ken:はい。だから、理解してくれたら嬉しいし、認知されたらさらに嬉しいけど、やってるだけで楽しいんで。やっぱ興奮があるんですよ、そこに。ギブソンがスケートデッキは作らないし、サンタクルーズがしっかりしたギターは作らないし。
──キッズだったころのひとつの夢を実現させているわけですか?

Ken:うん、そうですね。昨日、クソしながら改めて思ったんですよ。歳を取るのは楽しいなって。若いときはエネルギーがあるけど、それを実現させる方策を知らないんですね。歳を取ると、実現するメソッドは分かってくる。ちっちゃいころに思い描いていたことも、ずっと熱が変わらないければ、それこそ一本気だったら実現できたりする。

──その言葉、やはり太字にしないといけないですね。

Ken:うん(照笑)。横山は一本気だから。歳を取るのは寂しいって話もさっきはしたけど、それはチンコだけのことでね(笑)。実は歳取るのは楽しい。

──WoodsticsではMinamiちゃんのニューギターも作ったんですよね?

Minami:作ってもらって、すでにライブでも使っています。

Ken:あとタイミングがいつになるか分からないけど、僕モデルとMinamiちゃんモデルのギターは、年内には販売にこぎつけられるんじゃないですかね。

──<AIR JAM 2018>のステージでは、ミニギターも使っていましたが?

Ken:あれもWoodsticsなんですけど、また別モノです。<AIR JAM 2018>のとき、Hi-STANDARDのステージで使っていたレスポールタイプがあるんですけど、あれがWoodsticsなんです。それと、Minamiちゃんの赤いSGタイプをリリースしたいなと。

──楽しいことが山盛りですね。歳を取ると、やりたいことがいろいろ膨らむばかりですか?

Ken:そうですね。今でもいろいろありますね。死ぬときにやり残すぐらいのほうがいいのかなと思ってますね。

──常に活力があるという。

Ken:ええ、そうですね。また思ってもみないアイデアも湧いてきますからね。Woodsticsも数年前まで考えもしなかったのに、湧いてきちゃったんですよ。
■ツアーに出るとき、いつでもできる曲を
■50〜60は用意していくんです

──それともうひとつ聞かなければいけないことがあるんです。Matchan、脱退の話。これは何事だと。

Matchan:何事?

Minami:私事でしょ(笑)。

Matchan:そう、私事ですね(笑)。今年いっぱいライブやって、そしてKen Bandを離れます。
▲Jun Gray

──私事ということだから理由はあまり聞かないほうがいいんですか?

Matchan:いえいえ。今年頭にKen Bandの4人で集まってミーティングして、「バンドの四分の一としてやっていってほしい」とKenさんから話があって。僕もそのつもりでずっと頑張ってきたんですけど、単純に自分の限界が見えちゃったというか。もともとドラマーとしてバンドをまとめるということが、ひとつもできてなかったと思うので。メンバーからの不満もずっとあったにはあったんです。それが解消できず、加入してからの7年間、ずっと来ちゃったというのもあって。今年頭に“バンドの四分の一”という話を言われてから、自分なりにさらに努力してきたんですけど、それでもみんなに響くものが出せなかったので。その原因みたいなものを考えてみたら、メンバーとして自分がこのバンドにいるという気持ち的なものなのかなと思って。僕はその気持ちが足らなさすぎたので、結果、メンバーとの差ができちゃったのかなと。そういう結論が自分の中で出て、もう無理だなと思った時点で、Kenさんに話をさせてもらったという。

Ken:8月の頭に電話が来て、「やめたい」と言われて。理由を聞いたら「自分のバンドとは思えない」と……。今年1月の夜中、みんなにファミレスに集まってもらって、意識改革のためのミーティングをしたんですよ。Ken Yokoyamaというバンド名でやっていて、僕が始めたバンドだし、僕に気を使ってもらってるのも分かるし、周りからもワントップのバンドだと思われてる。でもそれは結果論であって、内包されているものとして、しっかりと四分の一ずつを担ってほしい、と。結果、そうでなくてもいいんですよ。ただ同じ熱量で関わってほしい、と。バンドとして当然のことを改めてメンバーに頼んだんです。それに対する答えが、Matchanからの電話だったのかなと。「僕には担えない」という……。

Matchan:ええ。そういう感じです。

Jun Gray:Matchanが急にそう思ったわけではなくて、前から悩んでたところもあって、Ken Bandは自分には負担がデカすぎるってね。その都度、「甘っちょろいこと言ってんなよ」って励ます的なところもあったし、それで本人もやってきたところはあったんだろうけど。でも今年1月のミーティングでそういう話になったから、Matchan本人としては、さらにやることいっぱいあるのかなって考えたところはあっただろうし。

Matchan:そうですね。でも、これ以上、何をやったらいいのか分からなくなっちゃったんですよ。どう努力すれば、みんなが求めているドラマーになれるのかっていうのが。もう完全にその手立てがなくなっちゃって。そういうふうに考えちゃう自分の性格も含めて、バンドうんぬんよりも、もはや自分の問題かなと思ったりして。やっぱりドラマーって、人の気持ちを上げてなんぼだと思うので。バンドにとって自分がすでに負担にもなっていたので、それがもっと大きなものになってしまうと、バンドの歩み自体にも影響が……。それでもごまかしながら「やる気あります」と言ったら、メンバーは信じてくれるんで。でも、それでは僕は良くないなと思って。嘘はつきたくないなと思ったんです。

──本人が決断してしまったから、脱退はもうしょうがないという?

Ken:そうなんです。本人が決めたから、もう止められなかったですね。

Matchan:前にやめたいと言ってたときは、ちょっと弱音の部分も入ってたんで。今回は、本当に自分の中で答えが出ちゃった状態で、それをみんなに言ったら、仕方ないねってことになってくれた。変な言い方ですけど、ああ、伝わってるというか。すんなり理解してくれたのは、コミュニケーションはちゃんと取れていたんだと思いましたね。
▲Matchan

──でも脱退を決めたからには、ここから数カ月間、自分がいた7年半の全てを見せるぐらいの勢いでドラムを叩いて、みんなの気持ちをブチ上げてくれないと。

Matchan:ええ、そうですね。でも変に意識せず、お客さんもそんなことを過剰に考えることもなく、ライブを楽しんでくれたらなと思っています。僕の勝手な決断で脱退するので。

──Ken Bandとしては、今年が終わっても、来年も活動を続けるわけじゃないですか。動きを止めることは……?

Ken:ないですね。もう新しいドラマーも決まっているんで。Matchanから話をされてすぐにドラマー探しに動いて、もう見つけてます。新しいドラムとすぐにツアーに戻りたいなって。で、次のアルバムに向かっていきたいという思いです。

──バンドサウンドを固めるために、今回のセルフコンピの曲も含めて、これからスタジオに入る日々が多くなるわけですか?

Ken:そうです。新しいドラマーにやる曲リストを送ったら、93曲あったんですよ(笑)。僕らはツアーに出るとき、いつでもできる曲を50〜60曲は用意していくんです。

──しかし93曲か、ヤバイですね(苦笑)。

Matchan:でも俺が加入したときも、ライブが始まるまでに実質7回だけだったんですよ、リハが。確か60数曲だったかな。頑張ればできますよ〜。

Ken:やめていく人間が何を言ってんの(笑)。

Matchan:いや、俺のこれっぽっちの脳みそで60数曲はイケたんで、頑張ればイケます。

Ken:分かんないよ、新しいドラマーの脳みそも、これっぽっちかもしれないじゃん(笑)。

Matchan:ダメですって、そういうこと言っちゃ(笑)。

──今年も来年もずっとKen Bandはムチャしよるって話ですね。

Ken:うん、そうです(笑)。なるべく時間を空けることなく、新しいKen Bandを動かしたいですね。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎野村雄治

■セルフコンピレーションアルバム『Songs Of The Living Dead』
2018年10月10日リリース
PZCA-85 2,500yen(without tax)
01.I Fell For You, Fuck You (新録/オリジナル)
02.My Shoes (V.A参加曲/オリジナル)
03.What Kind Of Love (V.A参加曲/カバー)
04.My Day (V.A参加曲/オリジナル)
05.Nervous (新録/カバー)
06.Don't Wanna Know If You Are Lonely (未発表曲/カバー)
07.Swap The Flies Over Your Head (新録/オリジナル)
08.If The Kids Are United (V.A参加曲/カバー)
09.You're Not Welcome Anymore (V.A参加曲/オリジナル)
10.Walk (V.A参加曲/カバー)
11.Sayonara Hotel (V.A参加曲/カバー)
12.Going South (初CD化/オリジナル)
13.Brand New Cadillac (新録/カバー)
14.Dead At Budokan (初音源化/オリジナル)
15.Hungry Like The Wolf (V.A参加曲/カバー)
16.Nothin' But Sausage (初音源化/LIVE DVD収録曲/オリジナル)
17.Living After Midnight (V.A参加曲/カバー)
18.A Stupid Fool (V.A参加曲/オリジナル)
19.A Decade Lived (V.A参加曲/オリジナル)
20.Soulmate (新録/カバー)


■全国ツアー<Songs Of The Living Dead Tour>

10月18日(木) 川崎 CLUB CITTA'
w/ SHADOWS
10月24日(水) 福岡 DRUM LOGOS
w/ HEY-SMITH
10月26日(金) 鹿児島 Caparvo Hall
w/ BACKSKiD
10月27日(土) 熊本 Be.9
w/ S.M.N
10月29日(月) 広島 CLUB QUATTRO
w/ サンボマスター
10月30日(火) 松山 WstudioRed
w/ サンボマスター
11月03日(土) 秋田 Club SWINDLE
w/ UNLIMITS
11月04日(日) 青森 Quarter
w/ UNLIMITS
11月06日(火) 仙台 Rensa
w/ COUNTRY YARD
11月07日(水) 郡山 HIPSHOT
w/ COUNTRY YARD
11月12日(月) 高崎 club FLEEZ
w/ rem time rem time
11月13日(火) 長野 CLUB JUNK BOX
w/ ENTH
11月15日(木) 金沢 EIGHT HALL
w/ HAWAIIAN6
11月16日(金) 新潟 LOTS
w/ HAWAIIAN6
11月27日(火) 大阪 なんばHatch
w/ SiM
11月28日(水) 名古屋 DIAMOND HALL
w/ SAND
12月06日(木) 新木場 STUDIO COAST
w/ Dizzy Sunfist


■ラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』

放送日程:10月11日(木)22:00~
放送局:TOKYO FM/JFN38局
※横山健出演

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ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

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