ストーンズの"サティスファクション
"は何が「満足できない」のか

チャック・ベリーの「サティスファクション」
"I can't get no satisfaction"のフレーズは、作曲者の一人であるキース・リチャーズが思いついたフレーズだといわれています。共同作曲者のミック・ジャガーによると、Chuck Berryの”Thirty Days"という曲の中に同じようなフレーズがあり、ここから着想を得たのではないかと語っています。
ではその"Thirty Days"の該当部分をみてみましょう。
一行目に現れるsatisfactionの語の印象が消えないうちに、三、四行目でconsolation、United Nationsの押韻関係が成立するという、すぐれたテクニックがみえます。また内容も単に語呂合わせにとどまらないユニークなもので、ロックンロール詩人チャック・ベリーの豊かな才能が感じられる歌詞です。
試してもものにできないストーンズの苛立ち
これに対し、ストーンズの方はどうでしょう。"Thirty Days"とは違い、この曲はタイトルフレーズに"satisfaction"を含んでいます。その語を印象付けようと、彼らは一番でそれに対する押韻を試みます("infomation"や"imagination”)。しかしそれ以降はその試みを諦めてしまいました。わずかに"reaction"という語を使用したのみです。そのため、詞としてはやや統一感を欠いている印象を受けます。
まあ韻が多ければエライというわけではありませんし、「ろくでもないインフォメーションのせいで、ついイマジネーションしちまったじゃねえか」という表現は十分面白いですが、それはさておき。
当時、彼らのレパートリーは当時カバー曲ばかりで、オリジナル楽曲の製作はまだ始めたばかりでした。ストーンズが憧れのチャック・ベリーの作詞テクニックをお手本にしていたとしたら、この曲は出来損ないの歌詞と感じていたかもしれません。「試しても試しても、ものにできやしねえ」と。
伝えるところによれば、彼らは当初この曲をシングルとしてリリースすることをかなり渋ったといいます。
「満足できない」曲が「満足できる」結果に
ところが、メンバーの反対を押し切ってリリースされたこの曲は瞬く間に注目を集めます。イギリスはおろか全米でも1位を獲得、全世界では500万枚の売上を記録する大ヒットとなったのです
「満足できない」まま世に出してしまった「満足できない」という曲は、皮肉にも「満足できる」結果を残しました。それどころか、The Rolling Stonesを巨大な怪物バンドへと変貌させる契機となったのです。
TEXT:quenjiro

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