【ライブレポート】『STAND UP! CLA
SSIC FESTIVAL 2018』(スタクラフェ
ス)~朝から晩まで野外でクラシック
音楽漬け

2018年9月23日(日・祝)、横浜赤レンガ倉庫の特設会場で「イープラス Presents STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018」(以下、スタクラフェス)がおこなわれた。今年が初めての開催。首都圏での野外のクラシック音楽祭は珍しく、幼児から年配者まで本当に幅広い層の人々が、有料エリアで約6千人、無料エリアを含めると約3万人(主催者発表による)が集った。
「ブランチ on クラシック」 [撮影:伊藤惇]
会場は、オーケストラ用のメイン・ステージであるHARBOR STAGE、小編成の音楽を芝生で楽しむGRASS STAGE、無料エリアのミニ・ステージであるSunday Brunch Classic Stageの3つに分けられていた。聴衆は、熱心に聴き入ったり、アーティストに声援を送ったり、芝生に寝転んだり、飲んだり、食べたり、思い思いのスタイルで、クラシックからミュージカルやアニメの名曲まで、さまざまな音楽を楽しんだ。
GRASS stageのオーディエンスたち [撮影:大橋祐希]
HARBOR STAGEは、午前10時30分、ぱんだウインドオーケストラ(指揮:横山奏)による「It's 吹奏楽!~ブラスで聴くスタジオジブリの音楽~」で始まった。サクソフォン奏者の上野耕平がコンサートマスターを務める、ぱんだウインドオーケストラは、東京藝大入学生を中心に構成されているプロフェッショナルな吹奏楽団。山田和樹や反田恭平とのライヴ録音を収めたCDがリリースされるなど、今、最も注目を集めているウインドオーケストラといえよう。
「It's 吹奏楽!」横山奏指揮ぱんだウインドオーケストラ [撮影:石ヶ森三英]
「It's 吹奏楽!」上野耕平 [撮影:石ヶ森三英]
まずは、彼らのオリジナル曲である「Welcome to PANDA!」が演奏された。そしてMCを務める上野耕平が挨拶。舞台左の大スクリーンにその姿が映し出される。このステージのテーマは「スタジオジブリの音楽」。ジブリ映画で作曲を担当した久石譲の娘である、ヴォーカルの麻衣がゲストとして招かれ、「千と千尋の神隠し」のメドレーを歌う。ぱんだウインドオーケストラは「となりのトトロ」メドレーを演奏。最後は、麻衣が再び登場し、「風の谷のナウシカ」から「ナウシカ・レクイエム」をピュアな声で歌い、「天空の城ラピュタ」から「君をのせて」で締め括った。
「It's 吹奏楽!」麻衣 [撮影:石ヶ森三英]
天気は、日差しがやや強いが、少し雲があるくらいでちょうど良かった。港から海風が吹いてくるのが心地よい。音楽をリラックスして楽しめる。船の汽笛には驚いたが、それが横浜での野外フェスである。
HARBOR STAGEのオーディエンスたち [撮影:林信行]
そしてGRASS STAGEに移動。ほどなく反田恭平スペシャルステージが始まる。 舞台前はぎっしりと人で埋まり、舞台から遠くでは芝生に寝転ぶ人も。人気実力とも、若い世代を代表するピアニストの一人である反田恭平は、この夏、全国19か所のリサイタル・ツアーを成功させたばかり。まず、ショパンの「幻想即興曲」を披露した。
「反田恭平 スペシャルステージ」 [撮影:伊藤惇]
「今日は人生初めての野外ステージ」という反田は、「こんなに来てもらえるとは!」と聴衆の多さに驚く。少し演奏を交えながらトークをすすめる反田。今日は少しテンションが高めだ。
現在、ポーランドのショパン音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)で学ぶ反田は、ショパンの作品を並べる。快速「小犬のワルツ」のあと、「英雄ポロネーズ」は即興的な伸縮を交えた、大きな表情の演奏。まさに反田の本領が示された。
「暑いですね。ピアノが熱い!」と反田がいう頃、空は晴れ、時は正午になろうとしていた。
「反田恭平 スペシャルステージ」 [撮影:伊藤惇]
次に、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」の第2楽章が演奏された。反田がこの夏のツアーで弾き続けた曲。中年層なら、ビリー・ジョエルの「THIS NIGHT」のメロディで、お馴染みかもしれない。そして最後の残り時間で、反田は、シューマン(リスト編曲)の「献呈」をアンコールのように弾いた。あっという間の30分間。今日一日のスタクラフェスでの反田の活躍はこうして始まった。
正午過ぎ、青島広志&シアターオーケストラトーキョーがHARBOR STAGEに登場した。「世界まるごとクラシック~みんなおいでよ、赤レンガ~」は、作曲家・指揮者である青島の人気コンサートのスタクラフェス・バージョンである。
まずは、青島が指揮するエルガーの行進曲「威風堂々」第1番で元気よくスタート。シアターオーケストラトーキョーは、熊川哲也Kバレエカンパニーの公演での演奏で知られ、その名の通り、劇場の音楽を得意としている。そして彼らの十八番であるチャイコフスキーの三大バレエから、「白鳥の湖」の“情景”、「くるみ割り人形」の“行進曲”と“トレパック”、「眠りの森の美女」の“ワルツ”を演奏した。“トレパック”では、指揮の青島がロシア民族舞踊のステップを真似て飛び跳ね、場内を盛り上げる。
「世界まるごとクラシック」青島広志 [撮影:石ヶ森三英]
次にヴァイオリニストの宮本笑里が白いドレスで登場。モンティの「チャルダッシュ」を楽しそうに弾く。続いて青島自身が編曲を手掛けた「まるごと版モーツァルトメドレー」をシアター オーケストラ トーキョーが演奏。モーツァルトの名曲が数珠つなぎになっているメドレー。弦楽合奏曲「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」に管楽器が入ったり、交響曲40番第1楽章に小太鼓や交響曲第41番「ジュピター」第4楽章にシンバルが入ったり、現代のオーケストラに合わせた青島のアレンジが楽しい。みんなの知っている曲が出てくると聴衆の拍手が入る。「ドレミの歌」は、振り付きで、みんなで踊って歌う。青島はMCも務める。最後のドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第4楽章では、演奏中にシンバルが入ることを解説。オーケストラの熱のこもった「新世界」は、港町から世界に向けての演奏に聴こえた。アンコールは、宮本も加わり、ヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」。手拍子のなか、「世界まるごとクラシック」の締め括りの定番曲で、青島広志&シアターオーケストラトーキョーのステージは終わった。
「世界まるごとクラシック」 宮本笑里(Vn) [撮影:石ヶ森三英]
そして、アンコールのアンコールに、サプライズとして話題の高校生ピアニスト、Kyle(紀平凱成/きひらかいる)が現れた。まだコンサート経験の少ない彼は、最初、大観衆に戸惑った様子であったが、演奏至難なカプースチンの作品を2曲、一気に弾き切った。覚えておいていい名前に違いない。
「世界まるごとクラシック」 Kyle(紀平凱成) [撮影:石ヶ森三英]
ほとんど間を置かず、GRASS STAGEでは、ヴァイオリニストのNAOTOとギター・デュオのDEPAPEPEによる「ブランチon クラシック」が始まる。この3人にベースやドラムスが加わり、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章や、バッハのカンタータ「主よ、人の望みの喜びよ」のメロディが海辺に軽快に響き渡った。
「ブランチ on クラシック」 NAOTO、DEPAPEPE [撮影:伊藤惇]
無料エリアのSunday Brunch Classic Stageでは、午前9時30分から午後6時30分まで、こぱんだドラムス、山田姉妹、園田涼、横浜市立戸塚高等学校吹奏楽部、細川千尋ジャズトリオ、藤原功次郎、實川風、正戸里佳&マシュー・ロー、米津真浩、新倉瞳&佐藤芳明、1966カルテット、mille baisersが登場し、それぞれ30分ほどのコンサートをひらいた。有料エリアと同時進行のプログラムだったこともあり、筆者は1966カルテットしか聴くことができなかったが、彼女たちのトレードマークというべきビートルズ・ナンバー(「イエスタデイ」や「ヘイ・ジュード」など)を楽しむことができた。無料エリアとはいえ、聴衆は熱心で、かなりの盛り上がりを見せていた。
(1)こぱんだドラムス(2)山田姉妹(3)園田涼(4)横浜市立戸塚高等学校吹奏楽部 [撮影:大橋祐希]
(1)細川千尋ジャズトリオ(2)藤原功次郎(3)實川風(4)正戸里佳&マシュー・ロー [(1)(3)=撮影:大橋祐希/(2)(4)=撮影:林信行]
(1)米津真浩(2)新倉瞳&佐藤芳明(3)1966カルテット(4)mille baisers [(2)(3)=撮影:大橋祐希/(1)(4)=撮影:林信行]
HARBOR STAGEの後半戦は、STAND UP! ORCHESTRAがオケ演奏のホストを務める。STAND UP ! ORCHESTRAは、ソニーミュージックエンタテインメントの「STAND UP ! CLASSIC」プロジェクトのために、約1000人の応募者からオーディションによって選ばれた若い音楽家たちによって結成されたオーケストラ。BSフジの「世界の音楽~ハロー!クラシック」への出演でもお馴染みだ。
まずは「クラシック in アニメ」。女優でピアニストでもある総合司会の松下奈緒がアニメ映画『ピアノの森』からその主題歌「Moonshine~月あかり~」を弾く。続いて、STAND UP! ORCHESTRAが指揮者なしでラヴェルの「ボレロ」を演奏。小太鼓がオーケストラの真ん中に座り、管楽器が次々とソロを受け継いでいくこの曲は、STAND UP! ORCHESTRAを紹介するには最適。映像カメラが、ソロを受け持つ奏者を追っていく。大きな盛り上がりをみせる曲の後半では、コンサートマスターの桐原宗生が獅子奮迅の活躍。
「クラシック in アニメ」松下奈緒(Pf) [撮影:石ヶ森三英]
「クラシック in アニメ」STAND UP! ORCHESTRA [撮影:石ヶ森三英]
そしてここからは、テレビアニメ『ピアノの森』でのピアノ演奏を担当する、3人のピアニストが登場。最初は、主人公、一ノ瀬海(カイ)の小学生時代の演奏を担う2005年生まれの大山桃暖。モーツァルトのピアノ・ソナタ第2番第1楽章を演奏。二人目は、カイの親友でありライバルである雨宮修平の演奏を担当する髙木竜馬。彼は、先日、グリーグ国際ピアノコンクールで第1位を獲得したばかりの俊英。ショパンのバラード第1番で早熟ぶりを示した。盛り上がったところで汽笛が鳴ったのもライヴならでは。三人目に、中国人ピアニスト、パン・ウェイ役の演奏を担う牛牛(ニュウニュウ)が登場。中国出身の牛牛こそは、本物の神童であった。2009年、12歳のとき、サントリーホールでひらいたリサイタルを筆者も聴いた。現在、21歳の彼は、今年、ジュリアード音楽院を卒業し、メジャー・レーベル、デッカからアルバムをリリースしたばかり。ショパンの「革命」エチュードなどでその成長ぶりを日本の聴衆に印象付けた。このころ、日差しが強くなり、夏の名残りを感じる。
「クラシック in アニメ」大山桃暖(Pf) [撮影:石ヶ森三英]
「クラシック in アニメ」髙木竜馬(Pf) [撮影:石ヶ森三英
「クラシック in アニメ」 牛牛/ニュウニュウ(Pf) [撮影:石ヶ森三英]
反田恭平も「ピアノの森」では、主人公の師である阿字野壮介の演奏を担っているが、このステージでは、ピアノは演奏しないで、指揮を披露した。曲は、アニメ「のだめカンタービレ」でも使われた、ベートーヴェンの交響曲第7番第1楽章。梅田俊明に学んだ反田の指揮は柔らかく、推進力がある。快速テンポが心地よい。STAND UP! ORCHESTRAも、反田を高校時代から知るコンマス桐原を中心に、熱演で応える。今度は、一つのコンサート全部で反田の指揮を聴いてみたいものだ。アンコールでは、ハチャトゥリアンの「剣の舞」を指揮。なお、この後もスタクラフェスでの反田の活躍はまだまだ続く。
「クラシック in アニメ」 反田恭平指揮STAND UP! ORCHESTRA [撮影:石ヶ森三英]
GRASS STAGEでは、バンドネオンの三浦一馬を中心とする「Passion Classic」のステージが始まる。タンゴの革命家、ピアソラの名曲を演奏。三浦は新世代のバンドネオン奏者を代表する一人だ。午前中のぱんだウインドオーケストラでコンマスを務めたサクソフォンの上野耕平、チェロの伊藤悠貴、ピアノの金子三勇士らがゲストとして参加。最後に、全員が登場し、十数人のアンサンブルで「リベルタンゴ」を演奏した。クラシック作品の演奏しか聴いたことのなかった金子の違う側面に触れられたことも楽しかった。
「Passion Classic」 [撮影:伊藤惇]
「Passion Classic」三浦一馬 [撮影:伊藤惇]
「Passion Classic」上野耕平 [撮影:伊藤惇]
「Passion Classic」伊藤悠貴 [撮影:伊藤惇]
「Passion Classic」金子三勇士 [撮影:伊藤惇]

HARBOR STAGEは、オペラからミュージカルまでの歌の祭典、「クラシック紅白歌合戦! オペラからミュージカルへ」となった。岩村力指揮 STAND UP! ORCHESTRAが奏でるビゼーの「カルメン」前奏曲がスタートを告げる。このステージでのMCは、LE VELVETS。宮原浩暢(バリトン)、佐賀龍彦(テノール)、日野真一郎(テノール)、佐藤隆紀(テノール)によって構成される4人組である。
そして、丹呉由利子が『カルメン』の「セギディーリャ」、中井亮一が『リゴレット』の「女心の歌」、山本耕平が『ラ・ボエーム』の「冷たき手」という名曲中の名曲であるアリアを歌い、“歌合戦”が盛り上がっていく。野外ステージには、やはり、歌ものが一番ピッタリとくる。
「クラシック紅白歌合戦!」 丹呉由利子 [撮影:石ヶ森三英]
「クラシック紅白歌合戦!」 中井亮一 [撮影:石ヶ森三英]
「クラシック紅白歌合戦!」 山本耕平 [撮影:石ヶ森三英]
今回、LE VELVETSは『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」を4人で歌う。北川辰彦は、「カルメン」の「闘牛士の歌」で聴衆を魅了。そして、小林沙羅が『ジャンニ・スキッキ』の「私の大好きなお父さん」を魅力たっぷりに歌う。オペラ歌手総出の『こうもり』から「シャンパンの歌」は、まるでオペラの1シーンのような豪華さ。
「クラシック紅白歌合戦!」 LE VELVETS [撮影:石ヶ森三英]
「クラシック紅白歌合戦!」 北川辰彦 [撮影:石ヶ森三英]_
「クラシック紅白歌合戦!」 小林沙羅 [撮影:石ヶ森三英]
「クラシック紅白歌合戦!」 [撮影:石ヶ森三英]
“歌合戦”の後半は、ミュージカル。まずは今年が生誕100周年であり、指揮者・作曲家として、クラシックでもミュージカルでも活躍したバーンスタインの名作『ウエスト・サイド・ストーリー』から「サムウェア(どこかで)」をLE VELVETSが歌う。そしてミュージカル代表として伊礼彼方が登場。『ウエスト・サイド・ストーリー』の「トゥナイト」を小林沙羅と熱唱。続いて、伊礼は『エリザベート』の「最後のダンス」で聴衆を圧倒する。伊礼は『エリザベート』において皇太子ルドルフを演じた過去があるが、この日は敢えて死神トートの曲を披露したのだった。
「クラシック紅白歌合戦!」小林沙羅、伊礼彼方 [撮影:石ヶ森三英]_
「クラシック紅白歌合戦!」伊礼彼方 [撮影:石ヶ森三英]_
LE VELVETSの歌う『ムーランルージュ』の「ロクサーヌのタンゴ」にはバンドネオンの三浦一馬も参加。最後は、全員で『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」。まさに“歌合戦”のラストを飾る豪華な歌声の饗宴となった。
「クラシック紅白歌合戦!」 [撮影:大橋祐希]
夕陽が傾く頃、GRASS STAGEでは、ヴァイオリンの松田理奈とピアノの藤田真央のデュオによる「プレミアムサンセット」が始まった。二人でマスネの「タイスの瞑想曲」を演奏した後、藤田がリストの「コンソレーション(慰め)」第3番をソロで弾く。
「プレミアムサンセット」松田理奈(Vn) [撮影:伊藤惇]
「プレミアムサンセット」藤田真央(Pf) [撮影:伊藤惇]
横浜出身の松田は、「赤レンガ倉庫にはよく一人で来ていた」と思い出を語る。そして、二人でヴィターリの「シャコンヌ」。松田は、思い入れのあるこの曲を熱演した。
「プレミアムサンセット」松田理奈、藤田真央 [撮影:伊藤惇]
そして夜の帳が降り、サラ・オレインの「プレミアムナイト」となる。オーストラリア出身のヴォーカリスト&ヴァイオリニストの彼女は、日本語でのトークも上手。澄んだ声で、「You Raise Me Up」、「我が故郷」、「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」などを歌う。また、ヴァイオリンだけでなく、ピアノ弾き語りも披露してくれた。港の夜景が美しい。
「プレミアムナイト」サラ・オレイン [撮影:伊藤惇]
「プレミアムナイト」サラ・オレイン [撮影:伊藤惇]
「プレミアムナイト」サラ・オレイン [撮影:伊藤惇]
スタクラフェスのフィナーレを飾るのは、「Classic Revolution! 新進気鋭の若手音楽家とオーケストラの饗演!」。本フェス総合司会の松下奈緒が進行。まずは、STAND UP! ORCHESTRAが彼らのテーマ曲というべきクラシック・メドレー「Hello」を、彼らの名前通り、スタンディングで演奏。そのあと、ヴァイオリンの千葉清加がコンサートマスターに入り、神奈川フィルのメンバーも参加。指揮は、引き続き、岩村力。すっかり夜のコンサート。落ち着いた雰囲気だ。満月が出ている。
「Classic Revolution!」松下奈緒 [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」STAND UP! ORCHESTRA [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」STAND UP! ORCHESTRA [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」STAND UP! ORCHESTRA [撮影:大橋祐希]

「Classic Revolution!」 [撮影:石ヶ森三英]
そして、これからのクラシック音楽界を担う4人のソリストたちが登場。まず、ヴァイオリンの小林美樹がサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーゾ」を演奏。彼女の華麗な技巧はフェスティバルの華となる。朝から大活躍の上野耕平がここでは、山中惇史が編曲した「カルメン・ファンタジー~for alto saxophone and orchestra」を演奏し、豊かな歌心とサクソフォンの魅力を聴衆に伝えた。藤田真央は、プロコフィエフの「パガニーニ狂詩曲」を最初から有名な第18変奏まで弾いた。まだ19歳の彼は、特筆すべき集中力で、大物ぶりを示す。そしてトリは、反田恭平のショパン「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」。彼は手の内に入った作品を表情豊かに演奏した。
「Classic Revolution!」小林美樹 [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」上野耕平 [撮影:大橋祐希]
「Classic Revolution!」藤田真央 [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」反田恭平 [撮影:石ヶ森三英]
そのあと、チャイコフスキーの祝典序曲「1812年」が迫力満点に演奏された。若いオーケストラを率い、様々な歌手や個性的なソリストたちをサポートした、指揮の岩村力には大きな拍手を贈りたい。
「Classic Revolution!」 [撮影:大橋祐希]
最後の最後に、小林、上野、藤田が再び登場し、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」がスタクラフェス・バージョンで演奏された。「のだめカンタービレ」にちなんで、藤田は鍵盤ハーモニカを演奏。アンコールは、LE VELVETS(佐藤を除く)や三浦一馬も加わり、全員で「ボラーレ」を歌って奏でる。時刻は午後8時半になろうとしていた。そしてまる一日のフェスティバルが遂に締め括られた。
「Classic Revolution!」 [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」LE VELVETS [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」 [撮影:石ヶ森三英]
「Classic Revolution!」 [撮影:大橋祐希]
初めてのスタクラフェスに行って、まず、天候に恵まれて本当に良かったと思う。海からの風に吹かれながら、一日の移り変わりとともに音楽をリラックスして楽しむことができた。これこそが野外フェスティバルの醍醐味であろう。
印象に残ったのは、子連れが多かったこと。個人的なことだが、スタクラフェスの会場で、ベビーカーに子供を乗せ来ていた友人・知人に二人会った。クラシック音楽が好きなのに、子供がいるためにコンサートになかなか行けない人たちはたくさんいる。そういう人たちにとって待望のフェスティバルだったのだと実感した。
スタクラフェスでは、若い才能にたくさん出会えたのが良かった。紀平凱成、大山桃暖、髙木竜馬、藤田真央などなど。また、反田恭平の指揮や小林沙羅のミュージカルなど、フェスティバルでしか聴けない、珍しい企画も楽しかった。かつて神童だった牛牛の演奏を9年ぶりに聴くことができたのもうれしい驚きだった。そして、反田恭平、上野耕平、小林美樹、小林沙羅、三浦一馬ら、これからのクラシック音楽界を担っていく新しい世代のアーティストの活躍をとても心強く思った。
フェス飯の出店前で 上野耕平・反田恭平 [撮影:大橋祐希]
[撮影:大橋祐希]

文=山田治生

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