「ホーガンはハゲ」見れば分かる解説

 迷言・珍言といえば、マサ斎藤の解説も有名だ。実況中継で獣神サンダー・ライガーを「山田」と呼んだのは伝説となっている。他にも、マサはマスクマンを本名で呼んでしまうことが多く、エル・サムライについて「松田はスタミナすごいんですよ」と解説したり、ブラック・タイガーについて「エディ・ゲレロにはこういう試合は不向きですねえ」と言ったり、ケンドー・カシンを「石澤」と呼んだりしている。
 ほかにも「武藤もムタも一緒だからねえ」という元も子もない発言や、「ホーガンは禿げてますからねえ」という見りゃ分かる解説も視聴者の郷愁を誘った。 マサと並んで、新日本プロレスの解説として人気だったのが山本小鉄だ。山本もビッグバン・ベイダーをインベーダーと呼ぶなど、迷言・珍言で知られている。なかでも、ジャイアント・シルバの肉体についての解説は衝撃的だった。シルバは身長219センチで「世界最大の格闘家」というふれ込みで蝶野率いるTEAM2000に加入し、新日に参戦したプロレスラー。とにかくそのデカさは半端ではなかった。
 上半身裸でリングに仁王立ちするシルバを見て、解説の山本はアナウンサーに「見てくださいよ。シルバの首から肩にかけて、ものすごく太い血管が走ってるでしょ」と語りだした。ここで視聴者の誰もが、山本はその血管が弱点だという肉体に関する解説をしてくれるものだと期待した。ところが山本は「あの血管はね…、異常ですよ…」と、ただ「感想」を述べた。視聴者の誰もが「見りゃ分かるよ」とテレビにツッコミを入れたのは言うまでもない。 新日の解説といえば、もうひとり忘れてはならないのが木村健悟だ。木村はスタイナー・ブラザーズの試合で、アナウンサーに「それにしても健悟さん、スタイナー兄弟はすごいですね」と振られると、「そうですね……。まず、体格が、日本人離れしている」と語った。スタイナー・ブラザーズはリックとスコットのアメリカ人の兄弟だ、というか見れば一発で日本人ではない。日本人以外に「日本人離れ」という言葉を使ったのは、後にも先にも木村ひとりだろう。
 解説者に選ばれるのは、プロレスラーのなかでも知識が豊富で喋るのが上手い者たちのはずである。それでもこれだけの迷言・珍言が飛び出すのが、プロレスラーが愛されてやまない理由のひとつである。最後に猪木の詩からこの一遍を紹介したい。 「馬鹿になれ とことん馬鹿になれ 恥をかけ とことん恥をかけ かいてかいて恥かいて 裸になったら見えてくる 本当の自分が見えてくる 本当の自分も笑ってた それくらい 馬鹿になれ」
 人生経験を重ねるほど心にしみる名作である。ただ、レスラーたちは、この詩に影響を受けすぎている感は否めない。(文・編集部)オススメ書籍:『プロレス「監獄固め」血風録』[単行本](講談社)/著:マサ斎藤

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