テイ・トウワの変名プロジェクトSwe
et Robots Against The Machineが16
年ぶりに再始動 “あの頃と今”

90年代、ハウスミュージックバンドのディー・ライトのメンバーとしてアメリカで活躍し、’ 95年から日本に活動拠点を移したテイ・トウワ。’ 94年から’ 95年頃にかけては、ダウンタウンとのGEISHA GIRLSや今田耕司とのKOJI-1200などのプロデュースも手掛けた。そして変名プロジェクトであるSweet Robots Against The Machineの3rdアルバム、その名も『3』が、この夏リリースされた。過去2枚のアルバムにも参加しており、METAFIVEのメンバー仲間でもある砂原良徳はもちろんの事、今作にはバカリズムも参加。GEISHA GIRLS、KOJI-1200を聴いていた世代としては、テイが笑いを音楽に再び入れようとする事には、興味と期待しかない。そして、何よりも楽しみであったし、嬉しかったし、喜んだ。そんなリスナー目線をもとに、じっくりと話を聴いてみた。彼が何を考えながら音楽を作ってきたのか。是非とも読んで頂きたい。
テイ・トウワ 撮影=森好弘
――テイさん自身、音楽にお笑いを取り入れる面白さに気付かれたきっかけについて、まずお伺いできたらと思います。
YMOで音楽を好きになったので、スネークマンショー(桑原茂一、伊武雅刀、小林克也によるユニット)とのアルバム(『増殖』1980年発表)を聴いて、音楽と笑いが半々なものが面白いなと子供ながらに思いましたね。
――テイさんが関わられていたダウンタウンさんとのGEISHA GIRLSや今田耕司さんとのKOJI-1200を、僕自身も高校生時代に聴いていた世代なので、今回のバカリズムさんとのアルバムは何だか嬉しかったです。
その頃よりも今回は音楽と笑いが並走している感じです。当時は全部が音楽に笑いが入っていた感じではなかったですね。笑いだけ、音楽だけもある。KOJI-1200は僕が言葉で言いたい事が普段から、そんなに多くないので、サビは、僕が作ってますが今田さんに任せてましたね。歌詞は。今回で言うと、「ダキタイム」だと歌とトーク両方ありますが、歌のサビは僕が作ってますね。叩きは僕で、皮?はバカリズムさんという感じです。
――言葉で言いたい事が普段から、そんなに多くないのは、今もですか?
言いたい事ないんですよね。だから作らないではなく、意味ない事をやり続ける事が大事だなと。だから、言いたいメッセージはないですね。声って独特なんで、他の楽器とは全然異なるんです。音色として特別なものなんで。
――GEISHA GIRLSにしてもKOJI-1200にしても今回のバカリズムさんのにしても声を重要視されている感じとか、意味のない事をやり続ける感じとかは伝わってきます。いわゆる、ただただお笑い芸人の方とストレートにコラボした感じではないですもんね。
笑いに寄り添う音楽は色々ありますから。笑かそうとしてるものもあるし、それは僕は面白いと思った事は無いので。基本、音だけで成立するものであり、笑いを入れても、音楽と笑いをイーブンにしたいので。バカリズムさんのオチのない笑いには、僕の大サビのない音楽が合っているかなと。
――今回、このタイミングで笑いを取り入れた音楽を作りたいというのは、何かあったのでしょうか?
たまにやりたくなるんですよ。普段、ソロをやっていてもユーモアは大切だと思っているので。息抜きというか。自分がリスナーになれるのは、やっていても楽しいですよ。歌になると味があるかないか、上手いか下手かという判断基準が出てくる。笑いとだと、面白いか、面白くないか、心地よいか、心地よくないかですよね。たまにやりたくなる。
――普段から、お笑いは観られますか?
一般的な感じだと思いますよ。テレビは元々観ないし、昨今、特に観ないですね。たまに温泉行って、Netflixとか、録りだめしといたものを観る感じですね。バカリズムさんのやってる事は面白いと凄く思うし、自分に近い匂いがするんです。裏方的な要素もたくさん持っているし。脚本を書いたりとか。また、今まで作ってきたものとは違う事が出来るかなと。
――時代も90年代と現代となら、だいぶ違いますよね。
1995年がインターネット元年ではありますが、例えばKOJI-1200の時もメールは使ってないですからね。マネージャー同士で連絡を取ってもらって、僕らは伝言ゲームの感じでしたから。で、スタジオで会って、何をやるかを決める感じでしたね。バカリさんとは常にショートメールで音を送ったり、向こうも文字が出来た時に送ってくれたりしてます。バカリさんはもっとスタジオであーだこーだやると思っていたみたいですけど、スタジオでの作業時間は短かったですね。僕は、そういうやり方を、ここ20年くらいはやっています。METAFIVEなんか6人ですから全員集まる事は大変なので、基本メールをCCで送って、音のキャッチボールをしましたし、歌を録る時も2人が行けば良いですから。でも、なるべく集まっていましたけど。ほとんどメールで済んじゃいますね。
テイ・トウワ 撮影=森好弘
――テイさん的にはスタジオであーだこーだ言う時代を過ごされてきていますから、そういう作業方法が嫌いなわけではないですよね?
僕は、あーだこーだ言いたいですね。面識が何度あっても、あーだこーだ言いたいですけど、若い人はメールが普通なので。特に若い人は、自分の調子の良い時の音を送ってきますね。
――あ~、なるほど。調子の悪い時も含めて、音を聴きながら、あーだこーだ言いながら作るのが大切な感じはしますね。
何度かやった事がある人なら信頼していますし、そういう事も別に無いんですけど。
――もう少し、バカリズムさんとの出会いもお伺いしたいんですが。
記憶が曖昧なんですが、10年くらいですからね、出会って。で、5年くらい前からメールをしています。最初は大喜利とかシャープだなと思っていて、ライブも随分前から拝見しています。今回も御伺いしましたが、2時間されていても、その時間を感じなかったですね。最初は単純に『架空OL日記』を読んでいて、衝撃的で……。あんまり近年、本を読まないんですけど久々のSFだなと。何かを伝えたいなと思った時、アカウントは作ったけど何もしていない自分のツィッターがあって、フォロワーを見たら、バカリズムさんがいたんです。なので、僕もバカリズムさんをフォローして、しばらくはバカリズムさんしかフォローしてなかったので、タイムラインはバカリズムさんだけでしたけど(笑)。『オールナイトニッポン』でジングルを使っていいですかという連絡がきたり、『架空OL日記』がドラマの時に是非とも音楽をと言って頂いて、使って頂きましたね。そのあたりから、色々と具現化されましたね。SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE名義とかも最初は考えてなかったですけど、作ったインストに歌ではなくて、トークを女優さんとしたものを中心にやりたいという方法論が出来ていきましたね。SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINEはセカンドが真面目だったんですけど、この3枚目はファーストをやり出した時の気持ちに近いので、なぞっています。ジャケットもファーストのオマージュだし。レコード屋さんで『その他』のジャンルのところに置かれたらいいですね(笑)。
テイ・トウワ 撮影=森好弘
――ファーストから21年ですが、この20年というのはいかがでしたか?
20年早かったです。色々ありましたけど、まぁ、みんなも色々とあるでしょうけど。僕の場合は中年から中年へという20年ですし、やってる事も変わらない気がしますね。辛い事だと長く感じますが、楽しかった事が多いので早く感じました。
――やってる事も確かに良い意味で変わられていないですよね。
昔から大サビないですしね(笑)。リスナーを考えて作る事もなく、作った後にパッケージごと考えていくのも変わってないですね。モテたくて作ってるとか、カラオケで歌って欲しいとかでもないので、そういう意味では最初から情熱も無いですし。ただ、まだまだ自分の作る音は聴きたいですね。辞めちゃうのは簡単ですし。辞めちゃうと過去にすがってしまうし、そういう爺さんにはなりたくないですから。まぁ、孫を待ってる間の時間つぶしですよ! 孫が出来たら、取材も受けないですよ(笑)。孫が欲しいものに対して、値札を観て、「違うのにしなさい」とは言いたくないので!
――孫主体の人生になりますね。
何でも買ってやりたいので! でも、孫というリスナーが出来るのは楽しみですね。後、孫が、どんな男を連れてくるかですね。勝手に孫娘と決めていますけど(笑)。
――凄い未来予想をされていますね(笑)。
でも、このアルバムは、そういう未来の事を一切考えずに作ったアルバムですね。今の近未来、来月くらいの事を考えて作りました。カフェでオーナーがかけてくれたらいいなとかね。そのカフェはセンスいいと思いますし。25年くらい前、原宿や下北のカフェはボサノバばかり、かかっていたんですね。ボサノバは全く悪くないですけど、カフェでボサノバをかけていたらオシャレだろうという考えは、音楽を舐めていますから。そういう連中に対しては、「こういうのをかけろや!」というメッセージはこめています(笑)。
――実は伝えたいメッセージがあったんですね(笑)。
ハードコアラウンジミュージックなんで(笑)。でも、かける音楽で空間は変わるので、色々なところでかかったら嬉しいですね。
取材・文=鈴木淳史 撮影=森好弘

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