the quiet roomが新体制初ライブで告
げた決意と新たな始まり

9月21日、the quiet roomが新体制初となるライブ『Road movie vol.09』を開催した。場所は下北沢MOSAiC。茨城出身の彼らが上京以来ホームとしてきたライブハウスだ。
SEが鳴ると、まず斉藤弦(Gt)、前田翔平(Ba) 、サポートドラマーの3名が、そのあとやや遅れて菊池遼(Vo/Gt)が登場。そうして始まった1曲目は、先日行われたツアーファイナル、つまりコビキユウジの卒業ライブで本編ラストに演奏された「Prism」だった。あのツアーで掲げられていた“捨てられないからこのまま全部抱いて走っていく”という一節はまさにこの曲の歌詞に登場するフレーズ。去った者の想いも引き連れながら前へ進むことに決めた彼らの決意が、早くも伝わってきたのだった。
the quiet room
その決意を伝えるために彼らはこのライブを行うことを決めたのだろう。この日のセットリストは、the quiet roomにとっての“始まりの曲”および “止まらないという決意を歌った曲”が中心となっていた。また、菊池は繰り返し、バンドは止まらないのだということ、それが叶うのはファンも含めたたくさんの人の力添えがあるからなのだということを言葉にしていた。終盤のMCで本人も言っていたように、the quiet roomというバンドは2013年に訪れた“菊池以外のメンバー全員が脱退”という危機的状況をはじめ、何度かメンバー交代が必要な状況に見舞われている。その時彼らは、ライブをキャンセルしたり、活動を一旦ストップしたりしていたのだそうだ。
“歩みを止めない”という意思を表明するために普段通り振舞う必要があったのだろう。「俺たち、茨城のthe quiet roomです。今日もよろしく!」(菊池)と、ライブはいつもの調子でスタートした。そもそも、菊池はいつの間に、こんなにまっすぐ前を見ながら歌う人になっていたのだろうか。斉藤と前田は、ステージに出てきた時点では若干笑顔が固めだったが、ライブが進むにつれてその表情はどんどん和らいでいく。「みんなで歌いたい曲があります、ここにいるみんななら分かるかもしれないなあ」(菊池)。そんな何気ない一言にも、オーディエンスに対する愛情が滲む。以降、オーディエンスの歌声や手拍子とともにライブは進んでいき、会場は温かな空気に包まれていったのだった。
the quiet room
凛とした響きで届けた覚悟の曲=「東京」。一転、激しく狂おしいサウンドで掻き鳴らした「Vertigo」。『Little City Films』収録順を踏襲した「灯りをともして」~「Cattleya」のドラマティックな展開を経て突入した「Number」では、菊池が斉藤のファインプレーを讃え、「ギターヒーローに大きな拍手を!」とフロアに呼びかけていた。もっとやりたい!と言いつつ「Instant Girl」で本編終了。そしてアンコールでは早速新曲を披露した。キャッチ―なのに展開にちょっと捻りのあるその曲は、このバンドが得意としている曲調を今の彼ら流にアップデートしたような感じ。短い尺の中にバンドの持つカラフルな魅力を凝縮したようなステージを観て、また、何だかとても素直に聞こえたその新曲を聴いて、“表情豊かに生きる”というコンセプトを掲げる彼らなら、今回のような出来事すらも糧にして、表現として昇華していけるだろうと思わされた。
the quiet room
「何回もメンバーチェンジしてて、その都度ライブキャンセルしたり活動を止めてたんですけど、今はこうやってみんながいてくれるから止まらないで活動できています。何回も言ってしまうけど、ありがとうございます」
最後にそう伝えたあと、「Hello Hello Hello」でライブは締め括られた。彼ら曰く「東京に僕らを連れてきてくれた曲」だというその曲は、このバンドが東京へ拠点を移す少し前にリリースした、自主制作シングルに収録されていたもの。そう、ここ東京から、the quiet roomは再び始まっていくのだ。

取材・文=蜂須賀ちなみ
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