【ライブレポート】ANTHEM vs LOUDN
ESS 90分1本真剣勝負

LOUDNESSがオーガナイズする4日間連続のイベントMETAL WEEKEND。第2弾<ANTHEM vs LOUDNESS 90分1本真剣勝負>が9月22日にZepp DiverCity Tokyoで行われた。
日本を代表するヘヴィメタルバンド2組がお互い90分のフルステージでぶつかり合う。彼らの長いキャリアのなかでも初めてのことらしい。もちろん敵対はしていない。ある意味では同志でもある彼らだとしても、ステージに立てば、血が騒がなければ嘘だ。音楽は勝ち負けではない、とは言うものの、オーディエンスが比べてしまうのは不可避。それをわかったうえで2組ともステージに立っていただろう。

先攻はANTHEM。オープニングを飾ったのは、比較的新しい(とは言っても2004年『ETERNAL WARRIOR』収録曲)「ONSLAUGHT」。続けて90年代の「VENOM STRIKE」。わずか2曲でスピードがMAXに到達。オーディエンスを恍惚へと誘う加速だ。これは90分1本真剣勝負の秘策だったに違いない。勢いそのままに、2000年代の「OVERTURE」から「ON AND ON」につないだ。重い音でうなる柴田直人のベースと雷鳴のような田丸勇のドラム。オーバードライブする森川之雄のヴォーカルとギターの清水昭男が放つ息をのむ高速フレーズ。冒頭から惜しげもなく自らの必殺技を連発し、オーディエンスをめくるめくアンセムワールドへ導いた。
ここで最新アルバム『ENGRAVED』収録曲を。「KEEP YOUR SPIRIT ALIVE」「LINKAGE」。今のANTHEMがいかに過去最強であるかを示していた。そして、「THE JUGGLER」など、89年『HUNTING TIME』収録曲の3連発へ。せつないバラード「GHOST IN THE FLAME」からライブ中盤。森川が「3人の男たちが奏でる鋼鉄のコンツェルト!」と紹介したインストゥルメンタル「SACRED TRACE」。続く「GYPSY WAYS」は再び80年代ナンバー。中盤の底は、2014年の「SHINE ON」。メロディだけ取り出すと、すこぶるポップだが、森川の声、ANTHEMのサウンド、硬質な歌詞をまとうと、まごうことなきヘヴィメタルに化ける。それにしてもほぼ全曲の作詞作曲を手がけている柴田のクリエイティビティには脱帽するしかない。
終盤は80年代に重心を置いた4曲。「SHOUT IT OUT!」では、イントロからオーディエンスの拳が質量ともに増加。締めは、森川が「思い残すことなくやってくれ!」とオーディエンスに叫んだ「WILD ANTHEM」。その言葉どおり、2階席も加わって全員のWILD ANTHEM!!が轟いた。ステージ上だけではなく、客席も全力を出し切れた90分だった。
後攻はLOUDNESS。挨拶がわりの「THE LINES ARE DOWN」から『THUNDER IN THE EAST』収録曲を連発。すると、3曲目の「LIKE HELL」へ会場の熱がグンと上がったのがわかった。何かのスイッチが、目には見えない、普段はある場所もわからないスイッチが入ったような…。高崎晃の魂がギター・ソロに宿るのを見た。カリスマ降臨。ここからのLOUDNESSは妖気をまとっているようだった。
L二井原が「久ぶりの曲。歌えるものなら歌ってみろ」と言った「GET AWAY」。これも『THUNDER IN THE EAST』収録曲。なんてったって凄いのはこの日のオーディエンス。歌えるのだ。バンドが醸し出す妖気がオーディエンスにも伝染したせいだろうか。続く「WE COULD BE TOGETHER」も同アルバム収録曲。この『THUNDER IN THE EAST』攻撃とも言える構成は、90分1本真剣勝負の秘策だったに違いない。
7曲目、折り返し地点。フィードバックのなかから現れたイントロは「LOUDNESS」。オーディエンスに気を抜く隙を与えない怒涛の、どSなセトリだ。「IN THE MIRROR」「CRAZY DOCTOR」から、高崎がストラト系のKG-VIOLATOR DEACONに持ち替えて「THE KING OF PAIN」。MCで二井原が言った。「みんなの声がステージに飛び込んでくるので鳥肌立ちっぱなしです」。この「鳥肌」もきっとあの妖気のせいだ。
終盤は、「Rain」「I'm Still Alive」など、ニューアルバム『RISE TO GLORY -8118-』の収録曲を交えた構成。「Soul on Fire」のギター・ソロ、鬼のオルタネイトピッキングも寸分の乱れもなく決まった。LOUDNESSという、ライブという、ヘヴィメタルという、妖気を胸いっぱいに吸い込むことができた一夜だった。
文:藤井徹貫
写真:Mikio Ariga

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