『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018
』(スタクラフェス )が横浜で遂に
開幕、上野耕平・反田恭平ら登場 [ク
ィック・レポート]

2018年9月23日(日・祝)秋分の日、『イープラス Presents STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018』(略称 “スタクラフェス” )が、横浜赤レンガ倉庫の特設会場にて遂に幕を開けた。
会場に設けられた3つの野外ステージ「HARBOR STAGE」「GRASS STAGE」「Sunday Brunch Classic STAGE(無料鑑賞)」に気鋭の演奏家たちが集まり、知られたクラシックの名曲から、ミュージカルやアニメの音楽まで、多種多様なプログラムが朝から晩まで繰り広げられる、クラシック音楽の世界にとって、全く新しいタイプの野外フェス。これを祝福するように、3連休の中日は好天の秋晴れ!
この太陽の下で、潮風を感じながら、食べたり飲んだり、時には寝そべりながら、多様な音楽を気軽に楽しめるとあって、大勢の家族連れを含め、会場は熱気に包まれている。
そんな “スタクラフェス” で最初に演奏を開始したのは無料エリア「Sunday Brunch Classic Stage」での「こぱんだドラムス」だった。
こぱんだドラムス
「こぱんだドラムス」は、東京芸術大学有志でスタートし、現在は広くメンバーが集っている「ぱんだウインドオーケストラ」から派生した、パーカッションユニットだ。
拍手の中、男性二人、女性二人の四人のメンバーが登場して、まずボディーパーカッションからスタート。入れ替わり立ち替わりのフォーメーション移動がとても緻密で、まるでダンスのよう。時には指が鳴らない!というパフォーマンスも交え、楽しいオープニングとなった。
「朝早くからありがとう! たった15分のステージですが、楽しんでいってください!」という挨拶のあとは、トライアングルの四重奏に。大きさの違うトライアングルが、澄みきった音で美しい響きを聴かせたかと思えば一転、非常にリズミカルなパートに。トライアングルで刻む激しいリズムはどこか近未来的な音色で面白い。
こぱんだドラムス
やがて女性が二つのトライアングルを持ち、それを男性が膝立てで両方を叩いたり、楽器同士をぶつけあわせたり、また、あえて三角形の頂点を握ることで乾いた硬い音を聴かせるなど、トライアングルだけでこれだけのことができるんだ!という驚きによる興奮が広がった。
早くも最後の曲、スネアの四重奏で「イート・イン・ザ・ブラック」となる。スネアの迫力だけでなく、ダンス的な要素が織り込まれ、足でステージを蹴るなどパフォーマンスも満載ー。スティックだけでなく、様々なものでスネアを叩くことによって多彩に変わる音色も楽しい。クライマックスは四人が楽器を入れ替わりながら見せる要素もたっぷりと。あっという間の楽しい15分間だった。
こぱんだドラムス
続いて有料エリア「HARBOR STAGE」のオープニングを飾ったのが、「It's 吹奏楽!〜ブラスで聴くスタジオジブリの音楽〜」だ。その名の通り、全国の中学生、高校生が、部活動で接することも多い吹奏楽で頻繁に演奏される、スタジオジブリの世界が繰り広げられた。
サックス奏者の上野耕平がコンサートマスターを務める吹奏楽団「ぱんだウインドオーケストラ」(指揮:横山泰)の演奏に、そして、ジブリ音楽の生みの親である、作曲家の久石譲を父に持つヴォーカリスト、麻衣が出演。以前「僕らの演奏を聴いて『中学に入ったら吹奏楽部に入りたい!』と思ってくれる子がいたら最高!」と意欲を語っていた上野のMCで、ダイナミックなステージが賑やかにスタートした。
一曲目はオリジナル曲「ウェルカム トゥ ぱんだ」のファンファーレも高らかにメンバーたちが登場。ステージ左にのスクリーンにはソロを取る演奏者も大写しに。壮大で伸びやかなメロディーが奏でられた。
横山奏指揮 ぱんだウインドオーケストラ
ここでMCの上野耕平が「皆さんこんにちは~!」と挨拶すると、会場を埋めた聴衆からも「こんにちは~!」の声。上野は「あー、いいですね、こういうの。どうですか? このロケーション最高でしょう? こうしてお互いに声を出してコンサートホールとは違うコンサートを皆で楽しみましょう!」と話す。そしてゲストボーカルの麻衣が呼びこまれての二曲目は「スピリティッド・アウェイ《千と千尋の神隠し》メドレー」だ。
10歳の少女千尋が、引っ越し先へ向かう途中に入ったトンネルから、神々の世界へ迷い込んでしまう物語である《千と千尋の神隠し》は、2018年現在も塗り替えられていない日本歴代興行収入第1位を獲得した、長編アニメ映画。
「いのちの名前」「ふたたび」と、麻衣の優しい木管楽器のような歌声が曲のファンタジックな世界観を伝えてくれる。海風に吹かれた和のテイストを思わせるドレスがひるがえる様も、野外コンサートの興趣をかきたてる。高音の美しさ、吹奏楽との迫力とが相まって、新たな感動を呼び起こすスペシャルアレンジになった。
いったん麻衣が退場すると、上野が「あっ、船の人たちが手を振ってる!」と、ステージすぐ脇の港湾を巡航する船の乗客たちを見つけ、ステージからも手を振り返すほほえましい一コマがあった。そして、続いては《となりのトトロ》メドレー。
上野耕平
昭和30年代前半の日本を舞台に、田舎へ引っ越してきた草壁一家のサツキとメイの姉妹が、子どもの時にしか会えないと言われる不思議な生き物・トトロと出会い、交流を深める姿を描いたファンタジー。この作品は、アニメの中の曲というところからすでに一人歩きし、童謡としても認知されている「さんぽ」、トトロ、トトロ…のフレーズが国民的に知られている「となりのトトロ」「風のとおり道」など名曲の宝庫。ダイナミックでアクティブなイメージが強い吹奏楽から、優しく繊細なメロディーが次々に奏でられ、豊かな表現力とアレンジの面白さがいっぱい。そこから「となりのトトロ」に至る楽しさが抜群で、華やかなエンディングに大きな拍手が贈られた。
再び麻衣が登場し、「ネコバス」と「風の通り道」が交互になるアレンジって面白い! 父に紹介したい! と感激しながら、「四歳の時に歌った曲で、若干成長していますが(笑)、今も歌っています」と、《風の谷のナウシカ》からナウシカ・レクイエム。
度重なる戦争による科学文明の崩壊後、異形の生態系に覆われた世界を舞台に、人が自然と共に歩むべき道を求める少女ナウシカの姿を描いたSFファンタジーで、「ランララララ」と歌われる麻衣の声は少しも作為的なもののない、少女のような響きで、曲を美しく届けてくれる。タンバリンのリズムの刻みが効果的な演奏も美しく、楽曲の世界が広がった。
「気持ちの良い風に吹かれて歌えて楽しかったです! このあとのプログラムも楽しんでください!」の麻衣の言葉で、ラストは 《天空の城ラピュタ》から「君をのせて」。
麻衣
亡き母から受け継いだ、謎の青い石を巡り空から不思議な光に包まれて落ちてきた少女シータと、彼女を助けた少年パズーを主人公に繰り広げられる物語《天空の城ラピュタ》の主題歌で、その美しさと壮大な世界観を持つ楽曲が時を超え、世代を超え愛され続けている。今日の日のための吹奏楽とのアレンジは、広い空の下、風が吹き渡る中(巡航船の汽笛も鳴り響く中)、この曲を聴く幸福感にあふれた壮大なものに。素晴らしい歌唱と素晴らしい演奏の、エンディングに喝采が沸き起こった。
続いての演奏会場は「芝生でごろん、聴いて、飲んで」がテーマの「GRASS STAGE 」に移り、 “スタクラフェス” 目玉アーティストの1人、人気実力共に当代随一のピアニスト反田恭平による「反田恭平スペシャルステージ」。もう会場は早くも押すな押すなの大盛況で、反田の登場に待ってましたの大歓声がわいた。
「反田恭平スペシャルステージ」
「皆さんこんにちは!今日は、集まってくれた皆さん、特にお子さんたちに、ピアノってこんなに素晴らしい曲があるんだということをお伝えしたいと思います」と挨拶をすると、現在彼が研鑽を積んでいるポーランドの作曲家ショパンの楽曲の数々が演奏される。
最初は「幻想即興曲」。速いテンポで華麗なメロディーが、軽やかに美しく奏でられ一気呵成。間合いも取らずに中間部に入ると、メロディーの美しさを特段に際立たせた演奏が、たっぷりと豊かに。再び速いバートを爽快に弾ききり、左手にメロディーが移る終盤まで美しく聴かせる演奏だった。
「まぶしい! 太陽がてできたね!」 人生初の野外ステージでの演奏を楽しみにしていたという反田は、「今の曲の最後の調と同じ曲を」とのことで「小犬のワルツ」。あっという間に終わるワルツとも称される曲だが、それにしてもここまで速いテンポでの演奏も珍しい。中間部の表現も独特で、まさに「反田版・小犬のワルツここにあり!」の演奏だった。
反田恭平
続いて「英雄ポロネーズ」。ショパンに限らず、自ら自作曲を演奏していた当時の大作曲家たちの演奏というのは、こうだったんのではないか?と思わせる、自由な演奏が楽しい。ダイナミックで華やかで、どこかコケティッシュでもある演奏が、吹き渡る風の中、聴衆の心を完全につかみ、ブラボーの歓声が飛び交った。
「暑い…ピアノが熱い」と汗を拭きながら、四月~九月にかけて演奏会を19回してきたので、これでキリよく20回にさせてください!と、ベートーヴェンの「悲愴ソナタ」から第2楽章。ベースの深い音色とメロディーの澄んだ音色の弾き分けが見事で、歌心にあふれつつベートーヴェンらしい重層的な演奏になった。
ここで時計を見た反田が「あと4分、いや3分だ! 3分で弾ける曲を弾きます!」と宣言してのラストは、シューマン=リストの「献呈」。愛と尊敬に満たされた美しい曲と、リストの華やかな編曲のダイナミズムとが、華やかに伝えられる。高音のパッセージが泡のように美しく、後半の力強い盛り上がりとの対比が生き、歓声と拍手の中、豊かな30分間の演奏はフィナーレとなった。
反田恭平
こうして“スタクラフェス” は始まった。この後も『ピアノの森』や『のだめカンタービレ』など、音楽大学、クラシック界を舞台にした人気アニメでおなじみのクラシック音楽を集めた「クラシックinアニメ」や、バンドネオンの三浦一馬とクラシックの演奏家たちのコラボレーション「Passion Classic」、オペラからミュージカルまでの名曲がぎっしり詰まった「クラシック紅白歌合戦」、サンセットに奏でられる弦楽とピアノの「プレミアムサンセット」〜キャンドルを灯して〜、新進気鋭のアーテイストたちとオーケストラの饗宴「Classic Revolution!」と、豪華なプログラムが目白押しだ。
今からでも間に合うプログラムを聴きに、是非、気軽に横浜赤レンガ倉庫へ遊びにきて欲しい。きっと素敵な休日のひと時が待っているはず!
取材・文=橘涼香  写真撮影=石ケ森三英/伊藤惇/大橋祐希

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