Wakanaインタビュー 芽生えた「歌い
たい気持ち」と、歌うことしかできな
い自分について

Wakanaが動き出した。2018年8月11日に東京オペラシティ コンサートホールで開催された宝塚歌劇団元月組トップスター龍 真咲とのコンサートを経て、今回初の単独コンサートツアー『Wakana Live Tour 2018〜時を越えて〜』を全国四都市・追加を含む5会場で開催される。Kalafinaとしてステージに立ち続けた単独ツアーに挑む心境、そして活動のなかった期間の話をじっくり聞いてきた。SPICEとしては約半年ぶりの邂逅となるインタビューをお届けする。
――お久しぶりです、インタビューも約半年ぶりになりますが、いかがお過ごしでしたか。
3月3日に『Songful days』と、3月11日に『Toyosu Music Collaboration』に出させていただいてからは、ちょっと歌わない時期が長くて。
――そうですよね。
皆さんの前に出ない時期がちょうど5ヶ月あったわけで、その間は気づけば歌わなかったですね。歌うことと離れていました。お友達に会ったり、とにかく今のうちだと思って色んな人に会っていたんです。
――かなりノンストップで突っ走っていた2017年でしたし、良いオフにはなったんじゃないですか?
そうですね、かなりなりました。色んな人に会って、色んな話をしたり、おいしいものを食べたりとかして。あらためて取り切れていなかった自分の時間をがっつり作って、好きなことをしていました。
――Kalafinaでは10年ですが、FictionJunctionを入れると?
同じぐらい、11年ぐらいかな?
――歌を歌って10年以上生きてきて、この期間は不安などはなかったということでしょうか。
うん。なぜか、全然大丈夫でした(笑)。別にどこか海外に行くとかでもなくて、ひたすら自分のやりたいことをやっていましたね。植物を更に増やしたりとか、お家のインテリアとか好きなことをやったり、あとカメラを買ったので空の写真を好きなだけ撮ったりとか、そういうふうに過ごしていたので、まとまった休みというよりも次にまた忙しくなるために今は自分を見つめるぞ、という感じでしたかね。
――リセットができた?
そうですね。できるだけナチュラルでいたいと思っていたら、なんかすぐリセットしてました。
――5ヶ月間で特筆すべきエピソードなどはありましたか。
なんだろう、結婚しました、とか言いたい!(爆笑)。そんなことあったらインタビューの趣旨が変わっちゃいますよね(笑)。でも今回ライブグッズで自分の写真をTシャツに転写するのをやってみようと思って、そういうやりたいことがどんどん出てきましたね。自分のカメラを買ったのも良かったな。
――新しい趣味という感じですか。
今までは携帯電話のカメラで撮っていたんですけど、それをきちんとしたカメラだと撮影したものを大きく伸ばせるじゃないですか。それもいいなと思って。ファンクラブ限定でいいから写真集をいつか作りたいと思っていましたし。
音楽はそれぞれが感じるものでいいと思えるようになった
――そして先日8月11日に龍 真咲さんとのコンサートがありました。久々のステージ、龍さんとも初めての共演でしたが、いかがでしたか。
龍さんはいつも舞台に出演されているのを拝見させてもらっていたので、やっぱりすごい格好良かったですね。エスコート力がすごいんですよ、龍さんの目に引き込まれちゃって。ずっと見ちゃう、みたいな(笑)。
――ローマイタリア管弦楽団の方々ともご一緒されました、歌うこと自体久々でしたがこちらの共演はどうでした?
久々なのもあったし、最初はどうしようと思ってました。フルオーケストラって初めてだったんですが、本当に皆さんいい方で! マエストロのニコラという方はすごい身体が大きくて、優しいんですよ。いつも歌い手のことを気にしてくださっているので、テンポとか気になったらすぐ見てね、と言ってくれていて。だからニコラを見ながら歌わせてもらったんですが、みんなが弾いている温度感というのもニコラを見れば分かるし、すごいやりやすかったですね。
――リハーサルの前に個人レッスンだったりトレーニング的なものは?
自分でやりましたね。セットリストをどう歌うかというのを自分で考えて。でも今までと全然違う歌い方になったかな。本番はもうイヤモニ外しちゃったんですよ。そのほうが気持ち良いと思って。新しい気持ちよさと歌声を発見しました。今までと全然違う。
――環境も違うし、フルオケなのもあり、場所も東京オペラシティでした。
そうですね。アコースティックツアーは経験があったんですけど、それともまったく違う景色で、最初はすごく緊張しました。でもニコラが面白くて。
――なにかエピソードが?
舞台袖でなんですが、ニコラは本当に大きい人なんです。背も大きいけどお腹も大きくて、「このお腹には何が入っていると思う?」と聞いてきて。何?って聞いたら「寿司じゃないよ?リスペクトが詰まってるんだ」と言うんです。思わず「昨日寿司食べたの?」と聞いたら、「うん!」って(笑)。それでちょっと和らいで、素敵でしょう?
――とてもおしゃれで素敵ですね、その会話は。
ゆったりと音楽を楽しむ姿勢を持っている人たちなんですよね。でも皆さん演奏する方も、梶浦由記さんが作る音楽をちゃんと理解してくれて、全然知らない曲であってもそれをみんなで作り上げていくというのが楽しかったし、何か幸せでした。
撮影:敷地沙織
――オリジナル楽曲も披露されましたが、ソロとしては初めての楽曲になります。どういう過程でお作りになられたんですか?
これは曲が先にありまして、歌詞を生まれて初めて作詞をしたんですけれども、すごく難しかったんです。未だに納得できていない部分もあるんです。この音の中にこの文字数しか入らない、でもこれじゃ表現できない、どうしたらいいの?という気持ちのまま書いたので。
――暗中模索しながら作られたんですね。
すごい模索しましたね。でも本当に素直な気持ちで書いたので、こんな素直なものはもう出ない、そのまんまという感じです。
――お客さんの前で歌ってみていかがでしたか。
私にとって、これはすごく難しい曲でした。楽曲としては先日のライブでオーケストラの方が入ることでやっぱり華やかに、派手になった印象がありますね。この曲の良さがすごく引き出せたなと思ったので、それはとても良かったです。
――素直に書いたということで、伝えたいことがそのまま表現されている気もしました。
そう、伝えたいことを全部そのままに書いたんですけど、聴いてくださる方にはそれぞれの解釈があって、何か不思議でした。歌ってこういうことなんだな……と思って。
――受け取り側によって感じ方も違う、という感じですかね。
そうですね、作詞を初めてして分かったのは、今まで私が聴いてきた音楽も、もしかしたら私が解釈しているのと作り手の解釈は違うのかもしれないと思ったんです。
――それは音楽を作る立場からしたらこう、伝わってない!とか思う部分あるんでしょうか?
いや、みんなが思うもの、感じるものでいいと思います。何が言いたかったかというのはとりあえずいいんです、と言う感じかな。
一人でKalafinaを歌うことについて
――ライブではKalafinaの楽曲も歌われましたが、お一人で歌おうと思った経緯も聞きたいです。
正直なところ、最初はそのつもりはまったくなかったんです。でも待ってくれているお客様がいるんだということを人にも言われ、結構早い段階で素直にそれを受け止めましたね。待っていてくれる方がいるかもしれないんだったら私は歌うよ、という気持ちをちゃんと示したかったんです。
私何かを作り上げるというようなことができる人間ではないので、皆さんが一緒に考えてくれて、そこに人生の中で運良く歩いてこれたというか、そういう出来事が本当にたくさん私の中ではあるんです。東京に出てきたこともそうだし、梶浦さんとの出会いもそうだし、Kalafinaとして活動してこれたこともそう。そのひとつひとつの決断も、まあ楽しい道のりだったと思うんですよね。今私がここにいることも、30年後の自分にとって楽しい道のりの始まりだったなと思えたらいいですね。人生は全て繋がってるんだろうけど、どの道のりでもこうなったかもしれないと思うこともあるんです。
――Wakanaさんはポジティブシンキングな人という印象がありますね、なんでも楽しんでいる人というか。ファンは心配していたと思いますが、その中で8月のコンサートは非常にポジティブな報せだったと思います。
だったら良かったです、そう受け取ってもらえていたら。心配だったところもあるので。
――ファンの声は遠巻きには入ってきていましたか。
私実はあんまり入れない人なんです。人の意見はすごく大事なんですが、私はすぐ左右されるんですよ。色んな意見が世の中にはあって、一人だけの意見は聞けないし、意見を聞くよと言っても、全てを採用できるわけではないじゃないですか。なので色々な見方や思いもあるだろうと想像して仮定して、自分が自分でいられるように作っていく。それしか方法がなくて。
――なるほど。
みんなの意見全部を実現させるというほど私はすごいアーティスト、シンガーじゃないから……もっと大きくなっていった時に自分の思いと皆さんの思いが合わされば実現していきたいものもあるんですが、今は色んな意見があると踏まえたうえで自分が歌い続けたいという思いを、やれることをやろうと思いました。
――Kalafinaの歌は今まで三声で歌ってきたわけですが、それを一人で歌うところで、難しさや大変さはありますか。
あります!すごく最初は悩みました。やっぱり梶浦さんの曲というのは本当にすごい曲ばっかりで、全部大好きなんですけど、すごく難しいです。セットリストも自分で選んで歌わせていただいたんです。今回のライブツアーでもできることを考えて、周りの方にも協力していただいて一緒に作っていますね。
撮影:敷地沙織
――8月もかなり歌いましたよね。
歌いました、10曲ぐらいKalafinaだったかな?
――具体的に披露したもので印象に残っているものは?
「むすんでひらく」かな。大好きなんです、あの曲。
――「むすんでひらく」をラストに置いたのは意外なところがありました。
この曲は最後だねって、初めて聴いた周りの方に言われて。私も最後な感じがしてたんですよ。じゃあ最後に聴いてください、「むすんでひらく」、と言いたかったんです。なんかすごく自然でしたね。
――Kalafinaでやっていればなかなか最後にはチョイスされない曲だと思いました。
ないと思う。ツアーでは真ん中とかでありましたけど、あんまりないですよね。
――今後の活動はライブツアーも決まっていますが、Kalafinaとしては言える範囲でどうしたいかというのがあれば。
先程も言いましたけども、梶浦さんが作られた音楽というのはこれからもたくさんの方に聴いていただきたいし、そういう意味でも、みんなそれぞれ私たちが3人で10年間歩んできて、私もこれから新しい曲にたくさん出会っていくと思うし、出会っていきたいので。まだまだ自分のそういう歌う人生は長いと思うので、どんどん可能性を広げていきたいです。
――ファンの声としては、やっぱり3人で歌ってほしいという意見が多いと思うんです。
そうですね、きっと、そりゃそうですよね。いやもうお腹いっぱいだ、とか言われていたら結構ショックですよ(笑)。
――そんなことはないと思いますが(笑)
でも真面目な話そういう人もいるとは思いますよ。もう10年聴いたからいいよって。でもやっぱり私は音楽というのはずっと続いて、受け継がれていっていいものだと思うし。だって昔のクラシックの曲だって何百年もずっと受け継がれてきているものじゃないですか。だからみんなが好きと思う気持ちを無理やりとめることはないと思うし、私も好きだから、自分の気持ちは止めない、と思ってるんです。
――自分は歌いたいから歌うと。
そうです。最初はありえない!とは思ったんですけど……。
――その思いは最初あったんですね。
ありました、と言っていいんですかね。最初は一人でKalafinaの曲を歌うのがどうしても抵抗があって。でも、梶浦さんの音楽を歌い継ぐという気持ちでやろうと。私は歌いたいから。だって私にできることはそれしか今ないから、それをやろうと思って。
――自分のやりたいこととユーザーの思いとも一致している部分があったのかもしれませんね。
そうですね、そうだったらいいな。
撮影:敷地沙織
――3人ともできることをやっている、旅は3人とも続いているんですね。
人の人生ってやりたいことがどんどん生まれていってほしいし、もう一つ、あと一歩、という積み重ねだと思うから。それが音楽だけじゃなくてもいいと思うんです。その人の人生だから、それが音楽だけじゃなくていいと思う。
――Wakanaさんは今は音楽の旅を選んでいると。
そうですね、自然と。例えばこれから違うことに挑戦することもあるかもしれないですけど、でもやっぱり私は歌しかできないから、好きなことはたくさんあるんですけど、でも求めてもらえるかもしれないもの、という可能性は歌かな。
はじめては一回しかないからこのツアーを見に来てもらいたい
――ライブツアーは9月24日からですが、今回は完全にお一人のツアーで4会場で開催されます。
※編集部注:インタビューが行われたのは追加公演発表前になります。
そうですよ、生まれてはじめて!いっぱい色々な経験させてもらっているけれども、まだ知らないことがあると思って。楽しみですけど緊張もしますね。
――10年やってきたこととはまた別の緊張ですか。
今まではCD通りというか、CDを超えられるぐらいの気持ちでバンドさんと一緒に伝えていっていたんですけど、今回はまったくのまっさらな状態から作り上げていて、とても難しいですね。
――福岡では地元凱旋になりますが、お一人での地元凱旋で思いはありますか?
そうですね。ツアーを行うことができるのは本当に皆さんのおかげだなと思っていて、あらためて思うとすごく感慨深いです。地元に歌で恩返しじゃないけど、歌を届けに行けるんだというのはすごく嬉しいことだし、やっぱり嬉しいですね。
――伝えたいメッセージなどは?
自分の中では伝えたい思いというのはセットリストと歌に全部込めているつもりなので、これからの私というのものをぜひ見てほしいです。このツアーは二度とないライブツアーになるんじゃないかな。私もこれから前を向いていくから、新しい一歩の始まり、一番特殊なライブツアーだと思います。
――気持ち的には新人アーティストみたいですね。
もちろんです。知らないこともたくさんあります。お客さんが戸惑うこともあると思います。でも私自身は何も変わっていないので、普通の私だから大丈夫だよということで。
――確かにそうですね、変化があったわけでもない。
本当はベリーショートにしたいなと思ったんですよ。でも普通に止められちゃって(笑)。昔ベリーショートだったので、だからそれをもう一回やりたいな、なんて思ったんですけど。
――それは印象ありませんね……今までよりはそういうことを自由に考えたり行動できるという感じでしょうか。
そういう所はありますね。かといって今までとガラッと変わったりはしませんよ!全身タイツとかはないですよ!(笑)。やっぱり私の好きなものは好きなもののままだし。でもこのツアーは今までで一番特殊で、最初で最後になる初めてのライブ。だって初めてはもう一回しかないから、だから色んな人に見てほしいんです。
――そうですね、初めての単独ライブツアーはこの一回だけ。
みんな人は人生の中で、電車を乗り換えるように新しい景色を見に行くタイミングがあると思うんです。そのドアを私は自分で開けていく。でも周りの皆さんが背中を押してくれたから開けられたんだと思います。その景色をみんなと見たいんです
――最後にWakanaとしてファンにメッセージをいただければ。
重複しちゃうかもしれませんが、今回は自分にとって一回きりしかない初めての単独ライブツアーになるので、ぜひ皆さんの目で見ていただきたいです。これから色んなことに挑戦するうえでのまだ荒削りな状態の私も全部見てほしいし、多分もう見れないし。
――荒削りの状態のWakanaは確かに見れないかもしれませんね。
はい、正直自分の中でも納得できるか分からない部分もたくさんあるかもしれません。それでもみんなに歌を届けたいという気持ちはずっと変わらないので。初めての方にも楽しんでもらえるライブを目指して歌を届けるライブにします。
――確かに、10年以上Wakanaさんが歌いたいと思う気持ちや、やってることは変わらないと思いますね。
ドキュメンタリー映画でも私、「運命だった」といってるんですけど、あれは本当にそう思ってるんです。「oblivious」とかもう昔から予言されていた曲のような気がします。本当は空を飛べるってみんな知ってるんだけど……みたいなね。
インタビュー・文:加東岳史 撮影:敷地沙織

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