【インタビュー】Linked Horizon、3
rdシングル「楽園への進撃」に込めら
れた“いま歌うべきもの”

Linked Horizonが、シングルとしてはじつに5年ぶりとなる3rdシングル「楽園への進撃」を9月19日(水)にリリースする。TVアニメ『進撃の巨人』Season 3において初のエンディング・テーマ曲担当となった「暁の鎮魂歌」(読み:あかつきのレクイエム)を含む3曲が収録された今作は、これまでLinked Horizonの音楽と『進撃の巨人』の世界観を重ね合わせてきたファンに大きな驚きをもって迎えられるであろう、挑戦的な意欲作となっている。

今回、Linked Horizon主宰・Revoにインタビューを行ない、今作を巡る『進撃の巨人』との関わりを掘り下げると共に、9月末より行われる“Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演”のBlu-ray発売記念上映における音響システムの面白さについても聞かせてもらった。『進撃の巨人』と共に歩むアーティストとして、サウンドに徹底的にこだわるミュージシャンとして、Revoの現在に迫る。
■新しく聴いてくださる方も、“二度美味しい感”に辿り着いていただけたら嬉しく思います。

──「楽園への進撃」に収録された「暁の鎮魂歌」は、TVアニメ『進撃の巨人』Season 3のエンディング(以下ED)テーマ曲となっていますが、今回は民放ではなくてNHKでの放送となりました。より広い視聴者の方がLinked Horizonの音楽を知ることになったのではないかと思うのですが、そのことについてRevoさんはどのように感じていらっしゃいますか。
Revo:新しく聴いてくださる方が多くいれば嬉しいなと思うんですが、モノを作る姿勢としては基本的にはそこはあまり関係ないですかね。まあ、全く関係なくはないんですけど、だからといって過剰にわかりやすくする必要はないかなとは思ってますね。『進撃』を好きになってくださる視聴者の方なら、いずれこのEDテーマも気に入ってくださって、遡って今までのアニメも観るだろうし、今までのテーマ曲も聴いてくれるだろうと。そうすると、今観てくださっている従来のファンの方と同じスタートラインにいつか立つときが来ると思います。今いるファンの方たちが喜んでくれるものを作って、そこに加わってくださればいいかなって。逆に、「楽園への進撃」には今までの作品を聴いてないと気付かないようなことを遠慮なく入れています。

──作品を後から知って遡る楽しさ、喜びもあるということですね。

Revo:そうですね。それに、これまでの曲を知らないからといって、今の曲を楽しめないわけではないので。“二度美味しい感”に辿り着いていただけたらこちらも嬉しく思います。

──今から作品に触れて遡れるというのは、ある意味贅沢かもしれないですね。

Revo:一気にいろんなことを知ることができる機会ではあるので。なにせ、前作(2013年リリースの2ndシングル「自由への進撃」)を聴いてくださって、「次のシングル出ないかなあ」って思っていた人たちは、5年待ってたということになるので。その間アルバムもありましたけど(笑)。一気に過去のテーマ曲も聴けるというのは、それはそれで贅沢なんじゃないかなと思います。
▲「楽園への進撃」初回盤

──今作に収録された楽曲たちにも、これまでの曲とリンク部分が歌詞やアートワークにも散りばめられていますね。その中で「暁の鎮魂歌」は初めてのEDテーマ曲となったわけですが、どのように捉えて制作したのでしょうか。

Revo:オープニング(以下OP)テーマ曲を作るのとは違うな、とは感じていました。また、オーダー自体もこれまでと違った感じがありましたし。OPの場合は、EDがどうかということをさほど意識せずに、作品性と向かい合えた感じがするんですけど、EDの場合はまずOPの方を先に聴くので、OPを意識してどうするかっていう観点がありました。製作陣からの「同じ曲は2曲いらない」という意思は感じましたね。それ以上、細かいことまでのオーダーはなかったんですけど、目指してほしい方向性として、OPとの棲み分けはしたいと。

──EDの映像が作られた状態で、曲を作ったんですか?

Revo:今回に限らず、今までもそうなんですけど、曲を作るときに、基本まず絵はないです。曲ありきのところから始まるんですよ。なので、責任は重大なんですけど。曲がどうかということによって、絵も変わってくるというか。向こうもすごくプロフェッショナルなので、音に合わない絵は絶対作らないという職人のプライドがあると思うんですよ。逆に言うと、変な曲を作っちゃうと変な映像になっちゃう危険性がある。自分としてしっかりと信念の持てる「これだ」という世界観の曲が出せれば、しっかりとした解釈の映像が出てきて、1つの不可分な作品になるので。僕も作っている内部の人間なのでこう言えるんですけど、確かに知らなかったら絵が先にあって曲を作ったと感じると思います。そのくらい映像が曲にあっているので。

──幼少期から現在に至るクリスタの姿が描かれていて、そのイメージに寄り添った曲になっていたので、その世界観があって曲ができたのだとばかり思っていました。

Revo:実はなんですよね。曲からインスパイアされてあの世界観が出来上がってるという。日本のアニメ技術というのはすごいと思います。絵もすごいんですけど、演出を取っても、すごいセンスの塊の人たちがひしめき合っている業界なんだなってここにきて改めて思います。

──改めてシングルの収録曲順にお伺いしますが、1曲目の「黄昏の楽園」は意表を突かれた感じを受けました。

Revo:そうですね、その驚きをみなさんにも感じてもらえたらと(笑)。

──過去作からのオマージュも入っていますね。

Revo:聴いてくださってる側も、今までの曲を聴いたこともあるだろうしアニメも観てきただろうっていう中で、リスナーとして、視聴者としての経験値のようなものが蓄積されているはずなんですね。そのことを今一度感じてもらえる作品にしたいなと思いました。新しい作品ではあるけれども、自分がずっと応援して観てきたものの、今最先端にある作品なんだということを感じてほしいです。懐かしさもどこかありながら新しいという。この曲だけでなく、シングル全体で伝えられたらと思っています。

──アートワークも含めてそうした思いが込められているんですね。ファンの方たちはすごく細かいところまで読み取って解釈していますよね。

Revo:そうですね、ありがたいことに。作品を愛してくだされば、いろんなことに気付いてくるし、今気付かなくてもいつか気付くことがあるかもしれないので、そういう部分は用意しておきたいなと。

──歌詞についても、発表されていない段階で耳コピして書き起こしている人なんかもいますもんね。

Revo:毎回、そういう方はいるみたいですね。僕の場合、歌詞カードのルビも特殊だったりするので、経験値がたまっていくと、「ここは絶対普通に書いていない」とか、「おそらく特殊なルビをあてているに違いない」とか読み取る楽しさもあるのだと思います。

──ご本人以上に深く掘っているというか(笑)。「黄昏の楽園」には「すずかけ児童合唱団」がクレジットされていますが、何人くらいで歌っているんですか?

Revo:20人くらいです。若干ダビングもしてますが。そこまでたくさんの子供たちが、というイメージではないですね。もうちょっと身の丈にあった世界、村の子供たちが歌っているくらいの人数感です。

──この曲は、Revoさんにとってかなり挑戦的な曲だったのでは?

Revo:そうですね。曲調、曲順も含め、あまり今までやってこなかったような形ではあるので。らしい要素は、Sound Horizonも含めて考えると随所に感じられると思うんですけど、Linked Horizonとしては結構サプライズなんじゃないかと思います。

──どんなイメージで作った曲でしょうか。

Revo:子供に歌わせている意味というのは確実にありますね。大人には出せないピュアさみたいなものを出したいなというところにちゃんと着地できていて。一口に子供たちと言っても、実はその年齢というのも結構幅広くて。ちょっと年上のお姉さんでも、より幼い感じがほしければもっと無邪気であどけない感じを、声を作って歌ってもらったりということもありました。これが難しいことに、本当に幼い子供たちだけで構成すると、うまく歌えないんですよ。そんなに簡単な曲じゃないんですよね。なので、可愛い声を出しているお姉さんたちが土台を支えてくれているところで、下の子たちがそこについていったりしている部分もあります。

──前半から後半にかけて、「楽園」という言葉に違うイメージを受けたり、1曲の中にストーリー性も感じました。そうした曲のストーリーについてはどのように考えましたか。

Revo:シングルのタイトルにもなっていて曲名にもなっているように、「楽園」というものを多角的に捉えてもらいたいという思いがありました。いろんな側面を出していく中で、まず誰もが思っているような、楽しそうな朗らかなイメージで届けるんですけど、そこには不穏なものが潜んでいるんですよね。そんなわかりやすい「楽園」なんて現実には無いということに、僕たちは薄々気付いてはいるので。理想的な世界になればいいなとは思いつつ、そんな綺麗ごとばかりじゃなくて。それが、「楽園だから」とか朗らかに繰り返し言われるほど、謎の洗脳感が出てくる怖さがあるというか。大人が言ってると、また違った印象になるんでしょうけど、子供たちが言っているのを大人が聴くと、一種人智を超越したような、世界の真理、摂理みたいなものに対してより近いところにいるようなピュアなものを感じてしまって。美しいけど逆に怖いんじゃないかっていう気がします。
■「楽園」ってなんだろう、世界は、エレンはどこに向かおうとしているんだろう、どういう解決が一番理想なんだろう、とか思いながら。

──次の「革命の夜に」はこれまでのLinked Horizonらしい曲で、とてもカタルシスを感じる気がします。曲順についてはどんなコンセプトがあったのでしょうか。

Revo:曲名を見ていただければわかるとおり、夕方があって夜の曲があって朝を迎えると。言ってみれば夜の曲から始まってもいいわけですよね。朝から始まればそれはそれで一日のサイクルだし。でもこのシングルは夕方が1曲目に来ていて。今までの僕の作品のイメージ感って、2曲目の「革命の夜に」なんですよね。そこから始めたら、すごく王道的なイメージで捉えられると思うんですけど、今回はそれじゃないなと思ったんです。ちょっと冒険だなとは思ったんですけど、今の形の方がより作品性というものが伝わるかなという意味で、この曲順にしました。リード曲でありEDテーマ曲である「暁の鎮魂歌」が1曲目にくるというのもみなさんが想像できる普通の形だと思うんですけど、それがなぜ3曲目にあるのかということを考えてもらえたら嬉しいなと。これ以上はちょっと言いづらいんですけど(笑)。
▲「楽園への進撃」通常盤
▲「楽園への進撃」チェンジングジャケット(エレン ver.)
▲「楽園への進撃」チェンジングジャケット(リヴァイ ver.)
▲「楽園への進撃」チェンジングジャケット(クリスタ ver.)
▲「楽園への進撃」チェンジングジャケット(ハンジ ver.)

──ジャケットが公開されてから、アートワークを見ていろんな想像を膨らませているファンの方もいるようです。ファンの方が色々と解釈してくれるのも、Revoさんにとっては楽しみなことなんじゃないですか?

Revo:情報をすごく入れているので、誰にも届かないと寂しいなっていうのはありますね。ただ、すべてのものが届かなくてもどこかで楽しんでもらえればそれでいいし、全部が伝わらなければ楽しめないという、そんな狭いものにはしたくないんです。かなり多くの情報を入れているので、徐々に気付いていったり、誰かが言っていることを聞いて「ああ、そうなのかもしれない」と思ったときに、何か閃きのようなものがあると思うので。そこで新しく見えてくる世界観、音もあるでしょうし。音も非常にたくさん入っているのでなかなか意識できないと思うんですけど、意識したときに意味のあるものが必ずそこにあるので。

──そう言われたら、やっぱりみなさん深く掘り下げちゃいますよね。より作品の楽しみ方を探せると思います。

Revo:そうあっていただけると嬉しいですし、僕の作品だけでなく、何か創作物に接するときは、そういう気持ちで観て聴いてくれたら嬉しいなって思います。

──「革命の夜に」はRevoさんのルーツも垣間見えるようなアレンジも聴けますが、サウンド面ではどんなところを目指しましたか。

Revo:自分が好きということもありますし、バランスとしてこういう曲調が1曲は欲しいなと思っていて。今までLinked HorizonがOP曲をやっていたときの楽曲をみなさんが聴いてくださって好きになってくれたという面もあるので。ただ、今回与えられたED曲という仕事の中では、必ずしもそういう曲調になるわけでもないので。今回のED曲の世界観も楽しんでほしいんですけど、みなさん正直ちょっと寂しくはなってると思うんですよね。「ああいう系統の曲も聴きたかったな」って思ったときに、このシングルを聴いてもらえれば「あ、やっぱりいいな!この路線はこの路線でいいぞ。進撃だ」って思ってもらえるんじゃないかなって(笑)。

──サービス精神が旺盛ですよね。そこはすごくリスナーのことを想像して作っていらっしゃるんだなって。

Revo:そうですね。曲順とかを考える時点でそうですからね。聴いてくれる人がいて、どういう順番に曲を聴いていてどういう気持ちになるのかっていうのは、コース料理を組み立てるのと同じというか、食べる人、聴く人がいて初めて成立する世界だと思っているので。まあ、サービス精神って言われると、「本当にそうなのかな」って自分でも謎が出てくるんですけど。より楽しんでもらいたいって考えたときに、自ずとそう思ってますね。

──3曲目の「暁の鎮魂歌」はどんなイメージで書いた曲なのか改めて教えてください。

Revo:アニメを見終わった後のEDとしての余韻を含めて、どう作品と寄り添えるか、今回何を歌うべきかを考えて出てきたのが「鎮魂歌(レクイエム)」だったんです。OPはOPでやるべきことがあるだろうから、それはお任せして。こちらとしてはSeason 3を通して1話ごとに誰か死んでいくだろうし、それは名前のわかるキャラクターもいればわからないキャラクターもいて、兵団の人もいれば一般の人もいるだろうし。それに現在だけじゃなくて、Season 1、2と遡ればいろんな人が死んでいるし、これから先死んでいく人もどんどん出てくるという中で、「紅蓮の弓矢」から始まって、今EDとして何を届けるべきかというと、僕は「鎮魂歌」かなと思ったんですよね。それが一番寄り添える形かなと。

──それで、過去作からのフレーズや言葉も織り込まれているんですね。

Revo:そうですね。今突然死んだ人たちではなくて、続いてきた『進撃の巨人』の世界で色々関わって生きてきた中で亡くなった人たちでもあるので。素敵な解釈だと思います。

──夕方、夜、朝と曲が並んでいると、3曲目が終わってまた1曲目に繋がっているようにも感じられます。そうしたループ感は意識しましたか?

Revo:時間帯みたいなものがある時点で、それは自ずとループ構造になりますよね。朝が来たら夜が来て、また新しい朝がくる。それはイコール、命と一緒ですよね。

──タイトルの「楽園への進撃」という言葉は、アンビバレントな言葉の組み合わせにも感じられます。どんな思いでつけられたのでしょうか。

Revo:タイトルをつけるのってなかなか難しかったんですけど、最終的にはこれしかないなっていうところに至りました。一瞬、引っかかりもあると思うんですよ。このSeason 3を全部観ても、「そこまで楽園に進撃してないだろう」って感じると思うし。でも、最後はどうなるのか僕もわからないですけど、恐らく今後も『進撃の巨人』を観ていただければ、Season 3あたりが「楽園」や「理想」というものを強く意識し始めるターニングポイントになっていることを理解してもらえると思います。

──それは連載もリアルタイムで読んできたRevoさんならではの、この先のストーリーも見越したものということですか。

Revo:なんとなくそういう意識はありますね。ただ「楽園」というのがどこにあるのか何を指しているのか、この段階で完全に言い切るのは非常に難しいので。今も難しいと思うんですけど、今「こうなんじゃないかな」と思ったことが正解とは限らないです。諫山さん(※原作者の諫山創)が最後にちゃぶ台を全部ひっくり返してくる可能性もあるし(笑)。

──ははははは(笑)。

Revo:それも含めて。「楽園」ってなんだろう、世界は、エレンはどこに向かおうとしているんだろう、どういう解決が一番理想なんだろう、とか思いながら。僕たちは『進撃の巨人』を見続けていかなければいけないし、未来を見続けていかないといけないので、そのことを意識しつつ、どうなっていくのか一緒に見届けましょう。

──その立ち位置は、『進撃の巨人』ファンと同じということですね。

Revo:全く同じです。この先『進撃の巨人』はどうなっていくのかなって、一緒に一喜一憂しながら楽しんでいくプロジェクトといいますか。だから、今回の作品からこの先の『進撃の巨人』を読み解こうとしても無駄です。なぜなら僕も知らないので(笑)。それを前提に一緒に考えていこうというものになっています。

──でも、アニメ作品と連載とのタイムラグってあるじゃないですか?そこの間にあるストーリーが曲を作る上で影響を及ぼしたりしないんですか?

Revo:しますよ。というか、まさに漫画の本誌(連載誌『別冊少年マガジン』)が出るタイミングとの戦いなんですよ。それが月1でしか出ないんですけど、その間も制作は進めないといけないんですよね。その中で、「この流れにしたらいいんじゃないか」と思って作ったものが、次の『別冊少年マガジン』が出たときに「あれっ!? そうなっちゃったのか」って思うことはあるんですよ。それで軌道修正はしつつ作ってるんですけど、こちらにも制作の締切があるので。そこから先はどうなるかは誰にもわからないですし、仮に解釈的に不思議なことが生まれたとしたら、それはそのライブ感を楽しんでいただけたらと(笑)。

とにかく、僕は先のことを知らないので。普通にビックリしちゃうんですよ。今回の歌詞だと、“石を投げる者と 投げられる者には”(「暁の鎮魂歌」)というのが大事なエピソードだと思ったので、そこを取り上げて曲を作ったんですけど、新しい『別冊少年マガジン』を見たら、わりとそれに関連するシーンが出てきたんですよね。「うわー!」って思いました(笑)。なにかが共鳴しているのでしょうね。作った時点ではドンピシャなことを言ったつもりでも、それが後に覆されたりすることもあります。しかし、それすらもまた再度覆えされたり(笑)。でもそれも含めて楽しめると思います。逆に「ああ~諫山さんはそう来ちゃったのか、そりゃしょうがないよな、Revo」っていうのも一緒に楽しんでいただけるんじゃないかなって(笑)。
■ある意味現実を越えている状態ですね。(「劇場版 Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演」上映について)

──2018年1月13日、14日に横浜アリーナで行われた<Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演>のBlu-rayが10月26日(金)に発売されますね。ライヴを振り返ってみてどんな思いを持っていらっしゃいますか。

Revo:振り返るとあっという間だったですけど、自分でも着地点みたいなものが完全には見えずに始めたツアーだったんですよね。そこまでの公演数は今までやったことがなかったので、どういう風になるのか、自分でも楽しみにしつつ怖い気持ちもありつつで。ただ1つ決めていたことは、各地にゲストミュージシャンという形でいろんなオーケストラ楽器の人たちを呼ぼうと。本来は全員揃って1つの音楽なんですけど、今はコンピューターのテクノロジーが進んでいるので、その場にいない人の音をコンピューターから出してそこに同期させて演奏するという技術も確立していて、その場にいなくても楽曲の形にはできるんです。ただ、全員揃ってこそのライブ音楽だし、その楽器がそこにいてこそリアリティのある音空間だと思うので、そのことはしっかりと届けたいなと思っていました。

それも『進撃の巨人』だととてもいいなと思うのは、調査兵団もみんなで戦ってるじゃないですか?僕たちも人数がたくさんいて、兵団の制服のように同じ服を着てLinked Horizonのエンブレムを付けて、それを背負ってみんなで心臓を捧げたりする、その熱量をちゃんと出したかったというのはありますね。だから、着地点としての「凱旋公演」には、全員揃えたいなと思っていました。
▲『劇場版 Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演』ポスター

──発売を記念して、全国各地の劇場で上映されますが、初の試みとなる「ドルビーアトモス上映」もありますね。これはどんなものなんでしょうか。

Revo:単純に言うと「天井からも音が出る」というものなんですけど、音響でいうと天井から音が出るのって、最後に位置しているというか。音楽を聴くのって、モノラルから始まってステレオになってスピーカーが2つになって、左右でどういう音を出すかを変えることによって、疑似的な立体感を作り出していったわけなんです。

例えば「ダブリング」っていう技術があって、ギタリストが2人いて、同じものを同時に左右で弾けば当然立体感があるように聴こえるんですけど、ギタリストが1人しかいないときに、Lチャンネルからギターの音が出ていたとして、若干遅れたタイミングで反対のRチャンネルからも同じ音を出すと、2人のギタリストがいるのと近く聴こえたりするんです。このタイミングを遅らせる技術を「ディレイ」と呼ぶのですが、逆に、ディレイタイムをゼロにすると、音が真ん中にあるように聴こえるんですね。それが、「ファントムセンター」という考え方なんですけど。ボーカルなどはそういう技術を使って擬似的に真ん中に位置しているように錯覚させるのが「2ch」音響の基本となっています。

それが「5.1ch」になると、音が後ろにも配置できるのでよりいろんな立体感を演出でき、加えて正面の真ん中にもスピーカーが増えます。このセンタースピーカーっていうのは、ファントムセンターとは違って、完全に音が真ん中に置けるんです。その位置にリアルにスピーカーがありますから。そうすると、ボーカルは自然に真ん中から音が出ていることになる。これって、L-Rを使って音を擬似的に真ん中で出すのと全然違うんですよ。まあ、こういうことをあんまり言いすぎると難しくなっちゃいますけど(笑)。

──いやいや(笑)、興味深いです。それと天井から音が出る「ドルビーアトモス」という技術も、全然違うわけですか。

Revo:音楽鑑賞の歴史上スピーカーが1つから2つになって、5つになったとき後ろにも音がいって、さらにサイドにもスピーカーを追加したのが、「7.1ch」というものなんですけど、そうすると平面上では360度で音が回ることになるんです。

──それはサラウンドということですよね。

Revo:そうです、いわゆるサラウンドですね。でも、サラウンドには上下、高さという概念がないんです。だから、2次元上での円でしかなくて、それを球体にする技術が「ドルビーアトモス」と呼ばれている、天井から音が出る技術なんです。サラウンド空間って、音が前から後ろに移動するとして、例えば壁際の席にいる人からすると、サイドにある近いスピーカーを経由してきた音がビビッドに前後を移動している感じを聴けるんですけど。ド真ん中の席にいる人の場合は、周りに囲まれているスピーカー全部からの距離感でタイミングがちょっとずつズレていることで立体を認識して、音がド真ん中にあるように感じているだけで、本当はそこには音がないんです。さきほど挙げたファントムセンターのサラウンド版的な届き方をしているだけで。

それが、天井にスピーカーがあると、ド真ん中の人の頭上からもその音が来るんです。「ドルビーアトモス上映」では、ものすごい数のスピーカーが天井に吊るしてあることによって、お客さんがどこにいてもリアルにちゃんと自分のところに音がやってくる感覚が掴めるはずです。だから非常に立体感があると思います。

──ということは、横浜アリーナでのライヴ以上の音響体験ができるということですか?

Revo:そうです、ある意味現実を越えている状態ですね。横浜アリーナのときは天井にスピーカーがついていないですから。ただ、天井に反射している音は聴いているわけですけど。

──実際にライヴを会場で観た人でも、別の楽しみ方ができそうですね。

Revo:音も映像も同じじゃないので、新たな発見もあると思いますし、新鮮な楽しみ方ができると思います。まずは劇場で聴いていただいて、さらにご家庭でも最大限臨場感が伝わるように再調整したものがパッケージとして発売されますので、楽しんでもらいたいです。来年にかけての動きはまだお話できませんが、Linked HorizonだけではなくSound Horizonの方も頑張っていきたいなという気持ちがあります。長いスパンで楽しみにしていてください。

取材・文◎岡本貴之


▲「楽園への進撃」初回盤

Linked Horizon 3rd Single「楽園への進撃」

2018年9月19日(水)発売
■初回盤(CD+Blu-ray)
PCCA.04724 / ¥1,759+税
【収録内容】
<CD>
1. 黄昏の楽園
2. 革命の夜に
3. 暁の鎮魂歌 (TVアニメ「進撃の巨人」Season 3エンディングテーマ)

<Blu-ray>
暁の鎮魂歌 Music Video1

■通常盤(CD only)
PCCA. 04725 / ¥1,204+税
※初回出荷限定アニメ描き下ろしジャケット
【収録内容】
<CD>
1. 黄昏の楽園
2. 革命の夜に
3. 暁の鎮魂歌 (TVアニメ「進撃の巨人」Season 3エンディングテーマ)

■ショップ別オリジナル特典
下記店舗にてシングル『楽園への進撃』(初回盤/通常盤)をご予約・ご購入いただいた方に先着で「アニメ描き下ろしチェンジングジャケット」もしくは「『楽園への進撃』デカジャケット」を差し上げます。お早めにご予約ください。
アニメイト: 「アニメ描き下ろしチェンジングジャケット」 リヴァイ ver.
TOWER RECORDS/HMV: 「アニメ描き下ろしチェンジングジャケット」 エレン ver.
TSUTAYA RECORDS: 「アニメ描き下ろしチェンジングジャケット」 クリスタ ver.
その他一般店: 「アニメ描き下ろしチェンジングジャケット」 ハンジ ver.
Amazon: 『楽園への進撃』デカジャケット

※初回盤をご購入の方には初回盤絵柄のデカジャケット、通常盤をご購入の方には通常盤絵柄のデカジャケットを差し上げます。
※デカジャケットはジャケット写真の絵柄をそのまま24cm×24cm大の厚紙に印刷したものになります。
※※ショップ別オリジナル特典の各絵柄は後日発表いたします。

【ご注意】
◆特典は数量限定となるため、発売前であってもご予約状況によっては、先に特典プレゼントが終了する場合もございます。
◆特典を確実に入手いただけるよう、お早めにお近くのCDショップ、WEBショップで特典についてご確認をいただいた上でのご予約をお勧め致します。
※特典につきましては、一部取り扱いの無いCDショップもございますので、詳細を店舗までお問い合わせください。また、ネット販売につきましても同様に、一部取り扱いの無い場合もございますので、各WEBショップの告知をご確認ください。

■配信情報
TVアニメ「進撃の巨人」Season 3
エンディングテーマ『暁の鎮魂歌 [TV Size]』配信中
• レコチョク:http://recochoku.jp/song/S1007207732/
• iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/id1415574302?l=ja&ls=1&app=itunes
• AppleMusic:https://itunes.apple.com/jp/album/id1415574302?l=ja&ls=
• Spotify:http://open.spotify.com/album/1jm9I9S9cPcGcXsa6ULSTs
• mora:http://mora.jp/package/43000004/PCSP-02480/
その他各配信サイトにて配信中


「Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演」Blu-ray

2018年10月26日(金)発売
<初回盤>
品番:PCXP.50585
価格:15,000円(税別)
Disc 1:Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演【第一壁】
Disc 2:Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演【第二壁】
初回盤のご予約はこちら
http://ps.ponycanyon.co.jp/cart/add?n=PCXP.50585

<通常盤>
品番:PCXP.50586
価格:7,000円(税別)
Disc 1:Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演【第一壁】
通常盤のご予約はこちら
http://ps.ponycanyon.co.jp/cart/add?n=PCXP.50586
■「劇場版 Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演」

詳細はこちら
http://shingeki.linked-horizon.com/special/index.html#movie01

◆公開日
【ドルビーアトモス上映】2018年9月28日(金) ~10月4日(木)
【通常上映】2018年10月5日(金) ~全国で順次公開

◆チケット情報
当日鑑賞料金:【ドルビーアトモス上映】3,500円(税込)
【通常上映】2,500円(税込)

※上映時間、チケット購入方法は劇場により異なります。公開日間近になりましたら各劇場ウェブサイトにてご確認下さい。
※前売チケットの販売はございませんのでご了承ください。

※9月28日(金)大阪/29日(土)名古屋/30日(日)東京にてRevoによる舞台挨拶を予定しております。詳細はLHオフィシャルウェブサイト(http://shingeki.linked-horizon.com/special/index.html#movie01)よりご覧ください。

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