【インタビュー】CREAM、5thアルバム
の到達点「時代の音をどんどん乗りこ
なす」

ヒップホップを軸に世界のトレンドをキャッチしたサウンドを織り交ぜて、“NEW J-POP”を標榜する2人組CREAM。
自分たちの出したい音をシンプルに貫いたという最新作『Sounds Good』では、EDMの要素が影を潜め、ミニマルかつキャッチーなダンストラックが並んだ自信作に仕上がっている。ここでは新作の制作や音楽面での変化などを2人に語ってもらった。
■歌の部分に関しては恋バナから始まります

――新作ではEDM的なサウンドが減りましたね?

Minami:CREAMをEDMアーティストだと思ってる人もいるけど、全然そんなことはなくて。ただ、その時のトレンドを取り入れただけです。

Staxx T:時代もあるんじゃないですかね。自分がその時に聴いてるものに影響を受けているから。僕はもともとヒップホップとR&Bしか聴かなかったけど、ちょうどEDMが世界的に流行ったこともあって、僕もEDMの良さに気づくきっかけにもなりました。だから作る音楽にも表われていたんじゃないかなと思います。それにラッパーとして言うと、どんなトラックにでも(ラップを)ハメれるってことの方がすごいと思う。だから時代の音をどんどん乗りこなしていくラッパーって僕はすごいと思うし、言ってみればLil Wayneだって、ロックでもEDMでももう何でもやるわけで。なので、このアルバムは自分たちが普段聴いているものに近い音が入っている感覚ですね。

――最近はどんなアーティストの音楽を聴いていますか?

Minami:私は相変わらずミーハーですよ(笑)。洋楽がメインで、ニッキー・ミナージュ、カーディ・B、リアーナ、アリアナ・グランデ、ブルーノ・マーズとか。あと、最近は日本もヒップホップのシーンが盛り上がっているので、AwichANARCHYさんも好きだし。今まで触れる機会がそこまでなかったんですけど、最近はライブで一緒にやったりしていいなって思うことも多くなってきました。

Staxx T:ミーハーだね(笑)。でも、聴くよね。
▲Minami

Minami:聴く聴く!(笑)。ミーハーっていうか、人気があるものには理由があるからね。逆にStaxx Tはミーハーなものから、コアなもの、でてきたばっかりで誰も知らないようなアーティストとかもチェックしてて、この人いいよねって言ってるんです。それもあって、2人が重なった時にうまくバランス取れてるのかなと個人的には思ってます。

――曲はどんな風に作っているのですか?

Staxx T:ゼロから何かを作るってよりも、何かしらインスパイアされた状態で作ることが多いんですよ。歌詞の内容とかは全然違ったりするけど、ある曲の要素と別の曲の要素が混ざった時によくなりそうだ、みたいな。そういうふんわりとしたイメージが最初にあって、その輪郭をよりはっきりさせていく感じで作っていきます。なので、もとになっている曲はいくつかあったりしますね。

Minami:歌の部分に関しては恋バナから始まります(笑)。基本、恋バナから始まって大体2人で数時間喋ったりして。そこから自然とこういう曲、面白いんじゃないのって。恋愛の曲って言っても、いろんな角度があると思うし、そもそも音楽の8割が恋愛の曲じゃないですか? だから恋バナをしながらStaxx Tがもとを作って、その上にメロディを書いて調整して、2人で共作していくみたいな。

Staxx T:僕の自宅のスタジオでMinamiと音楽かけながら恋バナしてます。僕は昼からお酒飲みながら(笑)リラックスした感じで、グダグダ話しながら盛り上がってきた時に、“そういう曲でいこう!”とか“タイトル決めよう!”とか。

――タイトルが先行で決まることって多いですか?

Minami:うん、タイトルはサビにも入ってくるから一番大事ですね。あとは文字になった時に、イケてるかどうか。

Staxx T:文字映え、大事だよね。そのタイトルを見た時に曲を想像させるような、そうでなくともどんな曲なんだろうって思わせられるっていうか。そういう“パッ!”て何かをイメージさせるようなタイトルを常に考えていますね。

Minami:4枚目のアルバムの『BLACK』から、この恋バナから作る方法でやってるんですけど、それよりも前はお互いが自分の家で作業してました。トラックがメールで送られてきて、空いてる時間に歌をはめていってっていう、ちょっと流れ作業っぽい感じでした。今はメロディを書く時も、もうちょっとこういう感じがいいんじゃないかって、言い合ったりして、前よりも2人で作ってる感じになったし、そのほうがサクサク進む気もしていて。
Staxx T:そう。分担してやるほうが効率がいいように思えるけど、一緒の空間で意見を言い合って作るほうが、結果的に早いです。それに遠隔だとけっこう言いづらかったりもして。“ここちょっと微妙なんだよな”とか、文字にすると伝わりづらいし。だから前よりも手っ取り早くいいものを作れるようにはなった気がします。

――では、恋バナをしながらできたのが今回のアルバムということでしょうか?

Staxx T:そうですね。恋バナしながらメロディを書いたら、まず英語で歌詞を書き、そこに日本語をつけて、最後にラップをつけるって感じです。最初にメロディを作る前のトラックって、仮モノの感覚なんですよね。メロディが書きやすいようなオケを作っておいて、実際にメロディをつけたあとに、以前の跡形がなくなるくらいに作り変えることもあります。やっぱり良いメロディって、どんなトラックに乗せてもいいものだと思うんです。リミックスがめちゃ流行る歌とかあるじゃないですか? EDMリミックスとかテクノリミックスとかが色々できるのは、メロディがいいから何に乗せても通用するってこと。だからいいメロができた時って、トラックが何パターンもできるんです。その後、アルバムを見据えて楽曲を並べたときに、単純に曲としてもいいし、他のと曲調が被りすぎないようにバランスを見てどのパターンにするかを決めます。作品で聴けるビートは僕が全部作っているから、コードの展開が一緒だと思ったら、どっちかを変えたりって……後から調整できたりもする。そういう意味ではバランスも取りやすくなりましたね。
■突発的に歌ったものが、良いのか微妙なのかってだけ

――いいメロディを生み出すための仕掛けみたいなものはありますか?

Staxx T:踊りながら書くこと(笑)! 盛り上がってビートを聴きながら、めっちゃ踊ったりとかして。体がノレるグルーヴ感ってやっぱ大事ですよね。

Minami:あと私がメロディを書いていて詰まった時は、徐々に変えてってくれてる。“詰まってるんだったら、これじゃないんじゃない?”って。柔軟に変えていく。

Staxx T:音楽って頭を悩ませるものじゃないと思うんですよね。突発的に歌ったものが、良いのか微妙なのかってだけ。だから頭で考えても意味はないんです。だから、Minamiが2、3ライン書いて“こんな感じ!”ってなると、“1ライン目と2ライン目はめっちゃよかったけど、3ライン目は微妙”ってすぐに言う。それで、“こうしたらどう?” “良いね!”って、次の流れもすぐできたりもします。良い悪いって初めて聴いた時にすぐ分かるから、どんどんクイックにジャッジしていくようになりました。メールでメロディをもらっていた時のような、1番の最初はいいけど後半が微妙なのをどう伝えたらいいかな…っていう悩みが今は無いですね(笑)。これまではMinamiが傷ついたら嫌だから、2日くらい寝かせてから伝えたりしてたんです(笑)。

Minami:そんなこと考えてたの? 私は全然傷つかないし、寝かせる間がもったいないよね(笑)。

Staxx T:逆に自分がデモ送って、反応がなかったら微妙だったのかなってならない?

Minami:あー、わかるけど、私たちは2人とも柔軟だから別に傷つかないんじゃない? プライドはあるけどエゴは無いから。でも今回のアルバムでうまい具合にバランスが整ってきた気がする。

――サビの作り方も大げさじゃなくて、シンプルな展開でいいメロディがあって。とてもいい作り方だと思います。

Staxx T:最初はバースと思って書いていたけど意外とサビっぽいね、みたいなのもあるんですよね。Aメロ、Bメロ、Cメロがあったとして、歌ってみるとAがCのパートになったほうがいいとか、B→C→Aって並べ替えたほうが今時のヒップホップっぽいんじゃないかって、フレキシブルに作ったりしてましたね。メロディを切ったり、良い部分だけを繰り返したりと、今回はいい意味でラフな作り方をしていたかもしれないです。

――サウンド的にもミニマルで、そのなかで世界観が統一されているように感じられますね。

Staxx T:そうですね。決めた枠のなかでどれだけの幅を見せられるかっていうか。最近のアメリカのヒップホップのアルバムを聞いたら、ほとんど全部同じようなトラックじゃんって思うんです(笑)。そういう作品でも、スマッシュヒットするものが3、4曲あればどうにかなるみたいな風潮。でも、僕がアルバムを作る時は、全部の曲が粒ぞろいでいいクオリティに仕上がっていて欲しいし、どれかがヘコむのが嫌。それでいてCREAMのサウンド感をもっと強めて、狭められた中でいろんなバリエーションの音でお腹がいっぱいになるようなフィーリングを感じてほしいなと。もちろんサビだけ四つ打ちになるような今までのCREAMっぽさもあるけど、アコースティック・ギターだったり、ガチャガチャしてない四つ打ちの音だったり、別の要素を加えたことでリスナーが飽きないような工夫をしました。

―― “狭められた中でのバリエーション”という方向性を見いだした曲といったら、アルバムのなかでどれになりますか?

Staxx T:「PLAYBOY」がそれで、アルバムのなかでこの曲が一番最初に世の中に出ています。前回のアルバム『BLACK』に収録した「Girl Like Me」をきっかけに、CREAMのことを知ってくれた人がけっこう多かったんです。そういう子たちがライブに来ると『CHANGE』ってアルバムの「Milk & Honey」って曲でけっこう盛り上ってくれて。それで「Girl Like Me」~「Milk & Honey」って流れを考えると、最近のウエスト・コーストで流行っている、音数が少なめなDJ MustardやNic Nac的な路線の音が好きなことが分かったんです。これがなぜかっていうのを遡って考えると、僕たちはOmarionの「Post To Be」をカバーしていて、それがバズったときにCREAMを知ってくれた人も多かった。それで「Girl Like Me」がどんな曲かって言うと、真面目というかちゃんとした恋愛の曲なんです。押しては引いての、彼氏・彼女にならない微妙な関係を歌った曲なんだけど、それをもっとチャラくやったのが「PLAYBOY」。ちょっとトロピカルな木琴のようなサウンドと、ダンスホール・レゲエっぽい要素を入れて。そうやって狭めた中でもバリエーションを出そうという意識はこのときからありましたね。
――「Selfish」はアコースティック・ギターの弾き語りの曲で、英詞のみでしたね。

Minami:そうです、あれは英語のままで残しました。SZAの「The Weekend」って曲がインスピレーションのもとになっていますが、この曲はふたりの女性と付き合っている男性がいて、SZAは“週末の女”って歌なんです。じゃあ、週末じゃない“Weekdayの女性”は、どういう気持ちなんだろうって気持ちで書いた曲が、そのアコースティック・ギターの「Selfish」って曲ですね。2000年代にニーヨの「So Sick」だったり、Eamonの「Fuck It」に対してFrankeeが「F U Right Back」ってアンサーソングを勝手に書いたりしてたんですが、そういうノリで曲を作るのも面白いかなって。

――日本詞と英詞の使い分けは、どのようにしていますか?

Staxx T:この曲はアコギの弾き語りっぽいし、他の曲でブリッジまである曲をけっこう作っていたから、2分くらいの短い曲も作ってみようっていうイメージもあって。あと、Minamiの第一言語が英語だから、英語で歌ってる彼女も聴いてほしいと思ったから。それにこの曲を作っていた時から俺がラップを入れると世界観を壊すんじゃないかと思っていたので、そのままいこうってなりました。こういう曲も、もともと僕らが持っているものだし、作品の幅を広げてくれる気がしたんです。
――逆に今回難産だった曲は?

Minami :「Kissing pt. 2」!

Staxx T:「Kissing pt. 2」を作ることになった時、初めてのパート2ってことでプレッシャーがあって、すごい悩んだんですよ。ビートのパターンを4つくらい作って、Minamiに“パターン2のピアノ弾いてる時に泣いちゃったから絶対これだと思うんだよね”って言うと、“ちょっとトゥー・マッチ”かな!って言われたな(笑)。

Minami:感動系に持って行き過ぎちゃって。でも、本当に泣いたんだろうなって伝わるぐらい感動系だった(笑)。

Staxx T:でも、確かにあれは、ちょっとやり過ぎだったね。そうやって、色々自分で作れちゃうからこそ広げ過ぎちゃうから、ジャッジが難しかったですね。基本的に2人ともにエモーショナル過ぎるのは好きじゃないんですよ。ブリッジのサビが終わった後で転調するとか絶対にありえないし。

Minami:そう! 転調したら笑っちゃう。“出たー!”って(笑)。

Staxx T:やっぱり僕たちはループ・ミュージックが好きなんで、基本的にヒップホップなんです。2000年代初期のヒップホップが自分達にとってのルーツ。だから、ベタなバラードというよりも、ループの中でバラードっぽいニュアンスのものはあったりもするくらいですね。

――Minamiさんは気に入ってるメロディはありますか?

Minami:「PLAYBOY」ですね。私はアルバムを作っている途中から“この曲がシングルじゃない?”ってずっと言ってて。結果的にいい曲が出来たから良かったんですけど“まだだね”ってずっと言われてて。でも、数字を見ると「PLAYBOY」が1番回ってるらしいんだけどね(笑)。

――今回のアルバムを作り終えての感想を教えてください。

Staxx T:すごく気に入っていて、どの曲も好きです。今は聴く人がどう受け取ってくれるのかなって反応を楽しみにしています。ちょうど今、13週連続で毎週アルバムのなかから1曲ずつ発表しているから、なんとなくレスポンスは見てるんですけどね。アルバムが出た時に、どの曲がみんな一番好きなんだろうなって、ワクワク待ってる感じです。まず耳で楽しんでもらって、あと、ライブで聴くのってまたちょっと違ったりするので、生で観てもらうのも楽しみです。もうすでにライブでやっている曲もありますが、今は作った曲をライブでやりたい欲求が強くなってます。今後はワンマンライブも計画しているので楽しみですね。

取材・文◎伊藤大輔

CREAM

2018年9月19日リリース

■CD+数量限定段ボールスピーカー付
RZCD-86614 ¥5,400(税込)

■CD+DVD
RZCD-86554/B ¥4,104(税込)

■CD
RZCD-86555 ¥3,240(税込)

収録内容
[CD]
1. Good Good
2. PLAYBOY
3. Kissing Pt.2
4. 7 Days A Week
5. first love
6. Check Plz
7. Mr. & Ms. Lonely
8. Selfish
9. Luv Song
10. B with U
11. 4:55
12. Complicated
13. Kissing Pt.2 feat. SWAY
[DVD]
Kissing Pt.2 MUSIC VIDEOほか

関連リンク

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着