【千歌繚乱インタビュー】ヘルタース
ケルター、V系歌謡曲で勝負

9月26日に<千歌繚乱vol.18>に出演するヘルタースケルターは、2018年7月13日に始動したばかりのバンド。

歌謡曲調の楽曲を武器に、今の若手ヴィジュアル系シーンで異彩を放っている。今回BARKSではそんなヘルタースケルターをフィーチャー。じっくり対面でインタビューを行ったのは、BARKSが初めてとのこと。いわば一番貴重なインタビューともなった本項で、彼らがバンドに込めた思いを感じ取って欲しい。
※本記事は9月26日に渋谷REXにて開催される<千歌繚乱 vol.18>において、来場者限定で配布される「千歌繚乱 ARTIST BOOK」掲載のインタビューの一部を事前に公開するもの。「千歌繚乱 ARTIST BOOK」ではメンバーへの一問一答アンケートなど、より深い内容が掲載されている。

   ◆   ◆   ◆

■お手軽な“好き”じゃなくてとことん大好きにさせる

――まずバンドの成り立ちから聞いていきたいのですが、みなさんはヘルタースケルターの前にシュレディンガーの猫というバンドをやっていましたよね? 確か始動してすぐに解散の発表があって、何だったのだろうと思っていたんですが…。

朝比奈 悠(Vo):シュレディンガーの猫は、準備期間というか、ヘルタースケルターとして始動するために曲を育てていた期間なんです。

――シュレディンガーの猫の時点で、ヘルタースケルターの構想があったんですね!

朝比奈 悠:そうなんです。確かに指導してすぐ解散で、ちょっと話題にもなりましたし、きちんとした計算の上だったんです。

――私もまんまと気になってしまったわけで。そもそもこのメンバーはどのようにして集まったのですか?

御笠 ねる(G):僕とハルで結構ずっと前からバンドをやろうって話してたんですけど、kazには出会ったもののずっとボーカルとドラムが見つからなくて。解散したバンドのライブ映像を見ていい人を探そうってYouTubeを見てた時に、たまたま悠さんと魅影が前にやっていた叙情四重奏カノンというバンドの映像を見て、「こいつらだ!」って思ったんです。

朝比奈 悠:お互い存在だけは知っているくらいの仲だったんですけど、ある日突然TwitterのDMが来て(笑)。

ハル(G):このメンバーでバンドをやろう、ってなるまでに結局3~4年くらいかかりました。
▲朝比奈 悠(Vo)
――歌謡曲調のバンドをやる、という構想ありきでメンバーを探したんでしょうか。

御笠 ねる:そこまでの構想はなかったけど歌モノバンドにしたかったので、歌が上手いボーカルでちゃんと個性があるメンバー、というのは絶対的な条件でしたね。で、悠さんとやるってなって、「彼の良さを生かすためにはどうするか」って考えた結果、歌謡曲をやることになりました。

――確かに悠さんの声は歌謡曲向きですよね。

朝比奈 悠:もともと歌謡曲が好きだったので。最初に好きになったのはMr.Children、そこからJ-POPを聴いていたんですが、シドに出会ってヴィジュアル系で歌謡曲調の音楽をやることに惹かれたんです。

――シドのマオさんの影響でボーカルに?

朝比奈 悠:いや、初めてステージに立ったのは中学の文化祭だったんですけど、そのときはギターボーカルでELLEGARDENを歌ってましたね。具体的にボーカルになろう思ったのは、高校のとき初めてのメンツでカラオケに行ったとき「歌うまいじゃん!」って言われたのがきっかけですね(笑)。

――ほかのみなさんは見た目だけでいうと、ルーツに歌謡曲を感じないのですが。

kaz(B) :こんな髪色をしてますが(笑)、僕は90年代~0年代前半のJ-POPが好きでした。ヴィジュアル系の入りになったのはJanne Da Arcでしたね。

ハル:僕は6つ上の姉がいた影響で、小学生でヴィジュアル系を聴き始めました。ちょうど2000年代初頭のネオヴィジュアル系全盛のときかな。そこからどっぷり洋楽にハマって、今では70年代~90年代くらいのバンドばかり聴いています。オアシスとか。

――テレキャス使ってることといい、シブいですね!

ハル:ヴィジュアル系でテレキャス使ってるギタリストってあんまり見ないですよね。洋楽を聴いてきたことも、今のギタープレイに活かされているなとは思います。

魅影(Dr):僕はもともと流行りのJ-POPを聴くくらいだったんですけど、友達とカラオケに行った時にthe GazettEのミュージックビデオを見て「何このかっこいい人たち!」って衝撃を受けたんです。そこからヴィジュアル系が好きになりましたね。

御笠 ねる:僕は両親が音楽好きで、家に防音室があるような家庭で育ったんです。だからメタルとEDM以外のジャンルはほとんど聴いてきてて。バンドをやりたいと思ったきっかけは小学生のときにエリック・クラプトンやエアロスミスのライブDVDを見たことでしたね。そのときはサックスやってたんですけど、ギターの方がかっこいいと思ってギターを始めて。
▲御笠 ねる(G)
――素敵な家庭!ヴィジュアル系を好きになったのは?

御笠 ねる:中学上がったくらいのときに『ミュージックステーション』に出てたシドを見てからですね。

――歌謡曲をやるならヴィジュアル系以外のシーンでも良かったはずですが、こうやって聞くとやっぱりみなさんの根底にヴィジュアル系が好きという思いがあるんですね。

朝比奈 悠:ヴィジュアル系が好きっていうのもありますけど、ヴィジュアル系にしかない面白さってあるじゃないですか。普通のバンドだったら楽曲しか勝負するカードがないところが、ヴィジュアル系ならアーティスト写真やアートワーク、衣装やメイクだったり使えるカードが多いのが面白い。ヴィジュアル系以外はやりたくない!ってわけじゃないんですけど、ヴィジュアル系バンドが一番楽しいなって思ってます。

――とはいえ、今の若手ヴィジュアル系シーンって、「歌謡曲がウケる」とは言い難いと思うんですが。

朝比奈 悠:確かに流行ってはないですね。でも、流行りの音楽がやりたいわけじゃないですし。流行りの音楽を作ったって、例えばTwitterで「いいね」を押すくらいの好きさじゃライブにも来てもらえないし、CDなんて買ってもらえない。そんなお手軽な“好き”じゃなくてとことん大好きにさせるには他と差別化しないといけないなってのもあるんで、自分たちがやりたい音楽と全然違う音楽が流行っているというのは有利な状況だと思っています。
――なるほど。

ハル:アレンジに関しては、上質な音楽を追求することを目標としています。あと、ちょっと聞いただけで「うちのバンドだ」ってわかることも大切。変わったメンバーが集まってるから個々のアレンジも個性的だし、それがあわさったら自然とヘルタースケルターらしくなるってのは感じています。

御笠 ねる:シンセがシャンシャン鳴ってなくても、ギターやベースをダウンチューニングしなくても、ヴィジュアル系っぽさは出てるし。絶対弦楽器隊はレギュラーチューニング。意地でも下げない。

朝比奈 悠:ツーバスドコドコしなくても、シャウトしなくても、ね。

――歌詞も特徴的ですよね。

朝比奈 悠:今流行りの音楽って、わざとぼかして歌詞をかいて聴き手が自分の状況に当てはめて感情移入できるように作られてると思うんです。とりあえず“会いたい”とかとりあず“寂しい”とか。じゃなくて僕はある程度詳細を提示してあげて、VRのように“その場所に自分が立ってる”っていう感覚を与えたいんです。

――それは面白い。

朝比奈 悠:そのために歌詞にはストーリーがイメージしやすいよう物、場所、天気、時間帯を入れ込むようにしていて。聴いた人が映画を見たり小説を読むように、自分がストーリーの中に入っていくという感覚になれる歌詞を書いています。
▲kaz(B)
――そういう歌詞にしようと思ったのか、自然とそうなったのか、で言うと?

朝比奈 悠:自分が好きだから、が一番ですかね。もともと映画を観るのも小説を読むのも好きですし、自分にインプットされているものを表現するというか。自分自身が歌詞に具体性のあるバンドが好きだったのもありますし。あと、たくさんのバンドが居る中でどう差別化していくか、ということを考えたとき、“自分の持っている武器の中で何が一番強いか”を考えたんです。ストーリー性があって、小説のような歌詞というのは、自分の強みだと思っています。

――10月31日にリリースされるニューシングル「哀燦々」はどんな曲ですか?

御笠 ねる:大まかな雰囲気は結成記念シングルの「斜陽」を踏襲した感じで、メロディと歌詞は歌謡曲だけどもうちょっとロックっぽくなりました。

ハル:これは前の作品と比べて、自分は“重い”と感じたんです。前の作品は“綺麗”が先にあった。綺麗で切なくて、でもキャッチーみたいな。でも今回はロックっぽくて真っ直ぐなバンドサウンドですね。

kaz:「斜陽」では繊細で哀愁漂う、小ぎれいで小じゃれたアレンジをしていたんですが、今回は普通に聴いているだけでは複雑には聴こえないと思うんですが、普通じゃないものを組み込みました。

魅影:ドラム的には「斜陽」より変なことしてないというか、より聴きやすいようにまとめたというか…。そうですね、曲のイメージは、う~ん。「斜陽」っていうか、歌謡曲?…そんな感じで。

御笠 ねる:口下手か!

――(笑)。歌詞のストーリーは?

朝比奈 悠:テーマは、とある種類の恋愛です。「斜陽」は過去を回想している切ないストーリーだったんですが、今回はテーマも重めですね。僕も曲を聴いてハルと同じように重さを感じていたのかもしれないです。

――これからミュージックビデオも撮影されるとか。

朝比奈 悠:今回はエキストラの人を呼んだり、ドラマ仕立てとまではいかないですけど、象徴的なシーンと演奏シーンで展開していきます。曲自体のストーリーが出来上がってるから、前編ドラマにしちゃうと面白みがないので。

――自分たちの色をよく考えていますよね。

朝比奈 悠:バンドは適当に楽しむよりも、考えてやったほうが面白いですからね。
▲魅影(Dr)
――話は変わりますが9月26日<千歌繚乱vol.18>への意気込みも聞かせてください。

ハル:意気込みというか、僕はこういった対バンイベントでもあまり周りのバンドに興味がないんですよ。それは絶対に自分のバンドが一番だと思ってるから。で、こういってる理由を、ライブを見て感じてもらえたらいいかなと思います。

朝比奈 悠:この日の出演バンドは歌モノを集めたんだなっていう主催者さんの意図は察していましたね。大先輩もいますし、普段から対バンしているバンドもいますが、その中で必ずしも上手くなくてもいいから、一番伝わる歌を歌いたいです。

御笠 ねる:歌モノバンドについているお客さんって耳が肥えてる。だから歌モノが集まったこの日のイベントは、評価の基準が高いはず。でもヘルタースケルターには一回聴いてもらえればきっと心に残る曲があるので、ライブ当日じゃなくても次の日とかに「あぁそういえば昨日見たバンドのあの曲よかったよね、調べてみよう」ってなったら勝ちだと思ってます。

――ちなみにどんなセットリストになりそうですか?

御笠 ねる:いつも対バンするバンドのカラーを見て何の曲をやるか決めるんですが、<千歌繚乱vol.18>の日は結構悩ましいですね。

朝比奈 悠:ダークなバンドだらけのイベントライブで一曲目にバラードをやったり、キラキラバンドだらけのライブでトッパーだったら締めにバラードをやって場の熱気を抑えちゃうとか。そういう意味での、対バンするバンドのカラーを見る、です(笑)。

――当日を楽しみにしています。最後に、今後の目標を教えてください。

魅影:自分は堅実なタイプなんで、着実に一歩一歩進んでいけたらいいなと思っています。具体的なことだったら、一年後に池袋EDGEでワンマンとか。

朝比奈 悠:もうそれ目標って言うか、今後のスケジュールの話に近くない(笑)?

御笠 ねる:僕の目標は、来年は百曲作ること!100曲作って使える曲は10、よくて20くらいだけど。

kaz:あーそれ楽しみ。いちファン目線で、ヘルタースケルターのいろんな曲を聴きたいって思ってる。これからもっともっとたくさんの人に、僕たちの曲やライブの魅力を伝えていきたいですね。
ハル:僕は目標とか決めて頑張るってタイプじゃないんですけど、このメンバーでずっとバンドをやりたいです。何十年も。このメンバーで未来に向かっていけたらすごく楽しいなって思います。

朝比奈 悠:バンドとしての最終的な目標は、音楽の教科書にのるような曲を作ること。とにかく、いい曲を残したいなと。個人的には小説っぽい歌詞を書いているので、もういっそ書籍を作りたいなという野望もあります。…こういうのはどこで誰が見てるかわかんないからガンガン言っていったほうがいいと思うから言っておきます!

御笠 ねる:じゃあ俺も言っとく!ジャニーズに楽曲提供したい!

朝比奈 悠:あーいいね!あと、女性ボーカルの曲ばっかり集めたカバーアルバム出したい!アレンジもメンバーのフルアレンジで。

ハル:めっちゃ楽しいなそれ。

朝比奈 悠:池袋EDGEワンマンとの違いね(笑)。じゃあ魅影は無事池袋EDGEワンマンをソールドできたらさよならってことで(笑)!

魅影:えぇっ!?!?

取材・文◎服部容子(BARKS)

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ヘルタースケルターが出演する<千歌繚乱vol.18>、チケットは現在
にて発売中。
<千歌繚乱vol.18>

日時:2018年9月26日(水)開場17:30 開演18:00
出演:EVERSSICSoanプロジェクトwith芥/ヘルタースケルター/The Benjamin/More
会場:渋谷REX
料金:【先行チケット】3,500円 【一般チケット】3,800円 【当日券】4,000円 ※ドリンク代別途

・チケット受付
【先行抽選受付】
7月13日(金)12:00~8月19日(日)16:00
チケット購入ページURL:[チケットデリ] http://ticket.deli-a.jp/

【一般先着受付】
8月20日(月)12:00~9月25日(火)
[イープラス]
チケット購入ページURL:http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002265279P0030001

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