テスラは泣かない。は何が変わったの
か、何故変わったのか――ツアーファ
イナルに見たその答え

「偶然とか運命とか」Release Tour【10周年とかツアーとか】 2018.9.9  渋谷WWW
テスラは泣かない。”は変わった。何が変わったのか。そして何故変わったのか。ツアーファイナルの渋谷WWWでの公演を振り返りながらその答えを探す。
たくさんのオーディエンスが開演を今か今かと待っている。客席を見渡すとファン層の幅の広さに気付く。男性と女性が半々くらいだろうか。年齢層もバラバラだ。過去に見たテスラは泣かない。のライブとは会場の雰囲気が変わったように感じられ、その空気感が10年バンドを続けてきたことの証に見えた。バンドと一緒に年月を重ねてきたファンもいれば、新たにテスラは泣かない。の音楽に魅了されたファンもいる。バンドを続けなければ作れない客席の景色。なんだか嬉しくなった。
場内が一度暗転しSEが鳴り始めると、どこからともなく手拍子が起こった。客席の熱気も一気に高まる。ステージに現れたメンバーを見て“おやっ”と思った。今までと雰囲気が違う。バンドが纏っている空気が変わった感じがするな、と楽器をチューニングするメンバー一人一人を見て思った。特に変わったのは村上学(Vo/Gt)。バンドの顔ともいえる彼が穏やかな顔をしているのを初めて見た。1曲目「万華鏡のようだ」が始まっても村上の様子は変わらない。むしろ他の3人のメンバーによるどっしりとした演奏を聴いて、ますます力が抜けていったように映った。私にとって、村上学というボーカリストはいつも力が入っている印象だった。それは彼が持っている性格的なものなのか、それとも音楽をなんとしてでも届けたいという力みなのかはわからないが、とにかくそういう男に見えていたのだ。が、今、ステージにいるボーカリストから力みは感じられない。それがそのままテスラは泣かない。の空気感になったように感じられた。
テスラは泣かない。 photo by Atsushi ito
ベースの吉牟田直和は、相変わらず客席の一人一人と会話するようにアイコンタクトをしながら演奏する。鍵盤の飯野桃子は笑顔を見せ、楽しそうに鍵盤を叩く。早くも客席から大合唱が起きた2曲目「Oh my God!」、それを見て初めて村上も笑顔を見せた。続く「cold girl lost fiction」では實吉祐一(Dr)のスティック回しもバッチリ決まる。本人曰く、「スティック回しが決まるときは落ち着いている印」だ。實吉の落ち着きは音にも現れていて、そのリズムに引っ張られるように、4曲目「REAL」ではオーディエンスも気持ちよさそうに体を揺らしている。
ここで最初のMC。今日会場に集まってくれたことへの感謝を述べ、さらに村上が客席に呼びかけてギアを一段階上げたように感じた。そこから「ダーウィン」「変なワルツ」「正論」と畳み掛ける。曲としての推進力がある「ダーウィン」は、バンドとしての音の絡み方がより密接になったことで、塊となって飛んでくるような印象だ。「変なワルツ」ではセッション的な演奏の絡みも見せる余裕がある。短いMCを挟んだ後、演奏されたのは「マグノリア」。村上曰く、10年経ったからできるスローな曲とのことだが、その言葉に嘘はなく、とても安心して身を委ねられる演奏だった。吉牟田のベースのノリがとても気持ちいい。さらに「大人の秘密」、「Lie to myself」と演奏して次のMCへ。
ここで改めて10年支えてきてくれたファンへの感謝を述べ、バンドの歴史の話を始めた。バンドが始まった経緯やこれまでの歩みを、メンバー本人の口から聞けるのは貴重だ。曲の聞こえ方も変わる。続いて演奏された「Arc」も今までとは違った響き方をしたように思われた。この日、1回目のハイライトは12曲目「Imagination Gap Ground」の演奏。なんと村上が自分が弾いていたギターを鍵盤の飯野に渡し、自分はハンドマイクでコールアンドレスポンスを始めたのだ。もちろんその間、飯野はギターを演奏。客席のボルテージも一気に上がった。続く「名もなきアクション」では印象的な鍵盤のリフにのって曲が進行し、それぞれのパートのソロも披露された。しかし、村上は言う。
「主役はフロアにいるみんな!」
その言葉通り、客席の一人一人が一緒に音楽を奏でるように大声で歌っていた。
テスラは泣かない。 photo by Atsushi ito
続くMCでは改めてメンバー紹介。村上が吉牟田を「一番の親友」と紹介する一幕もあり、バンドを始めるきっかけとなった二人の出会いに、改めて感謝しているようだった。ただ、感動的には終わらせないのが村上。今までコーラスをしなかった吉牟田が最近歌い始めたことに触れ、新たなチャレンジでとてもいいのだが、コーラスに関してはとても上手いとは言えない――という事実を暴露。誰よりもそれを分かっている吉牟田本人が、ライブ前に熱心に発声練習をしているということまで明かされ、会場内は笑いに包まれた。
和やかな雰囲気のまま続いて演奏された「アテネ」ではオーディエンスの拳が上がり、シンガロングが起こる。その勢いのまま、「アンダーソン」、「サラバ」とバンドが客席をグイグイ引っ張っていく。村上が述べた「10周年の景色の向こう側へ一緒に行きたい」という言葉がとても胸を打った。終盤に演奏された「old time blues」はこの日2回目のハイライト。10年の重みが乗った曲、昔のテスラは泣かない。にはできなかった曲だろう。過去のライブでは盛り上げるだけ盛り上げて、その勢いのまま終わることが多かったが今は違う。しっかりと届けることもできるようになったテスラは泣かない。は、今が一番色っぽいなと感じた。
テスラは泣かない。 photo by Atsushi ito
歌詞のテーマや、過去の経歴からつきまとうインテリなイメージのせいで、一見すると変化球を投げるバンドかと思われてきたテスラは泣かない。が、とうとう直球で勝負ができるようになった。強い。これから村上が生み出す曲のタネをメンバー全員で育てようとする際にも、緩急という引き出しはもっともっと活きてくるだろう。10年間、最前線で戦い続けてきたバンドだからこそたどり着いた場所なのだということを痛感する。
テスラが、そして村上が変わった理由。それはやはり10年という時間によるものだと思う。乗り越えなければならない壁をいくつも超えてきたこれまでを、10周年の節目に振り返ったとき、やはりメンバーの存在に頼もしさを改めて感じたのではないだろうか。メンバーを信頼し、頼ることで、本当に自分がやるべきことができるようになったのだろう。その空気感はメンバーにも伝わり、そのメンバーが奏でる音で客席にも伝わって、この日の渋谷WWWは終始とても幸せな空気に包まれていた。
アンコールでは、“10th Anniversary Year クライマックスシリーズ”として、彼らの自主企画『High noble MATCH!』が大阪と東京で開催されることが発表された。10周年ということを一番楽しんでいるのは彼らなのだろう。そしてそのエネルギーはきっとこれからの彼らの活躍に繋がっていく。アンコールの最後に演奏された「Like a swallow」で描き出した大空は、あの日会場にいた全ての人が共有したはずだ。そしてテスラは泣かない。は、ここからまた新たな空を見せてくれるのだろう。

取材・文=三浦隆一(空想委員会) 撮影=Atsushi ito
テスラは泣かない。 photo by Atsushi ito

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