ニューロティカの笑って泣けるパンク
ロック、ここにあり! フラカンを迎
えた1994回目のライブ

Way to 2000 2 MAN SHOW #1994 2018.9.5 渋谷TSUTAYA O-WEST
10月20日、Zepp Tokyoでの2000本ライブを目前に控えたニューロティカが、記録達成へ向けてのカウントダウン・ライブ・シリーズ『Way to 2000 2 MAN SHOW』をキックオフした。渋谷TSUTAYA O-WESTを舞台に、およそ3週間で5つのバンドと共演する2マンライブ、そのトップを飾るのはフラワーカンパニーズだ。結成34年と29年、とてつもなく長い時間を日本屈指のライブバンドとして走り続けてきた二組が今宵見せるのは、友好の握手かそれとも仁義なき戦いか。午後7時、あっちゃんことATSUSHIの失笑影アナで全員がずっこけたあと、まずは先攻のフラワーカンパニーズが2マンバトルの幕を切って落とす。
ニューロティカ
フラワーカンパニーズ
消えぞこないでも立っている! 不屈のフラカン魂を象徴する代表曲「消えぞこない」から、鈴木圭介がブルースハープを吹きまくる「マイ・スウィート・ソウル」へ。フラカンのライブをいつから見ているか、もう思い出せないが、ハズレたことは一度もない。骨太なブルースとロックンロールを根っこに据えた、華やかでシンプルで真心こもったバンドサウンドをやらせたら、昔も今もフラカンはトップクラスだ。
フラワーカンパニーズ
フラワーカンパニーズ
「10代20代なら簡単かもしれないけど。50代でZeppをやるのはすごいことなんだよ!」
圭介のセリフが、まるで他人事じゃない。ニューロティカ先輩へのエールを胸に、97年のシングル「最高の夏」から、昨年のアルバム『ROLL ON 48』収録の「ピースフル」「NO YOUNG」へと、熱い演奏が続く。エイトビートのお手本と言いたいストイックドラムのミスター小西、グルーヴとメロディを自在に操る驚異のベーシスト・グレートマエカワ、すべての音に感情が宿る魂のギタリスト竹安堅一、そしてパワフルなボーカルと小動物っぽいお茶目なアクションから目が離せない鈴木圭介。大人だって、子供だったんだぜ。ずっと変わらない大切なものを思い出させる「元少年の歌」は、すべての若さなき野郎どもへの愛を込めたアンセムだ。
フラワーカンパニーズ
フラワーカンパニーズ
フラワーカンパニーズ
「高校2年生の時、ニューロティカのファースト・ソノシートをリアルタイムで買いました。すごく良かった! 小西と一緒にやっていたバンドで、自分たちの曲の振りしてカバーしてました(笑)」
時代が変わっても、圭介にとってニューロティカは大切な原点の一つ。そこからスタートしたバンド人生の歓びと哀しみを綴った大作「ハイエース」は、いつ聴いても胸が熱くなる大名曲だ。何度も何度も、季節を見送った。笑いながら探しながら、くぐり抜けてきた。歌の中を。
フラワーカンパニーズ
フラワーカンパニーズ
「メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし!」
ラストはお馴染みの口上から、なつかしい「くるったバナナ」、そして最新アルバムからの「最後にゃなんとかなるだろう」へと、フロアを巻き込んでの大合唱&大ジャンプ大会。O-WESTの観客に向けて「Zepp! Zepp!」と叫びまくる、圭介の思いやりが笑いながらも胸に沁みる。そこには愛とリスペクトしかない、フラカンの素晴らしいパフォーマンスだった。
フラワーカンパニーズ
ニューロティカ
「今日は1994回、Zepp Tokyoまであと6回!」
いかついハードロッカー顔のJAMES、キュートな大五郎カットとアイシャドーのギャップがいかすNABO、洒落たジャケット姿のKATARUに続き、ステージに飛び込んできたピエロメイクのあっちゃんが叫ぶ。本日の後攻はニューロティカ、1994本目のライブの1曲目は「東京ハレンチ天国」だ。高速2ビートに乗ってあっちゃんがいきなりケツ出しポーズ、「ア・イ・キ・タ」ではKATARUがフィギュアスケートのスピンのごとくひたすら高速回転を続けている。まるで意味不明だがとにかく盛り上がる、これがニューロティカの無礼講パンク・スタイル。タオル回しでぶっ飛ばす「気持ちいっぱいビンビンビン」では、JAMESが最前線に踊り出て鬼かっこいいソロを決めた。フラカンと違いメンバーの出入りの多いニューロティカだが、おかげでサウンドは常にフレッシュ。ニューロティカはいつ聴いても古くて新しい。
ニューロティカ
ニューロティカ
ニューロティカ
ゲストのフラカンに感謝の言葉を述べる短いMCをはさみ、「ガンギメナイト」から再び全力疾走開始。ミラーボールの似合う、歌謡曲めいたせつないメロディもニューロティカの得意技だ。「ロックンロールベイスボール」の、俺が俺であるためにこんな日をずっと待ってた、というフレーズ。いいね。「俺達の世界」の、パンクを超えるグッドメロディ。素晴らしい。「永遠ピエロ」の切ないメロディと、赤裸々な男の生き様。ちょっと泣ける。おもろうて、やがて悲しきピエロかな。ニューロティカの歌は聴けば聴くほど楽しく、そして切ない。
ニューロティカ
ニューロティカ
「34年間やってきて、一つ自慢できるのは、どんなバンドとも対バンできること。そのパイオニアであれば、ほかに何もいらない。これからもバカやって、みなさんと一緒に楽しんでいきましょう」
後半のハイライトは、何と言っても「チョイスで会おうぜ」。フラカン演奏時に圭介が「Zeppで会おうぜ!」と言ったのに便乗し、“チョイス”を“Zepp”に換えて演奏。そして中盤ではフラカンの「この胸の中だけ」を大胆引用し、“少年あっちゃん”と“おじさんあっちゃん”が心の対話を繰り広げるまさかの展開に、フラカンのファンも手を叩いて大喜び。「だんだん似てきただろ!」と、二階から見ている圭介に向かってアピールするあっちゃんが笑える。そして泣ける。パンクバンドの夢と現実を、ユーモアとぺーソスに絡めてファンタジックに表現する、フラカンとニューロティカにはロックバンドとして共通項がある。
ニューロティカ
ニューロティカ
あっちゃんが吉川晃司ばりのシンバル・ハイキックを無理やり成功させ、爆笑と拍手をもらったあと、ライブはいよいよ終盤へ。テンポをグッと上げて「太陽族」から「…to be HARLEM」「嘘になっちまうぜ」と、カラッと明るく激しいパンクチューンを連ねて一気にクライマックスへ……行かないのがニューロティカで、NABO、JAMES、KATARUが揃ってグレートマエカワ仕様のオーバーオールに着替えて再登場。爆笑の中で歌われた「五十の夜・フラカンバージョン」は、イントロとギターソロに「深夜高速」のフレーズを配した、感動のマッシュアップ・チューンだった。ここまでサービス精神に富んだホストバンドが、かつていただろうか。馬鹿馬鹿しくも愛おしい、ニューロティカにしかできないゲストバンドへの、そして観客へのおもてなしに心がじんわり温かくなる。
ニューロティカ
ニューロティカ
「スペシャルゲスト、けいくん!」
ラストはフラカン圭介を呼び込み、彼が高校時代に自分の曲の振りをしていたまさにその曲、「青いお空に」のセッションが聴けた。いかにも80年代のパンクスらしいシリアスなプロテストソングだが、ふと気が付くと、あっちゃんがパンダの着ぐるみを着て歌ってる。まるで意味不明だがとにかく盛り上がる、これがニューロティカの無礼講パンク・スタイル。「パンクサイコー!フラカンサイコー!ニューロティカ、サイコー!」 勝利の雄叫びがO-WESTいっぱいに鳴り響く。そしてステージからの特効……ではなく、ファンが手持ちのクラッカーをステージに向けて発射する、ホームパーティーのようなエンディング。パンダの着ぐるみ姿のあっちゃんの最後のセリフは、「Zeppで会いましょう!」だった。
フラワーカンパニーズ/ニューロティカ
『Way to 2000 2 MAN SHOW』の対バンは、このあと「人間椅子」「グループ魂」「四星球」「氣志團」と続き、10月13日のGAUZE主催『消毒GIG VOL.170』を経て、いよいよ10月20日のZepp Tokyoが待っている。あっちゃんのMCによると、チケットはまだあるらしい。偉大なバンドの歴史が作られる場に今からでも参加できるとは、なんてラッキーなことだろう。みんなで歌おうパンクソング、みんなで騒ごうニューロティカ、俺達いつでもロックバカ。10月20日、Zepp Tokyoで、生涯パンクスを貫く微笑みのピエロがあなたを待っている。

取材・文=宮本英夫 撮影=中島たくみ/のうだちなみ
フラワーカンパニーズ/ニューロティカ

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