SHANKがたっぷり語る、曲が短いワケ
から新アルバムのこと、被災地への想
いまで

SHANKが9月5日、4thミニアルバム『WANDERSOUL』をリリースした。本稿では約1年8ヶ月ぶりとなるこの新作を紐解きながら、楽曲やライブに対するバンドとしてのスタンス、音楽性のルーツ、“SHANKらしさ”について、さらには主催イベント『BLAZE UP NAGASAKI』と同会場で行われる『西日本豪雨復興支援ライヴ がんばろう!西日本 ハウステンボス大作戦。』出演を前にした心境まで、3人がたっぷり語ってくれる。
――今作を聴かせてもらい、すごく良かったです。全7曲入りでトータルタイム16分と、相変わらずの短さですが。
池本雄季:いつもながらですけどね(笑)。
松崎兵太:自分たち的には短いと思って作ってないんですけどね。出来たら短かったぐらいの気持ちで。
庵原将平:3回以上サビをやると飽きちゃうから。自分たちが飽きない範囲でやると、短くなるんですよね。
――もう少し聴きたいと思わせるぐらいで終わるのがちょうどいい?
庵原:そうっすね。それもあるし、純粋にやってて、ライブ中に同じサビを何回も歌うのは疲れるから。もういいでしょ!って思われてるんじゃないかと思って(笑)。
――その考えは結成時から変わらない部分ですか?
庵原:まあ、最初からそういう曲はありましたからね。短い曲が好きなのもあるし、そこに尽きるのかなと。
――聴いてきた音楽がショート・チューンが多かったとか?
庵原:そうじゃない音楽も聴いてますけど、自分がいざやるとなると、じっとしていられないし、同じことをずっとやっていられない。でも短い曲は好きですね。
――例えばどの辺の曲が好きですか?
庵原:短いと言えば、レイザーズ・エッジ。
松崎:短いなあ!(笑)
池本:短かすぎるなあ(笑)。
庵原:BBQ CHICKENSの3秒で終わる曲とかも好きでしたからね。一瞬で終わる曲をやりたいと思う時期もあって、「submarine」(2ndミニ・アルバム『My sweet universe』収録、09年発表)を作った頃かなあ。その頃から短い曲ばかり作るようになりましたね。
松崎:うん、結構早い段階からそうやったな。
――それはショート・チューンが肌に合うから?
庵原:そうですね、自分の感覚に合うから。
松崎:Hi-STANDARDもそんなに曲は長くないしね。STOMPIN' BIRDも曲が短いし……ウチらも全部が短い曲ばかりじゃないけど、基本的に2分半ぐらいですかね。
庵原:それ以上作れないんですよ。
松崎:展開を増やせばできないことはないけど、取って付けたような展開はやらなくなりましたね。
庵原:無理やり伸ばした感が出るときがあるから。
松崎:アルバム単位で言うと、『Loving our small days』(10年発表)は初めて出すフルだったので、ヘンに作り込んでしまって、全然まとまらなくて。今聴いても、なんだこりゃって(笑)。
庵原:間延びしたよね。
松崎:うん、しっくり来なかったんですよね。
庵原:今はいらないものを排除する方向に進んで、構成もシンプルになってる気はしますね。自然に出るものが一番いいのかなって。
SHANK 撮影=風間大洋
――バンド的には自然体で出てくるものを重視しようと?
庵原:曲作りに関してはそうなってますね。
――いや、SHANKはライブもかなり自然体だと思いますが。
庵原:そうですか?
――下ネタを言ったり、あの空気感を含めて、SHANKのライブは肩の力がいい感じで抜けてるなと。
松崎:何も考えてないから(笑)。
庵原:その場で起きたことを適当に喋ってるから、俺らもどこに着地するかわからないんですよ。不時着のまま曲に入ることもあるし。
――ははははは。
庵原:それでいいんですよ。何を言おうと決めてないから
――不時着のままでも、SHANKのライブは成り立つ空気感が形成されてるじゃないですか。そこは凄いと思います。
松崎:成り立ってるんですかね?(笑) 喋りたいというより、チューニングしたい、休みたいと思ってるだけですからね。
庵原:世間話しているだけですからね。自然体と言ってもらえると、有り難いですけど。
――池本さんは?
池本:何も気にしてないですね。
庵原:彼はいつ曲に入るんだろうって、常に探ってると思います。
池本:そろそろだなって、準備するだけですね。会話に入ろうとも思ってないから。
松崎:自分たちでもどこで入るか決めてないんで。
池本:対バンの人から「あの2人の間によく入れるね!」と言われたことはありますね(笑)。
SHANK 撮影=風間大洋
――(笑)。音源に話を戻しますけど、今作も1曲1曲、キャッチーなメロディとわかりやすいリフを入れつつ、シンプルな曲調の中においしいフレーズがちゃんと詰まってます。そこがSHANKの素晴しいところだなと。作品を作る上で何か考えことはありました?
庵原:自分の中でメロディは重視したし……いつもと違うのは、今回大寒波で家から出たくなかったので、パソコンのLogicで曲作りしたんですよ。鍵盤を使うようになって、自分の下から上までのレンジをわかるようになったので、それがいままでの曲作りと違うところですね。鍵盤をパソコンと繋げてやったので、それも面白かったんですよ。いままでの中で一番真剣に制作したかもしれない(笑)。集中できましたね。
――自分の頭の中で鳴ってる音を具現化しやすくなった?
庵原:そうですね。もっと早く使えば良かったなと。ジャムで曲作りするバンドでもないので、家で作った方がスタジオ代も浮くから。
松崎:リフのイメージを渡して、“あっ、こういう曲になるんだ!”と思うものもあったし。「Midsummer's Wave」は将平が丸々作って、そこにイントロを付けたりして、いままでそういう作業をしたことがなかったですからね。スタジオに入らず、僕は僕でパソコンとギターで曲と向き合っていたので、それも楽しかったんですよ。歌とメロディは信頼しているので、オケも純粋に聴いて楽しかったですからね。
――なるほど。
松崎:パソコンで作る分、やりたいことが明確になりましたからね。ひとつのフレーズに対しても、より深く入り込んで弾ける時間も増えました。
庵原:エンジニアさんに「ここは(楽器が)当たってる」と言われてもわからなかったけど、それを画面上で理解できるようになったし。14年バンドを続けて、ようやくわかるようになりました(笑)。
――今、曲作りで大事にしているポイントというと?
庵原:聴いてないものは出てこないし、メロコア・バンドはやればやるほど、やることがなくなってくるじゃないですか。そこをどう突破するかは考えてますね。
――SHANKの場合は、そこをどうやって突破しているんですか?
庵原:聴いた人がどう思うかわからないけど、俺らはやってきたことをなぞることだけはしたくなくて。毎回1曲目だけはどうするかを考えるんですよ。例えば今回はドラムインで、前作『Honesty』はゆったりしたアコギから入ったりして、やってないことを選んでるんですよ。曲もそうですけど、自然に出せる引き出しの中で新しいことをやっていきたいと思ってます。
――自分たちの中で足を踏み入れてない場所に飛び込んで行こうと?
庵原:似たり寄ったりにはなってるかもしれないけど、個人的にはそういう意識を持ってますね。“あれっぽいね”という曲はすぐボツにします。
SHANK 撮影=風間大洋
――今作の中でいままでやってなかった真新しい曲調を挙げると?
庵原:「Wake Up Call」みたいなチルアウトした感じというか、マイナー系のスカはやってきたけど、ライトな感じで裏打ちを入れたゆったりした曲はいままでなかったですからね。
――メロディック系でここまでゆったりした曲をやるバンドはあまりいないですからね。これはサブライムとかその辺のイメージ?
庵原:そうですね(笑)。それこそ(筆者のTシャツを見ながら)ロング・ビーチ・ダブ・オールスターズとか、そっち系の音楽が好きですからね。
――その好みは結成時から変わらないですよね。「Grassroots」は311のアルバム名を思い出しますが、この曲はリフがキャッチーだし、ハードロック風味のヘヴィさも備わっているなと。
松崎:リフに関してはそこまで深く考えてなくて、ひたすらめちゃくちゃ作るんですよ。
庵原:その中から耳に残るリフを選ぶんです。
松崎:全部出して、全部ボツになることもありますからね。でも何もない状態から出てきたリフの方が引っ掛かるんですよね。最初にポンポン出てくるものは、どこかで耳にしたフレーズが多いと思うんですよ。それを全部出し切った後に、自分らしいリフが出てくることもあるから。まあ、それも平気でボツになることもあるんですけどね。3ピースでギターも1本だから、和音を混ぜてる方がインパクトに残りやすいと思うので、なるべく3ピースでできる迫力を最大限に出したいと思ってます。だから、アルバム通して、同じようなリフやフレーズを作らないように心がけてますね。……「Grassroots」ってハードロックですかね?
庵原:最初はブリンク-182のイメージだったんですけど(笑)。でもそれは最初だけでしたね。
松崎:ブリンクも3人で最大音量を出しているから、それが3ピースのかっこ良さだと思うんですよ。ほかにも3ピースのバンドを改めて聴き直しましたね。バッキングが入ってないリフのフレーズを聴いたり、イントロだけを聴いたりして……改めてブリンク、サブライム、Hi-STANDARDとかを聴きまくりました。
庵原:Hi-STANDARDも凄いですよね。コード感だけであれだけテンションが上がるという。何だ、この人たち!って。
松崎:グリーン・デイも改めて聴くと衝撃的でした、「AMERICAN IDIOT」はすげえなと。パワーコードで普通に弾いてるんだけど、リフとして成り立っているし。リズム感や音符の入れ方でリフは成り立っているんだなと。
――いろいろと音を研究しながら聴いてるんですね?
松崎:誰かに似てると言われるのが嫌だから。研究熱心というか、そういうことをたくさん言われてきたから、それと闘ってる感じですね。
――誰に似ていると言われてきました?
松崎:dustboxと対バンしたときにlocofrankのパクリだろ!って、JOJIさんに言われました。今でこそ笑い話ですけどね(笑)。いいものを持ってるんだから、人のやってることをなぞらない方がいいよって。そんなつもりはなかったんですけどね。
庵原:もちろんlocofrankは好きなんですけど。
池本:ライブの動きが似てるとか言われたりね。
松崎:勇介さん(G/locofrank)に似てると言われて、locofrankのライブDVDを観たんですよ。どこが似てるかわからなかったんですけどね(笑)。まあ、人と同じことをしないためにも、人の音楽を知らなきゃダメだなと。
――そういう経験を経て、自分たちらしい音を意識するようになった?
庵原:そうですね。作品を出すたびにその気持ちは強くなってますね。
――今、自分たちで思うSHANKらしさって、言葉にできます?
庵原:う~ん、わからないなあ。
松崎:わからないから、やっているんだと思うんですよね。
SHANK 撮影=風間大洋
――なるほど。ところで「Knockin' on the door」は再録ですけど、これを取り上げた理由は?
庵原:「Wake me up when night falls again」というシングル(12年発表)のカップリング曲だったんですけど、この曲だけアルバムに入れなかったんですよ。で、今はCDが販発売されてないし、ライブでもよくやる曲なので、形として残したいなと。
――この曲のイントロは面白いですよね、ちょっと和っぽさが出てて。
松崎:長崎の有名な童歌があるんですよ、「でんでらりゅう」という。なぜそれを選んだのかは、今は覚えてないんですけどね。
庵原:遊女の歌なんですよ。すごくドープな曲を子供に歌わせているという(笑)。
松崎:長崎に住んでるし……こっちは何となくやってみただけで、みんなが面白がってくれたから。長いことやる曲になりましたからね。
――コーラス・ワークもキャッチーですよね。
松崎:全体的に明るいですからね。
庵原:コーラスはHEY-SMITHのメンバーに入ってもらったので、元気がある感じになりました。
――あと、ラスト曲「Extream」は個人的に好きな曲で、今作の中でも特に歌声を張り上げてますよね?
庵原:歌うのが大変やなと思ってます。聴くたびにこんなの歌えるのかなって。
松崎&池本:はははははは。
――今回は張り上げた歌い方が多くないですか?
庵原:そうです、死ぬかもしれないですね(笑)。鍵盤で付けたので、自由に行けちゃうから、行け行けー!って。声が出る範囲のギリギリのところを攻めたんですよ。いままでの曲は上ばかり使っていたけど、今回は低いところから高いところにいく歌い方も考えましたからね。それで幅を出そうと思ったんですよ。
――それが曲の表情の豊かさに繋がってて、良かったです。そして、今年の10月13日には『西日本豪雨復興支援ライヴ がんばろう!西日本 ハウステンボス大作戦。』への出演も決まってますよね。
松崎:去年1月にハウステンボスでMAN WITH A MISSIONと一緒にやったイベントがきっかけで、今回も誘ってもらったんですよ。その後に熊本の復興支援のイベントにも出させてもらったりして、ライブをやることで何かの力になればいいなと。
庵原:今回も『BLAZE UP NAGASAKI』(SHANK主催のイベント)に関係している人たちがやってるんですよ。
――そうなんですね。今回の『ハウステンボス大作戦。』はROTTENGRAFFTY、サンボマスター10-FEET、SHANKの4組が出演します。
庵原:サンボマスターだけは挨拶をした程度で、そこまでお話したことはないんですけど。それ以外のバンドはよく一緒にやらせてもらってるバンドですからね。
――今年も台風や災害が本当に多いですよね。
庵原:わざとなのかと思うほど、弱ってる場所ばかりに行きますからね。……以前、震災直後に仙台、石巻に行ったときは驚きました。
松崎:街がまっさらになってましたからね。でも、こないだSiMと一緒に東北に行ったら、さらにまた復興が進んでいて。
庵原:行くたびに知り合いも増えるし、街になっていく姿を見て、凄いなと思いますね。
松崎:向こうの人たちは“かわいそう”とか思わないでほしいみたいで、やるしかないんだから!という人たちばかりだから。僕らはできることをやるだけですね。
庵原:震災直後に初めてライブをやったときに、ライブハウスの店長に「いつも通りにやってくれ!」と言われて。そのつもりでしたけど、そうだよなって。当日は晴れたらいいですね。野外のイベントなので無事に開催できたらいいなと。いつも通りにやります!

取材・文=荒金良介 撮影=風間大洋
SHANK 撮影=風間大洋

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