WANIMAドームワンマン かつてのロッ
クキッズが見る夢の続き

WANIMA エビバデファイナル、メットラ
イフドームで開催!

ロックバンド・WANIMAが8月25・26日、埼玉・メットライフドームにて『Everybody!! Tour Final!!』を“開催”した。本ライブは、2018年1月にリリースし売上35万枚を突破したメジャー1stフルアルバム『Everybody!!』をともなったツアーの最終公演として行われたもの。本記事では、8月26日公演の模様をレポートする。

Photography_瀧本JON… 行秀、岸田哲平
Text_Sotaro Yamada
(WANIMA Everybody!! Tour Final at メットライフドーム Trailer)

WANIMA史上最大規模となったドーム公演

8月26日、メットライフドームがある西武球場前駅は午前中から多くの人で賑わっていた。ドーム前には「ワンチャン広場」と題されたスペースが設けられ、グッズ販売はもちろんのこと、WANIMAプロデュースのオリジナルワンチャンメニューが食べられる「ワンチャン食堂!!」、球場にちなんだ「ワンチャンストラックアウト」、さらにはWANIMAの曲でカラオケする「ワンチャン!!カラオケ選手権〜魂の叫び〜」などなど、さまざまな企画スペース・催しが用意されていた。広場には多くののぼり旗が並び、テキヤなどの屋台も設置。文字通りのお祭り騒ぎが繰り広げられていたのだった。WANIMAのライブは単なる音楽ライブにとどまらず、本格的に総合エンターテインメントとしての様相を呈してきたようだ。

この日WANIMAが動員したのは約3万5千人(2日合計約7万人、ツアー合計約20万人)。メットライフドーム史上初めての試みとしてアリーナ席をスタンディングにするなど、ドームのキャパシティを最大限に活用し、WANIMAはワンマンライブとしてはキャリア最大のオーディエンスを呼び込んだ。

半野外ドームという特殊な場所での演出

開演5分前からカウントダウンがはじまり、メンバー3人が出演するオープニング映像が流れる。民放のバラエティ番組と比べても遜色ないクオリティの映像に、3万5千人の期待感が大きくふくらんでいく。『JUICE UP!!のテーマ』が流れ、KENTA(Vo. & Ba.)、KO-SHIN(Gt. & Cho.)、FUJI(Dr. & Cho.)が登場すると、メットライフドームには怒号のような歓声が響き渡る。そして1曲目の『OLE!!』が始まると、スタンディングで狂気乱舞しているアリーナ席では数十メートルの水柱がいくつも噴き上がった。そのド派手な演出が「開催」の合図だった。「WANIMAとみんなで開催」した『BIG UP』では、ステージから客席へ向けてレーザーが飛び、水を浴びてテンションの上がりきったアリーナスタンディング席ではサークルモッシュが起きた。
「キン◯マ3兄弟でーす!」という自己紹介やスイカ割りといった演出、大合唱を起こす『THANX』などで序盤から大いに盛り上げていく。6曲目に演奏された『Drive』のあたりからは、夜が少しずつ深まっていった。メットライフドームは半野外のドームであるため、屋外の天候によってステージの見え方が変わってくる。暗がりゆく空とあたたかみのある照明のコントラストは美しく、『Drive』は、MVとも、この曲が主題歌となった映画『OVER DRIVE』とも異なる雰囲気を放っていた。特別な場所での演奏は、普段とは一味も二味も違って見えるものだ。

そんな特別なステージだからこそ、WANIMAのライブではおなじみのあのゲストも、いつにも増して気合いが入っている。今回は持ちネタの他に、DA PUMP『U.S.A.』のモノマネを披露。この新作にオーディエンスは大いに沸く。毎回高い完成度で仕上げてくるこのネタに3万5千人が爆笑するという光景には、プロのお笑い芸人も嫉妬してしまうだろう。『Everybody!! Tour Final』のトレイラー映像によると、FUJIの体重は888kgということになっているが、もしかしたらFUJIの「中の人」は、複数のモノマネ芸人たちなのかもしれない。
(トレイラーのスクリーンショット。NAME:FUJI、WEIGHT:888kg)

3万5千人の大ウェーブ

ドームでのライブとはいえ、WANIMAの原点はライブハウスであり、オーディエンスとの距離の近さはWANIMAというバンドの大きな特徴のひとつでもある。ステージ前方からドーム中央にかけては花道がのびていて、その花道を、航海に出る船のようにステージが移動し回転する。先日レポートで紹介した幕張メッセ公演でも見せた360°から見渡せるステージ演出がドームでも採用されたのだった。さらにはライト側(向かって右)とレフト側(向かって左)にもステージを用意。ライト側のステージでは『SLOW』を、中央では『りんどう』を、そしてレフト側ではKO-SHINが東京で初めて住んだ四畳半の部屋を再現したステージで『ここから』をアコースティックで演奏した(なお、途中でKO-SHINがトイレに行き、FUJIがギターを奏でる珍場面もあった)。
本公演のハイライトのひとつは、WANIMAの代表曲のひとつである『ともに』だっただろう。WANIMAは基本的に、オーディエンスに対して自由にライブを楽しむことを望んでいる。この日もKENTAはしきりに「暑いから、自分のタイミングで自由にドリンク買いに行ったりしてね」といった気遣いを見せていた。だから、WANIMAがオーディエンスに声を出したり飛び跳ねたりを強制するようなことは一切ない。しかし『ともに』が披露された際には、おそらく3万5千人のうちほとんどすべてのオーディエンスが立ち上がり、合唱していた。

『ともに』から始まった後半戦は、『ヒューマン』『Hey Lady』などの人気曲を連発。『オドルヨル』では会場内に3万5千人の大ウェーブが発生し、『サブマリン』ではステージにいくつもの火柱が吹き上がった。本編ラストは『WANIMA 18祭(フェス)』をきっかけに生まれ、CMにも起用されたことも相まって、今や彼らの新たなアンセムとなった『シグナル』、そしてアルバムの収録順と同じく『Everybody!!』で本編は終わりを迎えた。最後までアリーナ席では激しいモッシュが起きていた。

WANIMAとみんなの平成最後の夏

(KO-SHIN)

本編後のVTRでは、KO-SHINの「エビバデ、エビバデ言いよるけど、何とも仲良くなっとらんくない? 俺らだけやん、仲良くしとるの。もっといろんなもんと仲良くなろうよ。!このままじゃアンコールなんて出来んやろー!!」という魂の叫び(?)にしたがい、「エビバデ!!友達チャレンジ!!」が開催。痛みと仲良くなるために3人が足ツボマッサージをされながら似顔絵を描いたり、ボールと仲良くなるために千本ノックをしたりする映像は、オーディエンスの笑いを大いに誘った。
(KENTA)
(FUJI)


ふたたび3人が現れてアンコールが「開催」されると、1曲目は『花火』でスタート。ドーム天井に投影された花火の映像や、夏の終わりを感じさせる歌詞もあいまって、会場には次第に「WANIMAとみんなの平成最後の夏」感が漂い始めた。2曲目は恒例のリクエストコーナー。アリーナ席に降りたKENTAが選んだ1名のオーディエンスにより『TRACE』がリクエストされると、拍手と歓声が起きた。そして最後は『これだけは』。3万5千人のオーディエンスとWANIMAによる「戦い続ける日々に幸あれ」というエールの送り合いは、ツアーファイナルにふさわしいエンディングとなった。いつものようにKENTAが「日本でいちばんWANIMAが好き。WANIMAでしたー!」という締め言葉を放つと、特大キャノン砲から銀テープが発射され、派手に始まった『Everybody!! Tour Final』は派手にフィナーレを迎えることになった。

その後、メンバーによるサインボールの投げ入れが行われ、11月28日に2nd DVD/Blu-ray『Everybody!! TOUR FINAL』がリリースされること、さらには11月から『1CANCE NIGHT TOUR 2018→2019』が開催されることがアナウンスされた。DVD/Blu-rayはこの日(8月26日)の公演本編の模様と特典映像を収録した映像作品。ぜひ、本レポートと照らし合わせて楽しんでもらいたい。また『1CANCE NIGHT TOUR 2018→2019』は、主要都市でのライブになかなか来ることができないファンのためにWANIMAがみずから会いに行くことを目的に開催されるツアー。老若男女さまざまな人に楽しめるよう、全席指定のホール公演と、WANIMAのメンバーが大好きなライブハウス公演を加えた全国27公演を予定している。

WANIMA、あるいはかつてのロックキッズ
が見る夢の続き

さて、残暑がぶり返し厳しい暑さとなったこの日、3万5千人の興奮によってメットライフドームには気温以上の熱気が充満していたが、そうした熱気も込みで、この日のライブは夏の思い出としてオーディエンスの記憶に強く残っただろう。

WANIMAのライブには、大きく2つの特徴があるように思われる。ひとつは、本レポート序盤に記した通り、単なる音楽ライブにとどまらず、総合エンターテインメントとしての側面があること。

開演前からのお祭り騒ぎは夏のイベントとして立派に成立しているし、となると、WANIMAの夏のライバルは他のミュージシャンではなく、花火大会や海やお祭りといったイベントになる。また、水や炎を使った演出やMC中に鳴る風鈴の音、スイカ割りのパフォーマンスなど、視覚や聴覚で音楽以外の楽しみを提供しているため、音楽にそれほど熱心ではない人でも楽しめる。「あんまり知らないけど、友だちや恋人に連れて来られたから」というテンションでもじゅうぶんに楽しめることは大きな魅力のひとつだ。

そしてもうひとつは、キッズ世代以外にも、実は30代以上のオーディエンスが多いということ。

WANIMAはこれまでにも、1000人の18歳世代とつくりあげた『WANIMA 18祭(フェス)』を開催するなど、キッズ世代から強烈に支持されてきた。しかしもう一方でWANIMAを強烈に支持しているのは、思春期にパンクロックを熱狂的に聴いてきた30代以上の世代なのだ。

1990年代後半、日本では、パンクロックが大きなムーブメントを起こしていた。当時のロックキッズたちが、20年後のいま、WANIMAを通してあの頃の夢の続きを見ている――現在のWANIMAの熱狂ぶりを見ていると、そんなロマンティックな仮説にもリアリティがうまれてくる。

「日本でいちばんWANIMAが好き」という
言葉の重さ

それにしても、なぜWANIMAはこれほど支持されているのだろうか? なにしろまだ、メジャーデビューしてから1年に満たないのだ。にもかかわらず、メジャー1stフルアルバムはオリコン1位の他、各種チャートを席巻し6冠。約半年間で35万枚のセールスを記録し、当然のようにツアーファイナルで2daysのドーム公演を成功させる。そんなバンドは他に見当たらない。

そのヒントは、KENTAがライブの締めに必ず口にする言葉にあるような気がする。すなわち、「日本でいちばんWANIMAが好き。WANIMAでしたー!」。

この言葉は、「開催します!」と同じくらいWANIMAファンにとっておなじみの言葉なわけだが、実は非常に重みのある言葉かもしれない。なぜなら、「日本でいちばん自分が自分のことを好きだ」と言うことは、簡単なことではないからだ。

自分を心から肯定できなければ、他人を肯定することもできない。WANIMAが多くの人に支持される理由は、シンプルだが、こういうところにあるのではないだろうか。

誰もが本当は自分を心から好きになりたいのだ。
(WANIMA『シグナル』MV)


セットリスト[DAY2]

1_OLE!!
2_BIG UP
3_Japanese Pride
4_やってみよう
5_THANX
6_Drive
7_CHEEKY
8_いいから
9_SLOW
10_りんどう
11_ここから(アコースティック)
12_ともに
13_雨あがり
14_ヒューマン
15_Hey Lady
16_オドルヨル
17_サブマリン
18_シグナル
19_Everybody!!

EN1_花火
EN2_TRACE
EN3_これだけは


WANIMA 公式サイト

WANIMAドームワンマン かつてのロックキッズが見る夢の続きはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

アーティスト

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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