【ライブレポート】Soanプロジェクト
、ロリータ服と浴衣姿で一夜限りの<
真夏の夜の夢>

Soanプロジェクトが8月21日、22日に渋谷REXでワンマンライブ<真夏の夜の夢>を開催した。
まず、8月21日にSoanプロジェクト with 手鞠が“~菓子女装ブリオッシュ・ド・ロリィタ~”と副題のついたライブを実施。メンバーはSoan、手鞠、健希(from Bräymen)、祐弥、Sachi(from 黒色すみれ)の5人だ。

この日はメンバー一同、華やかで美しいロリータ服を着用。「だいぶ遅めのティータイムを始めましょうか」という手鞠の声を合図に、優雅なライブが幕を開けた。彩色きらびやかな音色を放ちながら軽快に駆ける演奏の上で、手鞠は気持ちに少し早鐘を打つように「吐情、舌上、熱帯夜」を歌いだす。華やかな宴の始まりだ。力強いアコギの音色の上で、手鞠が少しだけ雄々しさを翳し「sign…-resonance-」を歌う。晴れた風景の中へ、黒い闇の色を描き加えてゆくようだ。その歌声と調べは、不安を煽りながらも、触れた人たちを哀愁という滲んだ色の中へ引き寄せてゆく。
MCでは何時もの男らしい声での会話が飛び交う、そのアンバランスさも今宵の魅力。メンバーたちへ向け、フロアー中から「可愛い」という声が上がっていたが、ついSoanが「あー恥ずかしい」と叫んでしまうくらいに照れた仕種を覚える様は、滅多に見れない貴重な機会だ。「相対する質量の交錯する熱量」では、手鞠が手にしたぬいぐるみへ向かって歌いかける姿も。

祐弥の手にした二胡にアコギとピアノが切ない色を重ねる「黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)」、Soanの奏でるピアノとSachiの導くヴァイオリンの調べが交わる幽雅な「それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ」と、 厳かな空気の中進んでいくライブ。そこへ僅かな光を注ぐように流れるSoanのピアノの音色。ゆったり呼吸をするように、低音の効いた歌声を優しく響かせ歌う手鞠。一つ一つの調べが折り重なり、次第に熱を帯びていく。優雅で、危険で、温かく、切ない調べに微睡まずにいれない。

「夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処」では小さかった頃、夕暮れの時間に無性に切なさを覚えたあの頃の気持ちを甦らせる。哀愁へゆったり心が飲み込まれてゆくようだ。何時しか僕らは小さかった頃の僕や私となり、そこへたたずんでいた。そんな心の郷愁に浸る気持ちへ、彼らは優しく歌の手を伸ばしてくれた。
紅茶を優雅に口に運ぶ手鞠は「アコースティックという環境上、少なからずある先入観を取り払ってもらう為の一環として昨年開催したところ、みなさんからの反響がありまして、今年も調子にのってやってみたわけです。大人の音楽の楽しさ、何をやってもいいというヴィジュアル系の定義を、みなさん柔軟に楽しんでいただけたらなと思います」と述べる。「振り切れた我々の姿も観ていただいて、意外とはまってんなと思ってくれれば」とは、Soanの言葉。MCを含め、何時もとは違う様子が楽しい。

ライブも後半戦へ。健希と祐弥の荒々しいギターの音が絡み合う。Sachiの優雅さの中へ狂気を抱いたヴァイオリンの音色をクッションに、演奏は情熱をほとばしらせるよう一気にスパニッシュな音を激しく爪弾きだした。躍動する演奏の上で、昂る気持ちを吐き出し、捧げるように歌う手鞠。ほとばしる熱を投影した手鞠の歌声に導かれ、「感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛」が流れ出す。
さらに、力強くアコギを掻き鳴らす祐弥の音へ導かれるように、感情を高ぶらせた手鞠が立ち上がり、「否の相違、或いは利害の不一致」を歌いだす。そして「醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る」が僕らを熱狂の楽園へ連れ出した。最後に、Soanプロジェクト with 手鞠は「落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。」を届けてくれた。荘厳さと熱情を交錯させながら、その音楽は魂を痛く揺さぶり、わだかまったすべての感情を一緒に解き放つ。

アンコールでは、メンバーそれぞれが可愛らしいポーズを決めながら登場。「みなさんで素敵な景色を見せてくれたら嬉しいです」と、Soanプロジェクト with 手鞠が最後に届けたのが、優雅な宴のフィナーレを飾るに相応しい「それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ」だ。心へ希望に満ちた優しい光を射し込むように、その歌は、触れた人たちを無垢な姿に様変えてゆく。身体を揺らす演奏と手鞠の歌声に導かれ、何時しか会場中の人たちが大きく右手を振り、無邪気な乙女や少年に戻り、その優雅な宴に熱い眼差しを向けていた。心に情熱を湛えてゆく夜の幻が映し出した優雅なティータイムに、誰もが優しく心地好く身を預け、無邪気な笑みを浮かべながら、その宴を心ゆくまで味わっていた。

写真◎遠藤真樹
取材・文◎長澤智典
編集◎BARKS
セットリスト

「吐情、舌上、熱帯夜」
「sign…-resonance-」
「黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)」
「それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ」
「相対する質量の交錯する熱量」
「夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処」
「感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛」
「正否の相違、或いは利害の不一致」
「醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る」
「落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。」
-ENCORE-
「それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ」
End SE.「紫陽花がまた咲く頃に」
◆Soanプロジェクト with 芥 ライブレポートへ
そして8月22日に同じく渋谷REXで行われたのが、“~下駄と帯紐と私、愛する貴女のため・収穫祭~”と副題のついたSoanプロジェクト with 芥によるワンマンライブ。こちらはSoan、芥(from Chanty)、K、Shun、Ivyのメンバーが全員和装姿でライブを行った。

◆ライブ写真
「右手を上げていこうぜー、折り畳め!」というSoanの言葉を合図に流れたのが「月欺けば傀儡が笑う」。とても雅で、妖艶さを抱いた楽曲だ。妖艶でたおやかな楽曲だが、低音効いた音の刺激で観客たちは激しく動く。Soanプロジェクト with 芥は最初から本能を剥き出しに観客たちへ挑みかかったのだ。煽り続けるSoanの声に導かれ、「薄紅は舞い散り寂光に消える」も繰り出される。重厚な音が気持ちを熱く掻き立て、ヘッドバンキングも起こる。

荒々しい音を掻き鳴らすShunのギター、そこへ重なる重厚なリズム隊が生み出す激しい音の唸り。その刺激に触発されたフロアー中の人たちが、舞台上へ絶叫を返してゆく。雄々しい歌声を魅力に「隔つ虚構紡ぐ真実と憧憬」を歌いあげる芥。彼の歌は常にドラマティックで、観客たちを猛暑以上の熱気渦巻く世界へ引きずり込んでいく。演奏は、芥の叫びを合図に重い衝動を響かせる「透過幕」へ。さらに痛む心へ切なさを刺すように、狂気をまとった「濁った瞳」も提示。壊れそうな感情を、気持ちへ委ねるままに歌う芥。 荒れ狂う音の中で嘆く彼の歌声が、胸を搔きむしる。
「全員派手にいこうぜ」といって始まった「朽ち木の行方」では、会場中の人たちが頭上高く手を掲げ手拍子しながら跳ねだした。重く激しい唸りを上げた演奏が、観客たちの身体を思いきり動かしていく。重厚なダンスビートだ。と、ここでこれまでの重厚な演奏から一変、Soanプロジェクト with 芥が届けたのが、JITTARIN JINNの「夏祭り」。そこからダンスビートナンバー「arrive」や「hysteria show time」で、さらに勢いを付けて宴を彩っていく。

本編最後に、Soanプロジェクト with 芥はふたたび「月欺けば傀儡が笑う」を披露。ここでは“~煽りループver.~”として、何度も煽りを繰り返す。ループを繰り返すほどに乱れる理性と浴衣。途中、Kが「お前ら何年バンギャルやってんだよ、もっと前へ来いよ」とマイクを持って煽る場面も。
アンコールでは、メンバー一人一人がポースを決めながら舞台へ登場。「また来年もこういう機会をもてたらなと思います」と、Soanプロジェクト with 芥が届けたのが、美しく、切なくも、愛おしさに満ちたメロウナンバー「刹那を駆ける命の一行に」だった。ジワジワと胸に染み渡る温かい歌声へ優しく抱かれるように、誰もが微笑ましい笑みを浮かべ、スケールあふれたこの楽曲に身を寄り添っていた。すべての嘆きや興奮を空へ解き放つように流れた歌に吸い寄せられ、星の一つ一つとして夜空へ溶け込むような気持ちでSoanプロジェクト with 芥の描いた宴がフィナーレを迎えた。

写真◎遠藤真樹
取材・文◎長澤智典
編集◎BARKS

  ◆  ◆  ◆

なお、Soanプロジェクトは9月5日、9月19日にミニアルバムを発売。現在、YouTubeにて試聴動画も公開中だ。そして9月26日に開催されるBARKS主催イベント<千歌繚乱vol.18>に、Soanプロジェクト with 芥が出演することも決定している。こちらのチケットは現在、イープラスにて発売中。

セットリスト

「月欺けば傀儡が笑う」
「薄紅は舞い散り寂光に消える」
「隔つ虚構紡ぐ真実と憧憬」
「透過幕」
「濁った瞳」
-中間SE-
「undelete」
「sign…」
「朽ち木の行方」
「夏祭り」(Cover)
「arrive」
「hysteria show time」
「躁狂の踊り子~山紫水明の宴~」
「月欺けば傀儡が笑う」~煽りループver.~
-ENCORE-
「刹那を駆ける命の一行に」
-End SE-
「紫陽花がまた咲く頃に」


Soanプロジェクトwith芥 3rd Mini Album『動猛成る狂想、動脈に射つ。』

2018年9月5日(水)Release
全7曲収録/¥2,600(tax out) /S.D.R-337
【Recording Musician】
Produce・Music・Drums:Soan
Lyric・Vocal:芥(from Chanty)
Guitar・Voice:K
Guitar・Voice:Shun
Bass:Ivy

【収録曲】
All Music:Soan All Lyric:芥
1.『heart』
2.『濁った瞳』
3.『meteo trive』
4.『朽ち木の行方』
5.『月欺けば傀儡が笑う』
6.『frowery count』
7.『紫陽花がまた咲く頃に』


Soanプロジェクトwith手鞠 3rd Mini Album『静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。』

全6曲収録/¥2,600(tax out)/S.D.R-338
【Recording Musician】
Produce・Music・Drums・Piano:Soan
Lyric・Vocal:手鞠
Acoustic Guitar:タイゾ(from Kra)
二胡・Chorus:祐弥
Violin・Viola:Sachi(from 黒色すみれ)

【収録曲】
All Music:Soan All Lyric:手鞠
1.『落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。』
2.『春色の音色、記憶回廊』
3.『黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)』
4.『醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る』
5.『吐情、舌上、熱帯夜』
6.『紫陽花がまた咲く頃に』


<Soanプロジェクト 3rd Mini Album『静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。動猛成る狂想、動脈に射つ。』Release Oneman live>

2018年9月30日(日)新横浜NEW SIDE BEACH!!(神奈川県)
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500/day¥5,000
Soanプロジェクトwith手鞠/Soanプロジェクトwith芥


<Soanプロジェクトwith芥 3rd Mini Album『動猛成る狂想、動脈に射つ。』Release Oneman Tour>

2018年11月10日(土)札幌Crazy Monkey(北海道)
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500/day¥5,000

2018年11月10日(日)札幌Crazy Monkey(北海道)
open 16:30/start 17:00
adv¥4,500/day¥5,000

2018年11月24日(土)大阪北堀江club vijon(大阪府)
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500/day¥5,000

2018年11月25日(日)名古屋今池3Star(愛知県)
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500 day¥5,000

<Soanプロジェクトwith手鞠 3rd Mini
Album『静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。
』Release Oneman Tour>

2018年12月8日(土)大阪北堀江club vijon(大阪府)
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500 / day¥5,000

2018年12月9日(日)名古屋ell.SIZE(愛知県)
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500 day¥5,000

2018年12月15日(土)博多DRUM Legend(福岡県)
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500 / day¥5,000

2018年12月16日(日)博多DRUM Legend(福岡県)
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500 day¥5,000

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