【サマソニ東京ライブリポート】NOE
L GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS

oasisの曲もてんこ盛りであったが、そこにノスタルジーはなかった。何せ頭の4曲は、すべて新譜の『Who Built The Moon?』の曲であったのだから。いずれもスタジアム級のスケールを誇るナンバーで、もはやマリンステージはノエル・ギャラガーにとってホームであるようにも思われた。

『Holy Mountain』も『Keep On Racing』も、盤石の安定感でもって鳴らされていた。ホーンセクションの絢爛ぶりも見事。彼はoasis時代にも2005年にサマーソニックへ出演しているが、スケール感で言えば当時と比べても何の遜色もない。強いて言えば、あの頃よりも良い意味で丸くなった。それはノエルがHigh Flying Birdsを組んで以降、今も続いていることかもしれない。Noel Gallagher’s High Flying Birds名義では現在までに3枚のアルバムをリリースしているが、最新作に至るまで音数は増える一方である。
oasisの頃の彼は、どちらかと言えば保守的なポジションをとっていたと記憶している(「グラストンベリーにヒップホップはお呼びでない」発言など)。それが最近ではカニエ・ウエストに強い影響を受け、クラブミュージック系の様々なアーティストにリミックスの依頼をしている。音楽に対する態度は、確かに変化した。それが良いベクトルで働いていたのはこの日のライブを観れば一目瞭然であった。
 例えば、oasis時代の名曲『Little By Little』。High Flying Birdsを経て聴くのと、oasis時代の記憶そのまま聴くのとではまるで違う。生まれ変わった『Little By Little』はスケール感に加えて、艶と繊細さが加味され、否応なく涙腺を刺激してくるのであった。いや、この曲に限った話ではなかったかもしれない。『Half The World Away』しかり『Wonderwall』しかり、oasisの頃よりも遥かにドラマチックであった。oasisはオーディエンスに対して一方的に歌いかけるスタイルであった(『Don’t Look Back In Anger』を除く)が、今の彼のパフォーマンスは様々な方向に向かって矢印が伸びていた。それはバンドのメンバーであり、自分自身であり、oasisであり、我々。そこにあったのは凄みではなく、優しさであった。
 そしてやはり『Don’t Look Back In Anger』ではスタジアムを巻き込んだ大合唱が起きる。サビの前にノエルがオーディエンスに向かって「Say!」と煽るシーンが印象的であった。この光景も、今のフレキシブルな彼だからこそ見せられたのではなかろうか。孤高のヒーローと言うよりは、周りを巻き込んでゆく主人公。ラストの『All You Need Is Love』は完全に大団円。多幸感に包まれながら終わりに向かってゆく様は、まるで1本の映画のようであった。

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