cascade 結成25周年イヤーを爆走中
! エレクトロ×バンドサウンドを融
合させた異端児たちの先進性

バンド結成25周年のアニバーサリーイヤーを迎えたCASCADEが、様々なメモリアルな活動を展開している。90年代に新人アーティスト発掘番組『えびす温泉』での優勝をきっかけに注目を集めメジャーデビューを果たした彼らは、ボーカルTAMAの特徴的な歌声と、エレクトロとバンドサウンドが融合した中毒性のあるサウンドを持ち味に、当時の音楽シーンのなかでも異端児的な存在感を放っていた。98年には日本武道館での単独公演も成功させたが、2002年に解散。2009年に再結成した現在は、ライブハウスを拠点に精力的な活動を繰り広げている。今回のインタビューでは、そんな彼らの25年間を振り返りつつ、まさに“CASCADE”としか呼ぶことのできない独創性の高い楽曲を連発できた理由、7月28日にリリースしたセルフカバーベストアルバム『VIVA NICE TASTE』のことを、TAMA、MASASHI、HIROSHIの3人に語ってもらった。
――改めて結成25周ということで、これまでの活動を振り返ってみて、どんなことを思いますか?
MASASHI(Gt):あんまりそういうのを数えることはないんですけど、決して短くはない時間だったなと思いますね。(メンバーと)出会った頃の感じも、一緒に過ごした濃密な時間も、鮮明に覚えてるので。ありきたりですけど、あっと言う間。いまも一緒にライブをやってるのもすごく楽しいし、心地好いので、現在進行形で突っ走ってる感じです。
TAMA(Vo):うんうん。
MASASHI:だからまあ……25周年って数字で聞くと大きいですけどね。
TAMA:途中で空いた時間もありますけど、本当に駆け抜けてきたなと思いますね。自分がCASCADEを結成したときに生まれた人が25歳になってるっていうことですから、そう考えると、ずいぶん時間が経ったと思いますけど。それが長かったかは、よくわからなくて。たとえば、“加山雄三さんは50年やってる”とか聞くと、“自分はまだまだだな”と思いますし。
――でも、同世代の辞めていくバンドもたくさん見てきたと思いますし、まず続けてきたことだけでも、ひとつの勲章なんじゃないかと思います。
HIROSHI(Dr):たしかに。デビュー当時のことを考えると、まだスマホがないですからね(笑)。こういう周年みたいなことって、10年前に、15周年をやったんですよね。それぐらいから、20周年、25周年っていう節目を刻んではきてるんですけど。あんまり個人的には意識したことがなくて。だから30周年とかもすぐに来ちゃうのかなと思います。
――25年前のデビューを振り返ると、CASCADEってインディーズ時代からライブ活動を地道に重ねたうえでのデビューみたいな感じだったんですか?
TAMA:デビュー前にはそんなに……月に都内で1~2回ライブをやるぐらいだったんですよ。だから、テレビの勝ち抜きバトルみたいなもの(新人アーティスト発掘番組『えびす温泉』の優勝)で一気に動員が増えたんですよね。
――そうだったんですか。
TAMA:だから、よくあるじゃないですか。(新宿)LOFTとか鹿鳴館を2デイズ満杯にして、その次は日清パワーステーション(98年に閉館した新宿のライブハウス)、日本青年館、渋谷公会堂をやって、メジャーデビューというか。で、(ファンに対して)“メジャーに行っても、俺らは変わらないぜ”って言う、みたいな(笑)。周りのバンドにはそういうセオリーもあったんですけど。自分たちはそういうかたちじゃなかったんですよね。
――そうなると、突然、人気に火がついたことには戸惑ったんじゃないですか?
TAMA:戸惑いまくりでしたね。その前はお客さんが20人もいなかったですから。それが……ねえ。“ワンマンで100人埋めようよ”っていうかたちでデビューをさせてもらったわけですから。その勢いにはビックリしちゃいました。
HIROSHI:いきなりお客さんが300人になったから、もう“怖い!”っていう感じでしたよね。“なんでこんなに人が来ちゃってるの?”みたいな。
MASASHI:そうだね。
HIROSHI:デビューから何年かやってるうちに、僕らの曲に引っかかってくれた人たちが来てくれてるわけだから、ちゃんと楽しませようとか思うようになりましたけど。最初は“わからない”“怖い”っていう感じでした(笑)。
CASCADE/TAMA(Vo)
結成25周年で、これだけライブの定番があるっていうのは強みなんだなと思いましたね。
――当時の音楽シーンを振り返ったときに、CASCADEみたいにカラフルな衣装に身を包んで、いわゆるニューウェイヴを基軸に、パンクからダンスポップ、歌謡曲まで、いろいろなジャンルをごちゃまぜにしてキャッチーなロックへと落とし込んでいたバンドって、相当珍しかったと思うんですけど。そのあたりはどう感じていましたか?
MASASHI:ああ、どうだろう。自分たちが好きな音楽のバックボーンがそれぞれあって、ただ好きなことをやってただけだから、あんまり意識はしてなかったですね。
TAMA:正直な話、僕らは日本のニューウェイヴとかは通ってないんですよね。“プラスチックス好きでしょ?”とか“ヒカシューさん好きでしょ?”って言われるんですけど。もちろん名前は知ってましたけど、“それ、どういうバンドなの?”っていう感じでしたし。だから、そこは自然に自分たちのフィルターを通してやってたんだなあって思います。それが、メンバー同士のかけ算で、良い感じの楽曲になってたというか。
HIROSHI:そもそもCASCADEの歴史で言うと、インディーズ時代の曲は生バンドだったんですよね。そこにメジャーデビューしてから、どんどん機械の音が入ってくるようになって。それが個人的にはすごく楽しいというか、刺激的ではありましたけどね。
MASASHI:うん、自分たちの曲がすごく好きだったんですよ。
――じゃあ、振り返ると“自分たちの曲が好き”を更新し続けてきた25年間だった。
TAMA:そうですね。そのときに言ってたことで覚えてるのが、“これ、誰にも聴かせたくないな”って。
MASASHI:言ってた、言ってた(笑)。
TAMA:かっこよすぎてね。
――あははは、ふつう逆じゃないですか。
TAMA:捻くれてましたね。でも、いまはちゃんと聴いてほしいと思ってますよ。
CASCADE/MASASHI(Gt)
改めて、すべてのパートを“ちゃんとやってたな”って感慨深いものがありましたね。思い出したというより、“すげぇ”っていうか。
――で、2002年に解散、その7年後に復活をして。再結成してからも、もう8年が経ちますけど、バンドを動かしていくうえでの違いみたいなものってありますか?
TAMA:自分たちは何も変わってない気がするんですよね。僕らのやり方でひとつ言えるのは、たとえば、“こういうジャンルの音楽を作りたい”っていうのがあったとしたら、ふつうは“そこでギターソロを入れるべきだろう”とか“ここは絶対にツーバスを入れなきゃダメだろ”って考えると思うんですよ。でも、僕らはそういうのがないんですよね。
MASASHI:音楽的なことを、みんなで話し合ってやると言うより、感覚重視でやってるし。尖ってる曲をやるときは、気持ちも尖っていたいし、逆に、広大な曲をやりたいなと思ったら、それを感じながらやってたので。なんて言うか、分離してないんですかね。
――自分たちのやりたいことと鳴らす音とが分離してない。
MASASHI:そうですね。それが最初からできてたわけじゃないんですけど。ライブを重ねているうちに、自分たちに足りないものを補いながら曲を作っていってたんです。
HIROSHI:僕らは細かく打ち合わせとかをしないんですけど、いざ何かをやるときに、そのときのメンバーの感覚が一緒なんですよ。それは知らず知らずと。よそのバンドさんだと、“このバンドの、この曲っぽいのをやろうよ”とかあると思うんです。でも、僕らはそういうことを一切言ったことがなくて。色とかアニメで表現したりすることが多いんです。そのほうが自由に行けるというか。これって思ったら、それしかできなくなっちゃうから。
――その制約のなさが、CASCADEがいままで誰も考えたことのないような、ユニークで、ぶっとんだ楽曲を生みだしてきた理由なんですね。
HIROSHI:うん。さっきTAMAも言ってましたけど、それぞれの解釈が合わさって、かけ算をしていくなかから、“なんかドキドキするものができました”っていう感覚なんでしょうね。そこは、いまも昔も変わってないんです。
CASCADE/HIROSHI(Dr)
昔の曲ですけど、いまのCASCADEができたな、みたいな感じはありましたね。あとは、改めてTAMAのボーカルはすごいな、と。
――なるほど。そんな25年を凝縮した作品が、セルフカバーベストアルバム『VIVA NICE TASTE』ですけども。この企画が立ち上がったきっかけはあったんですか?
MASASHI:徳間ジャパンのディレクターの田中さんと、去年久々に再会したことですね。僕らが90年代にビクターにいたときに関わってくれてた方なんですけど。
田中:去年の12月の頭かな。ちょうどCASCADEが25周年記念のライブをやるっていうのは決まってて。で、そのときに僕は『ブレードランナー』熱があがってたんですよね。35年ぶりの新作とかで。近未来のテーマが作品だけど、このテーマっていまも通用するし、斬新だなと思ったのが、CASCADEと重なったんです。それで、僕も会社は違ってるけど制作ディレクターを続けているし、この25周年にからめて、またメジャーで何かを出したいなっていうのをMASASHIくんに相談したんですよね。
MASASHI:そこから、セルフカバーを作るっていう作業に入りました。
――メモリアルなアイテムとしては、いろいろなアイディアがあったと思いますけど、セルフカバーアルバムにしたいと思ったのは?
MASASHI:それも田中さんと話すなかで決めていったんですけど。再録をしたいなっていうのはあったんです。で、僕たちやるほうからすると、やっぱりリアレンジしたくなってしまうんですけど、リアレンジになっちゃうと、だいぶ曲が変わってしまうんですよ。でも、聴く側のことを考えたら、あの頃の感じでやってほしいって思うじゃないですか。
――わかります。だから、今回はあえて“この曲の美味しいポイントはこれだよね”っていうところは、本当にきれいに残したカバーにしたんですね。
MASASHI:そうなんですよね。
CASCADE/TAMA(Vo)
――シングル曲が中心ですけど、選曲はどんなふうに進めたんですか?
TAMA:なるべくシンプルにしたかったっていうのはありますね。ライブで盛り上がる曲を頭に入れたうえで、レアなところではなく、なるべくみんなが知ってそうな曲を選んでます。なかにはシングルじゃないのもありますけど。
――たとえば、「小さな星がほら一つ」はシングルじゃないですね。
TAMA:その曲はライブでみんなが歌ってくれる曲なんですよね。だから“いろいろな場所で歌ったなあ”っていうのを思い出してもらいつつ、これから新しくライブに来てくれる人も一緒に歌ってくれればと思って入れました。
――あえてアレンジではなく、カバーにこだわってレコーディングしたことで、発見はありましたか?
MASASHI:ライブでやり慣れてる曲ではあるんですけど、レコーディングとなると、もう少し緻密さが求められるんですよね。勢いだけじゃなく。って考えたときに、改めて、すべてのパート……ボーカルも、ギターも、ドラムも、“ちゃんとやってたな”って、感慨深いものがありましたね。思い出したというより、“すげぇ”っていうか。
――若かりしころの自分たち、“けっこうやってたじゃん”みたいな?
MASASHI:そんなこと、ライブのときは感じないんですけどね。
HIROSHI:だからレコーディングはすごく楽しかったです。あっと言う間に終わってしまったので。今回はベースを人時さん(黒夢)に弾いてもらってるんですけど、それもプラスになって、昔の曲ですけど、いまのCASCADEができたな、みたいな感じはありましたね。あとは、改めてTAMAのボーカルはすごいな、と。
CASCADE/MASASHI(Gt)
――話を聞いてると、3人とも自分たちのことをよく褒めますね(笑)。
全員:あはははは!
TAMA:みんなが言ってくれないから、自分で“天才だ”って言ってるんですよ(笑)。まあ、それは冗談ですけど。今回はあえてライブの定番曲を再録させてもらったことで、結成25周年で、これだけライブの定番があるっていうのは強みなんだなと思いましたね。
――たしかに。イントロが鳴った瞬間に“きたー!”ってなる曲がたくさんある。
TAMA:それが25年の重みなのかなって、こうやってアルバムを作り上げてみると思いますね。でも結局、ライブの定番って自分たちだけで作るわけじゃなくて、みんなで作り上げてきたものなんですよね。だから、このタイミングで改めて感謝したいなとも思いました。
CASCADE/HIROSHI(Dr)
――今作のなかで、特にセルフカバーした意味があるなと感じた曲はありますか?
TAMA:個人的には、3曲目の「S.O.S ロマンティック」ですね。サビの部分に、音の波がドカンとくるような太さを感じるというか。CASCADEの音って、いい感じのペラペラ感が良さでもあると思うんですけど、今回の太くなった音のなかにも、チープさみたいなのはあって。ちゃんとCASCADEっていうものになってるなと思いました。
――そういうアップデートの仕方ができるのもライブで熟成させてきたからこそですね。
TAMA:そうですね。当時は“ニューウェイヴをやりたいね”っていうビジョンで作った曲でしたけど。いまとなっては、それも関係なくなっちゃったなって思いましたね。
――MASASHIさんは?
MASASHI:僕は「YELLOW YELLOW FIRE」ですね。さっきTAMAちゃんが言ってましたけど、ふだん僕らはあんまり“こういう曲を作ろう”っていう話をしないんですけど、これは“お客さんを盛り上がらせたい”っていうところから出てきた曲で。それが、いまもお客さんに喜んでもらえてるし、ライブでも映える曲なので。曲の構築とか、音のバランスとか、よくできてますよね。また自分で褒めちゃいましたけど(笑)。
――いやいや、いいと思います(笑)。
HIROSHI:僕、「cuckoo」かなあ。
TAMA:へ~、意外だね。
HIROSHI:こういうミディアム系の曲というか、バラードっぽい曲って、あんまりCASCADEのイメージにはないと思うんですけど。この曲は、原曲と聴き比べたら、遥かにこっちのほうがいいと思うんですよ。オケのバランスも、歌も、ギターも、ドラムも。
――もちろん原曲には原曲の良さがありますけど、たしかに比べると、包容力がある感じがするんですよね。優しく聴こえるというか。
HIROSHI:そう、優しいんですよ。特にボーカルが。言い方が合ってるかわからないですけど、僕はホッとしたんですよね、この曲で。
TAMA:その当時は、“バラードがほしいね”っていうところから作りはじめた曲なんですけどね。やっぱり僕らは、どっちかと言うと、「YELLOW YELLOW FIRE」とか、パンキッシュな曲が先行してたから。これは新しくチャレンジをした曲で。当時のボーカルにはその初々しさもあったとは思うんです。この曲に関しては、“解散ライブのときに、みんなが歌ってくれたな”とか、そういうこともね、やっぱりあって。いまライブでは、そんなにやらないんですけど。たまにやると、来てくれる人も当時のことを思い出すみたいですね。
――アルバムには新曲として、「unfairly」も収録されていますが。もうど真ん中のCASCADEらしい曲。一度聴くと、サビが頭から離れないっていう。
MASASHI:これもライブをやるなかで欲しいなと思って生まれてきた曲ですね。今回のベストアルバムで“新曲を入れよう”ってなったときに、TAMAちゃんが“この曲をやりたい”って言ってくれたんです。この曲は、同期から始まるんじゃなくて、ギターの音から始まるんです。キメキメじゃないところから入れるというか、そのときのライブのテンションで曲に入れるので、すごく楽しい曲なんですよ。
TAMA:そんな長い曲ではないんですけど、ちゃんとドラマチックになってるんですよね。ここ最近、同期の曲が多かったんですけど、“ああ、HIROSHIのドラムだな”“MASASHIのギターだな”っていうのがダイレクトに伝わるバンドサウンドなので。でも、ちゃんとCASCADEになってるから、“これがいい”って言ったんです。
――<独りじゃない>っていう歌詞も、このタイミングだからこそグッときますね。
TAMA:そう、エモーショナルなんですよね。
――個人的には、今回のアルバムでは、90年代を知らない新しい世代のリスナーにも出会ってほしいなと思いました。改めてCASCADEの音楽は、いまも全然色褪せてないし、懐かしいものと言うよりも、すごく斬新なものとして届くと思うから。
TAMA:それ、僕も思いました。やっぱりあるじゃないですか。聴いた瞬間に、“ああ、昔の音ね”みたいに感じてしまうことってあると思うんですけど。そういう感じがまったくしなかったです。それも、たぶんライブでやり続けてきたからだなと思いますね。
取材・文=秦 理絵

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着