【短期集中連載】第五回・BugLug一聖
の“解体新書”

BugLugのメンバーひとりひとりにフィーチャーする連載、「BugLugの“解体新書”」。これまで優(G)、燕(B)、将海(Dr)3名の人間性や、9月1日に日比谷野外大音楽堂にて行われるBugLugのワンマンライブ<KAI・TAI・SHIN・SHO>へかける思いを探ってきた。日比谷野外大音楽堂ワンマンを明日に控え、最終回となる今回はBugLugのフロントマン、一聖(Vo)のインタビューをお送りする。

   ◆   ◆   ◆

■曖昧な自分に決着をつけるための野音
■野音のステージに立つことで、自分の何かが変わるんじゃないか

――ここまで他のメンバーには優しいインタビューをしてきましたが……。

一聖:嘘だ(笑)。

――そのぶん今日は厳し目のインタビューにしようかと(笑)。

一聖:ダメ出しはやめてください……マジで怖いから(笑)。

――マジメな話、ここまでメンバーと個別に話してきて、一聖くんは人に恵まれているなと思いました。

一聖:もちろん自分でもそう思います。メンバーに恵まれてると思うし、バンドっていいメンバーとじゃないとやれないものだから。

――はい。さて、野音が近づいてきてますが、今バンドはどんな状況ですか。

一聖:今までにない形式での対バンライヴをやったり、こないだは<バグサミ>(BugLug主催の企画イベント)をやったり、<シバきあい‼>(レジスターレコーズ3バンドとBPレコーズ3バンドでの合同ツアー)をやったり。特に<バグサミ>はどうなるんだろう?っていう不安も大きかったんですけど、最終的には笑顔で終われたんで良かったです。また来年もやりたいです。

――自分たち発信のイベントを主催して、そこにいろんなバンドをホスト役として迎え入れることって、昔のBugLugのイメージにはなかったものですが。

一聖:昔はやっぱり「自分たちが一番正しい」じゃないけど、他のバンドのことなんて興味なかったし、「関係なくない?」って思ってたんですよ。自分たちの道を進めばいいと。でも俺が事故に遭って、そこから復活して、もう一度この場所に帰ってこれたことが大きくて。

――もう少し詳しく説明できます?

一聖:復活してシーンに戻ってきた時、そこには他のバンドもたくさんいて、みんなでシーンを支えてるから無くならないんだってことを実感して。自分らだけじゃない、先輩や後輩、いろんなバンドがいるから戻ってこれる場所がある。だったらみんなと一緒に何か面白いことがやれたらいいんじゃない?と思ったのが<バグサミ>だったんです。

――で、いろんなバンドに声をかけて。

一聖:みんなよく出てくれたなって。前は自分らのことしか興味なかったバンドなのに、喜んで出てくれて。それがすごく嬉しかったです。しかも俺、前はイベントに出るってなると「客の奪い合いだ!」みたいな考え方をしてたんですよ。でも最近思うのは、戦う相手は他のバンドじゃなくて自分自身なんじゃない?っていう。だから<バグサミ>はみんなで楽しく「いい日だったね」って終われたらそれが一番だなと思って、そういう日になれたんで良かったです。

――もともと一聖くんは「俺が俺が!」っていうタイプで、もっと言うとワガママで自分本位で……。

一聖:わかってます(笑)。もともとは「俺が俺が!」っていタイプなんですけど、今の俺は「みんながいるから俺もいるんだ」っていう気持ちがありますね。

――で、そんな気持ちを経て野音をやるわけですが、このタイミングであのステージにたつ意味合いっていうのはどんなものだと思ってますか?

一聖:まず、俺が復活してからのBugLugっていうのは……すごくフワフワしてたというか、今にして思えば「何やってんだ!」って言いたくなるような状態がしばらくあって。それが47都道府県ツアーをやったり、こないだ<ANIMANIA>ツアーっていうワンマンツアーを経て、ようやく自分らしさを取り戻せたような気がしてるんだけど、その最終地点が今回の野音だと思ってて。自分らしさを取り戻して、さらにその自分を超えていこうとする自分。それを見せる場所だと思ってます。

――メンバーそれぞれ武道館に対するトラウマを抱えてるじゃないですか。あの日に対するリベンジみたいなものでもありますか?

一聖:それもあります。武道館は100%作られた自分だったんで。その後、本当の自分を探してたんだけど、見つからないっていうか。ほんと曖昧な自分がいたというか。「俺、どうしたいの?」っていうのが大きかった。

――そこに決着をつけるための野音でもあると。

一聖:はい。ケリをつけます。
▲一聖(Vo)

――では聞きますが、今の一聖くんが思う「自分らしさ」とは?

一聖:おお、難しい質問だ……。

――これにちゃんと答えられなかったら、野音には行きません(笑)。

一聖:それはマズい! えーと…………あれ? なんか……悪いところばっかり思いつくんだけど(笑)。

――言ってください(笑)。

一聖:はっきり言って俺、何かと計算しがちなんですよ。ライヴでも「こういうセットリストだったらここはこうしなきゃ」みたいに考えてしまうというか。本来ライヴって、もっと本能でやった方がいいと思うんですよ。それこそ本当の自分らしさが出るし。でも、計算したり計画を立てたりしちゃうところが……自分らしいところ?(笑)。

――じゃあどうして計算しちゃうんでしょうか?

一聖:それは……そうしないと自分が不安だからです。今の自分っていうものに100%信頼がおけなくて。だから計算するんだけど、だいたいそれでしくじってるんですよ。「あ、またやっちゃった」って。それをライヴの後になって感じることが多くて。「今日の自分、何をしたかったんだろう?」って。

――でも、一聖くんはもともとそんなに臆病な人ではないですよね? 

一聖:そうです。だからそこも復活してからなんです。「前の自分を取り戻さなきゃ」じゃないけど、昔の自分みたいに自信が持てなくなってしまって。で、ライヴのたびに「今日の自分、どうだった?」ってメンバーとかスタッフに聞かないと不安になったり。昔はそんなことしたことなくて「俺が一番!」みたいに自信満々だったのに。

――「俺が俺が!」の一聖が「みんながいるから俺がいる」の一聖に支配されていると。

一聖:そうですそうです。やっぱり事故から復活して「みんながいるから俺は唄えてる」って思うようになって……そこから周りの人に気を遣うようになったり。あとは自分のことを客観的に見るようになったり。俺、それまで自分のこととかあんまり客観的に見れなかったし、だからこそ自信満々だったっていうのもあるかもしれないけど、でも昔の自分らしさを取り戻したくて、もがいてるところではあります。

――もどかしいですよね。人に対して感謝の気持ちとかありがたみを感じられるようになったぶん、昔みたいな自信たっぷりの自分ではいられなくなったというか。

一聖:だから、悪いことばかりじゃなくて。「みんなのおかげで」って思えなかったら〈バグサミ〉みたいなイベントもやらなかっただろうし。でも、今の自分だったらそこでまた何かが変わりそうな気がするんですよ。

――野音をやることで?

一聖:うん。野音のステージに立つことで、自分の何かが変わるんじゃないかと。さっき言った計算とか、不安だからとか、そういうのに縛られてライヴするのって楽しくないじゃないですか。俺、もっと楽しみたいんですよ、ライヴを。

――楽しむってすごくシンプルで単純なことなんだけど、実は難しいっていう。

一聖:そうなんですよ。「楽しければいいじゃん」っていうのがもともとBugLugを始めた時、真ん中にあったものだけど、それが今自分にとってはすごく難しいものというか。

――そんな今の自分がライヴをやってて楽しいって思える瞬間ってどういう時ですか?

一聖:伝わった時、ですかね。歌にしても言葉にしても「これはもう絶対伝わっただろ」って確信の持てる瞬間があって。本当に稀にしかないんですけど、その時が一番楽しいです。でもそれを意識しすぎて歌ったり言ったりすると、ダメなんですよ。大根芝居みたいになっちゃう。だから、本能でそれをやらないと伝わらないし、お客さんも楽しめないと思って。

――でも、47都道府県ツアーのファイナルだった新木場スタジオコーストのライヴは、一聖くんの笑顔をなんども見ましたけど。

一聖:あぁ。心の底から笑ってる瞬間が……あるにはあったと思います。全部ではなかったけど。

――野音は、そういう瞬間がなんども訪れるようなライヴにしたいですか?

一聖:そうしたいです。でもそれも考えすぎちゃうとステージで意識してしまうし、とにかく自分が思うようにやったことで、何かが伝わったり楽しいって思えるものにしたいです。

――わかりました。ちなみに一聖くんにとって野音という会場にはどんなイメージがありますか?

一聖:野音でライヴやるのって次が4回目なんですよ。1回目はイベントで初めて立って。立つ前は「なんだここ、よくわかんねぇな。野外でライヴとかおかしくね?」って思ったんだけど、いざやってみたら「野外もいいな、面白いな」と思って。で、2回目、3回目とワンマンをやって、野音はBugLugの良さが発揮できる場所だっていうのがわかって。

――どういうところが?

一聖:まだ明るい時間にライヴが始まって、だんだん日が暮れてきて、最後は暗くなってっていう変化は、野外でしか味わえない面白さで。それってなんか知らないけど、BugLugに合ってる気がして。

――どうして自分たちに合ってるんだと思います?

一聖:どうしてだろう?……野外だと、人間らしくいられるのかな。開放感っていうか、人間が閉じこもらないでいられる。で、それってBugLugっぽいんじゃないかな。

――閉じこもらないで、自分を解放する。それが今の一聖くんのテーマであり、野音に立つ理由なのかもしれないですね。

一聖:そうかもしれない。俺、やっぱり自分の思ったこととか感じたことを、そのまま言いたい放題というか、何にも囚われないで歌いたいんですよ。だからなのかな。自分のやりたいことが俺にとって正解でありたい。それを一番発揮できる場所として、野音に向かいたいです。

――最後の質問です。野音をやった後のBugLugは、どうなっていくんでしょうか?

一聖:まず野音でどういうライヴができたか、がこの先の鍵になりますね。特に俺、先のことはあんまり考えられないんで。だから野音をやってみて、バンドのこれからのことを考えると思います。自分でも来年のBugLugがどうなってるのか、予想がつかないです。

取材・文◎樋口靖幸(音楽と人)

<BugLugワンマンライブ「KAI・TAI・S
HIN・SHO」>

9月1日(土)日比谷野外大音楽堂
開場 17:00/開演 18:00
チケット 前売¥5000/当日¥6,000

SOLD OUT

(問)NEXTROAD 03-5114-7444(平日12:00~18:00)

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