【花見桜こうき インタビュー】
聴かれているのは歌だけじゃない
花見桜こうきが3年半振りとなる2ndシングル「忘れ傘」をリリースする。ダウトのヴォーカリスト・幸樹としても精力的に活動する一方で、演歌歌謡界でゼロから修行を積んできた上での待望の新曲。歌い手としてのその姿勢とは？
3年半振りのシングル「忘れ傘」がリリースされますが、花見桜こうきさんをダウトの幸樹さんとして知っている人も多いと思います。演歌歌謡歌手とヴィジュアル系バンドのヴォーカリストとどう棲み分けされているのでしょうか？
前作「アイラブ東京」から3年半が経って“前と何が違うの？”って訊かれたら、今は棲み分けをしていないということですね。以前は、ダウトでは金髪だけど演歌を歌う時には黒く染めていたんです。でも、今は自分は自分だし、変にかしこまらなくてもいいかなと思っています。唯一違うのは、花見桜こうきは完全にひとりの歌勝負。バンドは興味を持った人がライヴに足を運んでくれるけど、聴いてくれても引っ掛からなかったらすぐに帰られてしまう。そのへんが自分の中で修行の場になっていますね。
その修行がヴォーカリストとしてプラスになって、表現力が増したんでしょうね。
以前はピッチを合わせてきれいに歌うことが大事だと思っていたんですけど、人が沸くポイントってそこじゃないんだなって。抑揚とかブレスの長さとか、人間味あふれる歌に反応していただける。自分が一番忘れていたところだなと思いました。だから、今はレコーディングもあとから調整するなんてあり得ない。“どうせ音程とかあとから直せるし”って気持ちで歌うのと、１回に懸けて歌うのではやっぱり全然違うんですよ。しかも、聴かれているのは歌だけじゃないんですよね。生き方だったりするから。
生き様ですね。“こういう人生を生きてきたから、こういう歌が歌えるんだ”とか。
そう、そう。深いですね。
そういうことを経験した上で制作したのが「忘れ傘」？
はい。今回、木下めろんさんという作家さんに曲を書いていただいているんですけど、もともとフーバーウーバーというバンドのギター＆ヴォーカルだった方で、当時から好きで聴いていたんです。インストアで一緒になった市川たかしさんに“ヴィジュアル系好きなんですよ”って声をかけてもらったことがきっかけで、市川さんに曲を提供している木下さんを紹介していただいたんです。
乃木坂46やラストアイドルにも曲を提供している方ですよね。そんな「忘れ傘」は和楽器を取り入れた軽快なナンバーに仕上がりましたね。
前作はムード歌謡だったので、今回はライヴ感というか、各地で歌ってもみんながノレる曲にしたいなというのはありました。今回のシングルはバンドに近いやり方で、木下めろんさんとアレンジャーさんとの3人で曲や歌詞について話し合いながら作ったんですよ。それが大きかったですね。
恋の未練を歌った曲ですが、歌い方が細やかで、声自体に魅力がありますよね。歌入れで心掛けたことは？
スタジオでいつも使っている好きなチューブマイクがあるんですけど、同じマイクを自分で買ったので思い入れがありますね。マイクはいかに気持ち良く歌えるかが、僕は大事だと思っているので。
なるほど。和傘を効果的に使ったMVでこだわったところは？
どうせなら演歌にあまりない派手派手な感じにしたかったんです。ダンサーと一緒に扇子を持って踊っているんですが、僕はダンスの経験があるわけではないので、毎日のように練習しましたね。そのあたりの練習風景はMVのメイキングに入っています。
裏側が見れるわけですね。「バラの偽り」は今作の中でもっともムード歌謡ですね。
歌謡曲的ですね。もともと歌謡曲が好きだし、バンドにもそういう要素があるので、個人的にも好きな曲ですね。演歌、歌謡曲ファンの方の反応も一番いい曲です。
今、言ってくれたようにダウトも歌謡テイストがあるので、この曲に限らず違和感がないんですよね。
僕も同じ認識です。演奏もアレンジも違うけれど、あまり差別化していないんです。
「どんな言葉より抱きしめて」は情緒的なバラードだけどギターソロが情熱的で、この曲は一番ロック色が強いですね。
生演奏にこだわりたかったので、この曲だけダウトのひヵるにギターを弾いてもらってるんですよ。夢ばかり追いかけていた主人公の歌詞なので、バンドマンとの恋愛とちょっとリンクするかなと。
歌詞は相手を思いやれなかった後悔を歌っていて。
ダウトのファンはこの曲が好きっていう方が多いですね。「バラの偽り」は年上の方にウケが良くて、「忘れ傘」は振り付けがあったりするし、みんな盛り上がってくれますね。
通常盤に「東京音頭2018 〜桜花乱舞ver.〜」を収録した理由というのは？
始球式をやりたいからです（笑）。野球が好きで、今も週に１回試合やってるぐらいなので。
ヤクルト戦でお馴染みの曲だから？
もう思い切り投げますよ（笑）。
ははは。では、こうきさんにとってムード歌謡、演歌の魅力とは？
僕はヴィジュアル系とかロックとか演歌とかジャンル分けすることって、音楽の可能性を狭める気がしてるんですよ。いち音楽として聴いてもらうのが一番嬉しいです。だから、花見桜こうきのスタイルのままでフェスにめっちゃ出たいんですよ。
歌もメンタルも鍛えられてるから、アウェイな環境でも太刀打ちできそうですね。
全然気にしないですね。むしろ、“浮いてラッキー”みたいな（笑）。
取材：山本弘子
