まさか自分が…“過酷な育児ノイロー
ゼ”の乗り越え方【悩まない子育てv
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誰でもなる可能性がある“育児ノイローゼ”。どう乗り越えればよい? 『悩まない子育て』著者・和田明日香さんに、当時のリアルなエピソードを聞きました。

食育インストラクターであり、モデル、タレントとしても活躍中の和田明日香さん。姑である平野レミさんとのかけあいをテレビでご覧になった方もいるかと思います。
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第11回ベストマザー賞2018受賞者であり、8歳・6歳・4歳の3人のお子さんを育てている明日香さんですが、そんな彼女も1人目のお子さんが生まれた後に育児ノイローゼを経験したと、7月に出版された初のエッセイ本『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ)のなかで語っています。
どんな人でもなる可能性のある育児ノイローゼ。
明日香さんはどうやって乗り越えてきたのでしょうか。
お話を伺ってきました。
直感だけで生きていた独身時代――エッセイを読んでまず感じたことは、すごく嘘のない内容だな、ということでした。
和田明日香さん(以下明)「ありがとうございます! 嘘はキライです(笑)」
――それと、人生って、予期せぬことの連続だと思うのですが、明日香さんはまだお若いですが、すでにいろいろな予期せぬことを経験されて、それをサーフィンのようにうまく乗り切って、切り抜けて来られたのだな、という感想を持ちました。
明「そんな立派な人生ではないですが!」
――最初のお子さんを学生の時に妊娠されたというのも、予期せぬことのひとつだったのではないかと思うのですが。
明「(笑)そうですね」
――その後、2年毎に続けて2人目、3人目と出産されたのは、そうしたいなと思ってそうされたのでしょうか。
明「全然! ただ、男の子と女の子をそれぞれ育ててみたいという想いは漠然とありました。なので、1人目の女の子の後に男の子が生まれた後、3人目は生まれても生まれなくてもどっちでもいいかな、という感じだったんです。こんな言い方をすると3人目に悪いですが(笑)…、そんな気持ちでいたら、3人目を妊娠したので、じゃあもう元気で生まれてくれたらいいや、と。
それ以外のことは、何人産みたいとか、何歳差でとか、そういうのはなかったです。1人目の時に、子どもは授かりものだって本当に思えたので。もうこれは神様にお任せしようと」
――お子さんを持つ以前も、前もって計画を立てて目標に向かって行動するようなタイプではなかったのですか?
明「そうですね。もう、結婚するまでは、楽しいか楽しくないか、どっちの方が楽しいか、それが判断基準でしたね。今はやりたくないけど将来に役に立つからとか、そういうことはできなかったですね」
―それって、わりと世の流れとは逆をいってますよね。将来困るから今は我慢してこれをやっておきなさい、なんてことは言わないご両親だったのでしょうか。
明「そうですね。親からあれをしろこれをしろと言われた覚えは全然ないです…なんて言うんでしょう、考えないくせに意志は強かったんですよね、私」
――それはご自分の感覚を大事にされていたということでしょうか。
明「そうですね、直感がすごく大事でした。人にどう言われても、私が経験したら違うかもしれない、と思って人の言うことは聞きませんでした。人の忠告よりも自分の経験を優先させて信じて生きてきたので、それなりに痛い目にもあってきたんですけど(笑)」
――それでも、失敗だけで終わらせないわけですよね?
明「やっぱりあの人の言っていたことは正しかったんだ、なんて後から思ったりして(笑)」
「まさか自分が」という落とし穴
“人生最高レベルの大変さ“に、「うそでしょ?」―妊娠中はつわりもなく、出産も楽勝だったとエッセイのなかで書かれていますよね。
明「1人目はほんとに楽でした…出産までは(笑)」
――妊娠中に、産後の生活について想像されたりしていたのでしょうか。
明「幸せな妄想しかしていませんでしたね。かわいいベビー服を買って、こんなの着せるんだ、かわいい~とか、かわいい赤ちゃんと愛する夫と天気のいい日にお散歩する、とか。
本当に楽しい想像しかしていなかったので、もうまさかこんな…かわいいベビー服も初めて着せた時に、うんちをもらされてまっ黄色になっちゃって下着に降格(笑)。こんなにすぐダメになるんだったら、高い服買わなければよかった、とか」
――一気に現実ですね(笑)。
明「前髪ははげるし、おっぱいは痛いし、子どもはかわいくないし、うそでしょって感じでした。
妊娠中の体のことや生活のことに関しては、パパママ教室などで教えてくれますが、産後にこんな大変なことが待ち構えているなんてことは、想像もしていなかったので、なんで誰も教えてくれなかったのって思いました。
ただ、当時の私に誰か教えてくれても、幸せの妄想中で耳に入らなかったかもしれませんが(笑)」
――人生の中で起きた予期せぬ出来事の中でランキングをつけるとしたら、産後の大変さっていうのはどのくらいのレベルのものでしたか?
明「人生最高レベルの大変さでしたね。いまだにそれは更新されていません!」
――第1子で苦労される方は多いと聞きます。いきなり赤ちゃんとふたりきりになる生活というのは、それまでに経験したことのない種類の孤独を感じる時期でもありますよね。
明「もう自分の人生を、出てきた人に全部奪われるようなものですよね。
でも、最近、2人目を産むか悩んでいる方から、今いる子どもの子育てだけでも大変なのにどうしたらいいか、という相談を受けることがあるのですが、早く赤ちゃんとふたりっきりの状況を変えた方が楽ですよっていうふうにお伝えしています。
私は3人目が生まれて物理的に本当に余裕のなくなった時よりも、子どもがひとりしかいなくて時間的には多少は余裕があった時の方が何億倍もつらかったんですよね」
「まさか自分が」という落とし穴――熱中症なども、なったことがないと、かかっているのに気づくのが遅れて重症化することがありますが、育児ノイローゼも同じで、なったことがないとなかなか気づけないのではないでしょうか。
明「そうですね、まさか自分が、と思いました」
――本の中では“ホルモンのせい”とわかったら腑に落ちた、ということが書かれていましたが、それに気づくまでは、なんだかわからないけれどつらい時期が続いたんですよね。その状態はどのくらい続いたんでしょうか。
明「…もうずっとだったんじゃないかなあ。なんでこんなに自分の性格が悪いんだろうって」
――ご自分のですか?
明「出産後、数週間して、友達がお祝いに来てくれるってなった時も、来ないでほしいって思っていました(笑)」
――まさに“マタニティ・ブルー”の時期ですよね。
明「本当にあの頃は普段とは違う自分でしたね。冷静になると、どうしてあんなこと言っちゃったんだろう、と反省するんですが、その時はどうしょうもなくそういう気持ちがこみ上げてくるんですね。つらいんですけど、自分ではどうしようもできない…ホルモンですよね(笑)」
――明日香さんは若くして出産されたので、まわりのお友達はまだ独身の方も多かったのではないでしょうか。
エッセイのなかに、独身時代の友達からの「飲みに行かない?」っていうお誘いのメールのことが書いてありました。以前からの友達とのなにげないズレがこたえたこともあったのでは?
明「そうですね。相手は全然悪気があって送ったメールではなかったんですが、それがエッセイに書いた“雨のベランダでぼーっと立ち尽くしていた”事件のきっかけになったことはたしかです(笑)。
今は自分の仕事に誇りを持てるようになってきたのであまりないですが、当時は、新入社員としてがんばっている友達のSNSなどを見て、落ち込んだりすることもありました」
――ちょうど同い年のお友達は入社した年に、明日香さんは子育てを開始されたんですよね。
明「友達が仕事で海外に行ったりしている時に、私は家で子どものことをしていただけなので、社会のことは何もわからないし、私はいったいなにをやってるのかなあ、なんて思っていました」
ママ友はいらないと思ってたけど…
いらないと思っていた“ママ友”と出会えた、子育て支援センター――“ママ友”をつくることに抵抗があった、というくだりが、エッセイのなかであります。子どもを産むと、自分の住む地域の中で友達を作らなくてはいけないような気がして、それはそれまでの友達の作り方とは大きく異なる点ですよね。
明「私、世間が与えてくる“子どものために仕方なくつながる”というイメージの強い“ママ友”という言葉を毛嫌いしていたので、最初はいらないと思っていたんですよ。
子どものことを話して、いいママ同士の友達のつきあいをしてみても、産後のママの心は埋められないんですよね。求める人間関係は、もっとバカが言えたり、夫には言えない話ができたりする関係なんですよ。
子どものことを話さなくたって、相手のことが知りたいって思えるような人と出会いたいんです。それって、人間の深い欲求のひとつじゃないですか」
――でも、最初は行くことに抵抗のあった子育て支援センターに通ううちに、子どもの話よりも、自分のことを話せる友達ができたそうですね。
明「そうですね。いざ子育て支援センターに行ってみたら、自分として話せる人が見つかったのはすごくラッキーだったと思います」
――本音で話せるママ友が見つかったのは、明日香さんが素直に接したことがきっかけになったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
明「わざとだとあざといですけど、時には弱みをみせてもいいんじゃないかと思います」
――保育園の保護者会の自己紹介で、子育て中のリフレッシュ方法を言う時に“一日の終わりのビール”と言われたそうですが、そういう素直さって、つながりたい人とすぐつながれる力を持つのではないかと思います。
明日香さんの素直さが他の人にもうつって、自然にしていてもいいんだって思えるようになる人もいたのでは?
明「そう思ってくれる人が今、周りにいるのかもしれませんね。
それと、よくママ友同士が集まると、自分の子どもの謙遜大会みたいなのが始まることがあるじゃないですか。そうしなくちゃいけないみたいな、同調圧力みたいのもイヤだったんですよね。だから私は人前でも、子どものいいところを話そうとしています」
地域に子どもを通じての知り合いがいると、心強い――いいですね。それってハッとするママも多いんじゃないかな、と思います。
子育て支援センターで他のママさんや保育士さん、地域のボランティアの方々と知り合ったことで、“子どもを育てるのは自分だけ”と肩ひじ張っていた部分がほぐれてきたとエッセイには書いてありましたね。
他にも、子どもが生まれてできた地域でのつながりもあるのではないでしょうか。
明「そうですね。あまり自分では地域性のある人間だとは思っていないのですが(笑)、地域に子どもを通じての知り合いがいるということは心強いですよね。それと、子どもの親ということを離れて大人として、自分が暮らす町で、次の世代の子どもたちに何ができるかということは、考えるようになりましたね。
夫とやっている会社は、主にキッチン用品などを作っている会社なのですが、子どもたちのために何ができるかを考えたことがあって、そうなるとたとえば子ども食堂のような、自分たちの住んでいる地域の子どもたちに還元するようなことをしたいねと話したことがあります」
――そうなんですね。
明「自然と住んでいるエリアの規模で考えるようにはなっていますね。近くの小学校の子どもに対しても、”今日も元気でいいねー“みたいな近所のおばさんの気持ちになっていますし」
――子どもは社会が育てるというのは、そういうことですよね。
まとめ有頂天のマタニティライフから一転、まさかの育児ノイローゼで暗黒の子育て時代も経験してきた明日香さんだからこそ語れるリアルな体験談、共感するところも多々あったのではないでしょうか。
「子どものためにはママが笑っているのが一番」とはよく聞く言葉ですが、自分を大事にしていないと、つい笑い方も忘れてしまいそうになる時もありますよね。そうならないためにも、明日香さんのように素直でいることは、実は一番の近道なのではないかと思いました。
明日香さんはエッセイのまえがきで、「くよくよはやる気の栄養」だと書いています。悩むことは悪いことではないし、たくさん悩んでいい、だけど悩みは考え方を変えればやる気に変えられる! という想いが詰まった一冊です。ぜひ、お手に取ってみてくださいね。
『子どもは相棒 悩まない子育て』
発売中
著者:和田明日香
価格:1,296円

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